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日常
作:あきくん


日常
 
 立ち止まり、セーラー服の少女は遠慮げに肘から軽く手を上げる。
 黒猫は静かに顔を上げ、少女のはにかんだ笑顔を確認するとすぐに伏せる。
 ここからいつも少女の日常が始まっていく。
 いつも出合う黒猫。何時からか始めた黒猫への挨拶。それをいつもどおりと認識してからどれだけ経ったのだろうか。そんなことは考えるだけ無駄だと少女にも解っている。いつもなのだから、それは過去も含めていつもなのだ。それほどに自然であり、反するように壊してはいけないという義務感があった。
 考えなくはないが、だからといって変化をさせる理由も求める必要もない。ただ漠然と少女は毎日繰り返していた。
 少女自身がいつもどおりを変えなければ、ずっと同じいつもを繰り返せると思っていた。
 そんなある日。少女は病気で学校を休んだ。
 だからもちろん黒猫と会うこともなく、それはいつもと違う日になった。
「やっぱり・・・」
 いつもどおりをしないから・・・。
 ──そう少女は焦点をあわせず天井を眺め、息を吐き出した。
 次の日。セーラー服の少女は立ち止まり、遠慮げに肘から軽く手を上げた。
 黒猫は静かに顔を上げ、少女のはにかんだ笑顔を確認すると、
「にゃ」
 短く鳴いてすくに伏せた。
 少女はいつもどおりを再開できたことがうれしかった。
 それから何年経った頃だろうか。黒猫は一日だけ姿を見せなかった。
 少女は黒猫がいるはずの場所を何度も確かめ、何度も肩を落とした。それは喪失感のようであり、ある種の開放感のようでもあった。
 次の日。セーラー服の少女は立ち止まり、遠慮げに肘から軽く手を上げた。
「──もう・・・。昨日どうして来なかったの?」
 黒猫は顔を上げ、怒っているようなそれでいて困っているような少女を確認すると、耳をぴくっと動かしすぐに伏せた。
「あれっ?」
 既視感。既知感。いや、少女は今まで気づかなかっただけだ。
 黒猫が少女に鳴いたことと、少女が黒猫に声を掛けたこと。
「あはっ・・・!」
 少女は何故かわからないが妙に可笑しかった。
「そう・・・」 
 一方的ないつもだったんだ。
 空を見上げ、少女はこみ上げる笑いと涙に身を任せ、目にしみる太陽をいっぱいに浴びた。
 いつもはいつもが入り乱れて常に変化している。いつもどおりを繰り返すことも、同じいつもを繰り返すことも不可能なのだ。それに縛られることは自分に縛られているだけだ。
 だから少女は日常を探す。
 黒猫は黒猫の日常をいつも繰り返す。
   了
 


20071031
 何はさておき、ありがとうございました。
 小説にしては物語が先行していないというか、物語に重点が置かれていないというか、そんな気がします。本来なら物語だけですべて説明できれば一番いいんですが、ここら辺がわたしの力の無さです。
 短くまとめ過ぎたという反省はあります。黒猫視点とか、少女と黒猫は実は・・・、とか考えてはあるんですが、それをすべて入れると、文章をまとめるだけで時間がどれだけかかるか判らないので、ギリギリ解るか解らないかにしてしまいました。
 ・・・これはこれでいいか。そう思った時点で完成です。今では怖くて下手に手を入れられなくなってしまいました。ということでやっぱりこれはこれとして完成品です。
 何かこんな感じのよく解らない話というものを、唐突に文章にしたくなるときがあるんです。需要? そんなものは趣味で書いているんだからいいんです。まあ、肯定的な方がいてくれればそれに越したことはないんだけど・・・。
 ──って、やけに後書き長いな。本文より長くなりそう・・・。やめとこ・・・。
 ともあれ、感想を頂ければ幸いです。













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