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モンスターのご主人様 作者:ショコラ・ミント/日暮 眠都

5章.騎士と勇者の物語

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17. 韋駄天の懸念

(注意)本日2回目の投稿です。(5/29)












   17   ~飯野優奈視点~


 転移者の偽者である『偽勇者』の噂をこの目で確認するために、帝国の小貴族、バン子爵領をわたしが訪れてから、数日が経っていた。

 聖堂騎士団の副長であり、第二部隊の隊長でもあるゴードンさんと出会ったわたしは、彼と行動をともにしていた。

 と言っても、ふたりきりというわけではない。
 隊長であるゴードンさんの他に、五名の聖堂騎士が同伴していた。

 立ち寄った村で宿を取ったわたしは、旅装を解いたあとで、ゴードンさんたちの借りている部屋を訪ねた。

 応対に出てくれた騎士のひとりが、わたしを部屋に招き入れる。

「おお、飯野様。ようこそいらっしゃいました」

 テーブルを囲んでいたゴードンさんは、わたしを温かく迎えてくれた。

 黒い肌をした禿頭の偉丈夫のゴードンさんは、見た目は少し恐い印象がある。
 けれど、そんな印象に反して、彼の物腰は柔らかで、紳士的だ。

 最初は、ただ話をするのにも少し硬くなっていたわたしだったが、数日が経ったいまでは、緊張することなく接している。

 地図や書類の広げられたテーブルについたわたしは、早速、ゴードンさんから、偽勇者についての調査結果を聞かせてもらった。

 ゴードンさんの率いる第二部隊は、約四百名の聖堂騎士で構成されており、近隣の小貴族領に散らばって、現地の人間と協力しつつ偽勇者の調査を行っている。

 得られた情報はゴードンさんのところに集められるため、わたしは彼から話を聞かせてもらっていた。

 と言っても、今日もあまり、はかばかしい成果は得られなかったようだ。

「なかなか結果が出ず、申し訳ありません」

 ゴードンさんは肩を落とした。
 そうすると、なんだか大きな熊がしょげているようで、どこかコミカルにも見えた。

「飯野様からは、重要な情報をお教えいただきましたのに。面目次第もありません」

 ゴードンさんの言っている情報というのは、工藤陸についてのものだ。

 偽勇者が立ち寄った村がモンスターによって壊滅させられていたことから、チリア砦襲撃事件の黒幕である『魔軍の王』工藤陸の関与が疑われたため、ゴードンさんはわたしに協力を求めた。

 すでにわたしは、工藤陸について自分の知っていることを話している。

 もっとも、それはもともと知っている情報を開示しただけのことで、わたしがなにをしたというわけでもない。

「偽勇者の調査は、すぐに結果が出るようなことじゃないですよ」

 すまなさそうにするゴードンさんに、わたしは首を横に振ってみせた。

「ゴードンさんが頑張ってるのは知ってますから」

 行動をともにしてみてわかったのだが、ゴードンさんは非常に勤勉だ。

 日中は車で移動しながら、現地で情報を収集し、他の騎士たちから集まる情報を受け取り、それらを精査したうえでまとめて、部下である騎士たちにその都度指示を出し、協力している各小貴族への連絡も小まめに行っている。

 同行している騎士たちも部分部分で手伝っているにせよ、全体を把握して適切な連絡を取る苦労は並々ならぬものだろう。

 その働きぶりと言ったら、あまり睡眠時間を取っていないのではないかと思われるくらいで、どこか献身的な印象さえあった。

「頑張っているゴードンさんに、文句なんて言えるわけないです。むしろ、すごいなって思っているくらいなんですから」
「ありがとうございます」

 ゴードンさんは、岩のような顔を少しだけ緩めた。

「ですが、こんなことでお褒めいただくのは恐縮です。これは、我らにとって当然の務めなのです。なにせ我らは、この世界を構成する一員ではありませんからな」
「えっと?」

 この世界を構成する一員ではない?

 よくわからない表現だった。

「それって、どういう意味ですか?」
「……ふむ」

 ゴードンさんは顎に手をやって、少し考える仕草を見せた。
 一拍置いて、口を開く。

「飯野様は『恩寵の血族』というものをご存知ですか?」
「……え? はい。転移者の子孫のことですよね」

 わたしたちがチート能力と呼ぶ力は、この世界では『恩寵』と呼ばれており、転移者の子孫は『恩寵の血族』と呼ばれている。

 旅をしている間、真島が身分を偽っていたのが、この『恩寵の血族』だったはずだ。

「実のところ、我ら聖堂騎士団はみな、その『恩寵の血族』なのですよ」
「え? そうなんですか?」

 わたしは目を丸めた。

 初耳だった。
 思わずゴードンさんの部下の騎士たちに視線を向けると、頷きが返ってきた。

「ええ。隊長のおっしゃる通りです」
「……知りませんでした」

 しかし、言われてみれば、納得できるところもあった。

 ゴードンさんは、この世界では見ない黒い肌をしている。
 思い返してみれば、エベヌス砦で聖堂騎士団の団長と出会ったときに、わたしたちにどことなく似た顔立ちをしていると思ったこともあった。

 それは、彼らが転移者の子孫だったからなのだ。

「もっとも、『恩寵の血族』であれば、誰もが聖堂騎士になれるわけではありません」

 また別の、このなかでは一番若い騎士が付け加えた。

「聖堂騎士団は、勇者様とともに戦う最精鋭の戦力です。相応の実力がなければ、聖堂騎士にはなれません。むしろ実力主義であればこそ、『恩寵の血族』の、それも一部しか聖堂騎士にはなれないと言うべきでしょう」

 若いためか、熱のある口調だった。
 ちょっと雰囲気が、探索隊で一緒に行動していた渡辺くんに似ている。

 懐かしさを覚えつつ、わたしは尋ねた。

「実力主義だと、『恩寵の血族』の一部しか聖堂騎士になれないんですか? それは、少し矛盾しているような気がするんですけど」
「いいえ。そんなことはありません。飯野様は、どうやら『恩寵の血族』がどのようなものかご存知ないのですね」
「ただ転移者の子孫というだけではないんですか?」
「いいえ。それは違います。『恩寵の血族』というのは、『恩寵を血によって受け継いでいる一族』のことなのです。そのため、魔力の扱い、戦闘センス、魔法適性……総じて、戦闘能力に長けた者が多くいます。この力こそ、我らが真に尊い血をひく確かな証と言えましょう!」

 自分の胸に手を当てて語る誇らしげな若い騎士を見て、ゴードンさんが苦笑を漏らした。

「と言っても、飯野様、勘違いはなさらないでください。我らの力は、勇者様とは違い、この世界の人の枠を超えるものではありません。実際、帝国騎士団や同盟騎士団にも、『草原の猛牛騎士』や『樹海北域最高の騎士』のように、一般的な聖堂騎士を越える力を持つ者もおります。ただ、そうした例外を除けば、やはり聖堂騎士は最精鋭の戦力と言えるでしょう」

 樹海北域最高の騎士というと、真島と一緒に行動しているシランさんのことだったか。

 時間制限付きとはいえ、彼女はウォーリアの十文字くんとも正面からやり合えたと真島から聞いたが、さすがに聖堂騎士がみんな、そこまでの戦闘能力を持っているというわけではないらしい。

 だとしても、それは十分な戦力ではあるのだろう。

 わかりやすい物差しとして、わたしが一ヶ月ほど一緒に行動していた帝国第二騎士団の面々は、樹海表層部のモンスターと戦うために、四、五人がかりで立ち向かう必要があった。
 同盟第三騎士団は彼らより練度は高く、同じ条件なら二、三人いれば十分だったらしい。

 それでは、聖堂騎士団はどうなのか。

 ゴードンさんの話では、一般的な聖堂騎士ではシランさんに敵わないということだが、彼女のような存在は例外だ。
 平均的な聖堂騎士の戦闘力は、同盟騎士を十分に上回るものなのだろう。

 とすると、ひとりが樹海表層部のモンスターに近い戦闘力を持っているということになる。

 聖堂騎士団は、第一部隊が約六百名、第二部隊が約四百名、第三部隊が約三百名、第四部隊が約二百名で構成されていると聞いている。

 ゴードンさんの第二部隊がそうであるように、それぞれがほぼ独立した組織として働いているようなので、全軍が集まることはないのだろうが、一部隊だけでも十分に大きな戦力と言えるだろう。

「すごいんですね」
「ええ。しかし、それだけではありません」

 素直にわたしが感心するのを見て、若い騎士はますます胸を張った。

「なかには、かつての勇者様がお持ちだった、恩寵の力を再現できる方もいらっしゃるのですよ」
「え? まさか固有能力まで使える人がいるんですか?」

 少し大きな声を出してしまった。

 わたし自身、『韋駄天』という強力な固有能力を持っていることもあり、それがどれだけ大きなことか想像は難しくない。

 驚きを隠せないわたしに、騎士は大きく頷いてみせた。

「ええ。そうした方を、わたしたちは『恩寵の愛し子』と呼んでいます。なにを隠そう、隊長もそのひとりなのですよ」
「ゴードンさんが?」

 わたしが視線を向けると、ゴードンさんは控えめに頷いた。

「はい。とはいえ、オリジナルには大きく劣るものでしかありませんが……」
「なにをおっしゃいますか! 『輝く翼』のゴードン=カヴィルと言えば、歴代でも指折りの『恩寵の愛し子』。かつての勇者様に最も近付いたひとりではありませんか!」

 謙遜するゴードンさんに、若い騎士は訴えかけた。
 実際、ゴードンさんにはそれだけの力があるのだろうが、それにしても、熱心な口調が印象的だった。
 彼はゴードンさんのことを慕っているのだろう。

 ゴードンさんも口許に苦笑いを浮かべているものの、年若い騎士を見る目は優しかった。

 いい関係を築いていることが窺えた。

「……」

 わたしがゴードンさんに同行した理由のひとつに、聖堂騎士団とはどういう組織であるのかを、この目で確かめるため、というのがあった。

 チリア砦襲撃事件における真島の間違った情報をわたしに与えたのはルイスさんだが、その隣には聖堂騎士であるトラヴィスさんの姿があった。

 あのとき、もしも故意に間違った情報が流されたのなら……。
 それに、聖堂騎士団が関わっていたのなら……。

 そんなふうに疑うこともできる状態だったのだ。

 そのため、これを機会に、わたしは彼らのことを見極めるつもりだった。

 けれど、こうして接してみて感じられるのは、彼らが誇りを持って職務に励んでいることだった。

 そんな彼らが、卑劣なことをするとは思えない。

 抱いていた懸念は、どうやらわたしの考え過ぎだったようだ。

「む。どうなされましたか、飯野様?」
「……いえ。なんでもないです」

 視線に気付いて怪訝そうな顔をするゴードンさんに、わたしはかぶりを振った。

「ただ……ええと、そう。すごいなと思って」

 誤魔化し半分に、先程の若い騎士に水を向ける。

「『恩寵の愛し子』でしたっけ? ゴードンさんの他にもいるんですよね」
「もちろんです!」

 彼は嬉々とした表情で答えてくれた。

「現在の騎士団には、何人かの『恩寵の愛し子』がいます。そのなかでも、特に強力な力をお持ちなのは、やはり隊長の四名でしょう」
「隊長さんたちですか」

 聖堂騎士団の隊長たちの名前については、すでに聞き知っていた。

 聖堂騎士団の団長で、第一部隊隊長も務めるハリスン=アディントン。
 副長で第二部隊の隊長であるゴードン=カヴィル。
 第三部隊隊長のヴィヴィアン・メイウッド。
 そして、第四部隊隊長のトラヴィス=モーティマー。

「とすると、わたしはヴィヴィアンさんを除いた三人に会ったことがあるわけですね」

 そうとは知らないうちに、その大半と顔を合わせていたというのも、ちょっと不思議な感じがする。

 もっとも、この場合、要職にある人物だからこそ、この世界で勇者として扱われているわたしと顔を合わせる機会があったという考えるべきなのだろう。

「……飯野様は、モーティマーと会ったことがおありで?」

 益体もないことを考えていると、ゴードンさんが尋ねてきた。

「え? ああ、トラヴィスさんですか。はい」

 聖堂騎士団がどのような組織なのか見極めが終わるまではと思って、トラヴィスさんと会っていたことを、これまでゴードンさんには話していなかった。

 とはいえ、さすがにもうかまわないだろう。

「機会があって、ローレンス伯爵領のセラッタという街で顔を合わせました」

 答えてから、あれ? と思った。

「……そうですか」

 頷いたゴードンさんの表情が硬かった。
 他の騎士たちも、どこか態度が違っていた。

 気付けば、なんだか奇妙な空気になっている。

 戸惑うわたしに、ゴードンさんが尋ねてきた。

「それで、飯野様は、モーティマーとはどのようなご関係なのでしょうか?」

 どことなくぎこちない口調だった。

 なんだろうか。
 ゴードンさんのこんな態度は初めて見るもので、ますます不審だった。

 とはいえ、訊かれたこと自体は隠すようなことではない。

「どういう関係と言われても困りますけど。一度だけ、顔を合わせて話をしただけです」
「そうですか」

 今度は、かすかな安堵の感情が窺えた。

 胸のなかで、疑念が大きく膨らむのに時間はかからなかった。

「トラヴィスさんに、なにかあるんですか?」
「……いえ。そんなことは」

 ゴードンさんは否定して、視線を逸らした。

 しかし、そんな態度は、なにかあると言っているようなものだ。

 それならばと、わたしは視線を巡らせた。
 先程、いろいろと話してくれた若い騎士に、ぴたりと視線を合わせる。

 あからさまにびくりとした彼に、わたしは問いを投げつけた。

「なにかあるんじゃないですか?」
「いえ。そのようなことは……」

 まさか勇者様に尋問されることになるとは、思ってもみなかったのだろう。
 若く精悍な顔が引き攣っていた。。

 申し訳ない気持ちになるが、ここでひくつもりはない。

 じっと見詰めること、数秒。
 視線の圧に堪えかねたように、彼は口を割った。

「……モーティマー様は、少し問題があるお方でして」
「問題、ですか」

 わたしは眉を顰める。

「どういうことですか?」

 向き直ったわたしの視線を受けて、ゴードンさんが溜め息をついた。

「この期に及んでは、隠せることではありませんか」

 やはりなにかあるらしい。
 もう一度、大きく深い溜め息をつくと、ゴードンさんは重い口を開いた

「まず、はっきりさせておかねばならないのですが……飯野様。我ら騎士は勇者に剣を捧げる者です。正義の理念を体現し、弱者を救済することこそが、騎士たる者の責務なのです。我らが聖堂騎士団には、団長であるハリスン=アディントン様を始めとして、騎士の在りようを体現されている方が何人もおります。未熟ながら、わたしもそのように努めておりますし、部下も同様です」

 ゴードンさんや、その部下の騎士たちが善良であることは知っている。
 団長のハリスンさんも、わたし自身に交流はないが、ゴードンさんがこう言うのだから、きっと人格者なのだろう。

「しかし、騎士の全員が騎士の規範に従っているかといえば、そうとは言い切れない部分もあります」

 これも理解はできた。
 帝国騎士団と一緒に行動していた頃には、功名心と見栄ばかりが強い騎士を何人も見たからだ。

「残念ながら、聖堂騎士団のなかにも騎士の規範に相応しくない人間はおります」
「それが、トラヴィスさんだと?」
「正確には、奴とその取り巻きですが」

 苦々しげに、ゴードンさんは認めた。

「力を持つ者は、それを律する心を持たねばなりません。言うは易く行うは難し。これは決して容易なことではありません。騎士たる者は、常に自身を試されるのです。しかし……」
「トラヴィスさんは、そうではない?」
「……あれは、功名心の強い男です。そのためになら、手段を選ばないところがあります。悪い噂も聞きますし、正直なところ、あまり褒められた人柄ではありません」

 トラヴィスさんの、吟遊詩人のような容貌を思い出す。
 そんな危険そうな人物には見えなかったが……いや。そういえば。

 脳裏に、セラッタでの出来事が蘇った。

 話をするわたしとルイスさんのふたりに向けられた、優雅な笑み。
 優男にお似合いの気障な表情。

 あのときの彼の笑顔に、わたしはなにか引っ掛かるものを覚えたのではなかったか。

 あのときは、わたしやルイスさんの正義感を小馬鹿にでもしているのだろうと考えていたけれど……ひょっとして、あれはもっと悪意あるものだったのだろうか。

 わたしが考え込んでいるのを見て、ゴードンさんが眉を下げた。

「どうか勘違いはなさらないでください、飯野様。何事にもそうですが、はぐれ者というのは出るものなのです」
「それはわかりますけど……ですが、どうしてそんな人が隊長に?」
「性格に難があろうとも、それだけで騎士位を剥奪するわけにはまいりません。また、悪い噂もあくまで噂です。もっとも、貴族の出で、実家に力のある奴が、そう簡単に尻尾を出すはずもありませんが……それに、奴がとても優秀な騎士であることも、また事実なのです」

 ゴードンさんは嘆息した。

「かつて『黄金の邪竜』を討伐した勇者の末裔。『聖眼』のトラヴィス=モーティマー。無論、あ奴も聖堂騎士である以上、勇者様には敬意を持って接することでしょうが、万が一にも、なにか至らぬ真似をするかもしれません。飯野様も、お気を付けください」
「……ありがとうございます」

 あまり話したくはないことを無理に聞き出したのに、親切心から注意までしてくれたゴードンさんに、わたしは礼を言った。

 もっとも、その親切心は手遅れだったかもしれない。

 義憤に燃えるわたしとルイスさんに間違った情報を与えたのが、トラヴィスさんだったとしたら……。

 わたしは、まんまとトラヴィスさんに踊らされたことになるのだから。

「……トラヴィスさんは、いま、なにをされているんですか?」
「申し訳ありません。聖堂騎士団の各部隊は、ある程度の権限を持って、独立に行動しておりますので、他の部隊がなにをしているのかまでは……以前に、チリア砦襲撃事件の後始末をしていたという話は聞いたことがありますが、現在の行動についてはわかりかねます」
「そうですか」

 簡単には長距離の連絡が取れないため、現地での指揮官の裁量に任されるところは大きい。

 ゴードンさん自身も『偽勇者の調査をする』という使命を帯びてここにいるものの、現地での行動については判断を任されている。

 トラヴィスさんも同様だと言うことだ。

 もしも仮に、彼が手柄を求めて独自に動いているのだとしたら……。

 先程、ゴードンさんが言った、『手段を選ばない』という言葉が気にかかった。

 ただでさえ誤解を受けやすい境遇にあり、難癖を付けようと思えばどうにでもでき、悪者にしようと思えば簡単にできてしまう……そんな難しい立場にある人間のことをわたしは知っていたからだ。

「真島……」

 手柄を求めるトラヴィスさんのような人間にとっては、あいつみたいな人間や、あいつの傍にいる存在は、格好の餌食なのではないだろうか。

 それは、愚かで下劣な暴挙だ。
 けれど、だからといって、軽視できるようなものでもない。

 ……もちろん、こんなのは根拠のない憶測に過ぎない。
 わたしはあいつがいまどこにいるのかも知らないし、実際には、順風満帆な生活を過ごしているのかもしれない。

 けれど、どうにも胸がざわつくのを、わたしはどうすることもできなかった。
◆お待たせした分、がっつり2連続更新でした!
事件開始となります。

◆生活が落ち着くまで、ちょっと6月中は忙しい見通しです。
なるべく更新はしたいと思いますが、ご理解いただければ幸いです。
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