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この頃から国民は姫君を不気味に思うようになりました。あまりにも表情がなく、感情も見受けられなかったからです。顔立ちが綺麗なのが、不気味さに拍車をかけていたのかもしれません。
そのせいで陰口をたたく人も現れ、王様の横暴な処刑の事もあり 国中は段々暗い雰囲気に包まれていきました。
そんな中でも王様は治療を諦めようとしませんでした。今までと同じように、王様の行動を止められる者もいませんでした。
王様は次の治療を行う人は、女性にしようと考えました。姫君も年頃なので、男性よりも女性の方が打ち解けやすいだろうと思ったのです。
王様は、また国中から希望者を募りました。けれど今度は誰も希望する人はいませんでした。それもその筈、姫君に良い感情を持つ人が殆どいなかったからです。逆に非難する人ばかりでした。
王様が困っていると一人の女性が名乗りを上げました。その女性は異国から移住して来たばかりで、姫君にあまり偏見を持ってはいませんでした。
王様は喜んでその女性をお城に招きました。女性は医学の心得は全くありませんでしたが、女性としての心得は ばっちりでした。次の日から女性は姫君に淑女としての嗜みや楽しさを教えていきました。
可愛い服や煌びやかなアクセサリー、綺麗な花束など 姫君の周りは華やかな物で埋め尽くされていきました。
でも相変わらず姫君の顔に表情は現れません。女性は段々、姫君に不気味さを感じてきました。どんな事をしても表情が変わらないのですから、恐れを抱くなという方が無理なのかもしれません。
けれど女性は頑張りました。お城での暮らしは何不自由なく豪奢かつ華やかなもので、女性はこの生活を捨てるのが惜しかったのです。
姫を着飾り薄化粧を施し 礼儀作法もたたき込んで、誰も適わないくらいの淑女に仕立てあげました。それは生前の王妃様──姫君の母に生き写しで、王様は非常に喜びましたけれど、姫君には相変わらず表情がありませんでした。
美しいが故に、表情が無いその姿はまるで無機質な人形のようでした。
それを間近でずっと見てきた女性は ついに姫君の不気味さに耐え切れず、傍に居たくないとまで思うようになりました。
女性は二年も経たずに逃げ出そうとしました。けれど すぐ兵士に捕らえられてしまい、逃げられないと分かると自ら命を絶ちました。
誰にも姫君を治す事ができなかったことに、王様は大いに嘆き悲しみました。姫君を治すことはもう無理なのではないか……と、絶望的な気分に陥ります。
そんな中、王様はある医者の噂を聞きつけました。その人物は薬を使うでも術を使うでもなく、多くの人を助けたというのです。王様は嬉々としてその人物を呼び出しました。
城に招かれた医者を見て王様は驚きました。考えていたよりも随分と若い青年だったからです。青年というよりも まだ少年を抜け切っていない位、という方が合っているかもしれません。姫君より少し上か、同じ位の年に見えました。
それに、その医者の後ろにも同じ年頃の少女が控えているのです。少女はきっと助手か何かなのでしょう。それにしても二人の年齢は医療を行う者として いささか若過ぎるものでした。
王様は小さくため息をつきました。評判の噂は嘘……とまではいかなくても、過大評価だったと思ったのです。だから王様はあまり期待せず医者に尋ねました。 |