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第四話:三角関係!? 1
 九条先生が剣道部の顧問になってからというもの、部活時の見学者が急増した。

 やっぱり、なんやかんやいっても人は見かけに弱い。

 なんてったって、九条先生の容姿に関しては、非の打ち所がないのだから。

 その上、達者な口の御蔭で女子だけではなく男子にも人気がある。

 とはいっても、さすがに部活まで押しかけてくる男子はいないんだけど。

 わたしは、女生徒たち(あっ、女教師もちらほら混じって)に、占領された体育館のドアから少し離れた位置にいた。

 だって、ああいう輪の中に入っていくのには、すこし抵抗があるもんね。

 それに、こうやって彼女たちの後ろから様子を見ていると、だれがだれのファンだか手に取るようにわかる。

 なんかおもしろい。

 今までは見かけなかった広瀬先輩のファンも、九条先生のファンに紛れて見学に現れるようになっていた。

 沙羅がいっていたように先輩のファンも意外に多い。

 以前は先輩が嫌がるから見学者がいなかっただけのようだ。

 先生の洋酒の入ったスイーツみたいにとろけそうな大人の甘い雰囲気とは対照的に、なんといっても先輩の胴着姿は凛然としてかっこいいもんね。日本男児って感じ。

 それにしても、九条先生が現れてからというもの、イオはなんだかおかしい。

『俺はおかしくねえ!』

 こういうところが、あいつはガキだ。

 自分の感情を認めようとしない。

 そういえば、いったいいくつなんだ、イオのやつ。

『十九、おまえより年上だ、少しは年長者を敬うって気持ちがないのか地球人には』

『なによ、イオの歳なんて今はじめて知ったんじゃない』

『伊緒乃が訊かなかったからだ』

 そんなのへりくつじゃない。まったく、そういうところがガキだっていうのよ。

『うるさい!』

 それにしても納得がいかない。

 なぜわたしの考えはイオに筒抜けなのに、イオの考えはわたしにはわからないのかって。

 あいつがわたしに伝えようとしたときだけ、言葉としてわかるというのは凄く不公平だと思う。

 だって、わたしはこの身体の正当な持ち主なのだ。

 なのに居候であるあいつの方が主導権を持っているというのは絶対におかしい。

 といっても、あいつの感情だけは時々固いガードを破って漏れてくる。

 いらだっているとか、不機嫌だとか、そんな雰囲気が伝わってくるだけだけど。

 とくに九条先生と広瀬先輩に対するとき。

『ねえ、イオ。九条先生ってイオの探している人でしょ?』

 以前答えてもらえなかった問いをイオにかけた。

『初めてイオに会ったとき、見せてくれた王子様が九条先生なんでしょ』

『ああ』

『でも、本人の身体じゃないんだよね』

『ああ』

『だったら、なぜ王子様と同じような顔をしているの?』

『思うように変えられるのさ』

『イオの星の人は思うだけで肉体まで変えられちゃうの?』

『ある程度は。人間だって、性格が顔に出るっていうだろ』

『まあね。でも、それって多少変わる程度で別人にはなれないもの。 選んだ地球人が元々似ていたっていうのならわかるけど、そんなのってありそうにないし。 それに本人びっくりしちゃうよね、自分の顔が急に変わっちゃったりしたら。 あっ、その前に変な宇宙人が入ってきちゃったほうが驚くか』

 イオは黙り込んでいる。

 こんなとき、相手の顔が見えないっていうのはよけい気まずい。

 相手の表情からうかがい知ることができないのだから。

『乗っ取ったんだ』

『乗っ取るって、乗り物じゃないんだよ。心のある人間だよ』

『もとの持ち主の魂を追い出したってこと。つまり』

 あとの言葉を待ったが、続かなかった。

『そうだ、イオがわたしをトイレに置き去りにしようとしたのと同じことをしたんだ』

『たぶんそうじゃない、あいつのことだから』

 なんだか怖くって、それ以上聞くことも出来なかった。

 まるで、自分の未来を聞いてしまうようで。

 地球人の常識なんて彼らには通じない。

 どんな卑劣な手を使うかわからない。

 いや、地球人のほうが、もっと悪いことをしているのかもしれないけど。
アクセス数に一喜一憂しながら、それを励みに書いています。
これからもよろしくお願いします。
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