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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第3章 商国陰謀編

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 リンダの気迫に押されて、僕は洗いざらい話すことになった。
 竜国が商国に経済戦争を仕掛けること、そのために魔国から商国の息がかかってない商人を大量に呼び寄せていることなどだ。

「というわけで、商国と繋がりはあると今後まずいので、早めに抜けた方がいいかなと思ったわけ。リンダのところは関係ないみたいだったけど、あははは……」

「ふうん」
 リンダのジト目は心にくる。

「……リンダ?」
「なあんか、ずいぶんと詳しい情報ね。出処は技国かしら。兎の氏族の直系から嫁をもらうわけだし」

「そのへんはノーコメントで」
「ふむ、出処は聞かない方がいいってことね。そういう扱いの情報をどうやって握ったとかも?」

「そうしてくれるとありがたい」
 さすがに女王陛下だとは思われないだろうけど。

「でもそうね。今の話が本当ならば、あなたの偽者も、ソールの町の不審者も『別の見方』ができるわね」

 これは先に武力を出した方が負けの情報戦。
 魔国がゴタゴタしているからといって、商国までもが同じとは思えない。

「それにしては動きが早すぎるんじゃない? まだ公にされる前だし」
 と思ったが、商人が情報収集を疎かにするとも思えない。
 事実、魔国から商人が流れているわけだし、竜国の目的まで筒抜けになっているとみていいだろう。

「……ねえ、この話。パパにしてもいいかしら」
「いいんじゃないの? 僕が知っても活用できるわけじゃないし。それと、技国がこのことに乗り出すのはもう少し後だから」

「技術競技会が終わった後かしらね。ということは兎の氏族が主導するわけか……これはチャンスかも」

 リンダはぶつぶつとつぶやきはじめた。
 なにかの皮算用をしているのだろう。

「いまの話、他には広めないで欲しいんだ」
「分かっているわ。たぶんだけど、パパならうまく活用できると思う」

「それと今さらだけど、良かったの? アンさんのこと」

 リンダは一瞬虚をつかれた顔をしたが、少しだけ表情が和らいだ。

「そうね。少しだけモヤッとするのはあるかしら。でも、総合的に見て一番いい結末になったと思うの」

「うん?」
 なにそれ?

「ウチの商会にやっかみがあるのよ。わたしにもだけど、直接家にもね。黒竜だけでもすごいのに、他の竜を従えたでしょ。あの日、日付が変わらないうちにパパに面会の客が二十件以上来たわ。予約をいれたら百は越えたわね」

「うえっ!?」

「わたしも学校に戻ってくるまではすごいなー、良かったなーって感じだったけど、一夜明けてから、周りの目がもう……」

 とくに領主の娘などからのアプローチが凄かったらしい。
 良い条件で引き抜きをかけてきたという。

「引き抜きって?」
「商売ごとこっちでやりましょうよ。移動にかかる費用は全部持ちますよ。場所? 一等地と屋敷を用意しますわ、そうお父様に言ってもらえますかみたいな?」

「すごいことになっていたんだね」
「だからアン先輩はいい緩衝材になると思うし、年度が変わったらアン先輩も本名で通うみたいだからちょっとした紛れになるかなって」

「そうなの?」
 本名って、アンネロッタ・ラゴスだよな。

「この前言っていたもの。そうしたらパパの商売の一部はわたしが引き継いで南に伸ばす予定よ。アン先輩とわたしが組めば、二年と三年は黙らせられるもの。その間にわたしは商売を軌道に乗せるわ。そうすれば、あなたへの援助も厚くなるし、みんな幸せになれると思うの」

 リンダがパトロンになったことで、学校でなかなか肩身が狭いらしい。
 今年はパトロンをひとりに絞ったことで、今までなかった軋轢が生まれているとか。

 あまりひどいようだと、来年にはまた制度が変わるかもしれないということらしかった。

               ○

 二月になった。

 約束通り、アンさんが竜国にやってきた。
 そして正式に竜国の賓客になった。友好外交の一環として、身分が明かされたのだ。

 領主や城で働く一部の上層部、そして王立学校の生徒たちがそれを認識した。

 意外にも同室のアークがものすごく驚いていた。
 知っていたのかと聞かれたので、もちろんと答えたら、なんでリンダを選んだのか、小一時間問いつめられた。

 色いろあるんだと答えたけど、納得していなかったが。

「先輩方は、いよいよ卒業ですね」
 アークがセイン先輩と話している。

 今月の終わりに、セイン先輩とマーティ先輩が学院を卒業していく。
 卒業式は二月の最後に行われ、三月が休みになる……かといえばそうではない。

 僕らは竜を駆って、王都の外へ出て行く訓練が待っている。
 いまはまだ学院内か、操竜場そうりゅうじょうを使っているが、ついに本格的に竜操者としての道を歩み始めるわけである。

「そういえばレオンくんはもう、竜に乗って技国まで行ったんだよね」
 マーティ先輩が話しかけてきた。
「ええ、竜を得てから五日後でした」

「よく無事だったよね」
「シャラザードが優秀でしたので、僕は何もすることはなかったです」

 移動の二日目などは、何もさせてもらえなかったし。
 いまだ王女失神事件として、僕の記憶に残っている。

「そうか。だったら、実戦も早いのかもね。鎧の用意はもう出来ているのかな?」
「リンダに任せてあるので、やってくれていると思います」

 シャラザードの武装はいらないらしい。
 あと僕の武器も必要ない。

 なので、作成するのは僕の防具のみなのだが、そこは少しこだわってみた。
 ちょっと面倒な注文をつけたのだ。

「メンテナンスは学院専門の職人しかできないけど、注文は好きにできるからね。気に入ったのを作るといい」

 メンテナンスのために学院内に入れる武具職人は、いまのところ数人のみだ。
 その中のひとりは僕もよく知っている『悪食あくじき』だったりする。

 会うと土下座をしかけて、ときどき両膝が地面に着いている。
 あれは目立つのでやめて欲しい。敵対しないかぎり、僕は何もしないのだから。

「規則で竜操者の鎧ができるまで、月魔獣狩りへ行けないことになっているからね」
「はい、分かっています」

 防具がないと戦闘時に振り落とされたときに死ぬし、そもそも竜操者は狙われやすい。
 防具必須の規則は、竜操者の死亡率が高かった時代の名残だろうが、決まりならば守らなければならない。

 そんな話をしていると、アンさんから手紙が届いた。王城経由である。

「城から? どういうことだい?」
「僕の王都での保証人からです」

「去年までは付けてなかったよね」
 マーティ先輩は首を傾げた。

「そうですね。竜を得て事情が変わったから、窓口がひとつあった方がいいかなと思いまして」
「へえ……たしかに家族やパトロン、それに保証人からしか連絡できないしね」

「たまたま城で働いている人に面識があったので、お願いしたんです」
「身元としては申し分ないわけか。……綺麗な字を書くね」

 マーティ先輩が、宛名を見てそんなことを言った。
 商売柄、そういうのが分かるのだろう。

「もとからそういう教育を受けていたんでしょうね。パンばっかり焼いている僕とは違いますよ」

 そう答えつつ、手紙に目を通す。
 もちろんマーティ先輩は中をのぞいたりしない。

 手紙には、今度また四人で会いましょうと書いてあった。
 四人でというところがアンさんらしい。

 そうだな、ロザーナさんも卒業だし、全員で会ってみるのもいいかもしれない。

 僕は「いつがいいですか?」と書いて、空いている日付を幾つか記した返事を書いた。
 そのうち話し合って、日にちを決めてくれるだろう。

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