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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第2章 技国内乱編

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「商国の許可は取ったわ」
「……はっ?」

 何のことだ?
 女王陛下の前に出たとたん、そんなことを言われた。

「竜操者の移動許可ね。商国に今回の動きを知らせる代わりに、単騎ならば移動の自由をもらったの」

 なんだ、そういうことか。
 いまごろ走竜と飛竜が、兎の氏族の本拠地と竜国を行き交っているのだろう。

 商国ならばそう判断すると思う。
 あそこは独特な考え方をする国だし。

「いま、両氏族の動きはどうなっているのでしょうか」
 義兄さんは、そろそろ駆動歩兵が投入されそうだと言っていた。

「大山猫の氏族が押しているわね。一点突破を狙って、本拠地までの町を攻略しているわ」

 兎の氏族の領土が描かれた地図があった。
 大山猫の氏族の侵攻ルートは……なるほど、一直線だ。

 余計な町や村には目もくれず、最短ルートで本拠地をめざしている。
「このまま進むと砦にぶつかりますね」
 本拠地の手前に砦が描かれている。

「さすがにここは素通りできないわね」
「そう思います」

 砦には多くの兵や駆動歩兵が詰めているはずだ。
 砦を迂回して本拠地に進軍すれば、後ろから攻められてしまう。

 侵攻ルートは一本線である。補給物資や輸送中の駆動歩兵が襲われれば、たまったものではないだろう。

 大山猫の氏族は砦を絶対に落としにくる。
 兎の氏族はそこで待ち構えればいい。

「そろそろ本格的な激突ね。でも空から見ると、ここの動きが変なのよね」

 女王陛下は、地図で別の一点を指した。
 森が広がっているところだ。

「ここがなにか?」
「兵が動いているのよね」

 報告に戻ってきた飛竜が言うには、周囲を回ったときに多数の人影を発見したという。
 兎の氏族領に住む者ではないと考えたようだ。

「森からの奇襲ですか」

 森は兎の氏族の本拠地近くまで広がっている。
 森を抜けられればたしかに脅威だ。

「でも要塞都市はいくら兵で囲んでも落ちないのよねえ」
 女王陛下は悩んでいる。

「森になにかあるのでしょうか」
「レオン。それを含めて向こうで頑張ってらっしゃい。行けるかしら?」

「でしたら一点だけ」
「何かしら」

「僕はいまとある商人の動向を調べておりまして」
「報告は受けているわ。市井の組織に依頼があったあれかしら」

「はい。もう少しで調査が完了します」
〈右手〉が活動している組織だから連絡が行っていると思っていたが、思った通りだ。

「いいわよ。準備期間もあるから三日あげましょう。その間に終わらせなさい」
「ありがとうございます。かならず終わらせます」

「他はいいのかしら?」

 他と言えば……学院か。
「義兄がおりますので、相談します。父が病に倒れたので一時帰郷……辺りが妥当かと思います」

「それでいいかしらね。一緒にハルイにも行ってもらおうと思ったのだし」
「はい?」

「ハルイも久々に暴れたいわよ、きっと」

 いや、父さんはどうだろう。それほど破壊衝動はなかったと思うが。
 でも父さんのことだから、断らないんだろうな。

「出発は四日後の朝にしましょう。向こうにも伝えられるし、いいかしら?」
「かしこまりました。それまでにすべての準備を整えます」

「明け方に飛竜を用意しておくわ。……ハイこれ」
 女王陛下からシートを渡された。左手の甲に張るやつだ。
 僕はこれを恭しく受け取った。

「好きにやってきなさい」
「かしこまりました。すべては女王陛下のために」

 僕は闇に溶けた。
               ○

 兎の氏族を統括しているディオン氏族長とは面識がある。
 黒衣覆面で会っただけだけど。

 女王陛下は好きにしなさいと言っていた。
 つまり、暗殺者として向かうわけだ。

「やっぱり会うときは黒衣姿だよな」
 僕という正体がバレないように、注意しないといけない。

 寮に戻り、義兄さんを叩き起こそうとしたら起きていた。

「技国に行くのか?」
 すでに事情は把握しているだろう。

「うん。父さんも同行するみたい」
「ハルイさんが? どうしてまた」

「戦力を減らしておきたいと女王陛下が仰った」
 義兄さんは考え込んでいる。

「駆動歩兵と相対して無双できるのはハルイさんくらいだしな」
 納得したようだ。やはり父さんは別格だな。

「そういうわけで、義兄さんはアリバイ作りを頼むね」
「アリバイか。どうするつもりだ?」

「父さんの病気見舞い……でどうかな」
「学院生が急に帰郷するんだ。それが妥当だろうな。任せておけ」

 父さんが急病になったので、僕が見舞いに行くと学院には説明する。

 そのことがリンダに知られると、やや面倒になる。
 事が終わったら「実は……」というように話したい。

 なのであまり知られることがないよう、義兄さんに頼んでおいた。

「リンダから連絡が来るとしたら、花屋のお姉さん経由だから」
「分かった。シルルにも言っておく」

 よし、これで平気だ。
 あとはスルヌフの件を終わらせないとだ。忙しくなるぞ。


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