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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第3章 商国陰謀編

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 一月十日。
 竜迎えの儀が終わって、三日が経った。

 シャラザードは落ち着いている。
 昨日シャラザードは、はじめて与えられた餌をペロッと食べた。

 それどころか、おかわりを所望して、全方位に威嚇いかくしたために、もう一頭与えるハメになった。
 あとで追加の請求がくるだろう。払うのはリンダだが。

 やはり竜舎の管理人から、「毎回二頭食べるんですか?」と聞かれたので、そんなことはないと答えておいた。
 シャラザードも、それは了承してくれている。

『ただし、我も存分に暴れれば腹も減る。そのときは頼むぞ』

 おかわりの事前催促である。



 さて、この三日間で何かが劇的に変わったということはない。

 大きな変化としては、僕ら学院生の所属が学徒がくと竜隊から、予備竜隊よびりゅうたいに変わったことくらいだろうか。

 僕らは予備役を含んだ、練習生として予備竜隊に組み込まれることになった。
 これで中央竜隊、地方竜隊と同じく、竜操者の五箇条を履行する義務が生じたわけだ。


   竜操者の守るべき五箇条

  一条 (国へ)心からの奉仕
  二条 (月魔獣に対する)慈悲無き戦い
  三条 弱者の保護
  四条 契約に忠実であること
  五条 竜に誠実であること


 僕ら竜操者は、この五箇条を守らなければならない。
 読めば分かるが、至極真っ当なことが書かれている。

「問題は、二条なんだよなぁ」

 僕がパン屋を断念せざるを得ないのは、この二条があるからだ。
 月魔獣を率先して狩り、万一近くに現れたら、何をおいても倒さねばならない。

 この国で月魔獣を狩ることができるのは、竜と竜操者のみなのだ。
 僕らにはその力があるが、他の者にはない。

 だからこれは仕事ではなく、果たすべき義務なのだ。

 シャラザードの様子からみても、月魔獣を率先して狩りにいくのは問題ない。
 いまから行くと言えば、喜々として飛び立つだろう。

 竜操者の五箇条に縛られた僕と、月魔獣を狩ることを至上の喜びとしているシャラザード。

「……うん、パン屋は無理だな」

 残念だが、本業としてパン屋の主人は諦めるしかない。
 あとは趣味としてどれだけ本腰を入れられるか。
 それについては、大転移が終わったあとで本格的に考えるとしよう。

 めざせ、趣味のパン屋。趣味の本格的パン屋だ。



 そんな決意をしているうちに日が流れ、技国へ赴く日になってしまった。

 以前、王宮の竜舎で編隊を確認したところ、今回の移動に中型竜は使わないと説明を受けた。

 つまり、みな小型の飛竜のみの編成だ。そこへ僕が自前の竜で参加する。
 最初僕を飛竜の背に乗せるか、自前の竜を出すならば編隊の隅っこにと思っていたらしいが、シャラザードを見て考えを改めたようだ。

「先頭を行ってもらう」

 まさかの一番前である。
 まだ充分な飛行訓練すら積んでいないにもかかわらず、みなを引っ張っていくらしい。

「無謀な!」

 そう言ってみたが、竜迎えの儀でシャラザードが他の小型竜を怯えさせたので、竜操者は頑として首を縦に振らなかった。

 シャラザードが最後尾から咆哮ほうこう一発放つだけで、編隊は散り散りに乱れる。
 そんな危険な竜を後ろにおけるかと言われた。

「本来ならば同行を断りたいところだぞ」

 女王陛下の命令もあり、さらに僕が兎の氏族から直接招待されているので、苦肉の策らしい。

 理由もなく僕だけ別行動すれば、「すわ、不仲か」と痛くもない腹を探られる。
 その場で僕の勧誘騒動となったら、竜国の民が黙っていない。

 戦争に発展することも視野に入れるとまで言われた。

「なにを大げさな」

 そう言ってみたが、それを伝えた竜操者の目はマジだった。

 なんでも、小型竜どころか中型竜までも従えた黒竜の噂はすごいもので、人気に至っては、いま天井知らずらしい。

「爵位と領地を与えて、陰月いんげつみちを守らせようという話まで出ているのだ」

「………………えっ?」

 陰月の路付近の土地は余っている。
 どんなに肥沃な大地や交通の要になりそうな場所でも、月魔獣が出るだけで、だれも入植したがらない。

 だが、あれほどの竜がいるならば話は違う。
 候補地だけはたくさんあるので、そこの領主となって町を作ればいいのではと、王都の住民が噂しているらしい。

「……………………」

 知らなかったよ。全然。

「というわけで、いま黒竜と国が不仲になるのはマズイ。非常にマズイ。……で、先頭を引き受けてくれるかね?」

「……分かりました。精一杯やらせていただきます」

 もう、そう言うしかない。

 ちなみに学院の授業だが、四月から僕は二回生になるわけだが、みなと別カリキュラムになるそうだ。

 もともと中型竜の場合もそうなので、僕が特別ではない。
 それに半年もすれば、同じ小型竜でも軍志望とそうでない者では、カリキュラムが違ってくる。

 竜を得たものの、本人はか弱い女性なんてこともある。
 そんなのがたった一年や二年でバリバリと月魔獣相手に戦闘をこなすことは難しい。

 だったら適材適所に竜をあてがった方がいいというのが、国の考え方である。

 なんにせよ、編成も決まり、僕はみなと一緒に兎の氏族の本拠地に向かって明日から移動しなければならない。

 ちなみに、今回の結婚式。
 出席する王族は、入学式にいたサーラーヌ王女である。

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