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私、かかりつけ薬剤師に立候補します! 作者:青砥 英世
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薬歴その3 「薬剤師って命を救えるの?」

薬歴その3 「薬剤師って命を救えるの?」

「仕事を辞めて南国で過ごそうと思うの」
 大学時代の同級生である夏子から数年ぶりに電話がかかってきて、食事に誘われた。行ってみるとテレビでも見かける有名シェフのレストランで、夏子は一番高いシャンパンを頼み、久しぶりの再会を祝った後、夏子の第一声がそれだった。
 普通の人なら「あんたバカじゃないの?」と言うところだが、夏子をよく知る私にしたら「サバンナで狩りをしながら過ごすの」や「宇宙で毎日宇宙食を食べるの」なんてことも平気で言う女だと思っているから、どこかはわからないけど「南国」という安全そうな場所を選んだ事に私は安心した。
 そして、第二声がこれだ。
「それでね、私の事業を引き継いでくれる人を探していて、薬局事業を久美子にお願いしたいと思っているの」
 一緒に働いている部下に言うならともかく、数年ぶりに再会した友人に二言目で言う事ではないだろう。私の事を信頼して言ってくれているのはわかるのだが、一度も一緒に働いた事のない私の何を知って言っているのかは疑問だ。嬉しい気持ちが一瞬湧き出たあと、大きな不安がそれを流していった。

 夏子変わった女だ。
 大学を卒業して二年目で自分の薬局を開業した。私の知っている薬剤師の中では最速の開業だった。しかし、夏子は卒業後すぐにでも開業しても良かったのだけれど、資金繰りと人脈作りに時間を使っていたため2年もかかってしまったと言っていた。そして、開業後も堅実に成果を上げていった。
 薬局は一年目に2号店、二年目には5号店まで増やしていき、それとは別に岩盤浴やエステ、ホットヨガ等のビューティー事業も始めた。社会人三年目には全てを軌道に乗せて、その間にMBAを取得。四年目からはMBAを生かして薬局コンサル、開業支援事業、講演会等もしていたらしい。というのも、私が直接知るのもここまでで、連絡を取る機会がしだいに薄れていったため、人づてで知ったり、ネットや雑誌で見た情報だけになってしまったからだ。
 一方では、夏子は私の事になると逐一メールをくれた。
 例えば、私が薬剤師向けの雑誌に記事を投稿したり、たまに講演会の座長をしたりする事があると「記事を読んだよ」とか、「座長お疲れ様」というようなメールをくれた。こちらから記事を書いたから読んで欲しいと言った事は一度もなく、講演会の日取りだって座長をやる事だって知らせた事もない。しかし、夏子は必ずメールをくれた。
 不思議に思って尋ねると、薬局業界は狭いから私が聴かなくてもいろんな人が私に教えてくれるの。と言っていた。だから、変な事できないのよ。ほんと薬局業界ってつまらないわ。と、言っていた事もつけ足しておく。

「私ね、日本と仕事に飽きちゃったの。日本って閉鎖的でしょ?薬局業界なんて特に酷くてね、大した事ないおじさんたちがしょぼい未来について語っているのよ。厚労省に呼ばれる事もあって私も最初は日本のため、医療のために何かしようと思っていたのだけど、なにせ仕事が遅くてね。しかも、何か提案するとそれは上に確認しないと、とか馬鹿げていると思わない?かかりつけ薬剤師制度だって私が提案したのが十年前よ?しかも自分たちのアイデアみたいに言ってくるし、ほんっと嫌気がさしたわけ」
 夏子が本当にかかりつけ薬剤師制度を厚労省に提案していたのかどうかはわからないけど、薬局で最初に薬剤師指名制度を導入したのは夏子の薬局だった。その時は賛否両論、というか否定する方が圧倒的に多かったと思うけど、否定派を押しのけて指名ブームを作っていったのは確かだ。
「で、南国で何をするのよ」
 私は聞きたい事がたくさんありすぎたので、とりあえず最初から一つ一つ聞いていこうと思い南国について訪ねた。
「スコール見ながらカールスバーグ飲むの」
 南国でバカンスを過ごすつもりなのだろうか、それとも今の財産で毎日スコール見ながらカールスバーグを飲んでダラダラ過ごすのか、それはわからないし、詳しく聞いたところで私にはそれほど関係ない事だと思い、それ以上聞く事はしなかった。要は、やりたい事や次の事業が見つかっていないという事なのだろう。そして、最大の問題点は私が夏子の事業を引き継ぐかどうかだ。
「美容事業はもう移譲したから、あと薬局事業だけ。今の店舗数は本当に大切な店舗以外は整理したから6店舗だけ。神奈川には桜木町と元町とみなとみらい、東京には六本木と渋谷と新宿。どれも一等地で十分な収益を上げているわ。これを久美子に移譲したいと思っているの。どうかしら?」
 夏子のサマーファーマシーはすべて一等地のビルに入っていて、顧客も高級路線だ。薬局を健康ステーションとして、処方箋調剤や薬の販売以外にも、健康相談や栄養相談を24時間受け付けており、男性管理職を対象とした美人臨床心理士によるストレスマネジメント、活動量計を通じた健康管理、スポーツジムとの提携他、VIP向けに広く業務展開している。ビジネス雑誌に取材される事も多く収益率の高さはトップクラスで業界でも常に話題となる。普通の経営者にとっては喉から手が出るような話だが、まったく経営の経験がない私に声がかかった事にあらためて驚く。
「どうして私に?」
「薬局事業といっても人間の健康を扱う仕事。だから適当な事はできないわ。薬剤師で久美子以上に信頼できる人を知らないもの。経営をやめるのはめんどくさくなったからだけど、それを移譲するのは誰でもいいってものじゃないのよ」
「いや、そうじゃなくて私が出来る事なのかって話で……」
「あなたの噂はクローバーの佐藤君から聞いてるわよ」
「佐藤君って、もしかしてうちの社長?」
「そうよ。だって、佐藤君はテニス仲間だし、よく飲みに行くもの」
「だからって、馴れ馴れしくない?」
「だって佐藤君年下よ?」
「そうなの?」
「そうよ。五歳年下だったかしら」
 まったく知らなかった。確かに若く見えるとは思っていたけど、うちの会社の社長が私たちの五歳も年下なんて。
 私はみなとみらい病院に十年勤めた後、クローバー薬局に入社した。再就職先にクローバー薬局を選んだのは、購入したマンションの近くにあったという理由だけだったし、入社時に大して会社の研究もせずに面接を迎え、普通に面談が終わった後、すぐに採用の連絡が来た。今思い出せば真ん中に座っていたのが社長だったのだろう。言われてみれば若かったような気もするが、当時はただの若作りと思っていたと思う。実際に五歳も若かったとは知らなかった。
「それにあなた、一度クローバーの出世も断ったのでしょう?」
 出世というか、薬局長からエリアマネージャーにならないかと言われた事がある。それは確かに断った。当時、母が乳癌とわかりこのタイミングでさらに仕事が忙しくなるというのは母を見捨てるような気がしたので、嬉しい話だったけど丁重にお断りした。それ以来その話は来なくなった。一度断っただけで完全に出世の道が途絶えるものかと思ったものの、薬局長という現状も嫌いではなかったので、このままでもいいかとも思って今も薬局長を続けている。
「佐藤君はね、あなたの育成の能力を買っているのよ。今、エリアマネージャーをしているのは、あなたの部下だった子ばかりっていうじゃない。佐藤君はね、久美子には今でも経営側に回って欲しいみたいなの。でも、他の若手で席がうまっちゃったから、もう上には上げられなくて、今の薬局長という立場で久美子を飼い殺しているみたいで辛いって言っていたわ」
「そう、ずいぶん高く評価してくれているのね」
「もったいない、もったいないっていつも言っているわ。それって会社的にも社会的にもっていう両方の意味も含むの。佐藤君にそんなにもったいないなら、私の会社の社長にさせるわって言ったら、それいいですね、だって」
「私の知らない所で話をつけないでちょうだい。だいたい私は会社を経営した事ないのよ。それ、わかって言ってる?」
「久美子、社長ってそんなに難しい事じゃないの。ただ意思決定をすればいいだけで、後は周りが動いてくれる」
「簡単に言わないでよ。私ができるわけないじゃない」
「大丈夫よ。私の秘書もあげるし、副社長だって若いけど優秀よ?それにイケメン。彼女募集中で年上好きで私も迫られた事あるから、あなたの事も嫌いなタイプじゃないと思うの。どうかしら?」
「私は公私混同しないタイプなの」

「それに彼、結構上手いのよ」
「もうやめて」
 仕事ができる人なら、イケメンとか上手いとか関係ない。むしろブサメンの方が変に緊張する事も、男として意識する事もないだろうから、仕事に集中できると思うのだが。
「イケメンかどうかはどうでもいいわ。それにその副社長とか役職者はそれでいいの?」
「彼はリーダーよりもサポート役のほうが向いていて、本人もそれを希望している。完璧な社長秘書と言っても良いくらい。それに、他の役職者は社長になるにはまだ早いわ」
 すぐに社長に就任する。こんなうまい話が急にくるなんて、やはりこれはちょっとおかしいのではないだろうか。もう一度整理して考えてみると不明点が多い。
「これって私じゃなくてもいいんじゃない?」
「そう言うと思った。でもね、久美子、あなた自己評価が低すぎるのよ。あなただってこの地域ではそれなりに名前が知れてきているじゃない。薬剤師会からも声がかかっているって聞いているわ」
「薬剤師会から?」
「あら、知らなかった?いけない、まだ言っちゃいけない事だったみたいね。今のは忘れて」
 夏子の言う通り、私はこのみなとみらい地区では地道に名前をあげてきた。学会に行くと、薬剤師会の理事長から挨拶されることも多くなってきて、研修会の座長の仕事も増えてきている。どこからか、薬剤師会から次の理事の候補という話も噂では聞いた事がある。でも、それは有名になりたかったからじゃない。目の前の事を一つ一つこなしてきたからこの状況になっただけだ。
「あなたはいったい何のために仕事をしているの?クローバー薬局ではこれ以上の出世は難しいわ。出世をしなければ世の中は変えられない。私の薬局を継いでくれれば、私の薬剤師会での立場、地域医療推進委員会の委員長もそのまま引き継がせるわ」
「待ってよ、話が早すぎるわ」
 私は夏子の話を制そうと思っても、夏子はやめない。
「私の今の立場は会長が狙えるの。なぜかと言うとね、会長は酒の飲み過ぎで肝臓が半分壊れて倒れる寸前。副会長は間抜けにも不倫がばれて一気にの女性問題が複数発覚。それで失脚寸前。そうなったら、あなたにも会長、副会長のチャンスが回ってくるわ。どうする?」
 ここまでの熱意で押し迫られるとこのまま押し切られそうなきがする。そこで、自分の話だけでなく夏子の話に切り替える事にした。
「夏子、あなたが今まで積み重ねてきた立場とキャリアをそんな簡単に捨ててもいいの?」
「良いから今話をしているの。それに私がやるよりもあなたのような正しい人がやる方が世の中的にも良いと思うの」
 正しい人。夏子は大学時代から私の事をそう言っていた。

 中学、高校と生徒会長を務め、大学でも学生代表を務めた。
 親が教師と警察官だからかもしれない。とにかく世の中的に間違った事は一切許されず育った。一般的に「正しい人」という表現は間違いないと自分でも思う。その代わり周りの期待に素直に答えるだけのいい子ちゃんで過ごしたつまらない人生だとも思う。夏子の様に破天荒に生きればもっと面白いのかもしれない。
「まぁ、結論は急がなくてもいいわ。一週間待つからそれまでに決めてくれる?」
 夏子は笑顔でそう言うと、トリュフソースのかかったフォアグラを一口で頬張りシャンパンで一気に流し込み、店員を呼ぶと、「ピンドンある?」と聞き、「ありません」と即答されると、一番高いロゼシャンパンを注文した。

 私と夏子は野口大学薬学部の同期だ。
 夏子と私はクラスでも浮いていたと思う。私は最初の授業から一番前の席に座り、講義を聞いていた。私は自分で言うのもアレだが、真面目な性格だ。講義中はしっかりノートをとっては不明点を全て講義の後に質問に行き、さらに家では今日の講義の復習はもちろん、図書館に行って今日の講義以上の知識は得られないものかと、図書を漁る日々を過ごしていた。
 教授にも言われたのだが、これほど講義を真面目に聞く人は珍しいのだそうだ。私にとっては希望の大学に入学し勉強をさせてもらっているのだから、一つでも知識を得られるよう努力するのが普通だと思っていたのだが、周りとの温度差がある事にも気づいていた。
 前期試験が終わり、さすがに大学生活ずっと一人というのはまずいと思い、後期はサークルでも入ろうかと思ってはみたものの、たくさんありすぎてサークル棟をうろうろしては、決められない毎日が過ぎた。決められない理由としては、どのサークルもおちゃらけていて真剣味が感じられなかったからだ。
 高校時代にテニスで全国に出場している私としては、今更テニスサークルに入っても、実力に引かれるだけだろうし、コーチをやってあげるのも自分が楽しめないような気もして気が引けた。
 結局サークルを選べずに一週間が過ぎた。
 その日も授業を最前列で受けようと講義十五分前に席を取った後、教科書を開いて今日の講義内容を確認していると背の高い日に焼けた女子が目の前に立っていた。それが夏子だった。デニムのショートパンツに上はグレーのタンクトップに麻の白シャツを羽織っただけという、いかにも夏子という名前がぴったりの夏女だった。
「ねぇ、あなた私と友達にならない?」
「あなた誰?」
 私は驚いた。一度も見た事も話をした事もない人に友達にならないかと言われた。
 高校時代に誰だかわからない後輩(女子)にバレンタインデーにチョコレートをもらって告白までされた事もあるが、この類なのかもしれないと身構えた。
「やだなー、同級生だよ?っていっても前期はほとんど講義出てなかったから私の事知っている人少ないと思うけど」
 そう言って、あははと笑い私の左側の席に腰掛けた。しかも、私の荷物をわざわざどかして。
「わたしね、前期はバイトしてお金を稼いだ後、東南アジアを旅していたの。アジアの文化や経済とか医療の現状を見たくて。それでね」
 彼女は話を続けてきたので、私は止める。
「ちょっと待ってくれない。事情が飲み込めないの」
 いきなり友達になろうと言われて、そして自分の事情をいきなり話されても困るばかりだ。
「ごめんごめん、あなた尾崎久美子さんでしょ?私は、横峯夏子。同じ薬学部の1年生」
「それで、私に何か用事でも?」
「だから、友達になって欲しいって言っているの。さっきも言ったけど、前期に大学来なかったから友達いなくてさー。だってあなた成績1番なんでしょ?しかもぶっちぎりの」
「そうだけど……」
 私は夏休み明けに掲示板に貼られた成績表を思い出した。
 成績表と書かれたA4の紙の一番上には私の名前書いてあって予想通りの結果に満足した記憶がある。それと同時にこんな成績表示を大学になってもやるのかと、それに驚いた事も思い出した。
 しかし、それが目的で友達になってほしいという事なのだろう。
「私に勉強を教えて欲しいの」
「だいぶ話は見えてきたわ。でもね、私もあなたと同じで友達がいないから、あなたの期待しているような過去問とか予想問題的な物は持っていないわよ」
「それでもあなたは1番を取っちゃうんでしょ?」
「まぁね」
「それでもいい。ううん、それならむしろそのほうがいい。それって、あなたの勉強方法が凄いって事なの。私はそれを身につけたいの」
「そんな簡単なものじゃないわ」
「でも、一番のあなたに勉強教えて欲しいの。代わりに私は世界の経済とか世の中の事教えてあげるから」
 この時私はイエスと言った覚えは無いけど、これをきっかけに夏子と一緒にいるようになった。
 夏子は私に限らず何かで1番を取った人には声をかけているらしく、その人から必ず一つでも教えを乞うのだとか言っていた。プライドなく頭を下げ、しかも一つでも学びを得ようとする姿は見習うべきだったが、私には真似ができなかった。
 夏子は相変わらず講義をサボって昼夜バイトをしたかと思うと、海外へ旅立ち、そこでの文化や風俗、医療事情やその土地の男についても私に教えてくれた。しかし、ほとんどが名前も聞いた事無いような小国の話ばかりであり、あまり参考にはならなかった。たまにアメリカの最先端技術について教えてくれたけど、それは1回しかなかった。夏子に言わせると富国は物価が高いから、その分をバイトで稼ぐのが大変らしいのだ。
 そして夏子の話が終わると私の講義の時間になる。
 大学の講義内容とそれに付随する内容を完璧な資料にして夏子に見せながら、大学教授よりもわかりやすく教えていく。だいたいの大学教授というのは教える事が下手だ。それをわかりやすく噛み砕いて夏子にもわかるように説明した。
 このようにして私たちは知識の交換をした。
 夏子のくれる知識は私が欲しがったものでもないし、私が教える講義の要約に比べたら内容の薄いものだったけれど、世界を旅する勇気の無い私にとって現在の世界情勢を知る上で貴重な情報源であった。
 そして私たちは周りから孤立するよう卒業まで二人でに過ごした。でも、決して仲良しというわけではなかった。お互いの事を尊重しながらも譲らない部分も多くて、たくさん喧嘩もしたけど翌日には一緒にランチを食べていた。
 卒業後私は薬剤師としてのスキルアップのため、みなとみらい病院で勤める事を選び、夏子は卒業後にすぐに薬局経営者の道を選んだ。
 今回夏子が南国に行くと言ったのは、もしかして東南アジアで事業を始める事にしたのかもしれない。
 夏子の会社を引き継ぐという話の答えは一週間後にすると言うとそこからは夏子の男の話になった。
「今の彼氏が十歳年下なんだけど、すごく良いのよ」
「それは副社長の事?」
「あの子は別。おやつみたいなもの」
「なによ、おやつって」
「常食じゃないって事。甘くて美味しいけど、あれだけ食べていたらダメって事」
「よくわからないけど、今の彼氏とは違うの?」
「正直、今の彼氏もおやつみたいなところあるけど、常食にもなりえるわ。ちゃんと私と向き合ってくれて、私の事を叱ってくれる。楽しいだけじゃなくて、お互いにとってメリットがあると思うの。ちょっと写真見てみる?」
 夏子はスマホを取り出し、彼の写真を私に見せつける。
 ツーショットで二人の顔がどアップで写っている写真は正直暑苦しいが、楽しそうで羨ましくもある。それよりも気になることがあった。
「彼氏何歳?」
「たしか、大学生。大企業のおぼっちゃま」
「この犯罪者」
「何言っているのよ。立派に成人しているわよ、心も体も。それに若いって良いわよ。エネルギッシュで。自分も元気になるもの。久美子は良い人いないの?」
「私は……」
 しばらくご無沙汰であった。仕事以外で男と喋る機会なんてほとんどない。ましてや夏子みたいに大学生なんてありえない。
「いないのね。誰か良い人紹介しようか?」
「いいわ。自分で探すから」
「なかなか見つからないわよ、40過ぎてるおばさん好きなんて」
 夏子の言う通りだった。三十代ではまだ街を歩いていても声をかけられたが、四十過ぎてから声をかけられるのはウォーターサーバーの試飲くらいになってしまった。
「職場に男はいないの?」
「一人いるけど……」
 その黒一点は桑原真澄。
 もともと薬剤師というのは女子の方が多く、クローバー薬局では8割が女子である。そして、クローバー薬局みなとみらい店では、なぜか男子は一人だけで、しかも男子とも言い難い「真澄ちゃん」一人だけだ。そもそも、みなとみらい店は全員女子だけであったのだが、女子だけでは雰囲気が悪くなっていたので、真澄ちゃんを連れてきてもらったという経緯がある。一人男子がいるだけで薬局の雰囲気がガラリと変わった。しかも、女子っぽいところがあるので、他のスタッフとも上手くやったし、男として見る人はおらず色恋沙汰になる事もなかった。
「その子を従わせれば良いじゃない。昼も、夜も」
「あんた何言っているのよ」
 ゲスな笑顔で夏子は赤ワインを一気に飲み込む。気がつけばシャンパンも開けて、ボトルは赤ワインに変わっていた。夏子の顔もかなり赤くなっており、服もはだけてきて話している内容同様にだらしなくなっている。
「男が一人しかいないのだから、その子しかいないじゃない」
 今まで働いてきて真澄ちゃんを男として見た事なんて一度もない。彼を男として見られる女は少ないのではないだろうか。というか、そもそも仕事中にそんな事は考えた事もない。
「もういいわ。私、男がいなくてもこれからも生きていけるし」
「強がっちゃって」
「仕事も男も、もうちょっと欲張ってもいいのじゃないかしら?」
 夏子はボトルに残ったワインを全て自分のグラスに注ぎ、一気に飲み干すと黒いカードを出してお会計を済ませた。
 私たちはレストランを出ると一台の真っ赤なオープンカーが止まっていた。
「久美子、さっき話した彼」
 夏子は運転席に座っている男を指差して言った。本当にお金持ちのボンボンのような身なりだが、顔はモデルと言っても良いくらい整っている。
「じゃぁ、良い返事を期待しているわ」
 夏子はそう言うと、車に乗り込み発車した。一人取り残された私はゆっくりと自分のマンションへ歩いて行った。

 レストランから歩いて五分のところに自宅がある。私が三十五歳の時に購入したタワーマンションだ。
 三十歳で母が他界したあと、父は自分は家族に迷惑をかけたく無いと言って、自分で高級施設の権利を買い家族に介護されない人生を選んだ。それに加えて結婚の予定もなかった私はマンションでも購入しようと思ってみなとみらい地区を選んだ。ここは何と言っても夜景が綺麗だ。30階建の23階に私の部屋はあって、そこから観覧車やランドマークタワー、インターコンチネンタルホテル等、みなとみらいの夜景が一望できる。
 自宅に到着すると、その夜景を見ながら家にあるシャンパンを開け、グラスに注ぎ一口含んだ。しばらくすると、すこし体が冷えてきたので部屋に戻った。
 私はいったいどうすればいいのだろうか。
 夏子の会社を引き継ぐか、それとも今の会社に残るか。
 私はふと本棚を見る。私の本棚は困った時に解決してくれる。六段の本棚には、上2段がビジネス書、中2段が自己啓発本、下2段が小説(主に医療小説)というように分類分けしてあり、上から今の自分に参考になりそうな本を探す。
 松下幸之助や本田宗一郎という名経営者の本や、孫正義や星野佳路、堀江貴文など現在のビジネスリーダーの書籍が並んでいる。それらの本から1冊取ってみては、パラパラと眺め内容を確認しては本棚に戻し、また1冊をめくっては本棚に戻した。今はリーダーとしてのアドバイスは必要なかった。
 次に自己啓発書の棚の本を右端から手に取っていく。
 自己啓発書も新書が話題になったらとりあえず買って読んでいたが、ある時私は書かれている内容が同じ事に気付いた。それは「やりたい事を全力でやれ」ということで、その方法論が言い方を変えて書かれているだけである。その本を読んだ後はいくぶんか勇気をもらえるのだが、結局内容は同じものだと改めて気づかされる。
 その「やりたい事」を考える時が今なのだろう。私のやりたい事とは一体何なのだろうか。本棚から部屋に視線を戻してみる。
 私の部屋は1LDKなのだが、LDKが20畳ほどの広さがあり、普段はそこで過ごしている。そこには今座っているソファーの他に、ほとんど見ないテレビ、ガラスのダイニングテーブルとオーク材のチェア4脚、パソコン用のデスク、その横にはパキラの鉢植え、空気清浄機やエアコンなど、目につく物はそれくらいで、クローゼットを開けても、毎日着ていく分の7着の服と出かける時用の服が4着。料理はもうしなくなったから、フライパンも捨てた。キッチンにあるのはコーヒーメーカーと電子レンジくらい。趣味と言えるようなものは何もなく、家にいれば本を読んで過ごすくらいだった。
 やっぱり、自分がやりたい事なんて無いのかもしれない。
 今までだって、目の前の事を一生懸命やってきただけだ。それは好きだからやったわけじゃ無い。ただ、目の前にやるべき課題がありそれをこなしてきただけだ。自由に生きて良いという選択肢を夏子に提案されたような気分であり、その自由という私にとっての不自由に混乱するばかりであった。
 クローバー薬局に残り、今までと同じ薬局長という仕事を続けるか。それとも、サマー薬局の社長として経営者となるか。
 答えがまとまらないためPCに接続されたプリンタから1枚紙を取り出し、真ん中に十字線を引き4等分し、左上には将来やりたい事、と書き、それ以外のマスはさらに十字線を引き4等分した。自分で書いておいて「将来やりたい事」というのは、小学生的に思えて少し恥ずかしい。
 仕事、プライベート、社会貢献。その3つをテーマに考えていく事にした。
 仕事のマスには薬局長、社長、その他と書く。プライベートには、恋人、友人、家族と書く。社会貢献には、寄付、ボランティア、東北支援と書いた。


 給料でいえば経営者のほうが明らかに良いだろう。しかし、今の給料だってみなとみらいにマンションが買えるくらいだ。不満があるわけではない。どうせ、お金を持っていても使い道なんてないのだから。
 それでは、やりがいはどうだろうか?
 今の薬局長という立場は好きだ。薬局のスタッフはみんないい子達だし、毎日が楽しく仕事ができている。サマー薬局に行ったらどんなスタッフがいるかはわからない。夏子の会社だからきっとくせのあるスタッフも多いだろう。しかし、今より熱量高く仕事をしている事も想像できるが、こればかりは蓋を開けてみなければわからない。



 翌日、軽く二日酔いでクローバー薬局に出社した私は、デスクワークに専念し、自分のデスクで来月のシフト表を作成しながら、もし私が抜けたらどうなるかをシミュレーションしてみた。
 次の薬局長にするなら管理薬剤師をしてくれている真澄君以外にいないだろう。いろいろ考えてくれているし、スタッフからの信頼は厚いし仕事も淡々と行う。やらせればきっと私以上の薬局長になり得る男かもしれない。リーダーとしての考え方を教えこめばきっと期待に答えてくれるだろう。ただ、男のわりになよなよしていることが一番気になる。あれはわざとやっているのか、それとも本当になよなよなのか。どこかで確認しておかなければいけない。
 そして、真澄君の次の管理薬剤師は真悠子だろう。異動の多いクローバー薬局の中で、唯一入社時からこの店舗に従事している。ここでの仕事のやり方や全ての物のありかも知っていて勤務期間が長いため常連患者が付いている。困った時に真悠子に聞けば全て答えてくれる。ただ、内気で大人しい事が心配だが役割を与えたらそれに応じてくれるだろう。きっと大丈夫だ。
 他に、心配なスタッフといえばクビ寸前だった春香だけど、おじさんが亡くなった一件以来薬剤師として目覚めたみたいで、指名もコンスタントに取れるようになってきた。もちろん春香はまだまだな部分は大いにあるけど、きっと真澄君がフォローしてくれると思う。
 というわけで、クローバー薬局は私が抜けても大丈夫だ。
「よし、大丈夫」
「久美子さん、今週の勉強会大丈夫って事ですね」
「え?なんの事?」
 その声に振り向くと真澄君が一枚の紙を持って立っていた。
「今週末にある勉強会の申し込みが今日までです。だから今出欠取っているところなのですけど……」
「あっ、そう」
「久美子さん、俺の話聞いてませんでしたね?」
 真澄君は呆れ顔だ。
 シミュレーションに集中しすぎていたら、まったく真澄君の声なんて聞こえなかった。
「で、なんの勉強会?」
「糖尿病です。なんだか高名な先生をお呼びして一般向けのフォーラムと医療者向けの講演やるみたいで、久美子さんどうしますか?」
「真澄君は行くの?」
「俺は行きますよ」
 真澄君の見せてきた勉強会の告知用紙の内容を確認すると、正直行きたいと思えるようなものではなかった。しかし、真澄君が行くのであればこの機会に話をしてしまうのが効率的だろう。
「行くわ。勉強会は午前中よね?真澄君、勉強会の後時間ある?ちょっと話したい事があるから一緒にランチでもどうかしら?」
「だ、大丈夫です」
 真澄君は私の依頼には絶対にNoとは言わない。この返答も想定内だ。しかし、よく見ると顔がにやけている。高いものでもご馳走してもらえるとでも思っているのだろうか。
「じゃぁ、当日よろしくね。でも真澄君、悪いけどにやにやするほど良いものは食べさせてあげられないわよ」
「え?俺にやけてました?」
「えぇ」
「恥ずかしいな。あはは……」
 そう言って真澄君は頭をかくと、他のスタッフにも出欠を取りに行った。

 次の土曜日、県民ホールで開催されている糖尿病シンポジウムに出席していた。大ホールで高名と呼ばれる先生が一般向けに最近の糖尿病治療薬について講演している。大ホールの席は最近の健康ブームのせいか、ほとんど埋まっている。私たちはその中でなんとか三人分の空いている席を探しだし、私を中心に左に真悠子右に真澄君が座っている。真悠子はメモを取りながら真剣に聞いているが、真澄君はこちらをちらちらと見てくる。そう思ったら大きなあくびをして眠たそうだ。この集中力のなさは一体なんなのだろうか。それとも、ちらちら見てくるというのは、私がこの後大事な話をする事を早くも察しているのだろうか。ここで、ちゃんと話を聞きなさいとい言いたいところだが、私も二人に今回の事をどう伝えようか考えているため、偉そうな事は言えない。
 結局講演の内容は一切頭に入ってこず、気がついたら大きな拍手で終了していた。荷物を持って立ち上がると、私は真澄君に尋ねた。
「真澄君このあたりでどこか良い店知らない?」
「それならパンケーキなんてどうですか?」
「いいわね、そこにしましょう」
 私は甘いものはそれほど好きではないが、他に選択肢も思いつかないためそこにする事に決めた。真澄君が先導し私と真悠子が付いていく。
「真悠子さんも一緒ですか?」
「そうよ、二人に大事な話があるの」
「そうですか。え?大事な話?」
「詳しいことは着いたら話すわ」
 真澄君はなぜか一瞬残念そうな顔をして早足で店に向かっていく。私たちは置いて行かれないよう足を早めた。
 真澄君の目指す先はすでに行列ができていて、私もテレビで見た事のある有名店だった。
「ちょっと並びそうですけど、良いですか?」
「えぇ、構わないわ。真悠子はこの後の予定はない?」
「はい、大丈夫です」
「じゃぁ、待ちましょう」
 私たちが行列の最後尾に並ぶと、店員からメニューの紙を渡された。パンケーキ以外にもオムレツやハンバーガー、ロコモコなど種類は豊富だが、すぐに食べたいものは決まった。
「私は、オリジナルパンケーキセットでドリンクはアイスティーにするわ」
「はやっ!」
「久美子さん、こんなにメニューがあるのに迷わないのですか?」
「迷わないわ。迷っている時間が無駄よ」
「おぉー。でも、なんでオリジナルセットにしたのですか?俺、メニュー多すぎていつも決められないんですよ」
「ここにNo1オススメって書いてあるじゃない。オススメでNo1なら間違いはないわ」
「じゃぁ、私も久美子さんと同じものにします」
 真悠子は私のオーダに相乗りした。
「いや、ちょっと待ってくださいよ。だってこんなに種類があるんですよ?ほら、横浜限定の黒船パンケーキとか、季節限定のベリーミックスとか」
 真澄君はすぐに決められず、メニューの右をみたり左を見たり、そう思ったら裏側を見たりしてせわしない。
「だいたい、いくら悩んで決めたとして、その結果に満足するかしないかは自分次第よ。つまり、これぐらいの事で悩んだところでたいして結果は変わらないのよ。男だったら早く決めなさい」
「は、はぁ……」
 真澄君には私がいなくなるまでに、リーダーとしての意思決定の考え方を教えないといけないわね。時間がかかりそうだけど。
「いい香りですね」
 真悠子がつぶやくと私もその香りに気づいた。どこからともなく風に乗って蜂蜜の香りが漂ってくる。
「素敵なお店ね」
 そのパンケーキ屋は周りを菜の花で囲まれていてミツバチや蝶々も飛び交っている。外観だけでもインスタ映えしそうな、女子には一度は入ってみたいと思わせるおしゃれなお店だ。
「このお店はもともと菜の花からつくる蜂蜜屋さんだったのですけど、パンケーキにかけたらすごく美味しいって話題になって、パンケーキも始めたんです。中は広いのであと十五分も待てば中に入れると思います」
 真澄君が得意げにこのお店の紹介をしてきた。
「真澄君、ところで注文は決まったの?」
「うっ、まだです」
「そろそろ決めないと、店内に案内されちゃうわよ」
 それまで何の話をして過ごそうかしら。まだ本筋を話すには早いし。そう思っていると、誰かに肩をたたかれ、私は振り返った。
「あら、小野さん?」
「久美子さん、ご無沙汰しています」
「あなた、ずいぶん痩せたわね。誰かと思った」
「久美子さんの熱血指導のおかげです」
 そう言ったのは以前私のかかりつけ患者だった小野さんだ。
 三十五歳で糖尿病、高血圧、高脂血症を合併し通院していた。その最大の原因は生活習慣だった。彼の言う通り私が熱血指導し生活習慣を変えたのだが、一年前転勤で大阪へ行ってしまった。私の元を離れてメタボに戻るかと思いきや、以前よりもシュッとしている。
「横浜にいる時よりも痩せたんじゃない?もしかして……」
 私が彼の隣にいる小柄な女性に目をやると彼は恥ずかしそうに答えた。
「あっ、彼女です。栄養士やってて」
 そう言うと、えへへと笑いながら彼女の方を見る。彼女もにっこりと笑顔を返した。二人は本当に仲が良さそうだ。
「初めまして」
 彼女は私に控えめに挨拶をした。
「彼女、こう見えて久美子さんよりも厳しいんですよ」
 やはりそうか。小柄な女性は気が強い。
「ちょっと、やめてよ」
 彼女は小野さんをつつきながら困り顔をしている。
「でも、おかげでますます健康になってます」
「それは良かったわ。放っておくとメタボに戻っちゃうから、もっと厳しくしていいわよ」
「ちょっと、久美子さんこれ以上はキツイっすよ」
 今の体型を見る限り、かなり厳しそうだがまだまだいけるだろう。
「小野さんをこれからもよろしくね」
「はい」
 小柄な女性は私に笑顔で返事をして、列の最後尾に二人で手をつないで並んだ。
「久美子さん、あの人薬局を離れたらリバウンドすると思っていたのに頑張っていますね」
「あら、真悠子も覚えているの?」
「えぇ、印象的な方だったから。それに初回指導は私だったのですけど、ちょっと合わなかったから久美子さんにお願いした人だと思います。私より熱血指導の久美子さんのほうが合うと思って」
「そういえば、そうだったわね。真悠子の指名をとってしまってごめんね」
「そういう意味じゃないんです。適材適所というか、久美子さんに指導してもらって、結果は良くなりました。私ではできなかったと思います」
「そんな謙虚にならなくていいのよ。真悠子だってやればできるわ」
 やはり、真悠子は謙虚すぎる。自己評価が低い。自分の実力の半分程度しか自分のことを評価していない。真悠子にはもっといろいろやらせて自信をつけさせなければいけない。
「あの、久美子先輩はどうして薬剤師になったのですか?」
 少し間が空いたあと、真悠子が質問をしてきた。内容は真面目な真悠子らしい。
「そういえば今まで話す事はなかったわね。ちょうどいい機会だから話してあげるわ。私は小さい頃から医者になるよう言われていたの。父親が医者だから。でも、国立の医学部受験に失敗して、滑り止めとして受けていた野口大学の薬学部には合格していたの。浪人して医学部をめざすのか野口大学の薬学部行くか迷ったわ。父は浪人しても医学部受験するように言ったけど、母は野口大学なら薬学部でも良いんじゃないかって」
「それで、薬学部に進学したのですか?」
「そう、いろいろ迷ったけどね。母は私が女だから薬剤師がちょうどいいって言ってくれた。父は医者の夢を弟に託した。私もそれでいいかなぁって思って薬剤師の道に進んだ」
「久美子さん弟いるのですか?」
「さっき講演会で喋っていたのが弟よ」
「えぇ!?」
 二人は大げさとも言えるリアクションの後、呆然としている。
「3名でお待ちの尾崎さま〜」
「は〜い、ほら行くわよ」
ちょうど私たちの順番が来たみたいだ。中に入ろうとすると、真澄君がまだ呆然と立ち尽くしていた。
「ほら、行くわよ」
「あっ、はい。痛っ」
 真澄君は左腕をどこかにぶつけたのか、右手で押さえて私たちの後に続いて店内に入ってきた。
 内装はハワイアン風で天井も高く、予想以上に広々としていた。4人掛けのテーブル席に着くと、すぐにオーダーした。
「オリジナルセット3つで、ドリンクはアイスティーで先にください」
「えっ、ちょ、ちょっと待ってください」
 真澄君が此の期に及んで、オーダーを制止した。
「真澄君は違うの?」
「いや、じゃぁそれでいいです」
「じゃぁ、それで。それでいいならそういいなさい。まったく男らしくないわね」
 私はつい一言余分に言ってしまい、真澄君は照れ笑いをする。一緒に働いていたら毎日のように行うこのやりとりもあと数えるだけだと思うとなんだかさみしい気分になる。
「じゃぁ、パンケーキがくるまでに二人に話しておきたい事があるの」
 私は真澄君と真悠子を交互に見つめた。二人ともいったい何を話すのだろうかと真剣にこちらを見返してくる。
「私、クローバー薬局を辞めようと思うの」
「えー!?」
 二人は声を合わせたかのように驚いたリアクションをとったが、それも想定内で私は話を続ける。
「二人はサマー薬局って知っているかしら?」
「もちろんです。あの有名な……」
 二人は頷く。二人にとって何がどう有名なのかは今は聞かないでおこう。
「あの社長が私の友人なの。夏子は大学時代から私の親友でね、この間食事をした時に彼女から経営を頼まれたの。薬局の経営はやった事ないけど、サマー薬局ならやってもいいかなって思ってやる事に決めたわ」
「えっ、そんな。私たちは……」
 真悠子はこれからどうしたら良いのかという表情で私を見つめる。
「それで、二人にお願いがあるの。クローバー薬局はあなたたち二人に任せたいと思っている。具体的には真澄君には薬局長、真悠子には管理薬剤師になってほしい。会社にもそう言うつもり」
 二人とも下を向いて黙り込んでしまった。きっと頭の中ではいろいろと考えているのだろう。何かを言おうと顔を上げるけれども、何も言い出せない様子だ。
「結論は急がなくていいわ。今月中に決めてちょうだい」
 二人は完全に沈黙してしまった。というか私がそうさせたのだけど。しかし、すぐにパンケーキがテーブルに運ばれたおかげで長く続かずに済んだ。
「じゃぁ、食べましょう」
「はい」
 私達のテーブルだけは、重い空気が漂っているが、テーブルに出された三枚のパンケーキと店内に響くウクレレの音色がハワイアンの風を吹かせ、その場の空気をいくらか軽くさせた。私はパンケーキをナイフで切り一口頬張ると、普通のパンケーキとは違いに気づいた。小麦粉だけではない、何か香ばしい香りが口に広がる。
「あら、美味しいじゃない。でも、これって小麦粉だけじゃないのかしら?」
「実は小麦粉以外にも、ピーナッツやそば粉を使っているみたいなんです。だから風味が香ばしいんですよね」
 真澄君はメープルシロップをパンケーキにドバドバかけながら答えているが、シロップをかけすぎてもはやパンケーキのシロップ漬けになっている。それではそば粉の風味も感じられないのではないだろうか。
「確かに、ほのかにそばの香りがするわね。ところで、真澄君シロップかけすぎじゃない?」
「あっ、はい」
 真澄君大丈夫かしら。よっぽど薬局長になるのが不安なのだろう、まったく周りが見えていない。そう思っていると真悠子が言った。
「久美子さん、私に管理薬剤師は難しいと思います」
 真悠子はいつも以上に不安そうな表情だ。
「どうして?」
「私にはできないと思います」
「真悠子、あなたは自分の力を過小評価しすぎよ。私はあなたにできると思ったから頼んでいるの」
「でも……」
 そう言って、真悠子は俯向く。真悠子は謙虚だ。それゆえ自己評価は低く、自分を責めてしまう傾向にある。
「あの店舗で患者さんやスタッフ、向かいの病院からしたら、あなた以上に信頼している薬剤師はいないわ。あなたが今まで積み重ねてきた事を評価したいの」
「……」
 真悠子はそれでもうつむくばかりだった。私たちは少しの間無言でパンケーキを頬張った。
「しかし、美味しいわね。言われてみればそば粉も効いているしナッツも……」
 そば粉?ピーナッツ?
「あっ、いけない!小野さんはどこ?」
 私は席を立ち上がり小野さんの席を探した。右奥の小野さんの席まで急いで駆けつけ、今にもパンケーキを口に入れようとしたその右手をつかんだ。
「待って、小野さん。これを食べたらあなたアナフィラキシーを起こすわ」
「久美子さん?」
「これ、そば粉が入っているもの。あなたアレルギーあったでしょう?それにピーナッツも。あなたのアレルギーばかりよ」
「あっ……」
 そう言うと、小野さんはパンケーキを刺したフォークを置いた。
「あなた、もしかして彼女にアレルギーの事言っていなかったの?」
「はい……。大した事じゃないかと思って」
「以前、そば食べて酷い湿疹になった事があったじゃない」
「あれは、たくさん食べたから……」
「量は少量でもアレルギーを起こす事はあるのよ。せっかく頼んだのに悪いけれども、他のものを注文したほうがいいわ。それもアレルゲンフリーのものを」
「はい……。わかりました」
「彼女さん、小野さんをよろしくね」
「あっ、はい……」
 彼女さんは自分が小野さんのアレルギー歴を知らなかった事をバツが悪そうにしていた。それを横目に私は自分の席に戻った。
 私たちのテーブルは真澄君と真悠子で何を話していたのかはわからないが、ハワイアンの店にはふさわしく無いほど重い空気が漂っていた。
「ごめんね、さっきの小野さんアレルギー持ちでね、そば粉とかピーナッツとかいろいろあったから、パンケーキはやめさせたわ。ところで、さっきの話なんだけど」
 真悠子はまた俯いてしまい、真澄君は冷や汗をかいていた。
「ねぇ、真澄君?聞いてる?」
 真悠子の自信のなさはいつも通りだが、真澄君の様子がおかしい。薬局長の立場はまだ早かったかしら。
「いや、ちょっと……」
「ちょっとじゃなくて」
 明らかに変だ。冷や汗だけでなく顔が赤くなって息苦しそうにしている。私は席を立ち真澄君の抑えている腕を見た。
「これ、どうしたの?」
 真澄君の腕は赤く腫れあがっていて、その周辺に紅斑が広がってすでに熱を帯びてきている。
「さっき、蜂に刺されたみたいで」
「ちょっと真悠子、救急車呼んでくれる?」
「あっ、はい」
「店員さん!AED持ってきて!!それとこの中で医師か看護師はいませんか?」
 私は大声で叫んだけれども誰も呼びかけに応じない。この中で医療従事者は私たちだけか。普通ならこれだけ人がいれば看護師一人くらいいるはずなのに。責任を問われたく無いから隠しているのかもしれない。どちらにしろ、こうなったら自分でなんとかするしかない。
「AED持ってきました」
 店員さんが駆け足でAEDを持ってきてくれた。これで最悪の場合これで蘇生する事ができる。
「真悠子、救急車は?」
「い、いま呼びました」
「じゃぁ、真澄君を横にするわよ。手伝って」
「は、はい」
 椅子に座っている真澄君を私と真悠子でショック体位に移す。頭を下げて足の下に真澄君のカバンを入れて30cmほどの高さまで上げる。真澄君は咳も出始め喘鳴が悪化し息苦しそうだ。また、冷や汗もでており、脈を取ってみると120回/分と早くなってきている。顔色は青白くなってきた。このままだとまずい。
「救急車到着しました!!」
 真悠子の声とともに、救急隊が担架を持って店内に入ってきた。
「ここです!」
 私は右手を上げて場所を知らせた。事情を察知した店員さんたちがすでに道を開けていてくれて出口までの道が出来ている。
「蜂毒によるアナフィラキシーだと思います。脈は120回で意識は保ててるけど悪化してる、それと……」
 私は現時点での情報を救急救命士のリーダーと思われる男性に伝えると、彼はそれをメモしながら部下に指示を出し、部下は迅速にエピペンを救急車内から持ってきて真澄君の太ももに注射した。その後、真澄君は担架に乗せられ救急車に向かった。私とリーダー救命士もそれに続いて、真澄君が救急車に乗せられると私も同乗した。
「これからみなとみらい病院へむかいます」
「真悠子はあとでタクシーで来て」
 最後に真悠子にそう伝えると救急車のドアが閉まり病院へ向かって発車した真澄君はぜぇぜぇと呼吸し状態は悪いままだ。
 みなとみらい病院なら救急車なら5分で到着できる。エピペンでアドレナリンを投与したから、最悪の事態にはならないはずだ。
 大丈夫、大丈夫。何度も自分に言い聞かせる。
「久美子さん……」
 真澄君がゆっくりと口を開いて私の名前を呼んだ。
「大丈夫よ、すぐに着くから」
「俺、死ぬのかな」
「大丈夫よ。さっき、エピペンも打ったし、これくらいの事で死ぬわけないじゃない」
 エピペンを注射したことで心停止という最悪の状況は免れたと思われる。そうは言っても不安は残る。
 アナフィラキシーでは年間数十人亡くなっている。ハチに刺されただけなんて、馬鹿にはできない。
 私はとっさに真澄君の手を握って元気付ける。
「久美子さん」
「もうすぐ病院着くわよ」
「好きです。だから薬局やめないでください」
「はぁ?こんな時に何言っているのよ。ありえないわ」
 私がそう言うと、微笑を浮かべて真澄君は目を閉じた。間も無く救急車が病院に到着した。

 救急車がみなとみらい病院に到着してからどれくらい経っただろうか。
救急車が到着後、真悠子もすぐに到着し、処置室の前のベンチで処置が終わるのを二人で待っていた。
 待っている時間は五分のようにも思えるし、三十分待っていたようにも思える。きっと処置はルート確保した後、輸液とステロイドを投与をするだけだ。それほど時間はかからないように思えるのだが、なかなか医師が出てこないため、もしかして何かあったのだろうかと思ってしまう。
「久美子さん、真澄さん大丈夫でしょうか?」
「大丈夫。気づくのが早かったし救命士によるエピペン投与もあったから、大事に至る事はないわ。もしかしたら真澄君歩いて出てくるかもしれないわよ」
 真悠子を不安にさせないように、冗談交じりに言った。するとやっと、医師が出てきて私たちに向かってきた。
「桑原さんのお付き添いの方ですね」
「はい」
「もう大丈夫です。バイタルも安定して意識も鮮明です。しかし念のため一日だけ入院してください。あとは看護師から伝えますので」
 そう言うと医師は他の患者の処置があるのか、別の処置室へ向かっていった。それと同時に看護師が真澄君の乗ったストレッチャーを押して出てきた。私たちはそれに駆け寄る。
「真澄君、大丈夫?」
「久美子さん、すいません。ご迷惑かけて」
「よかったわ。無事に回復して」
 真澄君の顔色は血色も回復し、皮疹も幾分収まっている。呼吸苦も喘鳴なく落ち着いた様子だ。
「それでは、早速病棟へ向かいます」
 看護師は真澄君のストレッチャーを押して病棟へ向かっていく。私たちはそれについていった。
 ストレッチャーで運ばれた先は同じフロアの病棟の個室であった。そこで看護師は救急看護師から病棟看護師に変わり、入院について「ご入院される方へ」という冊子を用いて説明され、看護師は手際よくバイタルを取ると他の業務に戻っていった。
 真澄君はすっかり状態も安定し、薬の副作用なのかスヤスヤと眠っていた。その横で安心した様子の真悠子は全身から力が抜けたように椅子に座っていた。
「真悠子、ありがとう。あなたはもう帰ってもらって大丈夫よ」
「はい」
「それと、食事代」
 私は5000円札を自分の財布から抜き取ると真悠子に渡した。真悠子はあの状況でも間を見てちゃんとお会計してくれていたのを私は見ていた。
「あっ、でも」
「今、細かいお金無いから、それで勘弁してちょうだい」
「あっ、はい……」
 真悠子はそれ以上言い返すことはなかった。素直に私の言葉に従い自分のカバンを持って部屋を出ていった。
 そのあと、部屋には私と真澄君の二人きりとなった。
 私は真澄君の寝顔を見て救急車で「好きです」なんて言われていた事を思い出した。
 私、告白されたのか。
 「好きです」とかもう何年も言われた事なかった。
 二十代の頃にはたまには言われる事はあったけど、三十歳で母の看病が始まり恋愛どころではなかった。それをしていたらデートや合コンも誘われなくなり、自分からデートに誘う事が苦手な私は、気が付いたら一人で過ごしていた。
 私なんかが「好きです」なんて言われる事は、本当にありえない。それに真澄君はまだ二十代後半だから、友達にも若くて可愛い子なんていくらでもいるだろうに、四十過ぎたおばさんにどうして好きだなんていったのだろうか。
 もし、私と真澄君が付き合ったら周りからはどう見られるのだろう。親子は行き過ぎだと思うけれど、カップルとは思われないだろう。そう思って真澄君の顔を覗くとやはり若々しい顔立ちでどうしたって、私と釣り合うわけがなかった。
「久美子さん、やっぱりかっこいいです」
「真澄君起きたの?まだ寝てていいのよ」
 真澄君は開眼はせずゆっくりと言葉を発する。またしても私の心を惑わすような言葉だ。努めて冷静に振舞うけれども、果たして隠しきれているだろうか。
「今日だって冷静かつ迅速に対応してくれたし」
「薬剤師だって医療者よ?これくらいできなくてどうするのよ」
「はは……。やっぱ凄いな」
「あなたもBLSやALSを受講しなさい。研修費で落ちるから」
「はい、勉強します」
 ついつい説教臭くなってしまうのが私の悪いクセだ。でも、私が今伝えたい事はお説教じゃない。
「真澄君、救急車で言った事覚えてる?」
「あっ、はい……」
 覚えていてくれてよかったと少し安心したし、あれが寝言や戯言でなかった事が嬉しかった。
「真澄君、私の事好きだって言ってくれてありがとう」
「え?」
「あの時、私「ありえない」って言ったけど、違うの。ありえないっていうのは、十歳以上も年下のあなたから、しかも救急車の中で死にそうな人にあんなこと言われるなんて状況がありえないって事なの」
「は、はぁ……」
「だから、少し考えるわ」
「えっ、てことは……」
「あなたとお付合いするという事じゃなくて、私の気持ちも整理させて欲しいって事。急な事で私も混乱しているの。だからもう少し時間をちょうだい」
「じゃぁ、仕事を辞めるっていうのは?」
「それも含めて」
「そっかぁ……。でも、久美子さんでも悩む事あるんですね」
「悩むっていうか、考え直すだけよ?今の状況を客観的に整理して、何が自分にとって最高の選択なのか。それを考えるには時間が必要なの」
「はは……。久美子さんらしいですね」
「でもね、私だって人間よ。少しくらい情動的になる事くらいあるわよ」
 私がそう言って真澄君の手を握ると、急にレートが上がってアラームがなってしまった。直後、看護師が駆け足で訪室してきた。
 私はなんでもない事を説明したが念のためバイタルを取りなおし、心電図にも問題ない事を確認すると、看護師は他の業務へ戻っていった。
 モニターが付いている今はあまり刺激的な事はしないほうが良いかもしれない。
「あの、久美子さん、俺本気です」
 看護師が部屋を去った後、真澄君が私の手をぎゅっとつかんできた。
「だめよ。また看護師さん来ちゃうじゃない」
 そういって、真澄君の手を逆の手でゆっくりと解いた。
「真澄君って意外に男らしいのね。いつもはなよなよしていて、てっきりおねぇ系かとばかり思っていたけど、やる時はやる男なのね」
「えっ、はぁ……」
 真澄君は照れているみたいだが、やはり薬局長になれるほどの度胸はあると思う。私の代わりに十分なりえる。
「そういえば、家族への連絡がまだだったわね。この部屋携帯電話使えるみたいだから連絡しなさい。私、ちょっと買い物行ってくるから」
 私は真澄君のカバンを渡すと、病院内にあるコンビニに向かった。
 私は一度冷静になろうと思って部屋を出たわけだけれど、あのまま押し倒されてもよかったのでは無いかと思ってしまう。病室でそんなことはしてはいけないし、モニターが付いているからまた看護師さん来ちゃうけど。
 私はすぐに部屋に戻るわけにはいかないので、コンビニにむかった。病院のコンビニには入院に必要な日用品が全て揃っている。一泊二日の短期入院といえど、歯磨きやタオル、下着等の日用品は必要だ。それ以外にも必要だと思う物品を次々とカゴに放り込んでいく。それに加えてお菓子やおにぎり、ペットボトルのお茶も追加した。
 私はお腹が空いていた。真澄君のせいでパンケーキを食べ損なっているから昼から何も食べていないのだ。何でもかんでもカゴに入れていくと、最終的にはレジ袋2つがパンパンとなってしまった。それを両手で持ち、真澄君の病室へ戻った。
 病室のドアを開けると、彼と同年代くらいの白衣の女性が訪室していた。
「どうも、お世話になります」
 一瞬入った部屋を間違えたのでは無いかと思ったが、真澄君もいるし間違ってはいなかった。私が「はじめまして、上司の尾崎です」と、挨拶をすると彼女も深々と頭を下げて「みなとみらい病院薬剤部の片倉です」と言った。
 私に告白してきたにもかかわらず、実は彼女がいたのだろうか?という疑念がよぎったが、それはあり得る話で、もしそうだったとしてもそれはそれで良い気もして、とりあえず笑顔で挨拶を返した。
「真澄ちゃんが、ご迷惑かけて申し訳有りません」
 真澄君が真澄ちゃんと呼ばれている時点で彼女ではない事を確信した。そして、どこでも真澄ちゃんと呼ばれている事がなんとも愉快で笑みがこぼれる。
「久美子さん、片倉は大学の同期です」
「あら、そうなの」
 コンビニの袋をテーブルにおろし、飲み物や食べ物を冷蔵庫へ入れていく。
「真澄ちゃんから噂は聞いています。久美子先輩は凄い人だって」
 片倉さんは一度真澄君を見つめた後、急ににやにやし始めた。真澄君は一体私の事をどういう風に言っているのだろう。なんだか背中がむずむずしてくる。そう思った瞬間、また病室のドアが開いた。
「あっ、やっぱり久美子さん来ていたのですね」
 ドアを開けたのは板橋由香だった。私がこの病院で働いていた時にお世話してあげた子だ。ちゃんとこういう時に顔を出すのがえらい。しかし、どこで噂を聞きつけたのだろうかと考えると、きっと片倉さんが板橋に伝えたのだろう。
「話はだいたい片倉から聞いています」
 そう言ってベッド上の真澄君の事の頭からつま先までじろっと観察すると「いいんじゃないですか?」と一言つぶやいた。
「あなたどういう意味で言っているの?」
「いや、別に」
 板橋が片倉さんの隣に腰を下ろすと、何やらヒソヒソ話を始めた。
「ねぇ、あなたたち私と真澄君の関係を勘違いしていないかしら?」
 私が全員を見渡しそう言うと、顔をみあわせてにやにやするだけだった。



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