今日は特別にわたしの?一生涯演じ続けなければならない役柄?を赤裸々と公表しよう。わたしは帝国劇場か渋谷シアターコクーンのこけら落とし芝居の役者でもない。かといって日本人でもなければ、外国人でもない。役というのはわたしの?天命?のことだ。わたしは十二歳のころに自分の部屋の壁に向かって「日本政府を復讐し、世界人類のために尽くす」と叫んだ。人生は短い。もう発達途中の喉仏を潰してまでも、抵抗、大声を出していた。十五年後の今ではすっかり落ち着き乾いた。
「高木君の頭で考えた意識や記憶が漏れているのです」
わたしの脳は母から与えられるはずの哀願欲求不満のため、また母の独り言の癖から、言語脳は間違えて学習してしまったらしい。同じ小学校に通っていた兄のクラスでも、わたしの家の中の、冷蔵庫がある位置だとかが頭の中に浮かんでくることで話題殺到していた。そのことは報告に来た小学校教諭T女史から聴いた。押入れに潜みながら、秘密の話を聴いた。日本の秘密警察がわたしを使い、将来テレパシーを悪用しないように本人を間接的かつ強制秘密裏に拘束する。障子を通して耳に入ってきた作戦は以下のようだ。放送電波をジャックし日本中にわたしを拘束させるようなデマロジーを植え付ける。わたしの耳へ、わたしにしか分からないようなひそひそ声で意思疎通し混乱させる。わたしの潜在的自己実現能力を発揮させることに鍵を掛けようというのだ。
そして日本の屋根に埋もれたまま、心理学者が当時予測し怖れた、特異な高木の花は咲かない。水を巻かなければ、日射しを抑えれば、種子から潰せば……。
二年間をタンスに寄り掛かり、体育座りさせられ続けた。四百六十日近く、外も出られず、彼らの手の平の中に丸め込まれていた。学校も登校拒否。担任のNが『高木く〜ん』と何度も叫びながら、激しくドアを叩く執念深い声が堪らない。学生時代は安保闘争をやっていたことを思い出した。友達もいなかったし、精神病院へ放り込まれたりする。定時制高校へ行き、あの手この手はい上がろうとして、もう年も年だ。
何の成果も上がっていないが、わたしは自己実現型人間として天才になり、日本のような世界観をぶっつぶしてやろう。ほんとうの平和で将来輝く社会が待っている。都合が悪いことは隠ぺいすれば良い。たとえ一人を犠牲にしても得られる安定が、安定と言えるのか。わたしは一人の存在を、可能性を活かし強い世界を作って行こうと思う。未だに帝国主義をひきづる日本政府への復讐にもなるし、わたし自身の思想もますます深くなって行くはずだ。
窓の外では枯葉が一枚落ちる音がした。
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