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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第2章 技国内乱編

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 僕の生涯にわたる相棒……竜が壁の向こうからその姿を現した。

「これは……この姿は!」

 竜導教会の神官が絶句している。
 毎年竜迎えの儀を執り行っている神官だ。こういうケースは慣れているはずだが。

「これは……どんな竜なのでしょうか」
 分からなかったので、僕は聞いた。

 竜はとても大きかった。先ほど見た中型竜よりも大きい。
 だが、大型竜ほどはない。

 外見も変わっている。
 全てが黒い。真っ黒だ。
 他に特徴といえば、黄色の細いラインが顔や身体に走っているくらいか。

 初めて見る竜だった。

「これは……珍しい。特殊竜ですね。属性竜というタイプです。女王陛下の騎竜と言えば、お分かりでしょうか」

 女王陛下の騎竜……王都を悠然ゆうぜんと泳ぐように飛翔する竜だ。
 この一年、王都にいた僕も、何度か目にしている。

「女王陛下のはたしか、白竜はくりゅうでしたね」

「はい。それと同じでしょう。この場合、黒竜こくりゅうになると思います。属性竜が現れたのは、六年ぶりでしょうか。あのときは青竜せいりゅうでした」

「青竜というと、ソウラン・デボイ様?」
 あの有名な。

「そうです。青い炎を吐く最強の竜と言われています」

 六年前、すごい騒ぎになってソールの町まで噂が届いた。

「女王陛下が白竜で、たしか氷竜……」
「はい。氷のブレスであたり一面を氷の世界に変えると言われています」

「するとこの……黒竜でしたっけ? なにができるんでしょう」
「さあ。実際に確かめてみないと」

「それはそうですね」

 あたり前だ。竜導神官に分かるわけがない。
 青竜のときだって、水を操るのかと思ったら炎だったって話だ。

 これは黒色だから……なんだろう。でも、黒色は僕と同じで合っているな。

「ここに長居するわけには行きません。次の方が来られますので、レオン様は会場の方に」

「そうでした。……って、これに乗るのか」

 乗るといっても、かなり高いぞ。どうやって乗ろう。背中は四階建ての建物くらいはあるが。
 そんなことを思っていると、黒竜は首筋を下げた。ここから乗れということらしい。

 僕はすぐに飛び乗り、命令をくだす。

「はじめまして、相棒。会場まで一緒に行こう!」

『分かった、我があるじよ』
「しゃべった!?」

 驚愕する僕をよそに、黒竜は大空高く飛び立った。



 僕を乗せた黒竜は、急上昇した。
 いきなりのことだったので、とっさにしがみついたが、様々な訓練を積んだ僕じゃなかったら、振り落とされたんじゃなかろうか。

 竜を得ていきなり墜落死では、笑い話にもならない。

「うわぁあああ」

 かと思ったら、急降下した。
 グングンと地面が迫る。

 あわや激突というところで右旋回し、大きく弧を描くように飛翔する。

「ちょ、ちょっと! 黒竜さん」
あるじよ、何用だ?』

「何用って、なんでこんな無茶な飛び方をするの?」

『久しぶりの肉体。存分に楽しんで何が悪い。このままゾックどもを根絶やしにしようぞ。我と主がおれば、怖いものはない』

「ええええっ!?」
 ゾックってなに?

 どこかに行こうとする黒竜を俺はなだめすかした。それはもう必死に。
 そうでもしないと、本気で地平線の彼方へ出かけてしまいそうなのだ。

 というか、竜ってしゃべるっけ? それと、こんなに自由気ままなんだっけ?

 僕はなんとか黒竜の説得に成功し、会場まで飛行してくれることになった。
 それはもう、必死でお願いした。

 だから言いたい。竜と竜操者の関係って、こんなんだったか?
 いや、それよりも竜が話すなんて、聞いてなかったんだけど。

 それよりもまずは会場だ。
 リンダが待ってる。あと多くの観客たちも。

 だから考えるのは後にしよう。
 これは現実逃避ではない。優先順位の違いだ。

「おっ、会場が見えて来た。あの丸い中に降りて」
 さすがに空を飛ぶと速い。もう着くのか。

うけたまわった。……ふむ邪魔なのがおるな』

 邪魔? 僕らが降りる競技場には、竜と竜操者しかいないはずだけど邪魔って……?


 ――キシャァアアアアアアアアア(そこを退くのじゃぁぁぁ)!!


 大、大、大音響が響いた。

 黒竜は心の底から震え上がるような、まるで魂を揺さぶられるような声を出した。

 思わず耳をふさいで目を瞑ったが、その間に黒竜は競技場のど真ん中に降り立った。

『これでよいか、主よ』

 目を開くと、目と口を大きく開いた観客たちが目に入った。
 観客はみな微動だにしない。

 それこそ少しでも動いたら死んでしまうのではないかと思うほど、だれもが動かない。
 会場は静寂に包まれている。
 周囲を見回し、僕はおかしなことに気がついた。

「……あれ? 他の竜は?」

 僕が来る前にも竜を得た同級生が何人もいたはずだが、どこにもいな……いた!
 競技場の壁に張り付くように身を寄せあっている。竜がだ! もう一度言おう。竜が壁に背中を押しつけている。

 小型竜だけではない。
 会場に唯一いた中型竜もなぜか、壁面に身体をピッタリとはりつけて硬直していた。


「………………………………あれ?」


 何かがおかしい。そう思って下をみると、竜操者とパトロンたちが一様に腰を抜かしていた。竜に置き去りにされたらしい。
 女生徒にいたっては、泡を吹き、四肢が天を向いて倒れている。

『みな我に注目しておるようじゃが、どういうことだ?』

「どういうことだ、じゃねええええ!!」

 僕は黒竜の背中を駆け上がり、その後頭部をおもいっきりぶん殴った。

ちょっとだけ解説しますと竜には四種類ありまして、小型竜、中型竜、大型竜、特殊竜がいます。
特殊竜の中には、小中大の三種の竜に該当しないものがすべて含まれています。
鎧竜、双頭竜、毒竜、大顎竜、属性竜などが特殊竜になります。

属性竜は、特殊竜の中のひとつのグループになります。
属性竜の見分け方は、全身の色です。(赤、青、黄、白、黒など)
通常は特殊竜の外見から能力がだいたい分かりますが、属性竜は色と能力が完全に一致するわけではありません。
白→氷
青→炎
黒→??
+注意+
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