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えんじぇるず聖夜
作:国沢裕



えんじぇるず聖夜・20


チャプター・23 ジプシー

 成り行き上俺は、ほーりゅうを家まで送り届ける事になる。まあ、聞きたい事もあるし、おそらく彼女も俺に何か用があるに違いない。
 前を歩く俺の後を付いてきながら、ほーりゅうが先に聞いてきた。
「……あんた、警察官?」
「いや」
 当然それだけの返事では納得できないだろうと思い、ちょっと考えて続けた。
「俺はただの高校生だけれども、警察の手助けをするだけの力がある。あとは、……クラスの誰かにはもう聞いているんだろ? 俺は夢乃の親父さんにも世話になっているし」
 どこまで納得したのかどうか頷きながら、ほーりゅうは言う。
「だから拳銃持って乱闘して、他人の家を壊しても警察が揉み消してくれるんだ」
「あの壁を壊したのはお前だろ?」
「あ、……そうでございました」
「俺は今回招待された形であの家に行った。誰かさんの不法侵入とは違う。閉じ込められていたドア以外に壊した物はないし、人も殺していない。今回警察に迷惑はかけるような事は何もしていないさ」

 そこまで話をした時、公園の前を通りかかったので、俺は中に入って行った。ちょっと戸惑ったようだが、ほーりゅうも後をついて来た。ブランコと鉄棒しかない小さな公園だった。ベンチも見当たらなかったので、俺は指差して、ほーりゅうをブランコに座らせる。
「さて」
 俺は、ブランコの柱に寄りかかりながら言った。
「あんたの執念には脱帽するよ。答えられる限り教えてやる。俺に何の用だ」

 しばらく、ほーりゅうはどう切り出そうか考えているようだ。そして、おもむろに首の後ろに両手を回すと、留め金を外してネックレスを外した。
 そのまま無言で俺に手渡してくる。
 受け取った俺は驚いた。
「俺と同じロザリオ……?」
 俺は自分のロザリオを引っ張り出し、見比べてみる。
「重さも形も材質も、ほぼ同じだな。……違うのは中の石の色だけか」
 ほーりゅうが言った。
「あんたが同じ物をしているのを偶然見たの。私が日本に残ったのは、そのロザリオの秘密を知りたいから。……あんたのそれ、何処で手に入れたの?」
 思わず、俺は無防備に答える。
「俺の物は、母親から形見で貰ったものだ」
「くれる時、お母さん何か言っていなかった?!」
 勢い込んで、ほーりゅうは聞いてきた。
「……普通、形見って亡くなった後に貰わねぇ?」
「あ。そっか、ごめん」
 ほーりゅうは何かテンパっている、ぎりぎりの状態なのだろうか。
 黙り込んだほーりゅうを見ながら、とりあえず俺は以前に母親から聞かされた話があるか、うろ覚えながら考えてみる。

『……は、緑色をした本物の石が入るのよ。ヴェナスカの、カディアって名前の不思議な力を持つ石。石それぞれに4つの属性があって……確か、五芒星・聖杯・杖・剣。でも、その石は一族にしか伝わらない。このロザリオを作った時、私はイミテーションってわかっているから色違いで中の石を青色にしたの』

 確か、話し始めはそんな感じだった。当時六歳だった俺は理解できない言葉が多くて聞き流した。今ではある程度、内容自体は理解出来ている。
だが急に今、ほーりゅうに知っている全てを告げるには、俺の気持ちの整理が出来ていない。何故なら、それを語るには外せない、俺がこの世で最も憎むべき相手の事も話さなければならなくなるからだ。
「悪い、特に思い出せない」
 そう言いながらロザリオを返す。俺の言葉に、ほーりゅうは明らかに落胆したような顔をした。
 だが、恐らくこのロザリオに関する秘密の糸口は、俺からしか見つけ出せないだろう。……奴との接触さえなければの話だが。
 全て教えると言ったのに実際は知っている事を隠している後ろめたさもあり、俺からの告白に時間がかかってもいいのならと考え、俺は続けて言った。
「……そのうちロザリオについて何か思い出すかもしれない。それまで待っていてくれるなら、まあ、どうせ同じクラスだし、周りを邪魔にならない程度にならうろついても」
「本当!? ありがと! 思い出せるように手伝うよ!」
 顔をぱっと綻ばせ、とても嬉しそうに言ったほーりゅうに一抹の不安を感じたのは、俺の気のせいだろうか。







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