えんじぇるず聖夜・4
チャプター・4 ほーりゅう
(間違いない。昨日は暗くて遠目だったけれど、今日は昨日と違ってメガネをかけていたけれど。彼だ。てっきり年下の中学生だと思っていたのに。まさか同じ高校の同じクラスの委員長だとは)
昨日に引き続く偶然で、授業が始まっても私は、そのことばかりが頭によぎる。特に手がかりも無く初めての土地で、果たしてどう一人の人間を探せば良いのかと、昨日は夜遅くまで引越しのダンボールをあけながら考えていたのに。
尋ねたい事は、ただひとつ。紫織自身も知らないロザリオの出所。委員長の彼が本当に同じものを持っているのであれば、単刀直入に聞いてみようか。それともしばらく様子を見てみようか……。
授業内容は、若干前にいた高校の方が進んでいたようだ。しかし、同じ内容でもレベルは今の方が少々高い。前の、上流階級の家庭の生徒が多かった高校では、私はそれなりの成績で、品行方正を装っていたおかげで先生の受けも良かった。今回の編入試験もどうにかクリアしたが、授業に身が入らないと、ここではかなりきわどい成績になりそうだ。だが、はやる気持ちで、内容が頭に入っていかない。
その時、教室の後ろのドアの開く音がした。はっと振り返ると、一人の男子生徒がゆっくり入ってくる。すらっとした長身。染めたのだろうか綺麗な茶色い髪、こちらは色素が薄いのか透き通った茶色の瞳。その瞳が私の上で一瞬止まった。だが、興味が無いかのように、すぐに視線を外し、そのまま無言で席に着く。
「……遅刻をしても、お咎めなし?」
思わず、隣の席の夢乃にささやいた。夢乃はちょっと後ろの様子を伺い、先生の動向を確認しながら、小さい声で答えた。
「彼は城之内京一郎って言うの。授業に出てきたらいい方ね。先生も、静かに授業が出来るなら、彼に対しては何も言わないわ」
私は、こっそり振り返って様子を見てみる。確かに大人しく席についているが、既に眠たそうに窓の方を眺めながら、顎に片肘を付いている。
「あなたも彼には近づかない方がいいわね」
そう続けて聞こえたので、私は夢乃を見た。ちょっと困ったような顔をして夢乃は言った。
「彼、お父様が極道の組長をしているそうだし、彼自身も暴走族のリーダーらしいわよ」
私はびっくりした顔をして、固まった。
(あまり、この高校やクラスの悪い印象を与えない方が良いかしら)
私の顔を見て、副委員長らしく夢乃はそう考えたのだろう。それきり彼女は私語を慎んだ。 |