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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第2章 技国内乱編

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 四回目の顔合わせ会が始まった。

 今回は講堂でティーパーティだ。
 豪華さでは前回に遠く及ばないが、制服のままで肩の力を抜いて参加できるのがいい。

 壁際と中央に給仕用のテーブルが備え付けられ、みなが思い思いの飲み物や軽食を持ち、好きな場所で歓談できるようになっている。

 僕はアークと一緒に会場に入った。

「四回目になると、相手がいる人がほとんどなのかな」
「普通はね。でも今年はちょっと、様子が違うみたいだよ」

 アークが意味ありげに奥の一角に目をやった。
「……人だかりができている?」

「現在進行形で、せめぎ合いをしているようだね。竜操者ファンドが禁止されて、今年は学院の生徒の中から選ばれるのは二十名くらいだって話だよ。険悪なムードが出ているだろ?」

 竜操者ファンドの廃止にともなって、パトロンは一名に制限されてしまった。
 一人に決めきれないから言い寄ってきた人全員……といかなくなったのだ。

「でも現役の竜操者たちも整理しているんだよね」
「そうらしいね。難航しているみたいだけど」

 パトロンを五人も六人も持っている竜操者もいる。
 彼らもまた、一名に絞らされているという。

「厳しい措置だけど、その方がいいのかな」

「いまの制度ができてからもう長い年月が経っているからね。パトロン制度も形骸化しつつあったんで、いい機会だね」

 パトロンの意向が竜操者の行動を左右する現状、形だけの支援者は竜国にとって良くないらしい。

「アークはどうなんだ? もう一人に絞ったのか?」
「実はまだ決めかねているところなんだ。俺よりキミの方が大変なんじゃないかい?」

「そうだね。今まで真剣に考えて来なかったから、そろそろちゃんとしたいとは思っているんだ」

「顔合わせ会はまだあと一回ある。お互い後悔しないように、じっくりと考えようじゃないか」

 アークはそう言って、待ち人のところへ向かった。


「……後悔か」


 自分のことながら、どうにも真剣になれない自分がいる。いまだ僕自身、竜操者が他人事のように思えるからだろうか。

 真剣に考えられない……僕には一体なにが足らないのか。

「どう? 楽しんでいるかしら」
 考えに没頭していたら、ロザーナさんがやってきた。
 くじに当たったようだ。

「久しぶりですね。お元気そうでなによりです」

「あら、分かるかしら?」
「ええ、それはもう」

 ロザーナさんの肌ツヤが良い……だけでなく、初めて会ったときのような小悪魔的な笑みが浮かんでいる。
 前回の顔合わせ会のときとは大違いだ。

「結婚の話が流れたのよ。しばらくは大丈夫そうね」
「そうなんですか?」

「中止でも延期でもなくて、音信不通が一番近いかしら。……本当はもう学校にいない頃だったのにね。分からないものだわ」

 結婚相手は竜国に来るとすぐに商国に戻ってしまったらしい。
 本人の代理人から延期とだけ知らされたという。
 肩透かしを食ったとロザーナさんは笑った。

「どうしたんでしょうね」
「不正が見つかりそうなので、ほとぼりを冷ますって……リンダさんが言っていたわ」

 ということは、竜国の警邏部が動いたのか。
 だとしたら調査した甲斐があったというものだ。

「じゃあ、このまま結婚はなしに?」

「どうかしら。今のままが一番困るのだけど、私個人で言えば、卒業できるようになって嬉しいわ。ただ、船がないのよねえ。地元では食糧と日用品の値上がりがひどいことになっているみたい」

 必要物資が昨年の倍くらいになったらしく、町の住民の生活水準は決して高くないため、すぐにでも対策を講じないとまずいらしい。

「でもね、リンダさんが動いてくれているのよ。ビックリだわ」

 リンダの父親の会社は、北方から木材を仕入れている。

 丸太を運べる自前の船も持っており、往路は木材を積み込み、復路で食糧や日用品を運べるよう、いま調整作業中なのだそうな。

「へえ、リンダがですか」
 ちょっと意外だ。

「片道は空荷だからって言っているけど、毎回船上の掃除と入れ替えをしなければいけないので、大変よね。でも第一便が届けば物価高も緩和されるし、しばらくは好意に甘えようかと思っているのよ」

「それは良かったですね。リンダも儲かってウハウハくらい言ってそうですが」
「かもしれないわ。露悪ろあく的なことを言うタイプだし。でも真っ直ぐなのよね」

「リンダの場合、それが悪い方に働くことも多いですし、本人の性格が商売には向くのかどうなのか、謎ですね」

「そんなことないわよ。変に理想的な人より、よっぽど現実が見えているわ」

 何かと衝突が多かったと思うのだが、リンダとロザーナさんの仲は悪くないらしい。
 なぜだろうか。

「そういえば、アンさんはどうしたのかしら?」
「つい最近まで技国に戻っていたので、くじ引きには間に合わなかったらしいですよ」

「あら、それはついていないわね。……ということは、今日は私が独占できるということね」
 ロザーナさんの目がキラーンと光った。

「……延期になったとはいえ、結婚されるんじゃないんですか?」
「それはそれ。これはこれでしょ?」

 ロザーナさんはウインクした。いい笑顔だ。

「お手柔らかにお願いしますね」
 僕はそう言うしかなかった。

「お姉さんに任せなさい」
 なんとなくロザーナさんが偉そうだ。

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