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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第1章 魔国蠢動編

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「ボクらが得る竜は、大きさによって分けられるのは知っているね」
「ああ、もちろんだ」

「大型竜、中型竜、小型竜の三種類で、今年は、大型竜を得る生徒はいないと言われている」

「そうなのか? だれがどんな竜を得るか分からないんだろう? いくら大型竜が稀少だといっても、断言できるのか?」

「普通そう思うよね。だけど、大型竜が得られる年には、ある特徴があるんだ。……今年の新入生の数は管理人から聞いた。男女あわせて二十七名だ。ちなみに昨年は三十一名。これはどう思う?」

「竜を得るのは毎年三十人くらいと言われているし、妥当な数字だと思うけど」

「そう。平年並みの人数だ。大型竜を使役する現役の竜操者は三人いるが、記録ではその年の同級生は、極端に少ないことが分かっている。だいたい十人前後なんだ」

「三分の一か」

「新年に竜迎えの儀が行われる。その後五十日くらいすると次の竜紋が現れ始める。すべての竜紋が現れるのに半年くらいかかると言われているね」

 それも知っている。
 竜紋は、人々が平常の暮らしをしている中からポツポツと出始めるのだ。

「僕の竜紋が現れたのは七月だった。たしか遅いほうだと言われたな」

「ボクは、早くも遅くもない四月の末だったよ。それで、竜紋で竜たちがボクらに印をつけるわけだけど、なぜ毎年、その数が同じくらいなんだろう」

 分からないが、そういうものかとずっと思っていたから、改めて考えたことはなかった。
「竜迎えの儀で出てこられる数に限界があるんじゃないかな」

「それに近いだろうね。だから、ボクはこう考えている。竜迎えの儀があるのは会場だ。そこへ入る順番待ちをしている広い運動場があって、毎年、竜がそこに集まっているんじゃないかと。もちろん、イメージだけどね」

 運動場に竜が整列している姿を想像してしまった。
「それはまた斬新なイメージだな」

「それで竜迎えの儀が終わると、集まった竜がこの世界に出てくる。すると、そこが空くだろ?」
「そうだね」

「そこへ運動場にいた次の竜たちがやってくるのさ。その運動場の中に入れるのは、相手を見つけた竜だけ」
「早い者勝ちになりそうだな」

「そうかもしれない。自分の相棒を探すのだから、妥協したくない。けれど遅れると、運動場はその次の年の定員でいっぱいになってしまう」
「面白い発想だ」

「ここで大型竜の話に戻るけど、運動場のスペースは有限だ。ということは、大型竜が入ってきた場合、他の竜が入る場所がなくなってしまうというのはどうだろう」

「それが大型竜が得られる年に、竜紋が現れる者が少なくなる理由だと?」

「実際はどうか分からないけど、そんな考え方で説明をつけたらどうだろうかという話さ。すると、中型竜は、小型竜に比べて、やはりスペースを取る」

「そうだな。昨年は三十一名だったよな。中型竜の数は?」

「中型竜を得たのは四人だと聞いている。中型竜は、小型竜の一割か二割だから、平年通りだ」
「今年の新入生は二十七名と言ったよな。その考えでいくと、中型竜を得る者が多くなる計算だが」

「そうだと言いたいけど、毎年の統計を取っても、完全にその通りにはならない。ある程度の相関関係は認められる程度だ。だから断言はできないね」

 ここまで引っ張ってきて、それか。

「ならば、その運動場の話もどうなんだ。都合のいい所だけ抜き出して解釈しても意味はないんじゃないか?」

「さて、それはどうかな。ボクは全調査していないからだと考えているんだけど」

 全調査していない? 意味が分からない。
「どういうことだ?」

「新年に竜迎えの儀を行うけど、竜を得ているのは、本当にそれだけなのかな」
「……?」

「竜迎えの儀は、竜の聖門せいもんから竜を呼ぶ儀式のことだ。そして、竜の聖門に近づけるのは、特別に許された者のみ」

「当たり前だ。そこらの有象無象が近寄っていい話はないだろ」
「そう。つまり、竜の聖門がある竜渓谷りゅうけいこくは、国民の目から隠されている。密かに竜を得ても、誰も分からない」

「それこそ荒唐無稽な話だろ。意味が分からないぞ」

「そうかな。竜国にいる竜操者の数は二千人。毎年三十人ずつ竜操者が増えるのだから、数としては合っている。竜操者は頑強で長生きだからね」

「怪我の治りが早いとか、病気にかかりにくいとかは聞くけど、長生きなのか?」

「八十歳を過ぎても現役の竜操者はたくさんいる。怪我と病気から無縁だと、長生きになるんじゃないかな」
「まあ、そうかもしれない」

「ボクはヒューラーの出身だけど、その北に立ち入り禁止の場所がある。どこだか分かるかい?」

 陰月の道があるから、もともと人はそこから北には行かないだろう。
 あっ、そうか。

「旧王都か」

「そう。それでボクは何度か見ているんだよ。旧王都に向かう飛竜の集団を」
「それは、陰月の道に落ちてきた月魔獣つきまじゅうを倒しに行ったんじゃないか?」

「可能性はあると思う。ボクが見た何回かは、そうだろう。だけど、それにしては向かう方角がいつも同じなのはおかしい」
「つまり、旧王都に竜操者がいると? あんなに危ない所に?」

「旧王都は盗掘を防ぐために、近寄ることはできないからね。さて、どうなんだろう」
「だが、なんで人の目から隠すんだ?」

「月魔獣の脅威からではないだろうね。戦力を隠す理由とすれば、ひとつくらいしかボクは思いつかないよ」

 アークは意味深に笑った。
 僕だって、ひとつしか思いつかない。

 隠すとしたら、知能のある相手だ。
 間違っても月魔獣相手ではない。

 この大陸で知能のある相手といえば……。

「戦争……」
「さあね」

 僕のつぶやきに、アークは肯定も否定もしなかった。


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