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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第2章 技国内乱編

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「なあ、リンダとアンさんって、いつから親しくなったんだ?」

「もちろん後期が始まってからよ。親しくというか、お互いに情報交換しなきゃならないでしょ」
「情報交換? なんで?」

「理由はいくつもあるわね。有象無象に対する牽制ってのが一番大きいかしら」
 なんだその、有象無象ってのは。

「僕に分かるように説明してくれる?」
 リンダは「しょうがないわね」と言って説明してくれた。

「まずあなたがどう思っていようと、パトロンになりたくてやってくる人はいるの。だから宣言……とは違うかな。周りにわたしとあなたの関係を公表しておくわけ。来るなら受けて立つわよって感じで」

 前にも言っていたけど、本当に必要なのかな。
「ほどほどにしとけよ、そういうの」

「分かっているわ。でも名乗り上げるなら筋を通さないとね。……アン先輩の話だけど、後から現れた周回遅れかと思ったら……なによ、あの人!」
「……ん?」

「聞いたわよ。誘拐されたところを助け出したんですってね」

 おや? リンダがそのことを知っているのか。
 アンさん、なんで話しちゃったんだろ。

「それ、極秘な話だと思ったんだけど、アンさんが話したの?」
 僕だって誰にも言ってないのに。

「ライバル宣言したときに聞いたわ……そんな経験したらそりゃ惚れるわよね、はぁ」
 リンダはため息を吐いた。
「そうなんだ」

「もうびっくり。アン先輩いわく運命的な出会いだったらしいわ。真っ直ぐな瞳でこっちを見てくるですもの……しょうがないから同盟を組むことにしたの。もうこれ以上は増やさないけど」
「そうなのか?」

「そうなのよ。アン先輩の境遇を考えれば仕方ないし、身分を考えるとパトロンになる確率は低いでしょう?」
「そのへんはよく分からないけど」

 たぶん僕の婿入りのことを言っているんだろうな。
 リンダはアンさんの正体についても知っているし。

「分からないならばいいわ。でも確率は低いのは事実。それで方針を変更して三人で同盟を組んだわけ。これ以降は筋を通さないであなたに声掛けをする者はいなくなるわよね」

「そうなのか?」
「当然よ。仁義を通さない輩は自滅するもの」
「……?」

「公になっているわたしたちを無視すれば、『あの生徒は無節操に声をかけるんだ』とか、『すでに相手がいる人にでも声をかける節操なしなのね』なんて話が広がるわけ。それってダメージが大きいのよ。だから声掛けをするとき、本人よりも私たちにまず筋を通す必要がでてくるの」

「……どこのアウトローの世界だよ、それ」

「この時期はみんな慎重になるわ。だって一旦悪評がついたら、それこそお終いだもの。でもね、こうして残り期間が少なくなってくると、一気に挽回しようとする生徒もいるわけ。後が無い人なんかとくにね」

 三年生のことだろう。すぐに卒業だしな。

「学校内で、そういうバトルがあるわけか」

「まあ普通にあるわね。わたしは一年、アン先輩は二年の情報を持っているからそれを交換しあったわ。あとは、いかに親しいかを周囲に宣伝しておくのも効果的なのよ。今日のことだって、わたしは帰ったら言いふらすもの」

「言いふらすのかよ」
「言いふらすわよ。だからアン先輩と一緒に旅行したことは許してあげる」
「………………」

 一緒に旅行って、兎の氏族が住む都市へ送り届けたことだよな。
 あれが旅行ってことになっているのか。

「今の状態ではわたしが有利だし、あなたがだれを選ぶのか恨みっこなしで納得しているから」

「さいですか」
 なんだか、その会話に関わりたくないな。

「実際、ロザーナ先輩の場合、実家との縁が切れかかっているのよね。本人も謹慎中はずっと勉強していたらしいし、実家から自立を目指している感じかしら」
「その割には、今回も参加しているよね」

「頭いいもの。古代語を専攻しているそうよ」
「どうしてまたそんなマイナーなのを?」

「さあ。先輩の領地が北にあるからかしら。不思議なんだけど、あなたのことも実家には伝えてないっぽいのよね」

 陰月の路の北側は、旧竜国の残滓ざんしが存在している。
 地理的に古代語に興味を持ってもおかしくないとリンダは言った。

 そして、僕のことを話していれば、実家からの扱いはかなり違ったものになるだろうとも。

 ロザーナさんの場合、学費や生活費は恥ずかしくないレベルで実家がお金を出しているが、遊興費はまったくないらしく、古文書翻訳のアルバイトをしているとか。

 領主に連なる家系にもかかわらず、寮で内職しているらしい。

「そうなんだ。大変なんだな。……というか話を戻していいか? 次の顔合わせ会で着ていく服だけど」

「そうだったわね。次回は夜会もあるから二着必要でしょ。今までみたいに互いに制服ってわけにはいかないからね。わたしもイブニングドレスとナイトドレスの両方を用意するわ」

「僕は別に……」
「ちゃんとドレスに合う服を見繕ってあげるわね。あなたの場合、見た目以上に筋肉があるし、ソフトスーツがいいかしらね」

「えーっと、僕の意見は?」

「黙って着せ替え人形になりなさい」
「……はい」

「一応、昼のガーデンパーティ用はわたしが用意して、夜はアン先輩が用意することにしたから」
「そこまで決まっているのか!」

「そうよ。互いにどんな衣装なのか確認しあったしね。それにうまくマッチするようなものを注文しなきゃ」

 なんだか憂鬱ゆううつになってきた。
 顔合わせ会……欠席できないよな。

「もしかして採寸とかする?」
「よく分かったじゃない」

「いや、どうみても給仕以外の人が入ってきたからさ」
「大丈夫。採寸は一回だけだから。今日のデータをアン先輩と共有することになっているから」

 そこまで決まっているのね。逃げられないのね。


「なるべく早く終わらせてくれ」
「分かったわ。さっさと終わらせましょうか。……じゃ、脱いで」
「……はい?」

「脱がなきゃ、採寸できないでしょ。さっ、脱いで」
「…………はい」

 リンダのやつ、だんだんと性格が変わってきてないか? 積極的すぎるというか。

 結局僕は、言われるままに服を脱ぎ、さまざまなところを採寸されてしまった。


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