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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第3章 商国陰謀編

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「魔国の商人たちがいま、竜国に流れてきているの」
 女王陛下の言葉を聞いても、僕は正直ピンっとこなかった。

 町から町や村へ移動しながら商売する行商人や、もっと広範囲な地域で活動する交易商人はいくらでもいる。
 僕自身、国をまたいで移動する商人を何人か知っている。

 魔国から竜国に商人が流れてくるのは、別段おかしいとは思わない。
 やっぱり何を言いたいのか分からない。

「商国の影響下にない商人って、結構いるのよねえ」
「…………!?」

「彼らは話が早くて助かるわ」

「も、もしかして、引き抜いたりしまし……た?」
「もちろんよ」

 あ、悪人だ。この人。
 魔国から商国の息がかかってない商人を引き抜いたのか。

 竜国にそういう商人が増えれば、商国の影響力が少なくなる……というよりも、竜国から商国の影響力を排除させたいんだろうな。

「武力を使うとこちらが悪者になるでしょ? だからいい手だと思わない?」
「………………」

 経済戦争を仕掛けたよ! マジか。相手は商国か。どうなるんだ?
 資本の大きさだって違うだろうに。こっちもタダじゃすまないんじゃないか?

 これをソールの町にたとえると、町に商業組合があるのに、領主が外から商人をどんどん呼び寄せたようなものだ。
 もとからあった組合としては面白くない。

 しかも、後から来た方を優遇したりすれば、反発は必至。
 本来ならば効果のある「言うことを聞かないと、流通を止める」も「どうぞどうぞ」と返されてしまう。

 最後は「こんなとこで商売してられっか、ケッ!」とばかりに出て行ってしまう。
 これで後から来た商人が前の商売をそのまま引き継げる寸法だ。

 そんなことを国家ぐるみでやろうとしている。

「手始めはウチね。そのうち技国も参加するから」
「………………」

 武力を持たない商国がなぜ存続しているのか。
 それは各国の流通を握っているからである。

 商国と敵対すれば、糧秣りょうまつすら揃えられない現状がある。
 各国とも排除したいのは山々だが、それを実行すればとたんに行き詰まってしまう。
 影響力を落とすよりも先に干上がってしまうからだ。

 商国は五会頭を頂点とした商業国家だが、その枠組みは多数の商会の集合体となっている。
 商会どうし、横のつながりがあるので、その結束力は馬鹿にできない。

 女王陛下はそれを国内から排除したいらしい。
 排除されるべき商会は、今後決断を迫られることになるだろう。


 ――商会を抜けるか、町を出るか


 女王陛下のことだ、商国に繋がりのある商会にはことのほか厳しくあたるだろう。

 この人は、そういう人だ。やるときは徹底的にやる。
 反動は当然ある。僕には分からないが、勝算があってのことだと思う。

 女王陛下の行動力ならば、それほど時間がかからずにやり遂げるだろう。
 竜国は商国と敵対する道を選んだ。

「そういえば、竜国内に工場を作って魔国の人間を雇う計画があると聞きましたが」
「ええ、困ったことに地方領主が許可を与えてしまったのよね」

 地方のことは、その町の領主の権限においてなされるため、いかに女王陛下と言えども、強引なことはできない。
 やれば中央と地方の距離が離れてしまう。

「大転移のための布石だとか聞きましたが、気の長い話ではないでしょうか」
「そうでもないのよ。四年後に起こるというだけで、月魔獣の降下が増えるのはいつからか分からないもの」

 過去の記録がないので、そのへんは曖昧らしい。

 前回の場合、月魔獣が大量に降ってきた期間はおよそ三年間。
 その間に呪国は滅び、他国も大打撃を受けた。

 今回の期間がどのくらいになるのか、分からないのだという。
 そもそも前回は、月の運行を長期的に計測していなかった。

 月魔獣が増えたときをもって、大転移の開始時期としている。
 その頃からふたつの月を観測し始めているため、それ以前の情報はない。

「魔国もいま大変みたいだし、いい機会だと思ったのよ」
「そうですか……」

 ずいぶんと思い切った手を打ったと思う。いくら魔国が大変な時期だからといって……大変?
 どういうことだ?

「あの……」
「なにかしら」

「その、魔国が大変な時期というのは、どういうことでしょうか」
 僕に関わりのないことだよな。

「兎の氏族の手紙に書いたけど、聞いてないかしら」
「手紙の一部だけ拝見しましたが、全部は……」

「そう。まあ、おおまかなことしか書かなかったのだけど」
 そう言って女王陛下は笑みを深めた。

 だんだんと嫌な予感が増してくる。
 何だろう、最近僕は、勘が鋭くなってないだろうか。

「魔国で大規模な政変があったのよ。……と言っても、すべては確認できないのだけど」
「ええっ!?」

「魔国王は健在ね。けど、王子の失脚、大臣の更迭、議会の解散があったみたいね。首都を追われた人はかなりの数になりそうよ」
「ど、どうして?」

 なんだそれは? クーデター……じゃないよな。魔国王が健在ってことは、王の錯乱?

「地位を失った人もいれば、得た人もいるわね。いま分かっているだけで、抜擢された人にはみな共通点があるの」

 嫌な予感が最高潮だ。聞きたくない……けど、聞かないとヤバそうだ。

「その共通点とはなんでしょうか」
「急進派といえばいいのかしら。戦争も辞さない人たち。他国を見下して弱いところがあったら攻め取ってしまおうと考える人たちね。彼らが国の中枢に就いたのよ」

「………………」
 言葉もない。

 結婚式のときから、違和感があった。
 魔国から王子が来ることが事前に決まっていたが、土壇場でキャンセルになった。
 その王子は融和派だと言っていた。

 外交官と統括長官、あれも新しくポストに就いた連中だったんじゃなかろうか。
 あまりにお粗末な外交、そして人を見下げるような発言は、害悪になりこそすれ、利益にはならない。

あんな人材を派遣するとは何を考えているのかと思っていたが、いま魔国は生まれ変わろうとしているのでないか? 悪い方向に。

 他国に戦争を仕掛けるとき、反対しそうな人間をあらかじめ更迭しておく。
 その上で議決を取れば、すんなりといく。

「気がついたようね。というわけで、いま魔国の内部はゴタゴタ。でもすぐに収まると思うわ。国外に敵を見つけて団結するつもりみたいだし。でもその間に優秀な商人は頂いちゃおうと思うの」

「それはいい考えですね」
 こりゃ、戦争待ったなしだ。

 嗚呼、僕の平穏な人生設計がまた遠のく。

 おかしいと思ったんだ。
 学院生への襲撃があってからここ半年、いやに魔国が大人しいとは思っていた。

 さすがにやり過ぎたと手控えたかと考えていたけど、戦争へ向かう体制を作っていたのか!

 しかも今回は、魔国と商国が手を組んでだ。
 かなりハードな戦いになりそうだ。

 ……っと、それで思い出した。

「女王陛下」
「なにかしら」

「僕もまだ、お話せねばならないことがありました」
「あら、興味あるわね」

 女王陛下が閉じた扇を口元に持ってきた。

「話して」
「はい」

 僕は向こうで体験したことを語り始めた。

連載開始してちょうど三ヶ月です。
長かった、いや短かった……でも長かったかな?
とにかく三ヶ月経ちました。

結婚式後の閑話は、諸々の話が終わった頃に投下する予定です。

さて登場人物ですが、3章、4章の主要な人は新入学生を除いてほぼ出てきたのかなと思います。
名前だけの人もいますけど。。。

本編は語るべき内容がどんどん増えてきています。
読んでいて混乱しないよう、そして楽しんでもらえるよう、分かりやすい文章を心がけています。
なにかありましたら、感想などでお願いします。

これからも応援よろしくお願いします
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