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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第2章 技国内乱編

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 リンダと別れたあと、僕は町をブラブラと散策してから寮に戻ることにした。
 取り立てて理由はないが、久しぶりの王都なので、ゆっくりと歩いてみようかという気になっただけだ。

「……ん?」

 一瞬だけ背後に気配を感じて僕は立ち止まった。
 どうにも誘われている気がする。

 遠ざかる気配を追うようにして町中を進んだ。
 狭い路地に入ったところで、気配の動きが止まった。

 待っていたのはヒフ。女王陛下の〈左手〉筆頭だ。
 普段の黒衣と違って、どこにでもいる老人の格好をしている。

 ヒフは僕の姿を確認すると、スッと寄ってきて囁く。

忠義の軍団(ロイヤルレギオン)についてお話したいと思います」

「……分かりました」
「今宵、王城裏手の時計塔屋敷にて」

 それだけ言うと、ヒフは気配を消して立ち去った。

「時計塔屋敷か」
 歴史を感じさせる、古い石造りの建物だ。

 もちろん中に入ったことはない。
 寮で着替えたら、早速行ってみるか。

 僕は散策もそこそこに寮に帰った。



 時計塔屋敷の前に来た。
 中に入る前に、忠義の軍団(ロイヤルレギオン)について頭の中で整理した。

 彼らは女王陛下の〈影〉や竜操者たちとは違う集団。
 正体不明で、女王陛下個人に忠誠を誓っている。

 正直、僕にとって〈影〉との違いが分からない。
 父さんは何の話もしてくれなかった。

「……まあ、直接本人に聞けばいいか」

 すでに視線を感じる。塔の上から監視しているのだろう。
 一瞥いちべつしただけで、僕は屋敷に中に入った。

 さてどんな連中がいるのか。

 屋敷の中は薄暗く、ろうそくの炎が奥へ続いている。
 それに沿って進むと、階段があった。
 上へいけということらしい。

 ろうそくに導かれた先は、大きな部屋。
 竜を祀った礼拝堂だ。そういえばここは、竜導教会の所有だったけか。

「ようこそいらっしゃいました。新しい同志の誕生ですね」

 よく通る声が響いてきた。秘密の集まりではないのだろうか。

「お招きいただき、ありがとうございます」
 礼儀としてはどうかと思うが、僕は名乗らなかった。

竜導りゅうどう教会本部長をしております、ガイスンと申します」
「竜の学院に通っています、レオンと言います」

「レオン同志、どうぞこちらへ。本日集まった方々を紹介いたしましょう」

 礼拝堂の奥にいるのは十数人。それが今日集まった忠義の軍団(ロイヤルレギオン)のすべてらしかった。

 彼らの多くは竜導教会の人間らしい。
 そもそも竜国の教会上層部は、そういう役目を負っているのだとか。
 まったく知らなかった。

「この国の代表者が集まる竜国運営会というのをご存知ですか?」
 僕は首を横に振った。地方都市にいたために、政治についてはまったく分からない。

「六十一名で構成され、月に一度集まってこの国の方針について話し合います」

 初耳だったが、さすがに教会の人らしく、説明は簡潔で分かりやすかった。

 六十一名のうち、三十名が竜国議会の出身者で占められるらしい。
 竜国議会は流石に知っている。この国の政治家たちだ。

 竜国議会の中から貴族員、地方員、評議員をそれぞれ十名ずつ選出し、その三十名をもって、竜国運営会に輩出しているのだという。

「他にも操竜会そうりゅうかいから十名参加しております」
 今後、僕が入ることになるのが操竜会だ。

 操竜長そうりゅうちょうを頂点として、中央竜隊と地方竜隊が存在している。
 地方竜隊は各町に駐屯していて、僕のソールの町にもいる。

 他にも現役を引退した予備竜隊や、半年後に僕が竜を得れば、自動的に学徒がくと竜隊に所属させられることになる。

 これらを合わせて操竜会と呼ぶのだ。

「あとは竜国軍部会と竜導教会から十名ずつ選出されるのです。それと女王陛下を合わせて六十一名となります」

 竜国軍部会は、竜を持たない一般の兵たちが所属している。
 禁軍きんぐん右軍うぐん左軍さぐんからなり、禁軍を除いた両軍の一部が地方の守備を担っている。

 難しいことはさておいて、そういった立場の代表者たちが集まって話し合うのが、竜国運営会なのだそうだ。

「私ども教会は、竜国運営会で陰ながら女王陛下をお助けするのがひとつの仕事でございます」

 ガイスンさんが丁寧な話し方をするのは、別に本人の性格云々だけではなく、この忠義の軍団(ロイヤルレギオン)内では、互いが互いを尊重し、決して争わず、個を滅して女王陛下に仕えることを是としているかららしい。

 そういえば、〈左手〉のヒフもこの件のときだけは、丁寧なしゃべり口だったなと思い出した。

 忠義の軍団(ロイヤルレギオン)の構成員は、教会や貴族員に多いらしい。
 反対に、操竜会や地方員は少ないとか。

 女王陛下の〈影〉が下働きで、忠義の軍団(ロイヤルレギオン)が上働きだろうか。
 少し違う気もするが。

「同志の中には、竜操者もそれなりにおります」
 ガイスンさんは、笑って説明してくれた。

 竜操者の子に竜紋が現れる確率はそれなりに高い。
 忠義の軍団(ロイヤルレギオン)の関係者が先に見つけた場合、その存在は秘され、忠義の軍団(ロイヤルレギオン)の一員となるように教育することがあるらしい。

 代々の竜操者の家系などは、町でもそれなりの地位についていることが多いので、一般市民の目に触れる前に接触できるのだそうな。

 そうして集めた竜操者が数百名。
 大変な数である。

「公称以上の竜操者がいるというのは、そういうことだったのですね」

「はい。竜迎えの儀が終わると、竜渓谷りゅうけいこくには立ち入り禁止になります。竜の聖門も同じです。私どもはそのときに、竜迎えの儀を執り行うのです」

 こうして集めた竜操者だが、他国との戦争になったときの切り札として温存しているのだという。

 そういえば、技国の駆動歩兵も、想像を超えた性能だった。
 ああやって自国の力を過小評価させ、いざ事が起こればその本性を現すのだろう。

 たしかに竜の総数が分かれば、それに勝てる陣容を整えてくる。
 二千に勝てる数で攻めてくれれば、それ以上の竜を揃えれば撃破できることになる。

「さて、では本題に入りましょう」

 ガイスンさんはにこやかな顔を崩さぬまま、そんなことを言った。


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