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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第2章 技国内乱編

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 確認とったわけではないが、スルヌフの悪事はしっかりと処理されたと思う。
 もちろんロザーナさんはそのことを知らない。

 僕が証拠を集めた後でも、リンダは何度か追加調査を依頼していている。

 追加調査と言っても、潜入はもうしない。外からだけだ。
 その結果、スルヌフは完全に竜国から撤退したことが分かった。

 屋敷は数人の使用人を残して、みな商国に戻ってしまった。

「途中の仕事も放り出しているみたいだけど、捕まるのを恐れたのかな」

 僕が義兄さんに聞くと、下っ端から芋づる式に捕まる可能性があるからだろうと答えてくれた。

 僕が入手した証拠は、ほとんどが結果報告書だったため、まず実行犯を捕まえて書類と証言によってスルヌフにたどり着く感じになるらしい。

「書類が見つかりました。だからあなたは有罪ですは、さすがに難しいな」

 腐っても相手は商国の五会頭のひとり。
『豪商』の名を冠する男を十分な証拠もなく拘束したら、多くの反発が予想される。

 商国のトップを書類一枚で有罪にはできないという。

「証拠なら、僕が商国に行って調べられるけど」

「実行犯はもう生きてないだろ」
 そこまで甘い人物ではないらしい。

「なるほど……ということは、この件はここまででお終い」
「そうだな」

 スルヌフはほとぼりを冷ましたら、また活動するためにやってくると義兄さんは言っている。

「だったら、そのときは僕が行くよ」
 乗りかかった船だ。スルヌフを捕まえるため、最後まで面倒みようと思う。

「そうそう、裏に片足を入れたご令嬢な。あれ、しっかり釘をさしておけよ」
「そういえばそうだった」

 今回リンダが依頼した組織は、裏と繋がっている表の組織だ。気軽に扱っていいものじゃない。

「そうだね。今夜やっておく」
「まかせたぞ」

 リンダは何人も介して依頼するくらい慎重だったが、それで済む話ではない。
 だから僕は王立学校の寮に忍び込んで、リンダにお灸をすえることにする。

 といっても危害を加えるわけじゃない。ただ、領収書を置いてくるだけだ。

 リンダの枕元に、支払った総額と『受領済』と書いた紙を置いてくる。
 翌朝起きたら驚くだろう。意味が分からないはずがない。

 それで少しは懲りてくれるといいが。

               ○

 日にちは遡る。

 レオンがスルヌフの屋敷から脱出した翌々日、当のスルヌフが王都の屋敷に到着した。

 商国から竜国へ向かうとき、スルヌフは好んで海路を使う。
 もちろん自前の竜操者を使ってである。

 毎回道を変えても、どうしても決まった空路ができてしまう。
 それならばいっそ誰も通らない海上を進む方がよいとスルヌフは判断したのだ。

 商国から真東に向かい、海に出てから北上する。
 竜国王都が近くなったら西に向かうという大回りな方法を取る。

「侵入者は〈影〉の者ですか」
 困りましたねとスルヌフはつぶやいた。

 後ろ暗いことの多いスルヌフにとって、身辺を探られることは慣れている。

「ですがこうも見事に潜入されると、竜国の認識を改めないといけませんね」

 最新の魔道結界はまったく無駄だった。
 そのことにスルヌフは驚きを禁じ得ないが、同時に竜国が本気で調べにきた証左であると考えた。

「今回は竜国に長期滞在して、いくつか仕込みをしておく予定でしたが、私のなにに興味を引いたのでしょうね。北のことか、それとも……」

 スルヌフは徹底的に屋敷内を捜索し、盗まれたもの、見られたであろうものを拾い上げた。
 いくつかの書類が消えていることが判明した。

「さて、あらぬ疑いをかけられるのもアレですね。一旦撤退しますか」

 スルヌフは部下に退去の準備をさせ、ふと書斎にある木箱に目をやった。

「開けた形跡はないようですね。罠もそのまま……これが目当てとは思えませんが、気づかれていると厄介ですね」

 これは魔道を使っても絶対に開けることのできない木箱。
 床には、木箱を大きく動かすと罠が作動するようにもなっている。

 スルヌフは懐から奇妙な形状の鍵を取り出した。

「この鍵を使わずに開けると上部が爆発して猛毒のガスが発生するのですが、中身は見られていないようですね」

 木箱のひとつを開けて、スルヌフはほくそ笑む。

 中にはガラクタが詰まっていた。
 およそ商人が見向きするとは思えないものばかりである。

 スルヌフは一番上に置かれているガラクタのひとつを手に取る。

 それは木製のプレートだった。
 海水に浸ったのか、塩気がついている。

「最近だと北方から下ってきたこの船を襲ったときですね。沈没まで確認しましたし、しばらく周辺海域に留まりましたが、泳いで逃げた者は全員始末したはず。情報が漏れることはないはずですが……ということは今回の潜入は別件でしょうか」

 スルヌフは手に持ったプレートをガラクタの山に戻し、木箱を閉じた。

「しかし、本格始動する直前にちょっかいをだしてくるとは、竜国も存外鼻が利きますね。護衛をもうひとり増やしておきましょうか」

 傍で控える呪国人に目配せをして、スルヌフは立ち去った。

 これより数日後、スルヌフは飛竜に乗って竜国をあとにする。
 来た時と同じ海上を通り、商国へ戻った。

 屋敷に残った者たちも順次片付けをはじめ、それから五日もしないうちに手仕舞いを完了させ、同じように商国へ向かっていく。

 それ以降、屋敷の門は堅く閉ざされることとなった。

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