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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第2章 技国内乱編

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「本題ですか?」
「ええ、いまから重要なお話をせねばなりません」

「なんでしょう」
 わざわざ僕を呼び出してまで話す内容に興味があった。
 僕を忠義の軍団(ロイヤルレギオン)に入れたワケ。それが明かされるらしい。

「私たちは、日に影に女王陛下に尽くす者の集まりです。女王陛下の意を汲み、それを実現するために動いているのです」

 当たり前の話だ。僕も女王陛下の〈影〉として、幼い頃から訓練していたのだから。
 力がなければどんな正義だろうと貫き通すことができない。

「その考えは分かります」
「あなたには、力をつけていただきたいのです。操竜会内部での力を」

 ……………………えっ!?

「そ、それはどういった……力ですか?」

「そうですね、具体的にいえば権力でしょうか。竜国運営会に出席できるのは、中央竜隊の軍団長と地方竜隊の都市竜隊長になります。そのどれかに就任してもらいたいのです」

 ……あれ?
 僕が馬鹿みたいに口を開けて聞き入っていると、ガイスンさんは興に乗ってきたようで、続きを話し始めた。

「ご存知のように、女王陛下は強権を振るう方ではありません。ですが、ときに悠長な会議に時間を費やすわけにはいかないこともあります。先日の誘拐事件などがそうです」

 あのとき話し合っていたのは、竜国運営会のメンバーだったのか。
 でも人数が少なかったな。緊急だから、地方に行っている人たちは会議に間に合わなかったのか。

「竜国の命運を決める会議です。生半可な者を送り込むわけにはいきません。これはという人物を厳選する必要があります。女王陛下はそのことをよくご存知です。それにあなたが選ばれたということは、操竜会であなたが権力の階段を上り、頂点を目指すことを意味します」

 いや、いや、いや、ちょっと待て!
 僕がいつ出世したいと言った! 言ってない、言ってないからね!

「分かります。ズルはしません。というか、できません。女王陛下もお望みではありません。頑張るのは、あなたです。あなたが竜操者となり、日々の努力によって周囲に認められ、部隊長、師団長と出世してゆき、軍団長の座を射止めればいいいわけです」

 なるほど! ……って、できるか!
 軍団長の下は師団長じゃないぞ。師団長の中でも、師団長代表とか、常任師団長とかあるし、五人の軍団長にはそれぞれ複数の副軍団長がついている。

 トップになんか、簡単になれるわけがない。

 というか、重要なことだが、なぜ僕が操竜会の中で上を目指すことになっている?
 目立たず、騒がず、地方でパンを作りながら、静かに暮らしたいのに!!

「いままで、竜操者は抱えるものの、表に出て女王陛下を補佐する者が不足しておりました。ここに来て、まさかの僥倖ぎょうこうです。さあ、ともに女王陛下のために、死に物狂いで上を目指そうではありませんか!」

 ガイスンさんは、感極まったかのように声高らかに叫んだ。
 後ろにいた人たちも拍手している。
 こういう集まり? ねえ。

 というか、死に物狂いで上を目指すって、なんだよ。
 そういえば、ヒフも〈左手〉筆頭だったな。あれもまたトップのひとつか。

 つまり、忠義の軍団(ロイヤルレギオン)とは、女王陛下個人のために竜国内で出世して発言権を高める者の集団でいいのかな。
 日に影にって言ってたものな……僕に目指せと言ったのは日の方か。

 ほかにも裏の戦力、つまり公表していない竜操者を抱えているし、女王陛下の支配体制、盤石じゃん。
 僕は本当に必要?

 なんだろう。一気に脱力した。
 もっとこう、地下に潜った組織かと思った。
 いつも潜っているのは僕だけど。

 しかし、出世ねえ。僕から一番遠い言葉だ。

 それを目指せと? 軍団長? 無理でしょ。
 さすがに何年もかけて死に物狂いでそれを目指せと言われても、途中でやさぐれるわ。

 かと言って、いまさら脱退はできなさそうだし。
 大転移のこともあるからな。それまでなら、目を瞑って頑張ってみるか。

 大転移が起これば、数年はどうせ忙しい。
 その時までにある程度の地位にいれば、動きやすいだろう。

 とすると、竜を得てから三年で大転移がやってくるとして、混乱が一段落するのは四年後くらいかな。
 頑張るのは七年間くらいか。よし、決めた。

「分かりました。誠心誠意、頑張らせていただきます。(最大で七年間くらい)」
「おお、さすがは女王陛下が直々に認められた我が同志です」

「どのような竜を得るか分かりませんが、操竜会で出世できるよう、尽くしましょう(大転移が終わればパン屋に就職だ)」

「よくぞ言ってくれました。我々はあなたの加入を祝福します」

 最後は満面の笑顔で抱きしめてきた。
 うん、嘘は言っていない。

 こうして、やや思った方向とは違ったが、僕は忠義の軍団(ロイヤルレギオン)のメンバーとの邂逅かいこうを果たしたのだった。

 ストレスが溜まったので、明日は一日パンを焼こうっと。

 引き止める皆を振り切るようにして、僕は寮に帰った。



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