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男なら一国一城の主を目指さなきゃね 作者:三度笠

第二部 冒険者時代 -少年期~青年期-

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第二十六話 赤・青・金?

7442年6月4日

 ゼノム達は六人も騎士と従士を連れてきた。俺は現れた騎士の隊長らしき人物に自分とベルの紹介をして、ステータスの確認をしてもらうと、ベイレット・デレオノーラを犯罪者として引き渡した。罪状は貴族に対する略取と強姦未遂だ。また、気狂いでもあると付け加えておいた。手を縛られ腰縄を打たれて傍の木に縛り付けられたデレオノーラは恨めしそうにこちらを見ていたが、俺が凶悪そうな笑みを浮かべると怯えたように視線を外した。

 貴族に対する略取や強姦未遂がどの程度の罪なのかは分からないが、ウェブドス侯爵の裁きを見た限りだとかなりきつそうだ。強姦で鞭打ち五回だっけかな。未遂だから多少は軽くなるのかも知れないが、問題は貴族に対してそれをやったことだ。キールでべグルBを処分した時も俺はやむなく降りかかった火の粉を払ったように言ったが、貴族に対して襲いかかったらそれだけで死罪だと言われたくらいだ。未遂ではない略取まで含めれば一発打ち首じゃなかろうか。

 そうでなきゃいくらなんでも手足を切り落とされたり、殺されるまでの罪というわけではないのだろうからなぁ。ほかに強姦の余罪もあるだろうけど、被害者を殺したりしていなきゃ流石に強姦だけで死罪は重すぎる。切り落としは必要だろうけどな。しかし、本当にこいつが転生者であるのが惜しいな。

 俺は天幕の撤収を進めている騎士の隊長にどの程度の罪に問われるのか、罰はどの程度であるのか聞いてみた。やっぱり無茶苦茶重く、死罪は免れえないだろうとのことだ。証拠、と言うより俺という貴族を含む複数の証言もあるので尋問なども行う必要性も無いらしい。おそらく二ヶ月後くらいにあるであろう公開処刑で処刑は執行されるだろうとの予想だった。こりゃ仕方ないな。少し離れた木に繋がれているデレオノーラに近づくと俺は彼にだけ聞こえる程度の小声で言った。

『機会があるならおとなしく罪を認めたほうがいいと思うぞ。反省のポーズを見せれば多少の酌量もあるかも知れん。罪を償えばいいんだ』

 俺がデレオノーラの耳元でそう囁くと、彼は胡散臭いことでも聞いたような顔つきで言う。その通りなんだけどさ。

『なっ……そんな口車には乗せられねぇ。全部ぶちまけてやる』

 ぶちまけるって何を?

『は? 何をぶちまけるって? ひょっとして俺達が日本人だったことをか? 別に隠してないから言えば? 俺はさ、同じ日本人の誼で言っただけだ。つい、出来心でやっちまったんだろ? なら、何を言われても出来心だったと言えばいいさ』

 そんなわけあるか。テントまで用意してたんだ。計画的な犯行であることは明白だ。俺は更に、

『聞かれたことだけ正直に答えて、余計なことを言わなきゃ多少は心証も良くなるってもんだろ? まぁお前が納得するなら好きにしろよ。俺は別に止めないし、何を言われても痛くも痒くもない。お前と違って犯罪者じゃないからな』

 そう言うと悔しそうに俯いた。更に続けて言う。

『あとな、お前の玉、俺なら治せるぞ。ま、おとなしく罰を受けて罪を償ったらだけどな』

 期待を込めた目で俺を見つめ返してきた。嘘は言ってない。今ならまだ治せるだろう。傷が癒えてしまったらもう無理だろうけどね。

『いいんだ。同じ日本人だろう? 罪を償いさえすれば清い体じゃないか。罪を憎んで人を憎まずとも言うだろう?』

 そう言ってデレオノーラの傍を離れた。ここは王直轄領だ。変に転生だとか日本人だとか言い回られると厄介なことになりかねん。王族に転生者でもいて、そいつが多少でも頭が回るやつなら以前ゼノムやラルファに言った転生者狩りでも思いつかれると問題だしな。自分の領地を構えるまでは隠しておいたほうが何かと好都合だろう。別に転生者であることを隠してもあまり意味はないが、同じ転生者で立場が上の奴への用心に過ぎない。あ、毛染めでもしたほうがいいかな。忘れないように心のメモに書いておこう。

 さて、こう言っておけばもし取り調べでもあった場合、こいつはペラペラと自分の余罪を話すようなことはしないだろうが、今回の件についてはおとなしく認めるかも知れない。ダメでも仕方ない。ああ、よく考えたら殺しておくべきだったかも知れない。いきなり殺さないまでも泳がせて伝言を頼んだ男共々始末してしまうのが一番安全だった。だけどなぁ、いくら強姦されかけたとは言え、ベルに殺せと言うわけにも行かない。鞭打ちと玉潰しで充分な罰だろう。切り取ってもいいけどさ。

 まぁ済んだことは仕方ない。それにこいつが日本がどうのこうの言ったところで貴族への犯罪者だ。単なる強姦魔の言うことなどいちいち王族だか上級貴族だかに報告されるような可能性も低いだろう。さっきのは掛け捨ての保険のようなものだ。

 そろそろテントの撤収も終わりそうだ。この証拠品、どうなるのかな? 良い物だから貰えると嬉しいんだが。あ、性犯罪の道具に使われても俺は気にしないよ。罪を憎んで物を憎まずだからね。



・・・・・・・・・



 ぞろぞろと夜道を登り、その後下っていく。騎士団が明かりの魔道具を持ってこなかったら大変だったろうな。四つも持ってきてくれていたので充分な光量を確保できるから足元がおぼつかないなんてこともなかった。

 街の中、騎士団の詰所と宿への分かれ道で騎士団と連行されているデレオノーラと別れると腹も減っているし、晩飯を食いに行こうという話になった。そう言えば今後はベルも同行するようになるんだ。ゼノムやズールーもきちんと紹介しなくちゃいけないね。

 彼らとベルはお互い自己紹介をし合った。ステータスも見せ合い、お互いを知ることになったのだ。ズールーは奴隷である自分もこの席に同席し、あまつさえ準男爵家の令嬢(と言っても家督相続権など下から数えたほうが早い次女だが)に直接触れるなど恐れ多いと言ったが俺んとこでは気にするなと言ってちゃんとステータスを見させた。飲み食いし、そろそろ食い終わるという段になってラルファがこんなことを言い出した。

「ズールー、あんた、忠誠心は有るの?」

 おいおい、いきなり何を言うのかね? チミは?
 そんなの有る以外に答え様はないだろう。

「当然です。数ある奴隷の中から私を選んでいただいたのです。私への扱いにも大変満足しています」

 ほらな。

「ふーん。そう。ならいいけど。でもね。そんなあんたには悪いんだけど、ちょっと今日は先に帰ってくれないかな? ね? アル?」

 なぜそこで俺に振る。まぁいいけどさ。

「ああ、ズールー。俺たちはこれから明日以降の作戦会議だ。あと、ベルと契約内容も詰めなきゃならん。今日は午後の休みを潰して悪かったな。先に休んでてくれ」

 俺はそう言うとズールーに先に宿に行っていろと言った。ラルファの言うことは気にするな。

「はい、わかりましたご主人様。では、先に休ませていただきます」

「おう、明日も今朝と同じ時間であの店な」

 そう言って手を振るとズールーは店から出ていった。さてと。

「ベル、今のは人払いに近い。ゼノムは俺たちの事情についてはもう知っているから安心してくれ。あと、全部食い終わったら場所を移そう。俺の宿で話すか」

 俺はそう言うと残っているジョッキを傾けた。

「ベル、安心して。ゼノムは私のお父さんだから。昔から話していたの」

 ラルファもそう言うと串焼きの残りに齧り付いた。

「ああ、大体は判ってる。細かいことまではよく知らんがな。まぁ悪いようにはならんよ、話を聞いておくだけでも損じゃないことは保証する」

 ゼノムも肉野菜炒めの残りを左手で掻き集めて口に放り込みながら言う。

 俺たちの話を聞いたベルは

「今更不安になんか思っていませんよ。大丈夫です」

 そう答えて鳥っぽい何かの肉を食べていた。兎って肉食だっけか? いや、知らんけどさ。



・・・・・・・・・



 場所を移した俺たちは早速情報交換を始める。お互いの固有技能の情報(俺は相変わらず魔法習得で通したが)に始まり、基本的なこの世界の情報などを話した。特にベルからは他の固有技能の名前を聞けたことが大きな収穫の一つだった。『鑑定』『耐性(毒)』『秤』『予測回避』この中で俺が知らないのは『秤』と『予測回避』だ。『予測回避』はともかく、『秤』には興味があるな。

 え? 予測回避されたら攻撃が当たらないだろうって? 馬鹿なこと言っちゃいけないよ。瞬間移動でもない限りは魔法の誘導や、場合によっては広範囲の土や氷による埋め立てなんか回避できるもんか。名前から言って肉弾戦や射撃戦では有効だろうがな。バカ正直に相手の土俵に立つ必要はない。

 また、彼女の出身地は転生者が転生してきた範囲では南東の端っこだという情報もあった。俺の場合は西の端だったらしいから、あと一人か二人くらい別の方向で端っこだという奴がいれば大体の範囲がわかるだろう。正確な地図なんかない。適当でもいいのだ。

 だが、デーバス王国内にも転生している奴らがいるという情報はベルが生き証人でもあるから、これは大きい。ことによったらカンビット王国やバクルニー王国、グラナン皇国なんかにも転生している人がいるのかも知れない。

 なお、拷問して(と言っても蹴っ飛ばしたり剣をちらつかせたりと言った可愛いもののようだったが)わかった今回のデレオノーラの事件の内容は、

・たまたま街角でベルに目をつけた
・日本人っぽかったので注目していた
・セマヨースケという人物を探しているようだったので日本人だとアタリをつけた
・郊外に拠点を準備した(準備には場所探しも含めて、ひと月近くもかけたそうだ)
・金で雇った男に伝言を頼んだ
・のこのこ現れたベルに自分がセマヨースケだと誤認させた
・丘を登ってきた彼女に麻痺の薬入りの水を飲ませた
・麻痺で昏倒した彼女を担いで拠点まで移動した
・あらかじめ用意してあった杭にベルの手足を縛り付けた
・解麻痺の薬を飲ませた
・いよいよお楽しみという段になって俺が突入

 というものだったらしい。まぁ殆ど予想通りだったな。

「で、ラルファ、確保してあるんだろうな?」

「え? 何を?」

 おいおい、勘弁してくれよ。

「麻痺の薬とその解毒剤? 解麻痺の薬だよ!」

 決まってんだろうが。

「え? もう残ってなかったし、だいたい証拠品でしょ?」

 あああああああ、一滴でも残ってりゃ鑑定できたのに……。まぁ奴隷が手に入れられるようなものならその気になりゃ手に入るか。魔石を利用して色々な薬品を作っていることもやっているらしいからな、この世界は。バルドゥックならそういうのを扱っている店もあるんだろう。

「それもそうか。仕方ない」

 ここでハタと思い出した。そう言えば今朝倒したスカベンジクロウラーは麻痺の特殊技能を持っていた。麻痺になった場合、それを取り除くには魔法的な解麻痺の薬か魔法しかないと鑑定ウインドウには書いてあったと思う。俺、麻痺も解麻痺もそんな魔法知らないぞ。使ったことねぇし……解毒の要領でいいのか?

 なんとなく地魔法と水魔法、無魔法の組み合わせで行ける気もするが、それぞれどの程度の魔力を注ぎ込めばいいのか……。いざという時に使えませんでした、とか発動まで15分かかりますじゃお話にならない。これは後で練習しておく必要があるな。多分、あの鑑定ウインドウの内容だと麻痺中でも魔法は使えそうな気もするけどね。意識はあるようだし。だけど、そういう問題じゃない。

「なによ、急に黙り込んで。……怒ったの?」

 ちょっとラルファが心配そうに声をかけてきた。

「あ、いや、違う。別に怒ってないよ。ちょっと考え事。俺は麻痺も解麻痺も魔法でやったことがないから、練習が必要だなってさ」

「あ、そっか……ごめんなさい。そこまで考えが回らなかった……」

「いや、いいんだ。気にするな。あいつが手に入れられるなら俺たちにだって手に入れられるだろ。奴隷が買えるなら値段もそう高くないだろうしな」

 俺は申し訳なさそうにしているラルファに明るくそう言うと、言葉を継いだ。

「で、話は変わるが、明日は迷宮に行く前に朝少しだけベルのお手並みを見せてもらおうと思う。あと、買い物だ。俺たち三人分の毛染め液だか毛染め薬だかを買う。バルドゥックは大きい街だから手に入るだろ」

 俺はそう言うとベルを見た。ひょっとしたら反対されるかも知れんと思った。

「勿論私の腕を見せることは問題ありませんが、何故毛染めが必要なのでしょうか?」

 ベルは不思議そうに質問してきた。すると、ラルファが以前俺がラルファに言ったような事を言う。だから何でお前が自慢げに言うんだよ。いいけどさ。ベルは納得したようだが、セマヨースケがこちらを見つけづらくなることを心配しているんだろうな、あの顔は。

「ベル、これは俺の考えだけど、俺は今までにあんたと今日の奴とを含めて五人の転生者に会ったことがある。俺も入れると合計六人だな。実は最初の奴に会った時に気がついたんだが、もう確信した。転生者は多分全員日本人なら黒髪黒目だ。ひょっとしてあの事故の犠牲者に外人がいたら、そいつは違うのかもしれないが、『報道番組の録画』のようなものを見たろ?
 あれで『報道』されていたのは日本人の名前だけだった。いちいち全員覚えちゃいないがね。日本に『帰化』した外人、という線も否定できなくはないだろうが、そんな低確率の問題を心配しても始まらない。
 だから、転生者は全員黒髪黒目だと思ってもいいだろう。
 これは可能性の問題だ。さっきラルファが言ったように、ここは王都のお膝元と言っても良い街だ。ロンベルトの王族に転生者がいてもおかしくは無い。勿論、ロンベルティアって王都は人口も20万人くらい居るらしい巨大な街だから確率から考えると王族に転生している人はいない可能性の方が高いとは思う。
 だが、いないとも限らない。だからこれは『保険』みたいなものだ。日本に『帰化』した外人があの事故に居合わせた確率と王族に転生した確率がどちらが高いかとかいう問題じゃない」

 俺がそう言うとベルは納得した顔をして言った。

「確かにアルさんの仰る通りですね。私も自分が黒髪黒目だということは知っていましたが、ほかの転生者が同じように黒髪黒目だということも知りませんでした。洋介もほかの転生者に出会っていなければ知らないでしょうね」

 うん、俺もクローの顔を見るまでは顔つきはともかく自分だけが偶然に黒髪黒目だと思ってたよ。

「そうだね。私も一緒。アルと出会って日本人だろうって気がついたときはびっくりしたから。それにさ、黒髪黒目は珍しいけど、黒髪だっているし、黒目だっている。赤い髪もいれば赤い目もいる。赤髪赤目だって黒髪黒目みたいに珍しいんじゃない? 同じように茶髪茶目も珍しいような気もするし、青髪青目だって珍しいと思う。何より、私たち三人が全員黒髪黒目ってのはこれはもう『ヤバイ』でしょ」

 なにがヤバイんだよ。小娘。だが、お前の言うことは尤もだ。

「そうだな。確かにラルファの言う通り、あまり神経質になることもないかも知れない。だけど、きっと身体的特徴で探される場合、まずは黒髪黒目だ。全員髪の色は変えたほうがいいだろうな」

 俺がそう言うと、ラルファとベルは何色にしようか悩み始めたようだ。何色でもいいよ、もう。

 夜も更けてきた、明日も五時前には起きるのだ。皆もそろそろ眠いだろう。ちょっと一人で考えたいこともあるからここで解散しようか。



・・・・・・・・・



7442年6月5日

 翌朝、ベルの弓の腕と剣の腕を見せてもらった。期待にたがわず素晴らしい弓の腕は今後大きな戦力になるだろう。剣の方は特筆するようなものではないが、身を守るくらいは出来るだろう。

 また、ラルファ同様に彼女にも魔法を教えることになった。MPも高いし、もし魔法が使えるようであれば充分に大きな戦力になるであろうことは疑う余地はない。是非魔法を覚えてくれ。

 なお、契約だが、またもラルファがちゃんとした契約書を作れとうるさかった。内容はラルファやゼノムと交わしたものと殆ど一緒だが、解除条件として「セマヨースケと相談して決定する」というのを追加した。これはどうしようもなかった。最初は「セマヨースケを発見するまで」と言われたんだ。怪しまれないようにここまで交渉するのに骨を折った。まぁ仕方ないけどね。

 髪染めは俺が赤、ラルファが金、ベルが濃い青になった。俺とベルは多少色が落ちたり、髪が伸びても誤魔化しやすい色にしたんだ。だけどラルファのアホタレは茶色にしとけという俺たちの忠告を無視して金髪にしやがった。

「昔から一度金髪にしてみたかったんだよねぇ」だってさ。

 色落ちしてきても金は手前ぇで払えよ、スカタン。因みに、染めたあとの顔を見てお互いに「似合ってない」と笑いあった。

 さて、もう朝の十時を回った頃だ。今日も迷宮に潜りますかね。今日からは相手がノールやゴブリンなど、それ程強敵そうでもない場合、前衛をゼノム、ズールー、ラルファに任せて後ろからベルに援護させてみよう。狭い場所で相手が10匹や20匹くらいなら何とかなるんじゃないか。

 迷宮の中で弓がどの程度使えるかも分からんしな。俺は周りの警戒だ。あんまり苦戦するようなら都度魔法や銃剣で援護してやればいいだろう。ついでに細かく鑑定して経験値の入り方でも研究するか。ある程度はバークッドでの夜間の狩りから得た情報で予測はできるが、いまいち確信を持てないでいる部分も結構あるんだよ。

 あ、あと紙と筆記具も買っておいたほうがいいな。地図を作成しながら入ったほうが今後の効率も考えるといいだろう。場合によっては思い切って地図を買ってしまうのも……いやいや、80万Zは大金だ。無駄遣い厳禁。

 昨日と同じように「ケ・ル・ル・ヘ」と言う、意味のない呪文を唱えて迷宮に挑む俺たち五人。さあ、ここからは気を張り詰めていかないとな。早速鑑定の視力で前方をスイープしながら辺りを見回す。昨日は洞穴の行き止まりのような場所に転移してきたが、今日は長く続く洞穴のど真ん中のようだ。

 む、どっちが北だか南だか判らん。

 思わずラルファに空間把握の固有技能を使ってくれ、と言いそうになったが止めておいた。ラルファは無魔法を覚えたとは言え、その特殊技能のレベルはまだゼロだ。MPも増えていないから3しかない。自然回復も望めないから、万が一の時にまずいことにでもなったら大変だ。

 いつかのホーンドベアーのようにMPを減らされでもしたら目も当てられないことになる。あの時、ケリーは僅か数秒程度で無力化されてしまったのだ。

 ここは当分ガマンガマン、と思い、適当に紙に通路を書き込もうとしたら、

「北はあっちね。あと、多分傾いてはいないわ」

 とまだ白紙の紙を覗き込みながら言ってきた。こ、この野郎、いつの間に使いやがった……。鑑定の視力のままだった(鑑定で輝度を上げたほうが薄暗い洞穴の中で何か物を書くのには便利なのだ)ので思わず鑑定したら案の定MPは2になっていた。せっかく俺が気を使ってやったのに。お前の安全の為なんだぞ、と言えないのがもどかしい。

 俺は、「あ、ああ、すまんな」としか言えず、地図を書き始めた。

 とにかく現在地が解らないので紙の真ん中に斜めに線を入れた(ラルファの指示してきた北は洞穴の伸びる方ではなく斜め方向を指していたのだ)。これはラルファの魔法の特殊技能のレベルアップも急務だなと思いながら線を引き終わった俺は、どっちを選ぼうにも何の材料もないので「じゃあまずはこっちに行ってみるか」と言ってそろそろと歩き出した。

 
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