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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

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001

主人公レオンの幼少時を簡単に説明しています。
◇レオン 4歳

「ぼくはしょうらい、パンやさんになる」

「そうか、レオンは父さんと同じパン屋さんか。えらいぞ」

 それは、僕が覚えている最初の記憶。

「ちょっと、父さん。この子、まだ四つよ。パン屋になるだなんて、無理に言わせたんでしょう!」

「エイナ、おまえだって小さいときはパン屋さんになるって……言ってないな」

「当たり前よ。わたしの夢は、今も昔もお嫁さんなんだから」
「それは、父さんのところにかい?」

「違うに決まっているでしょ。もっと若くてカッコイイ人が迎えにくるのよ」
「若くてカッコイイ……父さんは違うのか……」

「ぼくはパンやさん!」
「そ、そうだな、レオンの夢はパン屋さんだ。父さんがみっちり教えてやれるぞ」

 父さんが喜び、姉さんが呆れたあの日、僕の夢は決まった。



 ◇レオン 7歳

 竜国りゅうこくの民は、希望すれば七歳から学校に通える。

「レオン。おまえが決めるんだ。学ぶか? それとも働くか?」
「はたらく!」

「よし、ならばレオンはパンの作り方を学べ。今からがんばれば、いいパン職人になれるぞ」
「うん!!」

 そう宣言してから毎日、僕はパン作りを本格的に学んだ。

 それまでは、店の掃除、パンを焼くの日必要な薪を運び、売り物のパンを並べたりしていた。
 簡単な店の手伝いならば、完璧に出来たと思っている。

 七歳で新しく覚えたことは、パンの仕込み、成形、窯焼き、店番。
 父さんと母さんは、パン屋を経営するのに必要なことを僕に教えてくれた。

 毎日が楽しく、充実していた。



 それとは別に、父さんは僕だけにコッソリと教えてくれたことがある。

「なあレオン。おまえは、ずっとパン屋をやりたいか?」
「うん。もちろん!」

「そのためには、この国が平和でなければならないんだ」
「……へいわ?」

 いつだったか。
 まだ小さかった僕に、父さんは真面目な顔で言った。

「悪い人がたくさんいたり、戦争といって、殺しあう人たちがこの町にたくさん来たら、だれもパンを買ってくれなくなる」
「………………」

 恐ろしいことが起こるかのように、父さんは声を潜めて話した。

「レオンがパン屋を続けるために、悪い人をなくして、戦争にならないようにしないとな」
「そうだね!」

 難しい話だった。
 意味が分からなかったけど、その次の言葉だけはよく覚えている。

「というわけで、レオンは父さんと特訓だ」
「とっくん?」

「パン屋を続けるために、レオンが特訓をするんだ。悪い人をやっつけて、戦争が起きないようにするぞ」
「うん! とっくんする」

 驚いたことに、僕はパン屋を続けるという理由で、多種多様な訓練をすることになった。
 体力づくりから始まって、体術、剣術、投擲とうてき術。

 なぜか潜入術、逃走術、罠の仕掛け方から解除まで。
 はては、魔道……。

「これは魔国まこくで生産された魔道使いになるための薬だ。素養があれば、魔道が発露はつろする。もっとも、今すぐではない。……さあ、飲んでみろ」
「うん!」

 それは草の汁だった。なのに液体が光っていた。
 ひと口飲んだら、すごく苦い。

 でも我慢して、すべて飲み干した。

「母さんたちにはナイショだぞ」
「分かった!」

 この頃には、父さんとふたりだけの秘密が格段に増えていた。



◇レオン 13歳

 竜国では一人前と扱われる歳になった。

 七歳から学んでいだ者は、より高度な学問を修めるために専門の学校へ行く。
 働いていた者は、独立すら可能になった。
 十三歳とはそういう歳である。

 僕にとって七歳から十三歳までの六年間は、パン作りと修行の日々だった。

 その甲斐かいあって技術も向上し、父さんと母さんからパン職人として認められた。
 真剣に取り組んだ六年間で、将来は実家のパン屋を継ぐ展望が開けた。

 それ以外の進路なんて、考えられないほどだった。
 そしてもうひとつ。

「おまえも十三歳になった。そこで、こっち(・・・)も代替わりしようと思う。レオンが父さんに代わって、この町を守れ」

「それって、僕が女王陛下の〈影〉になるってこと?」

 父さんのもうひとつの仕事。
 町に住む悪い奴らや、竜国にあだなす間者を秘密裏に処理すること。

 女王陛下の名代みょうだいとして、町の平和を守る。
 それが〈影〉の仕事だった。

 父さんは、それ(・・)を僕に任せると言い出した。

「女王陛下に許可をもらいに行こう。レオンは王都に行ったことなかったな」
「うん」

「女王陛下に会って、お前を紹介する。許可が得られたら、おまえは女王陛下の〈右手〉だ。父さんの代わりにこの町を守るんだぞ」

 十四歳を間近に控えたある日、僕は女王陛下に謁見するため、はじめてソールの町を離れた。

 父さんと同じ『潜入、捜索、暗殺』を行う〈右手〉として、僕は独り立ちする。
 でも迷いはなかった。ずっと父さんを見てきたから。

 日中はパンを焼いて、町の人たちに美味しいパンを提供する。
 夜になると、時おり女王陛下の指令を受けて、町にいる悪人を処断する。

 将来は、結婚して子供が大きくなったら、僕も父さんと同じように子供を鍛えて、その子が一人前になったら引退する。

 そんな未来を、僕は少しも疑っていなかった。



 そう、あの日までは……。

プロローグ第1話をお届けしました。
主人公のレオンがなぜパン屋を目指すようになったのか、それが書かれています。

プロローグ第2話は、時間が飛んで「竜を得るシーン(竜迎えの儀)」の抜粋になります。

本編の150話くらいで同じような内容が語られますので、読み飛ばしても構いません。
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