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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第2章 技国内乱編

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 砦に着いた。決戦の地だ。
 見上げるように高い塀があるが、僕と父さんには意味がない。

 さてどうしよう。周囲は闇に包まれているので、侵入は容易い。
 アンさんがこの中にいるから、不用意にうろつきたくないのだけど。

「今から周囲を探る」
 父さんはブレなかった。休むという発想がない。

「いいけど、町まで行くの?」
「いや、周囲の地形を確認する」

 なるほど、それはたしかに夜がいいかもしれない。

「僕も一緒にいった方がいい?」
「オレはこの道の左側を探る。おまえは反対側だ。余裕があれば、明日は逆にする」
「了解」

 合理的だと思う。けど、父さんは慣れているな。
 僕は町中で屋敷に忍びこむことが多かったから、野外での活動はいまいち自信がない。

「敵を見つけても交戦するんじゃないぞ。分かっているな」

「一人、二人倒しても警戒されるだけだしね」
「そういうことだ」

 すぐに父さんの気配が消えた。相変わらず素早い。
 僕は道の右側を見る。

「低木以外は……とくに特徴はないかな」

 敵が出てくるはずはないので、本当に地形の確認だけになりそうだ。
 「それじゃあ、周囲の地形を見てくるか」

 僕は闇に溶けた。



 闇に溶けたまましばらく進むと、林にぶつかった。それほど大きくない。
 そこを抜けると川が流れていた。川は町の方まで続いている。

「渡河できそうだけど、この先は止めておくか」

 あまり砦から離れても意味は無い。
 川に向かって左手側に、アルフィの町がある。

 町に敵が駐屯しているはずだが、ここからでは分からない。
 林の周囲、そして砦付近をひととおり探索してから僕は戻った。

 父さんと合流して情報交換をする。

「大軍を隠すような場所はなかったな」
「こっちもないね。林はあったけど、かなり距離が離れているので、そこから砦に近づいたら分かると思う」

「こっちもだ。さすがに良い場所に作る。攻めてくる軍がいたら、すぐに発見できるな、これは」

 ここを抜かれると都市まで何もないので、考えた末にこの場所に砦を建てたのだろう。

「砦の中に入る?」
「そうだな。中も様子も見ておこう」

 砦と言っても、小さな城くらいの規模がある。
 中庭は広くとってあり、天幕が張られて、兵が休んでいる。

 建物の中も兵でいっぱいなのだろう。
 竜国の場合は竜舎が必要だが、技国にはそれがない。
 かわりに駆動歩兵が置いてある。

 ざっと数えたところ、駆動歩兵は百八十機もあった。

「ここだけ異様に警備が厳しいな」

 駆動歩兵を守るかのように、多数の兵が見張りに立っている。

 中庭を抜けて、建物の中にはいる。ここにも不寝番の兵がいる。
 さすがに最前線のことはある。見張りで気を抜いている者はいない。

 一階から順に見ていく。
 兵に混じって軍服の違う者がいる。駆動歩兵乗りだ。若い者が多い。

 二階は倉庫が多い。武器や食糧などが積み上げられている。
 三階には魔道結界が張られていた。許可された人以外入れないのだろう。

 影を移動すれば引っかかることはないが、これ以上探索する意味もないので、ここらで止めておく。

 砦の外壁に沿ってのぼり、一番見晴らしのよい塔のてっぺんに来た。

「ここからだと景色がよく見えるな」

 はるか道の先に町の灯火が見える。
 あそこでも歩哨が立っているのだろう。

「さて、戦いはどうなっているのかな」
 明日になれば分かるだろうか。序列一位の大山猫の軍隊。
 不謹慎だけど、ちょっと楽しみだ。

 一番高い建物の屋根をわざわざ覗く者はいないと思う。
 僕は屋根に背中をあずけて就寝した。



 翌朝、下が騒がしいので覗いてみる。

「敵が攻めて来ているのか。あれは、歩兵だな」

 二百人くらいの集団が三つ、砦の近くから矢を射かけていた。
 小一時間ほど矢を射かけると、撤退していった。

 迎撃する兵たちの会話を盗み聞くと、昨日も同じだったらしい。

 攻め落とそうという気概が感じられないと話している。
 この戦いの落とし所を狙っていて、裏で和平の使者でも用意しているのだろうか。

「アルフィの町にいる駆動歩兵の数は、およそ三百。ちょっと多いな」
 父さんはアルフィの町に偵察してきたようだ。

「こっちは百八十機だけど、砦の防御力があるから、トントンくらい?」

「駆動歩兵どうしの戦い方を見ていないからなんとも言えないが、数が揃っているなら、塀の内側にこもっても意味なさそうだが」

 駆動歩兵ならば、塀ごと壊してしまいそうだ。
 急なことだったので、砦の外に塹壕ざんごうを掘る時間がなかったのだろう。
 あればまた違った展開になったはずだが。

「駆動歩兵が三百機か。大山猫の氏族としても、出せるほぼ全軍だろうね」

 竜国が牽制している手前、ある程度の戦力は本国に残っているだろう。
 兎の氏族が保有する駆動歩兵を見れば分かるが、三百という数はギリギリだせる限界かもしれない。

「その三百をどう使ってくるか。動いているのはまだみたことないからな」
 父さんが不敵に笑う。戦いを想像しているのだ。

 実際、僕は駆動歩兵を使った運用を一度見ているが、竜国のほとんどの軍人が、詳細を知らないだろう。
 あとで詳細な報告書を提出しなければいけないのだろうか。
 なんとなくだが、それを求められそうな気がする。

 その日も矢を射かけただけで敵は撤退した。
 決戦は明日以降に持ち越されるみたいだ。


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