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中世風FT

月下の虜囚

R15以上のオンライン小説企画「Risky Twenty」参加作を一部改稿したものです。


台詞と地の文の間などに適宜空行を追加しております。

元の原稿の体裁で読みたい方は、作者個人サイトにおいでください。

 

 

 

 まったき闇の中、幽かに浮かび上がる下草の影を慎重に踏みしめ、男が歩いている。

 ちりちりと苛々しげに鳴く虫の声が、男の歩みに合わせてすうっと引いて、そしてまたじわりと戻ってくる。さほど遠くない所で獣の遠吠えが聞こえたが、男は足を止めることもなく、黙々と闇を切り進んでいく。


 ふと、ぬるい風が頬を舐めたかと思えば、周囲の木々が一斉にざわめきだした。葉という葉が闇を揺らし、か細い月明かりが男の足元でまたたく。

 男が歩調を速めた。

 マントが大きくひるがえるたびに、朽ちた木と踏み潰された青草のにおいが混ざり合う。むせかえるような森の香りを纏いながら、男は歩く、歩く。


 しばらく進んだところで、目の前が急に開けた。

 闇色の木々を丸くくり抜いた空、中天にかかる満月。

 その真下に、大きな銀の円盤が、微かな細波をおもてに刻んで横たわっている。

 水面(みなも)を撫でる風の匂いはとてもあまく、夜陰で定かには見えねども、その清らかな恵みを思わずにはいられない。

 男はそっと深呼吸をすると、ゆっくりと辺りに視線を巡らせた。

 月光に輝く水面が、綺麗な真円を描いている。その丁度対岸で、何かが動いた、ように見えた。


 男は目を細めた。精悍な眼差しが、更にその鋭さを増す。

 泉の向こう岸で、夜目にも白い何かが、かげろうのように揺らめき立った。

 男の喉が、ごくりと音を立てた。胸元の護符を確かめ、それから腰の(つるぎ)に手をやる。そうして白い影を見据えつつ、探り足で岸辺を辿り始めた。


 それは、ヒトのかたちをしていた。白く輝く裸体を惜しげもなく月の光に晒して、女が独り水辺に佇んでいる。

 その肌は、水から上がった直後のようにぬらぬらと光っていた。暗い色の髪はしっぽりと濡れそぼり、白磁の頬に、なだらかな肩に、そして豊満な胸元に、忌まわしい生き物のように貼りついている。

 と、浮き石に足を取られ、男は大きくよろめいた。


 たたらを踏みながらもなんとか体勢を立て直した、男の目が見開かれた。おのれが、一度として女から視線を外さずにおれたということ――いや、今もって視線を外すことができないということに、気がついて。

 そうしている間も、男の足はまるで他人のものであるかのように彼の意思に反し、じりじりと女に向かって進み続けている。一方、剣に添えた右手は、石になったとでもいうかのごとく、僅かたりとも動かせない。


 女が、両腕を前方に差し伸べた。その動きに合わせて、柔らかそうな双丘が肉感的に揺れる。ほどよく引き締まった腰を艶めかしくうねらせながら、女がゆっくりと一歩前に出る。

 彼女のもとへ駆け寄りたい。抗いがたい情動が男の胸に湧き起こった。こんな重い剣など投げうって、今すぐにでも彼女をこの腕に抱き締めたい。滑らかな肌を()み、蜜をすすり、おのれ自身で彼女を満たしたい。


 おのが身体の変調を自覚して、男の背筋に震えが走った。戦いに際してどれほど血がたぎろうと、これまで彼は自らを完璧に御してきた。なのに、これは一体どうしたことか。鎌首をもたげる淫らな欲望のままに、ただ獲物に喰らいつくことばかりを考えているなどと。

 いくら魔性のものが相手なのだとしても、こんなにもやすやすと絡め取られてしまった自分に、そして、この状況を堪らなく快く感じ始めている事実に、男はきつく歯を食いしばった。


 


 


 


 時を遡ること二日。男は街道沿いの小さな村にいた。少し先にある宿場町に向かっているところを、縋りつくような声で引き止められ、そのまま一軒の農家に招き入れられたのだ。


「どうか剣士様、娘を救ってくだされ」


 目の下に大きな隈を作った中年の農夫が、そう言って床にぬかずいた。それきり一向に顔を上げようとしないことに、剣士と呼ばれた男は困惑の眼差しを辺りに巡らせる。その視線を受けて、農夫の細君であろう女までもが、夫の後ろで平伏した。

 これでは話が進まない、と剣士が大きく息を吐いたところで、最後の一人、上品な綿のシャツを着た、まだあどけない少年の面影を残した若い男が、おずおずと前に進み出た。


「山向こうで猩猩(しょうじょう)を退治なさったという剣士様とお見受けします」


 腰の剣に注がれる視線をマントで遮ってから、剣士は渋々頷いた。日々の食い扶持を稼ぐ以上に名を上げるつもりはなかったのだが、どうやら物事というものはそう簡単に自分の思いどおりには運ばないようだ。

 そんな剣士の憂鬱に気づくことなく、若者は思い詰めたような表情で語り始めた。


「剣士様の腕前を見込んで、お願いしたいことがあるのです」


 勿論できる限りのお礼をさせていただきます、と続けてから、彼は少し躊躇いがちにつけ加えた。「私は、この辺りの庄を管理しております領主の息子です。ただ、まだ家督を継いでおりませんので、充分な謝礼をお約束することはできませんが……」

 とりあえずお話を伺うだけ伺ってみましょうか、との声に、若者の顔が、ぱあっと明るくなった。床にひれ伏していた夫婦も、口々に感謝の言葉を述べながら身を起こす。

 三人を代表して若者が訥訥と語り始めた。


「村を出てすぐの森の中に、とても美しい泉があるのです。我々地の者が使うだけでなく、旅のお方にも重宝されている泉なのですが、そのほとりに夜な夜なあやかしが現れては、人を襲うようになったのです……」


 それを受け、今度は農夫が悲痛な声を搾り出した。


「運よく生き残った奴が、自分を襲ったのは俺の娘だったと言うんだ。そんなこと、最初は信じられなかったが、でも、でも……」


 顔を真っ赤にさせて絶句する農夫に、剣士は先を促した。


「娘さん?」

「二月前だ、泉で俺の娘が死んだ……殺されたんだ。まだ若いのに、何も悪いことなどしとらんのに、そんな……、それで……、きっと、恨んで化けて出とるんだ……」


 剣士は胸の内で嘆息した。剣帯にかかる重さが、急に増したような気がした。

 その心を読んだかのように、若者が真っ直ぐ剣士と視線を合わせてくる。


「その剣は破魔の(つるぎ)と聞いております。どうか彼女の魂をお救いください。もう四人もの人間が、あの場所で命を落としてしまいました。なのに父は、夜間の森への立ち入りを禁じるほかは何も手立てをとろうとしません。そればかりか、庄に悪い評判が立つのを恐れ、毎朝下働きの者を泉に見回りに行かせているのです」

「見回り?」

「もしも誰かが亡くなっていた場合に、その亡骸を泉から別の場所に移して、旅の行き倒れに装おうというのです」


 若者は、下唇をきつく噛んだ。


「我々には、もう剣士様におすがりするしか道がないのです。彼女は、婚約者だった私のこともすっかり忘れてしまっていました」


 泉に行ったのですか、という問いに対して、花婿になり損ねた男は、無念さを全身に滲ませながら話し続ける。


「はい。もしも本当に彼女なら、近しい人間の言葉になら耳を傾けてくれるかもしれないと思い、我々三人で夜を待って泉を訪れました。そこには、確かに彼女の姿がありました。ですが、彼女は我々に対して見境なく、魔のちからをふるったのです……」

「雲が月を隠した隙に、俺達は命からがら逃げ帰ってきたんだ……。あの子の手を振り払って、よ……」

「あの子を助けてやるどころか……、あたし……、あたし……」


 憔悴しきった顔を伏せ、母親が肩を震わせる。父親がそれを抱きかかえるようにして、部屋の隅の寝台に座らせた。

 狭い小屋の中に、重苦しい沈黙が降りる。


 剣士は、左手でそっと剣の柄を撫でた。この(つるぎ)には、確かに魔を打ち破るちからがある。この(やいば)をもってすれば、妄執に囚われた迷い人を、彼岸へ送ることができるやもしれない。

 特異な力は、時に災厄を引き寄せる。この剣の噂が広まるのは、極力避けておきたいところだが、乗りかかった船を見捨てるのは、彼の性に合わなかった。これから当分の間、剣は背嚢に仕舞い込んでおくことにするとしても、この一件だけはきっちり片をつけておきたい。

 剣士は、ゆっくりと一同を見渡すと、静かに口を開いた。


「わかった。やってみよう」


 


 


 


 煌々と輝く満月のもと、女が優雅に手招きをしている。白い指の一本一本が月の光をすくい上げるように蠢くほどに、剣士の足は(あるじ)の意に反して、ぎくしゃくと前へと進む。

 口の中に広がる鉄錆の味は、噛み締めた唇から滲むものだろう。だが、痛みは全く感じられなかった。全身に絡みつく見えない網を振り払うべく、なんとか手足を動かそうと試みるも、首から上の部分が僅かに痙攣するように震えるばかり。


 そんな剣士の仕草が可笑しかったのか、女がふっと微笑んだ。花びらのような唇が、凄艶な曲線を描き出す。

 豊かな睫毛の下から覗く紅縞瑪瑙の瞳が、今やはっきりと見て取れるほど……、近い。

 剣士の心臓が、どくんと脈打った。

 あれが、欲しい。

 耐えがたいほどの衝動を、僅かに残った理性が、必死で抑え込もうと足掻いている。


 


 死霊と化した愛しい娘は、月が出ている間だけ現れる。

 そうして、男を誘惑し、命尽きるまで精を絞り尽くす。


 


 婚約者だった男が苦悶の表情とともに語った言葉を、剣士は今一度反芻した。あの蠱惑的な姿に惑わされるな、そう必死でおのれに言い聞かせる。

 女は、むせかえらんばかりの色香を身に纏っていた。文字どおり、この世のものとは思えない妖艶さ。(もっと)も、彼女が元来持つ美しさも、それに拍車をかけているに違いなかった。しがない農民の娘が、領主の息子を射止めたという事実からも、それを推し量ることができよう。


 


「行方が分からなくなって二日、彼女は泉の底で見つかりました」


 きつく、きつく目をつむりながら、婚約者は語った。


「彼女は……自ら泉に身を投げたようでした。辺りの泥も草も何も荒らされてはいなかったので。ただ、すぐそばの森の中に下草の乱れた場所が見つかり、そして……彼女の身体には、何者かに乱暴された跡がありました……」


 一気にそれだけを語りきって、彼は唇を引き結んだ。そうして、何度も荒い呼吸を繰り返す。そのあとを引き取るように、父親が声を荒らげた。


「あの子が死んだのは、あいつのせいだ。あいつに殺されたのと同じことだ!」


 下手人が判っているのですか、と問う声に、父親はこぶしを震わせてうなだれた。


「前からあの子にしつこくつきまとっていた奴がいてな、そいつの家から、あの日あの子が身につけていた髪飾りが見つかったんだ……」


 祟りの矛先が知れているのなら、話はずっと簡単になるだろう。そう思いきや、婚約者が泣き顔とも怒り顔ともつかない表情で、顔を上げた。


「彼が一人目の犠牲者なのです」


 


 恨みを晴らしても、なおうつし世にとどまるとは……。

 ふと違和感を覚えて、剣士は小さく息を呑んだ。湧き上がる肉欲に内側から脳髄を犯されながらも、なんとか意識を繋ぎとめようと、力一杯こぶしを握り締める。

 恨む相手を憑り殺したにもかかわらず、今なお人の命を喰らうなど、生半可な妄執のなせるわざではない。となれば、彼女の魂は何か別の魔に取り込まれてしまっているのではないだろうか。

 剣士は、胸元の護符を思いやった。万全を期して用意したにもかかわらず、今こうして全然役に立っていない、腹立たしい護符を。彼女が死霊ではなく悪鬼の傀儡に過ぎぬというのならば、護符に刻まれるべき文様もまた違うものになってくるのではないのだろうか。


 剣士が忌々しそうに舌を鳴らしたその時、頬に何かが触れた。

 女の指だった。

 しっとりと濡れた生ぬるい指先が、愛おしそうに剣士のおとがいをなぞる。じらすような指遣いが、首筋からうなじへと滑っていき、細い腕が首の後ろに回された。

 情欲に潤む瞳が眼前に迫るのを、剣士は為すすべもなく見つめ続けた。


 


 


 啄ばむような口づけを、一体何度繰り返されたことだろう。既に剣士は彼女の虜と化していた。抵抗はおろか身動きすることすら叶わず、身体の奥から溢れかえる熱を持て余し、更なる交わりを切望するのみ。

 そんな彼の思いを見透かしたかのように、彼女が艶やかに笑みを浮かべた。そっと開いた桜色の唇から、鮮やかな紅色が顔を覗かせる。ぬめり光る舌先がねっとりと上唇を湿すさまに、剣士の喉が大きく上下する。


 がちゃりと剣帯が鳴る音を聞き、ほんの僅か剣士は我を取り戻した。どうやら自分は今、地面の上に腰を下ろしたらしい。ああそうだ逃げなければ、と思う間もなく、眼前に覆いかぶさってくる、白い女体。

 彼女の手が彼の頬を包み込んだ。そうして、再び口づけ。

 もう、限界だ。熱に浮かされたような表情で、剣士は彼女を見上げた。早く、早く、と、ただひたすら交合の瞬間を待ち望みながら。

 俯き影さす彼女の(おもて)で、紅い瞳が光る。真紅の眼差しで剣士を刺し留めながら、彼女はゆっくりと腰を落としていく。


「ジョゼ!」


 静寂を切り裂くようにして、若い男の声が辺りに響き渡った。

 女の動きが止まり、剣士を蝕んでいた呪縛が緩む。必死の思いで首を後ろに巡らせると、少し離れた所に、あの婚約者が佇んでいた。


「やめるんだ、ジョゼ。もうこれ以上罪を重ねないでくれ……」


 暗闇の中、あまりにも心許ない婚約者の姿に、剣士はつい口元を歪ませた。何を馬鹿なことを、と。既に一度彼女と対峙して、ほうほうの体で逃げ帰ることしかできなかった優男に、一体何ができるというのだ。このままでは、明日の朝ここに転がっている死体が一つ増えるだけだろう。

 おのれの愚行に気づかないのか、婚約者は歩みを止めることなく、真っ直ぐ剣士達のほうへ近づいてくる。


 剣士の意識が、また薄れだした。彼が予想したとおり、彼女がもう一人の獲物を捕らえようと、更なるちからを解放し始めたに違いない。

 紅い霧に呑まれながらも、剣士は最後の力を振り絞って、逃げろ、と叫ぼうとした。叫ぼうとして……唖然と目を見開く。

 婚約者が、挑戦的な瞳でこちらを見据えていたのだ。


「ジョゼ、君は、この僕の見ている前で、他の男を抱くというのかい?」


 


 その瞬間、ぎりぎりまで張り詰めていた空気が、一気に砕け散った。

 甲高い悲鳴が聞こえたかと思えば、女が頭を抱えて地面に突っ伏した。その背後から、毒々しい紅色の靄が立ち上がる。


「それが本体だ! 斬れ!」


 言われるまでもなく、剣士の右手は既に柄にあった。不利な体勢を力で補って、彼は破魔の長剣を一閃させる。

 断末魔の咆哮が、剣士の顔面を打った。悪鬼のいた場所を中心に、突風が周囲に吹き渡っていった。木々が踊り、水面(みなも)が跳ね、遠くで一斉に獣が騒ぎ始める。


 


 再び静けさを取り戻した泉のほとり、月明かりに佇む影二つ。

 娘の姿はもうどこにもなかった。


 


 


 


「だからね、君が正面から挑んでしまうと、悪鬼は彼女の魂を盾に、逃げてしまうだろう? とにかく、一度やつを彼女と分離する必要があったんだよ」


 擬装の術を解き、自分の顔に戻った相棒が、悪びれずにのたもうた。剣士が投げつけた件の護符をひょいと避け、仕方ないよ、と肩をすくめる。「だって、君すぐに顔に出るんだもん。敵を欺くためにはまず味方から、って言うでしょ?」


「俺を騙したのか」


 形相が変わるぐらいに奥歯に力を込め、剣士が吐き捨てた。なにしろ、あんな醜態を他人に見られてしまったのだ。屈辱のあまり震える右手を懸命に左手で抑えながら、この忌々しい魔術師の顔をねめつける。


「騙すだなんて、人聞きの悪い。そもそも、今回、君と僕の情報量に差はなかったんだから、君にだって同じ結論に行き着くことができたはずなんだよ」


 そう言われて記憶を探れば、下手人が最初の被害者だと教わった時、天罰覿面と鷹揚に頷く剣士の横で、魔術師はなにやら難しい顔で黙り込んでいた。きっとあの時に、あやかしの正体が単なる死霊ではなく悪鬼だと気がついたのだろう。


「言わなかったことはあったけどさ、嘘はついていないからね。この護符にしても、まがい物なんかじゃない、本物だよ」


 死霊にしか効かないけどね、と軽くつけ加え、魔術師が護符を拾い上げる。それを腹立たしそうに睨みつけて、剣士は腕組みをした。


「意味のない護符で、俺を囮にしたのか」

「役割分担だよ。君だって、彼らの話を聞くのに、僕に喋らせてばかりだったじゃない。君がしたことって、ポツリポツリと合いの手を入れたあとは、『やってみよう』ってふんぞり返るだけだったろ」


 痛いところを突かれて、剣士は言葉に詰まった。口下手を自認している彼は、普段から対外的なことを全て弁の立つ相棒に任せてしまっていたのだ。


「婚約者以外の男に身体を奪われ、それを悲観して自害したわけだからね。そのあたりを揺さぶれば、一時的でも悪鬼の支配から脱するんじゃないか、って思ってね」

「無謀な賭けだな」

「そうでもないさ。君と僕にかかれば、ね」


 さらりと言いきって、魔術師が片目をつむってみせた。

 剣士の口から、大きな溜め息が漏れる。

 彼らの足元で月影が揺れた。少し遅れて、頭上でさやさやと木の葉ずれが聞こえる。水の香を含んだ清々しい風が、木々の隙間を吹き抜けてゆく。

 帰ろうか、との声に踵を返した剣士だったが、ふと足を止め、徐に背後を――月下の泉を振り返った。


 ありがとう、そんな声が聞こえたような気がした。

 

 

 

    〈 完 〉


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