表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/9

先天性白皮症ってやつです。

「………」

「………」


昼食を取った後、再び彼女の前でノートパソコンを起動していじっていた。


それからしばらくして、黙り込んでいた少女が口を開いた。


「……外には出ないんですか?」

「出ないよ。昨日出たばっかだし。用もないのにわざわざ外なんか出たくないよ。」

「嫌いなんですね、外出するの。」

「嫌いって訳でもないけどさ。日光、苦手なんだよね。皮膚がヒリヒリする。」

「日光?」

「そ、僕アルビノってやつだからさ。色々と不便なんだよね。」

「アルビノって……」


その言葉を聞いて、彼女が覗き込むように僕の顔を見てくる。


「ああ、ちょっと待ってて。」


キーボードを打つ手を止め、指を目元に持っていく。

人差し指を起用に動かし、目にはめていたレンズを外す。


両目とも外すと、目の前の少女に顔を向けた。


「ほらね。真っ赤っ赤でしょ。」

「っ……」


僕の目を見て、目の前の少女は目を見開く。


それもそうだろうね。

こんな赤い目滅多に見るもんじゃないし。


そう、僕の両目は真っ赤っ赤。

何かに影響してなったわけではない。

生まれつきだ。


「これだけじゃないよ。今は染めてるけど、髪だって本当は真っ白なんだ。根元のとこ、ちょっと白いでしょ。」


そう言って自分のつむじあたりを彼女に見せると、小さな声で本当だ、と呟いた。


「だから外にはあんまし出ないよ。紫外線に極端に弱いもんでね。出歩くとしても大体夜。何でか分かる?」

「……紫外線がないから?」

「まぁそれもあるけど違うかな。僕ね、暗いとこじゃないとダメなんだ。」

「……なぜ?」

「明るいとこだと色がごちゃごちゃしてて煩いから。僕には必要以上の光が見えてるんだ。だから昼間とか無理。太陽とかダメ。あんま強い光浴びると網膜痛めちゃうし。本当不便。」

「………」


つらつらと一人で言葉を述べていると、彼女は急に黙り込んだ。

そろそろ、面倒になったかな。

まぁ気味悪い話だしね。


再び画面に向き直って作業を再開しようとしたら、彼女が口を開いた。


「なんで、隠すんですか?」

「は?」

「目も、髪も……」

「なんでって、こんなバケモノみたいな容姿で呑気に出歩ける訳ないじゃん。目立つから目撃されやすいし。」

「それがバケモノなんですか?」

「どっからどう見てもそうでしょ。」

「………」


彼女は何か言いたげな表情をしながら、再び黙った。


「なに。言いたい事があるなら言いなよ。」

「…いえ、私今ズレた事考えてたので。」

「だからそれを言いなって。」


少しキツめに言葉を投げかけると、彼女はおずおずと口を開いた。


「あの…綺麗だなって、思いました。」

「……は?」


綺麗?何が?


「その目も、白い肌も、髪が真っ白だとしても。綺麗だろうなって……皆にはバケモノに見えてるかもしれないのに。やっぱり私は人とズレてるんです。」

「………」


彼女が僕の目を見てる。

真っ直ぐ。


レンズの隔てがないアイコンタクトなんてそんなしたことがなかった。

なんだか妙な気分だ。


「……そうだね。君はズレてるどころか大分狂ってるよ。僕が言うのもなんだけど。」

「自分が変なのは自分が一番よく分かってます。だから殺してください。これ以上おかしくならないように……」

「やだね。だったらもっとおかしくなればいい。」

「………」


彼女はまた返事をせずに黙り込み、ソファの上で足を抱えてうずくまった。

もう会話をする気はなさそうだ。


僕は気にせずにカタカタと作業を続ける。


変な子だなぁ。

確かに人とはズレてる。

きっと狂ってる。


綺麗なんかに見えちゃったんだ。

可哀想に。


そっか、僕は今彼女に同情してるんだ。

だから変に心がムズムズするんだ。


本当に可哀想だなぁ、彼女。


この心の変なわだかまりに、同情と名付けて僕は作業を続けた。



だって僕はまだこの感情の名前を知らないから。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ