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異世界落語 作者:朱雀新吾

夜明け前

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魔族撤退

「あの力は……王子か」
 シーンダ=スタンリバーは少し離れた場所から、マドカピア王族特有の強い闇の力を感じていた。

 ふとワープゲートが開いたかと思うと、中から愛想の良い若者が姿を現す。表情とは裏腹に、その姿は傷だらけだった。
「シノか。其方の首尾はどうだった?」
「どうだったじゃありませんよシーンダ様。とんでもないハズレクジでしたよ。もう、散々だったんですから」
 口を尖らせて文句を言うケス=シノ。
 杖は折れ、口の端からは血が垂れている。

「失敗です。そして、王子もサイトピア軍に連れて行かれました」

「……そうか。こちらも御覧の通り、成果なしだ」
 ラッカを顎で指して、現状を暗に説明する。

「その様ですね。王子にハナシカとテレビジョン。どれも手には入りませんでしたか。どれか一つに絞れば良かったのかなあ。陛下に良い所を見せようと頑張り過ぎました。読みが甘かったですね。まあ、ここは潔く引き上げるのが得策です」
「ああ」

 そう答えてシーンダ=スタンリバーはラッカに語りかける。 
「そういう訳でラッカ=シンブ殿。残念だが、勝負はお預けだ」
「へん、あとちょっとで決着がついていたんだけどな。当然、俺の勝ちでな」

 そう言いながらも、ラッカの身体は傷だらけ、既に満身創痍であった。
 対するシーンダ=スタンリバーも、一見平気そうに見えるが、その実相当なダメージが溜まっている。

「王子は必ず、取り返す。それに……一福殿。また会おう」
 シーンダ=スタンリバーがそう言うと、一福はにこやかな笑顔で応える。

「ええ、シーンダ様。それまで、練習されていて下さい」
 ズズ、とチンチローネをすする振りをした。
 それに対してシーンダ=スタンリバーは剣を掲げ、騎士の礼を返すと、マントを翻した。

 そして、マドカピアの使者は、新しく作ったワープゲートへ入り、その姿は消えていった。

「……はあ。何とか死なずに済んだって所か」
 ラッカが大きく息を吐きながら地面に座り込む。
「いやはや、立派な魔族さんでしたね」
 一福が関心した様に言うと、ラッカが疲れた様に頷く。
「ああ、まあそれは確かに俺もいつも……」

「勇者様!」
「ラッカ様!一福様!」
 そこへ、ナナセとダマヤが大慌てで駆けて来た。

 ナナセが震える声で告げる。
「クランエ様がサイトピア軍に捕縛されたって……」
「何だって!!」
「魔族の疑いを受けておるそうなのです」
 ダマヤも珍しく神妙な表情である。顔も真っ青に青ざめている。

「ったく。どうしたもんか……」
 最悪の事態に、ラッカが頭をかきながら考え込む。

「………………」
 一福は黙って、魔族が現れ、消えていった二つのワープゾーンを眺めていた。
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