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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第1章 魔国蠢動編

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 竜国の強みは、なんと言っても、竜を自在に操る竜操者りゅうそうしゃの存在だろう。

 竜は強力にして無敵。
 傷ついても、時間が経つと完治するほど、生命力が高い。

 タフで従順な竜の存在は、竜国の発展に大いに貢献している。

 それほど強力な竜であるから、他国は喉から手が出るほど欲しがる。
 だが、それは叶わない。

 竜の聖門せいもんから、一定以上離れた場所に住んでいると、竜を得ることができないのだ。
 過去、綿密な調査によって、その境界線はほぼ正確に分かっている。

 竜が得られる距離の限界は、竜の聖門から同心円上に広がっており、その境界線を竜紋限界りゅうもんげんかいと呼んでいる。

 竜国の中でも、七大都市である北のクロウセルトと、南のチュリスは竜紋限界から外れている。
 残り五都市はしっかりと、範囲内なのだが。

 そのため、商国に近いソールと、魔国に近いウルスには、竜を得るために、それぞれの国から多数の移民がやって来ている。

 彼らの目的は、竜を得ること。
 一攫千金狙いである。
 竜を得て自国に帰れば、大金持ち間違いなしなのだ。

「まあ、そう上手くは行かないんだけどね」

 竜を得るには、竜に選ばれる、つまり竜紋が現れなければならない。
 だが最低でも十年以上、その地に住まねば竜紋は現れない。

 また、竜紋が現れるのは十代までと決まっているので、「我が子にもしかしたら」と、一縷いちるの望みをかけて家族で越してくる場合、大抵は遅すぎる。

 千人に一人とか、二千人に一人という低確率であることも相まって、他国で多くの竜を抱えることはない。

 竜国に住む者ならば、だれでも憧れるのが竜操者なのだ。
 竜を得てから他国へ亡命する者はほとんどいない。

「望まないのに、竜紋が現れる例もあるのにな」

 結局、竜に選ばれるかどうかは、率の低いギャンブルに他ならないと僕は思っている。

 竜紋が現れれば、竜操者になるのは必定ひつじょう
 竜操者になれば、陰月いんげつみちから落ちてくる月魔獣つきまじゅうとの戦いに生涯を費やさねばならなくなる。

 つまり何を望もうとも、竜紋が現れてしまえば残りの人生は決まってしまったといえる。

「僕のこれからの人生……女王陛下に指示を仰ぐしかないよな」

 ダメ元で、「パン屋と暗殺者、ときどき竜操者をやらせてください」と頼んでみるか。
 もしかしたら、快く許してくれるかもしれない。
 いや、無理だろうな。




『闇渡り』で地下水路を進むと、父さんが教えてくれた分岐に出た。

 この先を進むと、王城の下に出るわけか。
 もう地上は住宅地になっているんだろう。

 ここまで順調に来ることができた。
 問題は地下にも張り巡らせてある魔道結界だけど、大丈夫だよな。

 一応、通常の感知結界なら、『闇渡り』には効果ないはずだし。

 魔道結界に引っかかると、その知らせが術者に行く。
 引っかかったことを知らずにいると、いつのまにか大量の暗殺者に囲まれることになる。

 こんな所で、仲間と殺り合いたくない。

「信じていくか」

『闇渡り』中からは、外の様子はおぼろげにしか分からない。
 薄いベール越しに外を眺めているようなものだ。
 だから気が付かなかった。

「……おっと、引っかかった!」
 一歩踏み出したとき、ピリッとした感触があった。

「魔道が発動したな、これは」
 侵入者感知だと思うけど、僕のまったく知らないものが使われていた。

 一旦停止し、感覚を周囲に広げる。

 何も分からない。
 かなり高度な魔道だ。

 魔国から優秀な魔道使いを引き抜いたか?
 そうすると厄介だな。

 もう少し感覚を狭くして、精度を上げる。

「……んー、これかな?」

 うっすらと黒い視界の中に、灰色の線が見てとれる。
 面ではなく、線で感知結界を張ったのか。

 そりゃ、これだけ薄くて細ければ、気づけないわ。
 かろうじて見えるかどうかだ。

 だが、線ならば避けることは可能なはず。
 僕は慎重に灰色の線を避けながら進んだ。



「……ふう、着いた。久しぶりに緊張したな」

 城の中庭に出た。
 もうここは、ありとあらゆる魔道結界が張られているので、迂闊に動けない。

「解除するのは駄目だよな、やっぱり」

 仕方ないので、ひとつひとつ結界を見極めながら進む。
 感知結界、防護結界、警報結界……どれだけあるんだか。

 解除せずに進むと時間がかかってしょうがない。
 数メートル進むのに、十分もかかってしまう。

 多すぎだよ!
 文句を言いたくなってきた。

「警戒し過ぎだろ、これ。どんな相手を想定しているんだか」

 中庭に出てから、たっぷり一時間かかった。
 僕はようやく、父さんに連れられて来られたことがある、〈影〉専用の入り口に着いた。

「なんかもう、会う前に消耗しちゃっているんだけど」

 ものすごくこのまま帰りたい。
 けど、帰れない。……ふう。

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