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異世界落語 作者:朱雀新吾

ダマヤ正道【ダマヤ問答】

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ダマヤ正道【ダマヤ問答】⑤

「シーンダ=スタンリバーああああああああああああ!!」

 頭上から声が響き渡る。
 そこには空高くを飛んでいる、ドラゴンの背から飛び降りてくる一人の人物。

 着地と共に、怒号が響き、土煙が上がる。

 砂煙が晴れ、そこに立っていたのは、サイトピアの絶対勇者、ラッカであった。

「シーンダさんよ。旦那をパーティーに誘うなら、俺に一言断ってからにしてくんねえかな?」
 派手なラッカの登場にシーンダ=スタンリバーは一切驚いた表情を見せず、応対する。
「ラッカ=シンサか。ほう、新しくパーティーを組んだのか。ピート=ブルースが亡くなったと聞いた時は驚いたものだが」
 その言葉にラッカは口の端を持ち上げる。
「へえ、ピートの事、覚えてくれてんのかい?」
「当然だ。敵ながら、あれほど清々しい男もいなかった」
「じゃあさ、俺が死んでも驚いてくれるかい?」
「ああ、当然だ。貴公の様な騒がしい男が死ぬとは思えんがな」
「へ!そいつは買い被り過ぎだぜ!実はつい先日、一度死んでな」
 ラッカは満面の笑みを浮かべながら言う。
「それから生まれ変わって、名前が『ラッカ=シンブ』になったんだ。宜しくな。それに新しい玩具も手に入ったんだ。今度はおたくのエクスカリバーにも負けねえぜ。さあ大将、早くやろうぜ?」
 そう言って、黒く光る聖魔剣を好戦的にブンブンと振り回す。

 シーンダ=スタンリバーは一度溜息を吐くと、ラッカを見据える。

「やれやれ。『ハナシカ』を無傷で連れてくる事が任務なのだが、戦いは避けられぬか。やはり宿命なのだろうか」
「そうそう、俺とあんたは、斬っても斬れない、斬りあう運命なんだよ」

 ラッカの言葉にクスリともせずに、シーンダ=スタンリバーはゆっくりと剣を抜く。
 白銀に煌めく聖剣、エクスカリバーである。

「ではラッカ=シンブ殿……御相手致そう」

 ターミナルの最強が、対峙する。

「うおおりゃああああ!!!」
 ラッカが走り込み、素早く剣を乱舞する。
 オクラホマスキャンダラスサービスを振っては返し、返しては回転して横、斜め、縦と薙ぎ続ける。
 その動きに規則性はなく、軌道は全く読めない。
 だが、シーンダ=スタンリバーは一切焦る事なく堂々と剣を正眼に構え、物凄い集中力で一つ一つ弾いていく。
 時折、聖魔剣に纏うラッカの命の焔がシーンダ=スタンリバーを襲うが、魔力を帯びた黒い甲冑がかき消す。

「腕を上げたな。いや、まさしく生まれ変わったのだな、ラッカ=シンブ。まさにこの太刀筋、動きは、化物だ」
「そいつはありがとよ!あんたは相変わらず行儀良い騎士様だこと!」

 そう言ってラッカはオクラホマスキャンダラスサービスに焔を地面に吐かせると、その勢いで宙へ飛び上がり、クルクルと回転しながらシーンダ=スタンリバーの背中に回り込む。
 直ぐに横一文字に剣を払うが、その背中は残像で、霞を切ったかの様に揺らぎながら消えた。
「…………ッッ!!」
 その瞬間、振り返っていては間に合わないと悟ったラッカは、必死に、早くオクラホマスキャンダラスサービスを真上に掲げた。
 ガキン!!!という鈍い金属音と重い衝撃が、ラッカを襲う。
 背後に回ったラッカの後ろを、シーンダ=スタンリバーが逆に取ったのだ。
「……ミラージュアーマーだっけか?本当、やめてよねそれ。ドキっとすんだから」
 笑いながら冗談を言うラッカだが、その額からは汗が流れている。
 シーンダ=スタンリバーに真上から渾身の力で剣を押しあてられ、肩から鮮血が飛ぶ。

「…………く!!オクラああああ!!」
「はいよ!」
 返事をすると、オクラホマスキャンダラスサービスは口から焔を最大限に吐き出した。
 たちまち辺りは焔の海と化す。
 それにはシーンダ=スタンリバーも後退せざるを得なかった。剣を退き、間合いを取る。

「はあ、はあ…………」

 肩の傷口を、ラッカの周囲を飛んでいる焔が焼き、止血する。
 ラッカは苦笑を浮かべながら、マドカピア最強の騎士を見つめる。

「やれやれ……そっちこそ化物だよ。やっぱり、力じゃ敵わねえな。俺の武器はすばしっこさだからな。勇者らしくねえけど……」
 呟きの様なその言葉に答えたのは、オクラホマスキャンダラスサービスである。
「何言ってんだ。お前はお前らしくあればいいんだよ!絶対勇者ラッカ!」
「ははは!泣かせる事言うんじゃねえよ相棒」

 そして、決意した様に軽く頷くと、言った。

「よし、オクラ!あれやるぞ!」
「オッケー相棒」

 そしてラッカは聖魔剣を正面に、地面と平行にかざすと、右手で白い柄を握り、左手で、剣先を握った(・・・・・・)

 不思議な事に、ラッカの左手から血が流れる事はなく、普通に刃を握っている。
 黒い剣先が柄に変形していたのだ。

「行くぜ、二刀流!」

 そう叫ぶと、両端を同時に引っ張り、聖魔剣を真っ二つに分裂させた。

 右手には白い剣、左手には黒い剣。
 どちらにもお馴染み、一つ目お化けのような顔がついている。

「ケケケケ!これでちったあ身軽になっただろうがよ!おい、キャンもたまには何か言えよ!」
「…………………………ラッカ殿………………共に参ります」
「よし!行くぜオクラ!キャンドル!」

 叫びながら疾風の如く駆け出すラッカ。横回転を小気味良く加えながら、走る勢いと回る勢いを合わせて一気に加速すると、シーンダ=スタンリバーに襲い掛かる。
 白剣黒剣白剣黒剣白剣黒剣白剣黒剣白剣黒剣。
 白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒。
「秘技『市松舞踊(チェッカーフラッグ)』!」 
 先程までのラッカの一太刀のリズムで、数十太刀が放たれる。

 重さは当然半減しているが、とにかく手数が多く…………速い!!

 シーンダ=スタンリバーの大剣では、その攻撃は捌き切れない。
 だが、避けようにも直ぐに間合いを詰められ、逃げられない。

 そして、肩に衝撃が走ったと思った次の瞬間、鮮血が飛んだ。

「ひゃっはあああああ!!これでおあいこだな!シーンダさんよおおおお!!!」
 更に追撃の刃が襲う。
「……見事だな。ラッカ=シンブ」

 速さに対して速さでは勝負にならない。
 シーンダ=スタンリバーは目に見えない速さで回転して襲ってくる白黒の剣の嵐を無視して、エクスカリバーを構え、グッと力を溜める。

 そして――ただ、一閃。放った。

「うわああ!!!!」
 それを咄嗟に二刀で受けたラッカだったが、風圧と共に吹き飛ばされる。

 転がった先には、一福が特に心配そうでもなく、立っていた。
「大丈夫ですか?ラッカ様。なんだかあちらの騎士様の方が勇者って感じですけど……」
「うるさいよ!それを言うな!」

 一福に突っ込んで、ラッカは起き上がり、直ぐに構える。
「いやあ、全然重さが違うな。流石だよあの大将は」
「いいかラッカ。オレ達はヤツに何太刀でも喰らわしてやらねえと意味はねえ。だが、あっちの攻撃は一発喰らっただけでも致命傷、そんぐらいに思っておけ」
「分かってるよ!」

 まさに死闘。だが、両者とも、どこか、楽しげであった。

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