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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第2章 技国内乱編

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 ディオン氏族長はそうとうおかんむりだ。
 彼は兎の氏族領内で神に等しい権力を持っている。

 それがいきなりやってきた見知らぬ者に拘束され、捨て置かれたのだ。
 しかもいまは内乱中である。暗殺の危険もある。
 警戒だって当然していたはずだ。そこへこの仕打ち。

 これでニコニコできたら、人格者を通り越して精神を疑う。

「すみませんでした」
 なので僕は平謝りした。
 頭を下げて許されることではないが、敵対する意思がないことをまず伝えたかった。

「いきなりで驚いたが、この前来た〈影〉と……その父親?」
 ディオン氏族長は胡乱うろんな目で父さんを見た。

 僕らは両方とも黒衣に覆面だしな。いろいろと怪しい。
 警備兵を呼ばれても文句言える状態じゃない。

「ええっと、僕の父です」
「だが先ほどの魔道……あれは、いや、そうか。おぬしが『インビジブル・ガード』か?」

 おっ、父さん、もしかしたら有名人?
 裏の世界だとそれなりに知名度があるのは知っていたけど。

「懐かしい名を聞いたな。お初にお目にかかる。オレのことは好きに呼んでいい」

 うーん。相変わらずの父さんだ。女王陛下以外には不遜な態度なんだよな。

「最近は『死神』と呼ばれているみたいです」
 一応フォローしておいた。

「そうか『死神』か。『インビジブル・ガード』といえば、魔国の歴史ある暗殺者集団『サイレント』をたったひとりで壊滅させた伝説の暗殺者であったな」

 ん? サイレント? 壊滅? なにそれ。

「あれが残っているとあるじが困るのでな」
「魔国の暗殺者集団が竜国の王女を狙ったという噂は本当だったのか。あの組織は必要悪じゃった。わしも重宝したものよ」

 サイレントってもしかして、昔父さんが属していた暗殺者集団か?
 自分で殺しに行って恋に落ちちゃって、古巣を全滅させたんだよな。
 ということは、全滅させられちゃった古巣の方か。

 なんというか、我が父ながらフリーダムな人生だな。
 平々凡々な僕からしたら、波乱万丈すぎだよ、父さん。

 それでも竜国に住むことができたから、結果的に良かったのかな。
 というか、話が進まないな。

「それでですね、ディオン氏族長。僕ら親子だけですが、この内乱を陰ながらお手伝いしたいと思って参上しました」

「ほう。とすると、大山猫の氏族の兵を相手にすると?」
「はい。僕らが相手にするのは駆動歩兵ですね。多少ですが戦力になるかと」

「ふむ……狙いは駆動歩兵の戦力確認かのう。じゃが、押されている現状、願ってもないことじゃ」

 押されているのか。
 女王陛下も言っていたけど、大山猫の氏族の方が優勢なんだな。

「僕らは密かに赴きたいと思いますので、共闘はできません。その代わり駆動歩兵の一番多いところへ向かおうと思います」

「大した自信だな。……いや、『死神』がおれば、それも可能か。では、今日までの情報を伝えよう」

 ディオン氏族長は都市周辺の地図を取り出した。
 すでに多くの書き込みがなされている。

「少し古い情報だが、アルフィの町に敵が迫っておった。住民には敵が来たら抵抗しないよう伝えてある。兵を一切置かねば、無体なことはしないからの」

「古い……とすると今頃は、アルフィの町に敵が入っているわけですか」
「そうなっておるじゃろうな。ここから進軍すればすぐに砦じゃ。おそらく砦が決戦の地になるじゃろう」

 砦を抜けた先は、本拠地まで開けた平原になっている。
 向かって右手に森、左手は山がある。

 たしかに大軍を迎え撃つには、砦の方がいいだろう。
 だが、ひとつ気にかかることがあった。

「我が国の飛竜が、ここの森に兵の姿を多数確認したようですが、なにか展開させていたりしますか?」
 僕が指した場所を見て、ディオン氏族長は首を横に振った。

「兵は配置しておらん。そもそも、ここを抜けるには、難所をいくつか超えねばならん。大軍での移動は不可能であるし、駆動歩兵は木々が邪魔をして進めんじゃろ」

 駆動歩兵の場合、途中でメンテナンスを入れないと、到着するだけになってしまうほど深い森だという。もちろん森の中なので馬車で運ぶわけにもいかない。

「多数の兵をここから進軍させた場合、どうなりますか?」

「敵の姿が見えれば、城門はすぐに閉じられる。城門の内外には多くの兵がいるので、守りは万全じゃ」

 自領の周囲ことだ。よく分かっているだろう。
 だがそうすると、飛竜が空から見た兵の姿は一体何だったんだ?

「そうそう。砦には孫娘が詰めておる」
「アンネロッタ様がですか? 危険ではないですか」

「あやつも氏族の一員。しかも、駆動歩兵隊を率いる身じゃ。自身が戦うだけでなく兵を率いる技術も身につけておる」

「そうは言っても……」
 あの性格だぞ。大丈夫なのか?
 僕はおっとりとしたアンさんしか見たことないけど。

「ここはモーリスに任せたのでな」
 モーリスは、アンさんの兄だ。

 結婚が決まっているから本拠地に温存した……わけではないだろう。
 どちらかが攻められてもいいように氏族を分散させたと考えた方がいいかな。

「では僕らは砦の防衛にこっそり混じって戦うことにします」

 敵の本隊がアルフィの町にいるのならば、そこを急襲してもいいが、疑心暗鬼になった敵兵が町の住民を手にかける事もありえる。

 どうせ倒すのならば、出てきたところを狙っても問題ないはずだ。
 僕は二度目。少なくとも月魔獣とは違い、倒せるのだから気が楽だ。

 それに父さんの方は……負けるビジョンがまったく出てこない。
 ある意味すごいな、この人は。

 その後、ディオン氏族長といくつかの情報を交換したあと、僕と父さんはその場を後にした。

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