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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第2章 技国内乱編

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 スルヌフの拠点探索だが、悪事の証拠は順調に集まっている。

 拠点は三階建で、一階は倉庫、二階は従業員が使用している。

「問題は三階なんだけど……開けられない箱類が気になるんだよな」

 三階は部屋が広く取ってあり、スルヌフの私室と応接室のみである。

 王都にある拠点だからか、やたらと警戒が厳重になっているが、今のところ感知結界に引っかかったことはない。
 思えばソールの町にいた頃と比べて、随分と実力がついた気がする。

「はっきり分かるほど経験を積んだわけじゃないのに……いや、積んだか」

〈左手〉のみなさんがやたら協力的だったり、技国での潜入経験がずいぶんと役に立っている。

 三階の応接室は、ほぼ探索し終えている。
 残っているのは、スルヌフの私室にある大きな木箱だけだ。

 木箱の封が厳重過ぎて、開けられないのである。数人が入れそうな木箱が三つもあるのだ。とても怪しい。
 大きさからいって、中に入っているのは書類ではなさそうだ。気になる。

 魔道結界は解除できるが、そうすると気づかれてしまう。
 しかも魔道結界を解除したところで、大きな錠前もついている。
 鉄製の大きな錠前だ。鍵がなければ開けることはできない。

「木箱の下にも何かあるよな。振動を感知するやつかな」

 技国で見た仕掛けに似ている。動かすとヤバそうなので、触っていない。
 魔道の技が役に立たない仕掛けの場合、どうすることもできないのだ。

「さて困ったな」

 ここ二日間ほど、この木箱の攻略で手間取っている。

 すでにいくつかの不正資料を見つけて転記している。
 普段確認しないような古い資料に関しては、こっそりと持ちだしてしまった。

 いずれバレるだろうが、スルヌフ本人が戻ってくるまでは大丈夫だろう。
 いまあるものだけで追い詰めるのは可能だが、どうしても木箱が気になってしまう。

「数は三つか。こんな大きな木箱に何を入れているのか」

 ダメ元で手早く解除してみるか?
 魔道を解除して錠前を破壊……すぐに中を確認。

 人がやって来る前に脱出すれば、捕まることもない。
 ただし、潜入がバレてしまうけれども。

 木箱はきっちりと閉じられていて、闇が繋がっていない。
 僕の魔道じゃお手上げなのだ。

「……よし、破壊するか」

 これをこのままにしておくのはものすごく嫌な予感がする。
 どうせバレるならば『闇鉤爪』で破壊して中の物を失敬してしまおう。

 僕が『闇鉤爪』の準備に入ったとき、ほんのわずかな気配が背後に生まれた。

「……ッ!!」

 刹那、僕は背後に『闇鉤爪』を放った。
 轟音を立てて部屋の壁が吹っ飛ぶ。その前に黒い何かが横に飛んだ。

「敵!?」

 人だった。いつの間に!? だが考えるのは後でもいい。
 僕は油断なく周囲に目を走らせると、異様な男が天井付近に張り付いていた。

 上半身裸で、体中に気味の悪い文様もんようが彫ってある。

呪国じゅこく人かっ!」

 痩せこけた顔に爛々(らんらん)と光る目。
 咄嗟に床に身体を投げ出す。

 黒衣に違和感がある。何かがかすめた。

 下から足音がする。増援か?
 ドヤドヤと通路が騒がしい。

 鍵を取り出すカチャカチャという音も聞こえる。
 撤収だな。

 扉が開かれた瞬間、僕は通路に脱出した。

 そのまま廊下をつき走り、階段を下りる途中で闇に溶けた。

「ふう……危なかった」

 潜入で見つかったのは久しぶりだ。
 さすがは『豪商』スルヌフの部下といったところか。というか、僕が気づかなかった。

 魔道結界をすり抜けて来たから、見つかってないはずだった。
 おそらく定期的に巡回しているのだろう。気配を消して見回り中に、たまたま闇から姿を現した僕を見つけた……そんな感じだろうか。

「だけど、扉の鍵は閉まっていたはず」
 どうやって入ってきたのだ?

 記憶を辿って理解した。通路の音がやけに大きく聞こえた。
 天窓が開いていたと思う。

 あの呪国人は壁をのぼり、天窓から音もなく侵入したのか。
 油断したつもりはなかったが、今回は一本取られた。

 それと黒衣に違和感があったが、針が一本刺さっていた。
 含み針だ。何かを感じて避けたときのものだろう。

「世の中には、強者はいるもんだな」
 潜入の実力が上がって浮かれていたようだ。気を引き締めよう。

 もう侵入はできないので、今日までの証拠を義兄さんに渡すことにする。
 あとは依頼を受けた〈右手〉のみなさんが内容を取捨選択して、依頼人――リンダの使いに渡してくれるだろう。

「それと、リンダには釘をささないとな。なににしようかな」

 闇の中を進みながら、どうやってリンダに思い知らせるか、それを考えていた。



 翌朝僕は、実家へ帰郷する旨を学院へ届け出た。
 同じ内容を管理人のコンラントさんにも伝えた。

 すぐに王宮裏の竜舎へ向かう。

「お待ちしておりました」

 黒衣姿の僕に礼をしてくるのは、僕を運んでくれる竜操者の人だ。
 彼は普通の竜操者ではない。

 ちゃんと裏事情を知っていて、いつも女王陛下の〈影〉を運ぶ人らしい。

「よろしくお願いします」
 僕は覆面をとらない。〈影〉はみな、そんなものだ。

 飛竜に乗って王都を出発した。
 予定通りならば、今日の夜中か明け方にはソールの町に着く。

 父さんと一緒の指令は実は初めてだ。
 ちょっとだけドキドキする。

 多くの強者が認めている父さんの実力。それを間近で見られる。
 恐ろしくもあり、また楽しみでもある。

 僕を載せた飛竜は、グングンと高度を上げ、ソールの町を目指して飛んで行く。

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