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他人の家ではお静かに。

「……そういえば、貴方の名前はなんですか?」


食事の後、食器を片してテレビ番組をみていると、唐突に彼女が問いかけてきた。


「人に名前尋ねる時ってまず自分から名乗るもんじゃないの?」

「……柳瀬(やなせ) 遥香(はるか)です。」

「ふーん。僕の名前は三淵(みぶち) (まこと)だよ。今はね。」

「今は?」

「そ、改名しまくってるからさ。まぁ多分また変わるだろうから別に覚えなくてもいいよ。」

「……はぁ。」

「それより何か暇だなーって思ってるでしょ?」

「いや、あの、まぁ……」

「そりゃあそうだよね、もう何時間もそのソファに座りっきりだし。あ、トイレ行く?」

「え、はい……」

「ちょっと待ってね。」


座っていた椅子から立ち上がると、彼女の側に歩み寄る。

懐からナイフを取り出すと彼女が何やら期待を込めた表情をした。

そのナイフで足首の縄を切ってやると、あからさまに落胆した。


ああそっか。

残念だね、殺して貰えなくて。


新しい縄を拘束していた手首の縄に通して持ち紐を作る。

まぁいわゆるリードのようなものだ。

それをリビングにある柱にくくりつける。


「トイレこっちだよついてきて。」


縄が引っ張っても取れないのを確認して、彼女をトイレに案内した。


…………………


「こんなことしなくても逃げないのに……」


トイレから戻ってきた彼女が最初に発した言葉はそれだ。


「へぇーふーんそうなんだ。」

「……信じてませんね。」

「もちのろん。あ、足はもうそのまんまでいいや。縄繋いどいたし、いちいち縄切ったりするのも面倒だしね。リビングは自由に動き回ってもいいよ。」

「はぁ……ありがとうございます。」

「どういたましてー。」


足の拘束が解けたのにも関わらず、彼女は元いたソファに再び腰を下ろした。


そんなにそこが気に入ったのだろうか?

女性にとってソファって居心地がいいのかな。

よくわかんないや。


特に気にせず、つけといたテレビのチャンネルを変える。


「あ、」


丁度、昨日の路地での殺害現場が映し出されていた。


もう見つかったんだ。

暫くあそこは通れないな。

まぁ元々あそこは事件が多発してて立ち入り禁止区域だったんだけどね。


ピッピッとチャンネルを変えてみても、今やってる番組はほとんどニュースばかりだった。


つまんないや。


「いいよ好きなの見てて。」


ぽい、と彼女の方にリモコンを放り投げ、自分は自室に向かう。

そこからノートパソコンを持ってきて再びリビングに戻った。


まぁ一応監視しとかないとね。


彼女は投げられたリモコンを手にとって、色々と番組を視聴していた。


僕は彼女の向かいに座り直し、パソコンを起動させる。


それから暫くカタカタとキーボードを打っていると、テレビの音がプツリと切れて、唐突に彼女が口を開いた。


「……殺して下さい。」

「なに?やっぱりテレビつまんなかった?」

「私はここにテレビを見に来たんじゃないんです。早く殺してください。」

「嫌だね。じゃあ他を当たってよ。」

「当たりたくてもこれじゃあ、どこにもいけないんです。」


そう言って、彼女は拘束された手首を僕に見せてくる。


「じゃあ文句言わずに大人しくしてなよ。わざわざ世話してやってるんだから。」

「それが余計なお世話です。」

「やっぱり殺してやんない。」

「元々殺す気なんてないくせに……」

「まぁね。」

「………」


こんな殺して欲さげな子をわざわざ殺してあげたりする訳ないじゃん。

もっと生きたそうにすれば考えなくもないのに。

学習しない子だなぁ。


「ていうかさ、勝手に自分で首でもつって死んどけば良かったのに。何でわざわざ殺して欲しい訳?大分他人に迷惑だよそれ。」

「……罰が欲しいんです。」

「は?」

「私は悪い子です。だから罰を下されなきゃいけない。自分で死んでも意味がないんです。」

「いや、全くわかんないんだけど。」

「いいから殺して下さい。お願いです。」

「あーうるさいな。殺らないっつってんだろ。全身拘束するよ?」

「………」

「そう、そのまんま大人しくしてな。もうすぐでご飯作ってあげるからさ。」


静かになった室内に、再びキーボードを打つ音が響く。


罰?悪い子?

だから何?

どーでもいーよそんなこと。

殺やりたくないもんは殺りたくないっての。

それより今日のご飯は何にしようかなー。


目の前で黙り込んでいる少女なんか気にも留めず、頭の中では呑気にそんな事を考えていた。

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