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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第1章 魔国蠢動編

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「どうせハルイのことだから、いまだにスネているんでしょ?」
「………………」

 すいぶん砕けた感じだが、相手は女王陛下だ。
 問われれば、すぐに答えなければいけない。

 だが父さんについての話。何をどう答えてよいのやら。
 というか、父さんと女王陛下は、どんな関係なんだ?

「えーっと……父は元気でやっております」
 駄目だ! 答えが見つからない。

「聞いていないかしら?」
「はい。まことに、申し訳なく……」

 女王陛下と個人的なアレコレとかか?
 聞いたことがないぞ。

「そう。ならいいわ。……そういえばレオン」
「はっ」

「ここまでどうやって来たのかしら」
 話がコロコロと変わるな。

「寮から城の中庭までは、地下水路を使いました」
「そう。地下水路ね。……一度だけ探査用の魔道にかかったわね」

 住宅街の地下に入ったあたりのことだな。
 やはり、あれがそうだったのだ。
 黙って頷いた。

「どうやって解除したのかしら」
「いえ、解除しておりません。面ではなく線での探知結界でしたので、それを避けてやってきました」

「「「……!?」」」

 なんだろうか。
〈左手〉さんたちの視線が痛い。
 ガンガンにこっちを見てくる。

「ということだけど、どうなの?」
 女王陛下は、周囲に視線を走らせた。

 いまいる〈左手〉の中で一番偉いのだろう。ひとり進み出てきて、女王陛下の前で膝をついた。
「いま確認に向かわせております」

「魔道結界だけど、水路の中にどのくらい設置したのかしら?」
「地下水路は城まで通じているものですから、相当数仕掛けてございます。数はちょっと把握できておりません」

 必要ならば、種類ごとに一覧を作らせると〈左手〉さんは言ったが、女王陛下は興味ないようだった。

「そういえば、探知結界が破られた感触はなかったと言っていたわよね」
「左様でございます。それは間違いございません」

「解除しないで抜けられた……そういうことでいいのかしら」
「……誠に申し訳ありません」

 魔道を設置した人だろうか。平身低頭している。
 この人も黒衣を着ているから〈左手〉のひとりだろう。

「あれは最新型と聞いたけど、万能ではないということかしら」
「いえ、最新型でした。……裏も取れています」
 なるほど、新しく導入した結界の有用さを測りたかったのか。

「元に戻した方がいいかしら?」

「おそれながら、あれは線で探知するもので間違いございません。ちまたにあります面で感知するタイプの結界では、侵入者に違和感を持たせることになります」

「気づかれにくい分、抜け道も残っているということね」

「左様です。ただ面に戻しますと、探知をしようとしていることを相手に気づかれる危険性が高いと愚考します」

「そうね、だからそうならないものを用意したのよね。高かったのだけど、失敗かしらね」
 金銭的なことはよく分からないが、フォローしておくか。
 なんか、〈左手〉のみなさんが女王陛下の言でオロオロしているし。

「あれには私も一度は引っかかりました。初見でかわすのは難しいかと存じます。なかなか厄介な感知魔道かと愚考いたします」

「あら、そうなの。それとレオン」
「はい」
 また話が変わりそうだ。

「あなたに全赦ぜんしゃを与えます。ここに来るまで、面倒だったでしょう。次からは直接来てもいいわ。少しは楽になるわよ」

「へ、陛下、それはあまりに……」
「そうです。我らもそれでは守りが」

 周囲の〈左手〉のみなさんが慌てている。

「大丈夫よ。ハルイの息子だし。……それにレオンが本気になったら、あなたたちで防げないでしょう?」

「いえ、我々が全力で当たれば」
「もちろん何人なんびとたりとも通しはしません」
「必ずお守りいたします」

「気持ちは嬉しいけど、無理だと思うわ。というわけで、これは決定」
 女王陛下がそう言うと、だれもが黙った。

「…………」
 僕はというと、置いてけぼりを食らって、どうすればいいか分かっていない。
 いま気づいたけど、女王陛下ってマイペースだよな。

「レオンはいつでもわらわに会えるよう、みな計らうように。それとレオンには、妾の前で武器の所持、魔道の使用を今より認めます」

「………………」
 全赦って、そういうことか……って、ええええ?
 いいのか? 武器も魔道も可なのか。

〈左手〉のみなさんを見る。
 苦虫を噛み潰した顔をしている。悔しいのかな。
 泣きそうなのもいるからそうなのだろう。

「レオンの腕輪を外してあげて。これじゃ、魔道が使えないでしょ」
 女王陛下が言うと、女官がやってきて僕の腕輪を外す。

「これでもう話すことはないかしら。まあ、いつでも会いに来られるしね」
 女王陛下は手にした扇を叩いた。

 ピシャリと音が響く。
 どうやらそれが終了の合図らしく、周囲が慌ただしく動き出す。

「では私めは、これにて」
「せっかくだから、見せてくれるかしら」

 何をだ? 魔道のことだよな、この流れだと。

「私の『闇渡り』のことでしょうか」
「そう。それを使って帰るのはどうかしら」

「もし許可をいただけるのでしたら」
 楽できるし、その方がいい。

「もちろん。全赦ですもの、いつでも使っていいのよ」
 そういえば、そうだった。

「では遠慮無く……」
 僕の身体は、闇に溶けた。

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