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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第2章 技国内乱編

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 飛竜での長旅は退屈だ。

 以前は興奮して地上を眺めたり、空を見たりして楽しんだものだが、三回目になるともう見るものもない。

 時間が有り余るので、僕は駆動歩兵について考えることにした。

「公表されている内容がどこまで正しいかだよな」

 そろそろ内乱も終盤らしい。駆動歩兵が出てくる戦いになるという。
 僕はできるだけ駆動歩兵の生の情報を集め、同時にその数を減らす指令を受けている。

 公称では、連続稼働時間は五時間となっている。
 この五時間が軍用駆動歩兵の限界らしい。

 それ以上になると冷却が必要となり、およそ半日は使えなくなる。

 全力疾走すると時速二十キロメートル。
 これは意外に速い。

 人の全力疾走よりも遅いので、追われても逃げきれる。
 だが駆動歩兵は疲れない。その速度でどこまでも追いかけてくるのである。

 人のほうが最後には息切れしてしまう。
 それが人と駆動歩兵が戦った場合の怖いところだ。

「戦場だと鎧を着ているしな」

 丸腰で駆動歩兵と相対するのは愚かなことだ。
 少しでも生存確率をあげるために、重装備になる。
 そうなれば、走ることはできなくなる。

 やはり、人は駆動歩兵と戦っていけないと分かる。

 そして最初の問題。
 公表されている連続稼働時間や、移動速度が正しいか分からない。

 能力を隠し、半分以下の数値しか出していないことも充分考えられる。

「それをこの目で確かめないとな」
 アンさんのことも含めて、やることは多い。

 そんなことをつらつらと考えているうちに、ソールの町付近に来た。
 見たことがある地形が眼下に広がっている。

「指定の場所が近づいたので、そろそろ降下します」

 操縦している竜操者の人が竜に合図を送った。
 飛竜がゆっくりと高度を下げる。

 父さんが地上で待っているならば……。

「このままの高度で大丈夫です」
「えっ?」
「進んでください」

「で、ですが、そろそろ集合地点ですけど?」
 竜操者がふり向いた。

 父さんならば、空中にいる僕らのもとにやって来る。
 そう思っていると、僕と竜操者の間に気配が生まれた。

「行っていいぞ」

 飛翔中の飛竜に、父さんが飛び乗ったのだ。
「へあっ? は、はい!」

 竜操者が慌てて飛竜に合図を送る。
 飛竜が鎌首をもちあげて、また高度が上がる。

 やはりだ。
 父さんの魔道『無色の盾』は、身体からある程度離れたところに自在に作れる。

 空中に足場となる透明な盾を複数作り、ここまで来たのだろう。
 ここは地上百メートルくらいか。
 竜操者の人は、しきりに首をひねっている。

 ちなみにこの盾は僕も見ることができない。
 魔道を使っているので、なんとなくここにあると分かるが、戦闘で激しく動いている時にはよく見逃す。

 父さんとの模擬戦で使われると、まったく歯がたたなくなる。
 逃げた先に『無色の盾』を展開されてよくぶつかる。

 これがまた痛い。
 苦痛に呻いているところに複数の盾で固められるのだ。

 飛竜といえども、父さんの作り出す盾にぶつかれば、ただでは済まない。
 気絶して急降下するかもしれない。
 そのくらい強力だ。

 父さんの怖いところは、これだけ強力な魔道にもかかわらず、それを足止め程度にしか使わないところだ。

 最強の魔道をただの便利な技くらいにしか思ってないのだろう。
 魔道に頼りきりの僕は、いつか勝てるようになるだろうか。

 ほんとうに父さんは、化物だと思う。

 結局、一度も地上におりることなく商国を抜けて、技国に入った。

「私は連絡要員として兎の氏族の本拠地に残りますので」

 竜操者の人は、一旦要塞都市の外におりて、正式な手続きを取った上で入るらしい。
 竜国から王族を乗せて来るならば別だが、通常は手続きをしないと、空からでも中に入れない。

 もちろん僕と父さんは、正式な手続きはしない。裏口からだ。

 なので僕らを送ってくれた竜操者とは、ここでお別れとなる。
 また帰りにお願いすることになるだろう。

 いまは夕方から夜になる時間帯。
 忍びこむにはちょうどいい。

 というのも、商国を抜けて技国に入ってから、時間調整を兼ねて仮眠を取ったのだ。
 竜はよくても、人は休憩を必要とする。

 そうしないと、ずっと操縦し続ける竜操者の人が参ってしまう。

「父さん。中に行く?」
 ここは本拠地の外。
 要塞都市の塀に隠れた一角である。

 いまだ戦乱の兆しは見えない。
 そろそろ城門が閉まるのか、道行く人が急いでいる。

「おまえは影で移動しろ。オレは適当に潜入する」
 適当に潜入できるんだ。

「どこで待ち合わせをする?」
「そうだな。氏族長の部屋でどうだ?」

「そこ、待ち合わせ場所じゃないから!」
「手間が省けていいだろ」

「いいのかな」
「どうせそこに行くんだ」

 結局どこで待ち合わせをしても、最終的にはそこに行き着くのだから、同じか。

「分かった。じゃ、氏族長の部屋で」
「遅れるなよ」
「僕は二回目だし、大丈夫」



 大丈夫じゃなかった。
 僕が着いたときにはもう、父さんがいた。

 氏族長を盾で押さえつけて……。

「遅かったな」
「父さんが早いんだよ!」

 絶対に僕は遅くなかった。
 断言できる。
 父さんが異常に早いんだ。

 まあ、屋根の上を走らせたら僕より早いし、障害物も空中に盾を作って回避できるしな。
 あと、僕に魔道結界の感知方法を教えたくらいだし、いろいろ敵わない。
 僕のほうが遅れるわけだ。

 いや、そんなことよりも。

「それ……マズくない?」
 父さんが魔道『無色の盾』で、氏族長を縛り付けているんだけど。

 氏族長の周囲に不可視の盾を複数展開しているのだと思う。

「おまえが来てから説明しようと思ったのでな。だが、遅かったからどうしようかと思っていた」
「僕はそんなに遅れてないよ!」

 父さん基準で考えないでほしい。

「とりあえず、拘束を解こうよ。このままじゃ始まらないし」

 まずはそこからだ。
 父さんは「そうだな」と言って、盾を解除した。

 急に動けるようになった氏族長は、恨みがましい目で僕を睨んだ。
 えっ、僕が悪いの?

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