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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第2章 技国内乱編

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 二回生の演習が頻繁にあり、同室のマーティ先輩が戻ってきた。

「おかえりなさい、しばらくぶりですね」
「ただいま。といっても、またすぐ出発するんだけどね」

「そうなんですか? 最近かなり強行軍をしてますよね」

「うん。いまはとにかく演習に出て、いろんなことに慣れるための時期だから、昨年の二回生もほとんど寮にいなかったんじゃないかな」

 昨年のマーティ先輩は二回生を見て、戦々恐々としていたらしい。
 今年その立場になって、大変さが身にしみたようだ。

「どうしてそんなに厳しいんですか?」
「ぼくが思うに、脱落者を出さないためなんだと思う」

「脱落者ですか?」
 厳しくすれば、脱落する人が出るのではないだろうか。

「いまはまだ学院生ということで、最終的な責任は負わされていないんだ。だから多少無理をして失敗しても……いやたとえ逃げ出したとしても、まだ半人前だから許してもらえる。その間にたくさんの経験とともに失敗をしなさいってことなんだと思う」

 マーティ先輩もすでに多くの失敗をしたらしい。
 それを本職の竜操者の人たちがフォローしてくれているのだとか。

「このまま学院を卒業したら、頭が上がらなくなるかな」
 マーティ先輩の笑いは、少しだけ乾いていた。

 僕達一回生は座学の厳しさが増したとはいえ、体力的にキツイことはそれほどない。
 暗記するのに徹夜をすることはあってもだ。

 まだまだ恵まれているなと思いつつ数日を過ごした。
 マーティ先輩はすでに寮にいない。

「今日はリンダに呼ばれているんだっけか」

 服飾屋の中で待ち合わせなので、仮縫いだろう。
 僕は授業が終わった後で、遅れないように寮を出た。

「顔合わせ会の中で重要なのは、今度の三回目と最終回、つまり五回目ね」
「初回じゃないんだ」

「初回の顔合わせ会ではまだ相手は流動的なのよ。決まったと思っても半年後にひっくり返るなんてこともザラだし」
「そんなものなんだ」

「最初にいい出会いが待っていることもあるけど、いい縁というのはどこにでも転がっているものよ。だから、普通はなるべく多くの人と交流をもつの。あなたは避けていたけど」

 うん、避けていた。
 とくに最初の頃は、パン屋の修行が五割、竜操者の勉強が四割で、最後の一割がパトロン探しだったし。いや、探してさえいなかったかも。

「今度の顔合わせ会が三回目だよね。昼と夜の二部構成のやつ」
「そう。一部の人にはお披露目を兼ねているのよ。決まったパートナーがいる人は見れば分かるもの」
「でも成績上位者が招待されるわけでしょ?」

「各学年五百人の中から上位百人ね。選ばれるためには、死に物狂いでやるわよ。そのための長期休みなんだし」

 リンダに聞くと、本当に死に物狂いで試験の準備をするらしい。
 一日二十時間の勉強を三十日間続けてとか。
 さすがに試験が終われば、燃え尽きるらしいが。

「それでもうひとつが最終回なのか。十二月だよね」

「そうよ。この時にまだ決まっていない竜操者が少しはいるのよね。決めかねているとか、途中で決まりかけたけど、よく考えたら条件が合わなかったとか」

「なるほど」
「同じレベルでどっちがいいのか……なんて場合はもう地獄よ。始まる前から静かな戦いが勃発しているんだから」

 ロザーナさんがやらかしたのが、十二月の顔合わせ会だったな。
 あれも竜操者が最後の最後まで意思決定しなかったケースだったか。

「十二月に入ってから喧嘩別れしたパトロン候補がいて、その後釜を狙って大変な争奪戦がおきた例もあるとか」
「うわーっ。聞きたくない。その話」

 修羅場すぎる。

「そういうわけで、最後の五回目が順当に終わるかどうかは直前まで分からないのよね。それを見越して最後にかける人もいるし。とくに三年生はどうせ最後だからとスパートをかけたりするし」

「なるべく近寄らないようにしよう」
 怖すぎる。

「大丈夫よ。あなたの場合は、わたしたちがきっちりガードするから。そのためにも、次の顔合わせ会は頑張ってね」

 何を頑張ればいいのだろうか。
 リンダとアンさんの隣で笑顔を振りまけばいいのかな。

 最後にリンダに聞いたけど、薄く笑うだけで教えてくれなかった。
 大丈夫だよな。


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