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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第2章 技国内乱編

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「待たせてしまいましたね」

 僕が待ち合わせ場所に行くと、アンさんはもう来ていた。
 授業が終わってすぐに出かけたのだが、遅かったようだ。

「大丈夫ですわ。待つのも楽しみのひとつですから」
「……すみません」
 これは、結構待たせてしまったかな?

「ようやく、レオンくんとデートできますわ」
「そうですね。ようやくですね」

 一緒に旅をしたことはあるが、道中のアンさんは緊張と不安で口数も少なかった。
 孔雀の氏族が住む都市を過ぎたあたりから普通に戻ったが。

「今日は、レオンくんに竜国の中にある技国を見せたいと思いましたの」
 アンさんは右手を広げて、自分の背後に視線を促した。

「竜国の中にある技国……噴水ですか?」
 町の公園にある噴水前で、定番の待ち合わせ場所だ。
 もしかしてこれが?

「技国の職人が竜国に招かれて作ったそうですわ。あいにく、兎の氏族の方々ではないのですけれども」

 この噴水、時間で水の流れが変わる珍しいタイプだ。
 僕もアンさんを待っているときに何度かその変化を見た。

 恋人たちの待ち合わせ場所になっているのは、そういった魅力があるからだ。

「そういえば、技国式っぽいですね。時間で見た目が変わるわけですから、機械式ですか?」
 機械式の噴水、たしかに技国の職人が好みそうだ。

「うふふ……そうなんです。昔からこのような仕組みはあったようなのですが、長い年月が経ってしまうと、どうしてもズレるようなんです」

「ズレる? ……ああ、お昼ちょうどに盛大な水のショーが見られるんでしたっけ」

「はい。それがどんどんズレていったら、意味がないと思いません?」

「そうですね。頻繁にメンテナンスするわけにもいかないでしょうし」

 職人をわざわざ技国から招聘するわけにもいかないし。
 かといって、仕組みを全部教えろとも言えない。

「ですので、とある年の技術競技会で、メンテナンスのいらない新しいタイプが発表されたのです。実はこれ、最新技術なんですよ。技術競技会をご覧になった竜国の政治家の方が感動されまして、ぜひにと技術者をお呼びしたそうです」

「ほう。そうだったんですか」

 前回は、「綺麗だな」と何気なく噴水を眺めていたが、そんな裏話があったとは。
 でも考えてみると、すごい技術だな。

「というわけで、今日のデートは竜国にある技国のツアーになります。準備はいいですか?」
「はい。楽しみです」

「ではレオンくん、行きましょう」
 アンさんは僕に腕をまわすと、町の中心部に向かって歩き出した。



「大通りに竜の背がありますよね」
「はい。王城から南に一本伸びる大きな道ですね」

 大型竜が通れるように、何年か前に拡張した。
 竜のパレードで、人が左右に並んでも竜が通れるくらいの広さがあればいいと考えられていた。

 ある年、大型竜が参加したときに、歩くたびに揺れる尻尾で左右の建物に被害が出たらしい。
 それで、道路の拡幅工事が行われた。

「竜の背は、飛竜が南から帰ってくるときの目印にもなります」
「アンさんは、飛竜で行き来しているんでしたね」

「そうなのです。上空から見ると、本当に真っ直ぐに一本の道が見えます」
「これだけの道幅があれば、とても目立つでしょうね」

 王都は広いので、広い道は目印代わりになるらしい。
 僕が飛竜に乗って戻ったときは夜だったので、あまり詳しく見ていない。

「この竜の背ですが、道路を拡幅するときにどうやったと思いますか?」
「えっ? 邪魔な家を壊したんじゃ……でも、そうすると壊された家の人が困るか」

 竜の背は長い。
 何キロメートルにも渡って南に延びているのだから、壊す家も大量にあるだろう。
 どうしたんだろ?

「実はですね。ここを見てください。レオンくん。家と地面が接しているところです」
 アンさんが指した先には、金具がついていた。金具?

「何かを引っ掛けるものですね。なんだろ?」
「実はこれ、家をそのまま運ぶために付けたものなんです。家ごとお引っ越しです」

「そんなことができるんですか?」
「はい。空いている土地を決めてもらって、家をそのまま持っていっちゃおうってことになったのです」

 たしかによく見ると、家の土台に金属の補強がしてある。

「それも技国でやったんですか?」

「そうなのです。エイやって持ち上げるのは駆動歩兵がやりました。大きな荷台も技国から持ってきたものです。それを引っ張って運んだのは竜のようですね。竜操者さんたちがお手伝いしたと聞いています」

「へえー」
 素直に感心した。家ごと引っ越しなんて発想が僕にはなかった。

「すごいですわよね」
「ええ。驚きです。さすが技国の発想と、実力ですね」

「驚いてもらえてなによりです。では次はこちらです」
 アンさんは僕の手を引いて先を促した。


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