えんじぇるず聖夜(9/21)PDFで表示縦書き表示RDF


えんじぇるず聖夜
作:国沢裕



えんじぇるず聖夜・9


チャプター・9 ジプシー

 委員会が終ると、予定通り五時過ぎだった。この高校は二学期の中間試験の終った後に文化祭がある。今日の委員会は、その連絡がメインだった。……文化祭か。クラスの女子が何人か、舞台をやりたいと言っていたな。
 この高校の文化祭の基本は、舞台と展示と模擬店。一学年十クラスで計三十クラス。一年が舞台をさせてもらえるかが、まず問題だな。
 そんな事を考えながら、俺は京一郎と待ち合わせをしている体育館の倉庫へ向かう。しなくてはいけない事や考える事、沢山あって忙しい。だから俺は今生きていられる。……なんていうマイナス思考になりかけて、慌てて意識を引き戻す。どんな簡単な事でも、気を抜けば成功しない。
 今夜の計画一色に頭を切り替えて、俺は倉庫の扉をゆっくりと開いた。


チャプター・10 京一郎

 俺は五時を告げる腕時計のアラームをとめると、大きく伸びをした。もうすぐ委員会が終ってジプシーが来る。あいつは時間に対して結構うるさい。
 そして俺は、待っている間に今日の転入生の事を考える。ほーりゅうとか言うあの女。怖いもの知らずで言いたい事をいいやがって。明日も向こうから絡んでくるんだろうか。今日は余計な面倒を起こしたくなかったから無視したが、明日も寄って来たら、どうしてくれようか……。

 倉庫の扉が静かに開いたので、顔をあげる。
「悪い。遅くなった」
 いつもの顔でジプシーが入ってくる。こいつは転入生の事は気にしていない様子だ。引っかかっているのは自分だけか。俺はジプシーの私服が入った鞄を渡した。
「さんきゅ」
 そう言ってジプシーは、鞄を受け取りながら眼鏡を外す。そして俺に背を向けると、制服の上着を脱いだ。俺はジプシーの後姿を見ながら、こいつは躊躇なく俺に背中を見せる、と、ふと考える。
 着替えの間に黙っているのも何だかなと思い、俺はなんとなく思った事を口に出してみた。
「今回の相手になる連中ってよ、人数が多いけれど、なんか寄せ集めの感じがするよな。親父も言っていたけれど、最近急に大きくなった暴力団だしさ」
「さすが京ちゃん。俺もその辺の金で動くチンピラの寄せ集めだと思ってる」
「そんな仮契約っぽいすぐ裏切りそうな奴ら、俺んちでは危なっかしくて使わねぇけどな」
「いや、それなりに金さえ積んだら、これほど忠実になる部下はいないんじゃない? 連中、自分の命にさえ危険が及ばなきゃさ」
 そう言ってジプシーは上半身が裸になると、そのまま、鞄から出したホルスターを脇に下げた。そしてリボルバーを抜くと、すばやくシリンダーの中の弾丸チェックをして、グリップの底にあるイニシャルの様な刻印を一瞥し、ホルスターに戻す。
俺はジプシーの、その一連の動作とその胸元で光っているロザリオを、いつもの如く不思議な気持ちで眺めていた。







ネット小説ランキング>SF部門>「えんじぇるず聖夜」に投票 ネット小説の人気投票です。投票していただけると励みになります。(月1回)





ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう