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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第2章 技国内乱編

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「大山猫の氏族が各国に送った書簡ね」
 女王陛下は、書かれている一文を読み上げた。


 ――技国内の問題故、静観されたし


「なんというか、普通ですね」
 他国の介入を拒むのは別段おかしくない。誰だって嫌だろう。

 ただ、攻め入った側が自国の問題だから介入するなと言うのはどうなのだろう。
 非常に格好悪いと思うのだが。

「続いて、こうも書いてあるわ」

 ――三役の仕置しおきにて決定せり

「仕置きというからには、法に則って決めたということですか?」

「そう。序列一位の首都に加えて、二位と三位の副首都とまでが三役さんやくね。三役は協定を守り、守らせる立場になるの。三役の同意があってはじめてできることは多いのね」

「…………ん?」
 二位と三位は鴎と兎の氏族だから、当事者じゃないか。

「今回の技術供与だけど、大山猫は序列三位から序列二位に対して行われたと主張しているわ。当事者は仕置きの採決から外されるから、実質大山猫の氏族の独断で決めることが可能となったのね」

 なんてこった。
 技術供与とはあれだよな。裏切り者が勝手に持ちだしたやつ。

「大山猫の氏族だけで決めるのはいささか乱暴な話ですね。それに説明すれば、誤解と分かるのではないでしょうか」

「大山猫の氏族に聞き入れるつもりはないのでしょう。おそらく他の氏族には、三役の仕置きを履行するので、手出しした場合は罰則があるくらいは通達しているでしょう」

 裏を知っている僕からすると、大山猫の氏族のやっていることは暴挙だと思う。
 だが、大義名分がある以上、本当のことを知らないと、おかしいなと感じつつ手出しはできないかもしれない。

「それでは今回の侵攻は……」
「仕置きの流れの一環ということかしら」

 どういう流れになっているのか知らないけどと、女王陛下は書簡をしまった。

 なるほど。
 以前アンさんから聞いた話を思い出した。兎の氏族に技術供与というイチャモンをつけてきたときからここまでの流れを想定していたのだろう。

 大山猫の氏族は使者を出す。だがそれは当然受け入れられるはずがない。
 使者をいくら出そうと、それはただの言いがかりなのだから。

 兎の氏族は反発しただろう。いい加減にしろと。
 使者の言い分を飲めるわけがない。

 そこで仕置きを拡大解釈して侵攻だ。
 なにしろ、三役の決定は、実質上大山猫の氏族しか権利がないのだから。

「現状はどうなっているのでしょうか」
「大山猫の歩兵が国境を越えて、近くの町に展開しているそうよ」

「戦端は開かれたのでしょうか?」
「兵のぶつかり合いはあったようね」

 兵のぶつかり合い……つまり内乱だ。
 序列一位と三位の戦いが始まってしまった。

 この戦い。
 大山猫の氏族の方が準備できていた分、有利なんじゃなかろうか。

「この後、どうなると考えますか?」

「そうね……」
 女王陛下はしばし考えを巡らせてから、ふたつの道を示した。

「大山猫の氏族が聞き入れる耳を持たない以上、どちらかが降参するまで武力で決着をつけるのがひとつ。もうひとつは、兎の氏族が度押し返したところで、他の氏族へ仲介を頼む感じかしら。押さえられなければ、兎の氏族はなくなるわね」

 すでに技術供与云々の話ではなくなっている。
 大山猫の氏族が考えている『落とし所』が分からない以上、どうしようもないらしい。

「そんな場所へアンさんが戻っていったんですか」
「本人が望んだもの。それにアンネロッタは優秀な駆動歩兵乗りよ」

「えっ!?」
 意外だった。あのおっとりしたアンさんが駆動歩兵乗り?

 そういえば、ときおり妙に詳しそうだったが、それは技国出身だからかと思っていた。

「氏族の住む本拠地は要塞都市と呼ばれるほど堅牢なつくりでしょ。あれはいつでも戦時体制を意識しているから。もちろん氏族もそうね」

 そういえば氏族長もやたらと強そうだった。その子どもたちも。
 アンさんも氏族長の直系なのだ。駆動歩兵を駆ってもおかしくない……のか?

「でもそうね。ちょうどいいからレオン」
「はい」

「兎の氏族のところに行ってみる?」
「はい?」

「大転移を考えると、技国の軍備は縮小させたいでしょ」
「はい」

「なので、駆動歩兵相手に暴れてきてくれるかしら」
「はいぃ?」

「大丈夫。助っ人をつけるから」
「……」

 詳細が決まったら連絡すると、女王陛下は上機嫌になった。
 いい思いつきだと考えたらしい。

「戦況はまだ動かないから、準備しておいてね」
「……はい」

 どうやら僕が行くのは確定したようだ。
 大転移もあるから、向こうで駆動歩兵を壊して来いと言いたいんだろうな。

 大山猫の氏族は序列一位だ。駆動歩兵も多数所有しているに違いない。
 だが、戦場を走る駆動歩兵を壊せるのか?

 それとアンさんは無事だろうか。心配だ。
 期せずして二回目の技国入りが決まってしまったけど、技国ってこんな物騒だったけか?

 というか最近、僕の出動頻度が上がっているような。
 僕は王都所属ではないのだけど……女王陛下は分かっているのかな。

 首をひねりながら、僕は闇に溶けた。

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