えんじぇるず聖夜・3
チャプター・3 ジプシー
「彼女は転入生の宝龍紫織さん」
夢乃が紹介してくれた。
「ホームルームや一時間目の授業が始まる前に、もう案内を出来るならしておいてって担任に言われたのよ。で、こちらは、あなたを職員室まで迎えに行くのをすっかり忘れた、このクラスの委員長の江沼聡君」
「……また過ぎたことを」
俺達の会話を聞いている間、転入生は俺の顔を見つめていた。最初、驚いたような顔をしていた。だが最後の方では、ギラつく程の威力はなかったが、挑むような眼光に変わっている。
続けて話している夢乃の言葉を聞きながら、すばやく俺は頭の中でもう一度、この顔・ほうりゅう・十五〜六歳・・・・・・などのキーワードをチェックした。しかし、やはり俺の中で思い当たる人物はいない。
夢乃の話がちょうど区切りのよいところになったので言った。
「夢乃、今から校内で案内できるところはするんだろ?」
「そうね、時間もまだまだあるし。そうそう、あなたの席は私の隣でいいかしら? 机を教室まで運んできているのよ」
「ええ、お願いします」
そう言って宝龍の視線が外れ、運ばれてきていた机の方へ向かった。そのタイミングを見て、俺はうつむきながら夢乃の首筋に口元を寄せて囁いた。
「調べろ」
一瞬夢乃は目だけで俺を見て、小さくうなずく。そして宝龍の後を追って机の方に歩いて行った。
彼女達の後姿を目で追いそうになったが、頭を軽く振って視線をそらす。多分彼女を見る俺の目は、先程の彼女がした挑むような眼差しになってしまうはずだからだ。 |