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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第2章 技国内乱編

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「ちょうど知り合った人がいてね。技国に誘われたんだ」
「なんでまた技国に? 竜操者がらみかい?」

「いや……これなんだけど」
 鴎の氏族が住む都市で得た免状をアークに見せた。

「これは……三級の免状? 本物?」
「ああ。受かったんだ。すごいだろ?」

 少しだけ自慢してみると、アークはより一層目を開いた。

「すごいなんてもんじゃないよ! いつもパンの匂いをさせて帰ってくるとは思ったけど、キミはこれほどの腕を持っていたのか!」

 真正面から褒められた。
 ちょっと面映ゆい。

「運が良かったのもあるかな」
 直前にもらったアドバイスも良かった。
 試験の方法は若い僕に有利なものだったし。

「いや、技国の免状で、三級なんていったら、運で取れるものじゃないよ。キミくらいの歳で受かるなら、それこそ物心ついたうちからみっちりとしごかれて、その上本人の努力と資質、そして周囲の環境も整っていなければならないんじゃないかな。技国で認められるというのは、それだけすごいことさ」

 いやに饒舌だなと思ったが、アークの知識は僕よりも多い。
 技国についても詳しいのだろう。

「そう言ってもらえると、頑張った甲斐があるよ」

「いやはや本当に驚いた。そうか、だから間に合わないと手紙にあったのだな。直前まで特訓していたのだろう。しかし、受かって良かったな」

 特訓はしていないけど、まあ、そのへんは黙っておこう。
「これに驕らずに、立派なパン職人を目指すよ」

「いや、目指すのは立派な竜操者にしてくれ。……そうそう。それで話があったんだ」
「なんだい?」

「前に俺が話したことがあったと思うけど。立ち入り禁止の旧王都の話だ」
「ああ、ヒューラーの北にあるという」

「そう。里帰りのついでに俺は調査しにいったのさ」
「また無謀なことを。あそこは陰月の路に近いじゃないか。月魔獣が出たらどうするつもりなんだ?」

「一応、駿馬しゅんめを借り受けたし、この半年で見慣れたこともあったからね。もちろん警戒は怠ってないよ。それは断言できる」

「分かった。それで、調査に行って、どうだった?」
「やはり中には入れなかった。周囲を高い塀で囲われて、入り口はないんだ。そして俺が見ていると飛竜が数騎中へ入っていった」

「建物の周囲を囲うのは月魔獣対策だし、旧王都は広い。出入り口を守れないのならば、塞ぐのも当然じゃないか?」

「俺も最初はそう思った。だけど、日に何度も飛竜が出て行っては戻ってくる。食糧を積んでいるのも見たから、あそこにはかなりの数の人が住んでいる気がするんだ」

「廃墟だろ? 竜操者が使っているだけじゃないのか?」
「いや、あれは違うと思う。明らかに運び入れる食糧が多いんだ。絶対になにか秘密がある」

「だったら、こそこそ探らないで、あと半年待てばいい。そうしたら竜が得られる。もしなにかあるのなら、そこへ行くこともできるだろう? そのとき僕らが立ち入り禁止ならば、それはおかしい。本当になにか隠されているかもしれない」

「そうだね。実際に俺たちが竜操者になったら、ただの拠点だったってこともあり得る。可能な期待はしないけど、旧王都にはぜひ一度、行ってみたいね」

「もし僕が先に行くことになったら、中の様子を伝えるよ」
「ああ、頼むよ」

 そこまで話してアークの興味は他に移ったようだ。
 なので、それ以上突っ込んだ会話にならなかったが、僕は密かに確信している。

 アークがいう旧王都だが、あそこは公称二千騎という竜操者に属さない人々、忠義の軍団(ロイヤルレギオン)所属の竜操者たちがいるのではなかろうか。

 数百騎もの竜をどこに隠すか。それほど広大な場所は存在しない。
 しかも竜の餌の問題もある。

 旧王都は広さも頑丈さも申し分ない。
 牧場のようなものを併設しているのではと思っている。

 その場合、アークには申し分ないが、真相は語られることはないだろう。



 翌日、学院の授業がはじまった。
 全員出席である。みんな優秀だ。ちゃんと期日までに戻ってきたのである。

 授業はいまだ座学か体力作りがメインである。
 二回生は泊まりがけで演習に出る機会が増えるらしい。

 前期に散々やったフォーメーションの総仕上げだとか。
 竜を得てからたった一年で一人前の竜操者に育てあげるには、立ち止まってはいられないのだろう。

 僕も頑張らねばならない。

「僕はこれからデートなわけだが」

 学院から寮に戻った僕は、よそ行きの服に着替える。
 今からアンさんとデートだ。

 今度こそは絶対に行きますと意気込んでいたので、待ちぼうけになることはないだろう。
 今日のプランは、アンさんのお任せである。

 どこに連れて行かれるのか、事前に知らされていない。
 おそらくだが、リンダのときと同じく、レストランの個室ではないかと思っている。

 同じレストランでなければいいな。

「さて行くか」

 気合いを入れて階下におりると、義兄さんが手を振って見送ってくれた。
 唇が大きく動いている。読唇術は使えないが、見間違えることはない。

「が・ん・ば・れ」

 義兄さんの口はそう動いていた。
 デートがバレている?


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