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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第2章 技国内乱編

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「実家から手紙がきましたの。それをレオンくんにお伝えしたくって」
 アンさんは笑顔でそう言った。どうやら僕にも関係のあることらしい。

「嬉しそうですね」

「はい。実は兄の結婚が正式に決まりました」

 アンさんのお兄さんであるモーリス・ラゴスは、山羊の氏族からお嫁さんを迎え入れる話が進んでいた。
 この結婚は大同盟の前準備である。

「それはおめでとうございます。これで兎の氏族も安泰ですね」
 僕がそういったところで、一転アンさんは難しい顔をした。

「何か問題でも?」

 後継者の結婚は慶事だと思うが、そのわりには微妙な雰囲気だ。

「この婚姻によって四氏族の大同盟が結ばれます。たとえ兎の氏族が序列一位を取れたとしても、利益は薄くなるでしょう。それはいいのです。今回、それ込みでの同盟ですから」

 ふむ。よく言われることだが、同盟が大きくなればなったで、いろいろ問題が出てくる。
 そのひとつが、利益の分散だ。

 本来独占できるものを四都市で共有するのだから、取り分が少なくなっても致し方ない。
 ただ大きくなれば良いというのではないのだ。

「問題は他にあるのですね」
 だが、アンさんの言いたいことは違うらしい。

「手紙には大山猫の氏族が、協定違反だと言ってきているようです」
「協定違反? 婚姻がですか?」

「いえ、兎の氏族が鴎の氏族に技術供与した件についてです」

 もちろん兎の氏族は技術供与などしていない。
 それどころか、裏切り者のレノー・ボウデカに技術を盗み出されたのだから被害者だ。

 氏族間の取り決めで、同盟を組まずに技術供与した場合、さまざまなペナルティがある。
 序列をひとつ落とすとか、次回の競技会に参加させないとか。

 これは氏族どうしが裏で繋がるのを防ぐのと、技術、開発者の正当性を守るためでもある。

「大山猫と同盟を組んでいる鴎に技術供与したならば、大山猫が有利になりこそすれ、文句をいう筋合いはないように思えますが」

「鴎の氏族長は、今回の件で知り得た技術を大山猫の氏族に渡していないようです」
「……なるほど」

 ちょっと考えてみた。
 兎の氏族が技術供与したと正式に認められれば、かなりのペナルティがつくだろう。

 それを回避するためには、兎の氏族は鴎の氏族と同盟を結ぶしかない。
 後か先かの問題は残るが、技術を渡す正当な理由になる。

 だけど、鴎の氏族はすでに序列一位の大山猫の氏族と同盟を結んでいる。
 兎の氏族長はその選択をしないだろう。

 アンさんは厳しい顔のまま口を開いた。
「鴎の氏族が大山猫との同盟を破棄して、兎の氏族と同盟する。そのくらいしないとことは収まらないように思えます」

 すでにクーデターを起こした者たちの尋問は終了し、ほとんどのたくらみは、鴎と兎の両氏族長が把握しているらしい。

 レノーの身柄は兎の氏族に戻されたとか。
 トラッシュもレノーも自分たちの氏族を裏切ったのだから、死罪は免れない。
 あとはその時期だけだ。

 今回の件が落ち着くまで処刑はできなさそうだ。

 そしてここへ来て、大山猫の氏族からの横槍。
 ことは両氏族だけの問題ではなくなってしまった。

「技国はどうなるのでしょう」
 本当に分からなかったので、聞いてみた。

「祖父は、山羊の氏族との同盟をこのまま進めるつもりでいます。鴎の氏族とは話し合いの途中ですが、互いに意図したことではないと主張することになるようです」

 不可抗力。それで押し通すつもりらしい。
 いざとなれば、証人もいる。

 何事もなければ来年の技術競技会で序列は変わってくるだろう。
 大山猫の氏族は大きく順位を落とす。

 大山猫の氏族はそれを良しとするか。
 無理やり協定違反を持ちだしても、同盟を組んだ四氏族に鴎の氏族が加われば、その主張が通ることはないかもしれない。

 大山猫の氏族とのしこりが残るが、一応の決着はつくのかな。

「面倒なことになりましたね」
「はい。兄の結婚式が無事に終わればいいのですけれども」

「式はいつですか?」
「十一月の二十日を予定しております」

「そうですか。もうすぐですね」

 九月も半ばが過ぎている。
 式の日取りが決まれば招待状を出せる。

 今から出して返信を受け取ってなど考えれば、そろそろギリギリだろう。

「レオンくんもぜひ招待したいと思います」
「ありがとうございます。……行けるかな」

 馬車だと、往復で十日以上かかる。

「わたしと一緒に行って、一緒に帰ってくればいいんですよ」
 つまり飛竜で往復しようと提案された。

 アンさんは他国の要人扱いなので、飛竜での往復が保証されている。
 便乗できればこんな楽なことはない。

「そうですね……女王陛下が許していただけるのならば、それもいいですね」

 どうだろうか。無理だろうな。いや、護衛とか言えばなんとかなるかな。

 そんな感じで会話が進み、最後は和やかなうちでアンさんと別れた。

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