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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第2章 技国内乱編

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 父さんが言うには、商国の五会頭は欲がない分苦手なのだそうな。
 やりにくいとも。

「そういえば、竜国以外にいる竜の数を知っているか?」

 竜紋が現れれば必ず竜を得る。たとえそれを拒否したとしても竜が勝手にやってくる。
 過去、竜紋が現れて竜を得なかった者はいないと言われている。

「商国が一番多いって聞いたことがあるけど」
 それ以外は知らない。

「そうだ。商国には二十人の竜操者と、それに従う二十騎の竜がいる。魔国は七で技国が三。技国が少ないのは、過去の内乱で竜操者が殺されたからだ」

 数十年前に起きた技国の内乱で、多くの死傷者が出たのは聞いたことがある。
 敵対する氏族に仕えている竜操者など、真っ先に狙われたことだろう。

「商国が多いのはなんで?」
 先ほどの話を聞いていると、なんとなく分かるが。

「金で呼び寄せたんだな。パトロンの商人ごと高給で引っ張ってきた場合が多い。貴族がパトロンになっても同様だ。と言っても、竜国との関係もちゃんと考えているぞ。そうやって竜を得ても、莫大な利益を竜国にもたらして、良好な関係を維持している」

 五会頭専属にそれぞれ竜操者がいるらしい。欲がないとはいえ、商国の運営に必要なそれらは手に入れる必要があるようだ。

「二十は多いね」
 他国と比べてだが。

「引き抜きの額が違うからな。資本があるとこは強いし、正攻法でパトロンになった者もいる。そういうのを考えれば、二十人の竜操者を確保したのも当然だろう」

「だったら、そういうのを規制すればいいんじゃない? 自国民以外、禁止するとか」

「百年以上昔の話だが、竜操者が減ったときにそれを実施した。結果、他国へ亡命する竜操者が続出して、結局戦力がガタ落ちになったんだよ。今でもそれは教訓として残っているはずだ」

 そういえば、アークがそんなことを言っていたっけ。
 竜操者の暗黒時代だっけか。

 いまは王立学校の独占状態だが、名目上パトロンの規制はしていない。
 軍事力と密接に結びつく竜操者なのにかなり緩やかな印象だと思ったけど、そういう理由があったのか。

「こうしてみると、いまの竜国はうまくいっている感じだね」

 小さな問題はあるが、それを含めても他国よりもいろいろ恵まれている。

「そう思うのならば、この平穏が続くよう頑張らねばな。表も裏もきな臭くなってきているぞ」

 つまり〈右手〉の仕事だけでなく、竜操者としても頑張れと言いたいらしい。
 できればパン屋の方で頑張りたいのだが。

「それで今日はどうするの?」
 森の中は、鳥のさえずりがいたるところから聞こえてくる。

「いまから森の奥まで行く。兵の存在、人の踏み入れた跡、なんでもいい違和感を探せ。手分けして探して、夕方にこの場所で集合だ」

「分かった。父さんはどっちに行く?」
 父さんが右手側に向かったので、僕は別の方角へ向かった。

 森の中はまったく手入れがされておらず、倒木や苔むした木が散在している。
 幸い、空が見えないほど葉が生い繁っているため、闇に溶けて進むことができる。

 朝もやがまだ残っているからか、遠くを見通すことができない。
「むかし姉さんに読んでもらった本にこんなのがあったな」

 枝拾いに来た少女は、深い森を歩くうちに迷子になり、森の中で大きなお城を見つけた。

 森の中にポッカリと空いた空間にあったお城に入り込むと、豪華な天蓋付きのベッドがひとつ。
 森歩きで疲れた少女はそこで横になり、目が覚めると二百年経っていたという。

『二百年の眠り姫』の童話だ。
 目を覚ました少女は森を出ると知っている人はみな故人。
 だれも少女のことを覚えている人はいなかった。

 そしてあれだけ大きかった森は、開発で小さくなっていたという。
 少女は森のどこにいたのか。そしてお城は?
 子供心に不思議に思ったものだ。

「戻ったら何百年も経っていたってことはないよな」
 ちょっとだけ不安になる。

 あらためて周囲を見る。
 柔らかな土はそのままだ。人が歩いた気配はない。
 苔が綺麗に生えている。ここも踏み荒らされた気配はない。

「ここは関係ないな。他に行こう」

 夕方に戻るまで、森の中をジグザグに進んだ。
 分かったのは、人影はおろか最近踏み入れた形跡すらないことだった。

「空から見た竜操者が見間違えたとか?」
 収穫はなかった。いや、父さん風に言えば、敵兵がいないことが分かったとなる。



 昨日の岩場で父さんと合流した。
 父さんの方はどうだっただろうか。

「進軍調査に失敗した感じだな」

 すでに兵の姿はなし。ただし痕跡はあったという。
 見つけたのか。さすが父さんだ。

「軍が通れるか試しに入ってみた感じ?」
「平坦な場所を探しながら進んだが、途中でどうにもならなくなり、撤収したような跡があった」

「撤収かぁ。氏族長が無理だって言っただけのことはあるわけだね」
「足元があまりに悪い。進めそうな道が見つからなかったようだが、それも当然だな」

 足元が陥没している箇所がかなり頻繁にあって、普通に山歩きするつもりでいるとえらい事になる。
 そのくらいこの森の中は歩きづらい。

「だったら安心だね」
「少なくとも一日や二日で森を抜けられることはないな。今回の戦いには間に合わないだろう」

 それを聞いて安心した。これで砦での戦闘に専念できる。

 僕らは周囲の後始末をしてから、砦に向かった。
 到着は夜になるだろう。

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