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異世界落語 作者:朱雀新吾

夜明け前

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クランエ=イビル=マドカピア

 空を埋め尽くすキメラの大群。
 それが意味する事は、誰が見ても理解出来た。
 魔族が攻めてきたのだ。

 そして、クランエはすぐに気がついた。
 あれは、自分を探しているのだと。

――とうとうこの日が来たのか。

 自分の生きる道が、何者かによって制限されている事に違和感はなかった。それがクランエの人生であり、運命だった。

 クランエはこのまま魔族に連れていかれても良いと思っていた。
 それが自分が出来る唯一の、サイトピアへの恩返しなのではないかと。
 これまで魔族の抑止力となっていた自分の最大限の、そして最後の利用方法は、それ以外に考えられない。

 逃げ惑う人々の中、広場の中心に立ち、迎えを待つ。
 交渉する自信はあった。
 誰にも手を出させない。
 でないと、ついていかない。

 だが、誤算が生じた。
 クランエの周囲にはキメラだけしか存在せず、交渉出来そうな者がいないのだ。
 理性無きキメラは口から火を吐き、家並みを破壊している。
 ただ破壊を行う様に命令されているのだろう。
 それはマドカピア王の怒りの表れだった。

「やめろ…… 」

 私はここだ……連れていくなら好きにしろ。だが――この国の皆には、手を出さないでくれ。

 ふと見ると、広場の噴水近くに、逃げ遅れた少女がいた。
 キメラはそれに気がつくと、空中高くから狙いを定め、猛スピードで襲いかかる。

「やめろおおおおおおおおお!!! 」
 そう叫ぶと、ドクンと胸が鳴った。

 クランエの背後に闇の気配が忍び寄る。
 いつも遠ざけていたそれを――無理矢理掴み取る。
 すぐさまステータスが改竄され、闇の力が解放された。魔族の証――闇属性魔法である。

「ぐおおおおおおおおおおおおお!!」
 クランエの背中から真っ黒な羽根が生える。
 空を見上げると、雄叫びを上げ、飛び立つ。
「うおおおおおおお!!」

 少女を襲おうと下降していたキメラにそのまま突撃し、腹に風穴を開ける。
 キメラは絶命し、地面に落ちていった。

 更にそのままキメラの大群に突っ込むと、一匹の首を掴みそのままの勢いでもぎ取る。
 残った胴体から血飛沫が噴水の様に吹き出し、落ちていく。

 それから何度も何度も、それを繰り返した。
 ただ、自分の生まれ育った国の人々を、守る為に。



 気がつけば辺りは血の海だった。




 助けた少女が、地面にへたり込んでいる。
――良かった。無事だった。
 クランエは笑顔で手を差し出す。

「…………ひ!」

 だが、少女の目は恐怖に大きく開かれ、小さな身体はガタガタと震えていた。
――おかしいな、もう魔物は倒したのだが。

 不思議に思うクランエ。周囲から声が聞こえる。

「化物だ!! 」
「魔族だぞ!!!」
「闇属性魔法だ!!」
「こいつは魔族だ!!! 背中から黒い羽根が生えたんだ! 」
「俺は見たぞ!!」
「魔族を殺せ!!」

 クランエは己を罵る声を全身に受けながら、薄れ行く意識の中、思った。

――ああ、皆を守れて……良かった。
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