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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第2章 技国内乱編

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 駆動歩兵の剣が僕を斬り裂いた。
「……っあぶなかった!」

 斬り裂かれたのは服までだ。ギリギリ躱せたらしい。
 黒衣の前部が裂けただけで、他に影響はない。

 もう少し深く踏み込まれていたら、致命傷になるところだった。

 急いで体勢を立て直し、目の前の敵を無力化する。これでいい。
 近くで逃げ腰になっていた二体も同じく無力化した。

 残りの駆動歩兵は七体。明らかに怯んでいる。

 わずかな時間で半分以下に減らされたのだ。
 そして後続はない。

 こちらは僕を入れて四人。いや、一人と三体か。
 もう充分勝てる数だ。

 僕が前へ進むと、逃げるか戦うか躊躇ちゅうちょした一体がいる。そいつを狙って倒す。
 残りは六体。全員が僕に注目している間に、アンさんたちが敵に襲いかかる。

 剣が打ち合わされるも、士気が違う。
 一体、また一体と敵が減っていく。

 どうやら大勢は決したようだ。
 最後の一体を倒し終えた僕は、ようやく一息ついた。

 これで大丈夫だ。
 砦に残った父さんはどうしているだろう。
 父さんのことだから心配ないとは思うが、早く様子を見に行きたい。

 そんなことを考えて駆け出そうとしたら、アンさんが呼び止めた。

「待って!!」
 それは悲痛な叫びのように、僕の耳を打った。

「レオンくん? レオンくんなんでしょ?」

 驚いたことにアンさんは僕の名前を呼んだ。
 バレた? どうして?

 いや、それはない。覆面で顔を隠しているのだ。
 背格好が似ているとか、声を聞かれたかだろう。

 さっき思わず喋ってしまったからな。
 ここは無視だ。あとでいくらでも誤魔化せる。

 僕は何のことか分からないフリをして、駈け出した。
 砦には父さんがいる。

               ○

 僕が砦に着いたとき、戦闘は終わっていた。
 といっても、砦が陥落したわけではない。

 敵が撤退したのだ。

「父さんは?」

 僕は父さんを探した。
 砦の外では駆動歩兵に混じって、兵が生き残った者たちを手当て、回収している。

 父さんはどこだろう?
 探したが姿がみえない。

 ふと目をやると、ひときわ敵兵の死骸が積み上がっているところで何かが動いた。

 慌てて行ってみる。
 するとそこには……父さんが横たわっていた。

「父さんっ!!」

「しぃー!」
「えっ?」

「頭を下げろ。こっちこい!」
「どうしたの?」

「ちょっとやり過ぎた。だから隠れているんだ。おまえもそんな目立つところにいないで寝てろ」

「ええっ?」
 無理やり引きずり込まれた。

「どうしたの、父さん」
「敵の総攻撃があったと言っただろ」
「うん」

「敵は駆動歩兵を前に出してきて、一気に砦を落としにきた」

 なるほど。いかに強固な守りでも、何百という駆動歩兵にかかれば、それほど時間もかからずに落とせる。

「それでどうしたの?」
「砦から駆動歩兵が出てきたんだよ」

「駆動歩兵には駆動歩兵をぶつける。常識だよね。……でも、数が少ないでしょ」
 アンさんの部隊が出て行ってしまったから、かなり減ったのではなかろうか。

「ああ。だからそっちを手助けしようとしてな」

 父さんは『無色の盾』を駆動歩兵の足元に次々と展開して、バランスを崩させたらしい。
 はっきり言って駆動歩兵の足は壊れやすい。

 それでも戦闘に耐えるようにできているのだから、少々転んだところではなんともない。
 だが、全力疾走しているところで転べばどうだろうか。

 しかも後続が次々とやってくる。

「大惨事になったんじゃない?」
「連鎖して転んでいたな。敵は大混乱だ」

 そこに味方の駆動歩兵が追いついて、止めを刺したらしい。
 父さんはそれで味をしめたのか、起き上がってくる駆動歩兵を次々と転ばせ、押さえつけ、味方の前に転がした。

 より驚いたのはどちらだろうか。
 なにもない所で転ばされた方なのか、それとも目の前に無防備に敵が転がってきた方なのか。

「あとはまあ、お決まりだな。首をこう、クイッと」

 父さんの出す『無色の盾』は移動できないものと、任意で動かせるものがある。
 移動できないタイプの盾は、一度出すと消すまでその場に存在し続ける。

 駆動歩兵どころか、竜の突進すら阻んでしまう。最強の盾だ。

 一方、移動できる盾は、強度こそ劣るものの、任意の方向に動かせるため、盾をそのまま攻撃の手段として使うこともできる。

 父さんが一番多く使う手法は、盾を敵の顔面に展開させ、そのまま首が後ろに折れるように動かすことだ。

 駆動歩兵の場合、頭の位置は外装と同じなので、首を狙うことが可能だろう。
 こうして次々と敵を狩っていったらしい。

「もしかしてやり過ぎたっていうのは?」
「駆動歩兵は全滅させた。そういう指令だったしな」
「敵の総攻撃だったんだよね、これ」

 どこからともなく現れた黒衣の男が次々と敵の駆動歩兵をやっつけていく。
 そりゃ、戦闘が終われば隠れるわけだ。戦場で大注目だっただろう。

「もうちょっと考えてよ、父さん。身バレしたら困るでしょう」

 女王陛下は、あくまで竜国が関わっていないという感じで進めたいと言っていた。
 戦うことが前提なので、完全に隠しおおせることはできないため、言質を与えたり、証拠を残したりしないレベルでの話だろうが。

「まあな。それよりお前、服が斬られているぞ」
「うん。なんとか避けたから、黒衣一枚ですんだよ」

「ペンダントが出ているぞ。アジオライトか。それはしまっとけ」
「えっ?」

 胸元に手をやると、ほのかに光るペンダントが顔を覗かせていた。
「どうした?」
「……………………」

 僕はペンダントを握って絶句してしまった。
 父さんがなにやら問いかけてくるが、少しも耳には入らなかった。

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