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男なら一国一城の主を目指さなきゃね 作者:三度笠

第二部 冒険者時代 -少年期~青年期-

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第七話 魔法使い

7442年4月19日

 翌朝起きたとき、ひどい二日酔いで頭が痛かった。解毒魔法で回復できることは知っているが、簡単な解決は不摂生の元、と言うか変に慣れて安易に深酒をする習慣をつけたくないだけだ。別に差し迫った危機があるわけでなし、ランニングをして汗を流せば収まるだろう。

 水分を十分に摂って普段より少し長めに走り、シャワーを浴びたら予想通りスッキリしたので、朝飯を食いに行くことにした。

 どこに行こうか少しだけ考えたが、魔法の修行の約束をしていたのでビンスイルの店に行くことにした。芸が無いっちゃ芸が無いが日本語で会話できる機会は貴重だし、マリーとクローには出来るだけ良い印象を持っていて貰いたいので別段不満なんかない。飯も旨いしね。

 ビンスイルの店に向かい、うろうろと店の客が食っている物を見つめている低所得者どもの包囲をくぐり抜けていつもの端のテーブルに着くと朝食セットを頼む。黒パンとスープ、付け合せの温野菜。うむ、いつも通りのメニューだ。だが、スープは普通に飲めるし、温野菜もいつも内容が変わるから飽きることもない。これで250Zはお得だろう。俺はいつも50Z追加して炒り卵も頼むけどね。塩コショウを掛けて黒パンに乗せて食べるとこれが結構イけるんだ。

 俺が食い終わった頃を見計らってマリーが向かいに座った。

「昨日一日、魔法の修行をやってみたんだけど……私には才能がないのかな? ダメみたい」

 悲しそうにマリーが言った。

「じゃあ多少時間は掛かるかもしれないけど普通のやり方でやってみる?」

「え? 普通のやり方って……うん、教えてくれる?」

 なんで恥ずかしそうに赤くなる? もじもじ病か?

「着火の魔道具はある?」

「あるわ。持ってくる」

 なんだか拍子抜けしたように厨房に向かったマリーを見ながらポケットをごそごそかき回した。一個くらい魔石が残っていないかと思ったが、勿論そんなことはなかった。

「この修行法は俺が聞くに一般的なものだ。他にも方法はあるとは思うが俺は知らない。簡単に説明すると着火の魔道具から火を出しっぱなしにする。それを小魔法キャントリップの魔力感知で感知を繰り返す。何回もやれば無魔法の魔力感知が使えるようになるらしい」

「え? 火を付けっぱなしって、魔石結構使うんじゃない?」

「そりゃそうだ。火が出てる間、魔石からの魔力を使うんだしな」

 マリーは下唇を噛むと、眉根にしわを寄せて言う。

「だとしたらちょっと無理ね。魔石を無駄に使うわけには行かないわ」

「そうか、じゃあ、大変だろうが昨日教えた通りやるしかないぞ」

 ははぁん。都市部の住民だと魔法が使えるのはほとんどが平民以上や裕福な層だけにしかいないというのはこれが原因なのかもしれないな。バークッドでは農奴達が成人した時には領主から魔法習得の練習用にと小さい魔石を贈られるのが習わしだった。それでも十人に一人くらいしか魔法を習得することは出来なかったのだ。

 魔石がないなら購入するしかないのだが、ゴブリンから取れるくらいの価値の低いものでも1000Z以上はする。特に魔石の入手先が『魔道具七九屋』に代表されるような魔道具屋くらいしかない都市部の場合、ゴブリン一匹から取れるような価値の低い魔石をそのまま店に並べるようなことは滅多にないだろう。価値の低いのが沢山あっても在庫管理が面倒だし、もし棚卸などを定期的にやっているなら事務的な負担が増えるだけだからだ。棚卸なんかやってないとは思うけど。

 魔石を購入するのは貴族などの富裕層と商店だろう。いわゆる法人ユースがほとんどと考えられる。だから購入可能な魔石は数万から数十万Zくらいの値になってしまう。ビンスイルの店でも着火の魔道具は勿論、灯りの魔道具も使っているが、それは商店として使っているに過ぎない。価値の低い魔石をしょっちゅう買いに行くのは手間だし、交換だって面倒だ。魔石の魔力が切れた時にそこそこの価値のものを買いに行く位なのだろう。

 日常的に魔物を退治して魔石を取っていた、魔石生産者とも言える我が家ですら魔石の無駄な使用についてはできるだけ避けるように教育されてきた。消費者なら家なんかよりももっと厳格に使用を制限しているのかも知れないな。

 魔石の消費量が少ないとされる着火の魔道具で価値100(七九屋で900Zくらいの売値の筈)くらいの魔石だとだいたい100秒位の間炎が出せる。一秒で9Zも使うわけだ。そりゃ無駄遣いと言われるのも頷ける。村でも親父が成人した農奴達に贈っていた魔石はゴブリンから取ったくらいの物を7~8個結合したものだ。1000秒くらい火が出ている事になる。うーん、1000秒で小魔法は何回使えるかな。何日にも分けなきゃいけないだろうが200回くらいかな。その位やって初めて無魔法を覚えられるかどうかなのだ。

「もう一回手本を見せてくれる?」

「いいよ。やってみようか」

 マリーはまた焚付に使う細い木の枝を持ってきた。火をつけてやってからそれを囲むマリーの手を外側から更に囲むようにして魔力を通す。マリーは真剣な顔で魔力が通った感触を確かめているようだ。

 正直な話、マリーが魔法を使えるようになるかどうかは可能性として1割くらいの筈なのであまり期待しても仕方ないと思うけどね。まぁ自分が納得するまではやってみればいいだろう。本当に気持ちは理解できるしな。ちょっとヒントをやろうか。

「魔力を通すのにはコツがいるんだ。これは俺の方法だから絶対じゃないけど、広げた手を想像の中で合わせてごらん。体を循環する魔力を意識しながらね。多分……そうだな、血液に魔力が溶け込んでいると思えばいい。それで、想像の中で合わせた掌を通して両手の血管が繋がったことを想像する。ちょうど想像した掌の合わせ目が炎に重なるくらいでね。あとは根気と回数だろうね。才能があれば今日にでも出来るはずだよ」

「わかった。やってみる。ありがとう」

「別にいいよ、今んとこ暇を持て余してるしね。頑張れよ。俺はまたクローが来る夕方にでも顔を出すよ」

 ビンスイルの店からの帰り道、もう10年以上前になる初めて魔法の修行を行った頃のことを思い出していた。確か兄貴も姉貴も俺も最初の10分くらいで出来たと思う。マリーは多分ダメなんだろうな。MPは16もあるのに勿体無い気もするな。



・・・・・・・・・



 俺はその足で騎士団本部に向かった。手を焼いているというベグルAについて聞いてみたかったことがあったからだ。門を入った脇の小屋に行き、冒険者向けの依頼があるか確認すると同時に小屋にいる20歳くらいの受付の係員に聞いてみた。

「今日も依頼は無いみたいですね」

「そりゃそうだ。退治依頼がしょっちゅうあったらそれこそ大変だからな」

「確かにそうですね。ところで、騎士団では街の無法者は退治するなり逮捕するなりしないのですか?」

「退治って……魔物じゃないんだから……まぁ似たようなもんか」

 こんな感じで世間話のようにべグルについて話を誘導し聞いていく。すると、出るわ出るわ、次から次へとべグルが絡んだらしい悪事が出てきた。いい加減持て余した騎士団は余程奴にきついお灸を据えてやりたがっているらしい。

 センドーヘル団長も一度呼び出したべグルと対峙したこともあったらしいが、決定的な証拠もなく、こっちは税もきちんと収めている善良な市民でござい、といった態度に額に血管を浮かせ顔を赤くして怒り狂ったこともあるらしい。確かにキールの規律と治安を護る騎士団が証拠もなしに捕縛することも出来ないだろう。

「でも、そんなことばかりならあちこちから恨みを買って殺されたりしないんですかね?」

 そう聞いてみたが、

「そう思うだろ? だがな、奴は用心深くて一人になることは滅多にないらしい。いつも魔法使いの相棒と一緒に行動しているから、なかなか不意打ちも出来ないってよ」

 と答えられた。そして、

「一緒にいる魔法使いもかなりの手練らしい。冒険者として働いてはいないみたいだから誰も本当の名前を知らん。神社は犯罪者だろうがなんだろうがステータスの情報は絶対に教えないしな。いっつも一緒にいやがるから小べグルって呼ばれてるけどな。まぁそんなわけで不意打ちしようにもある程度犠牲を覚悟しなけりゃならん。流石に悪人であることは確実なんだが証拠もないから無理矢理力ずくでってのもな。相手は手練の魔法使いだからこっちに犠牲が出るようなことは出来んしなぁ。団長もきっとお辛いことだろう」

 と追加された。そうか、小べグルとは呼ばれているものの、あの魔法使いが本当にべグルという姓であることは知られていないのか。ことによると奴がべグルBなのかも知れない。

「騎士団も大変ですねぇ。ところで、彼らはキールの下町を根城にしていると聞きますが、あの辺のゴロツキどもはいろいろ、その悪さをしているらしいじゃないですか。喧嘩なども日常らしいですし。べグルとかいう親玉みたいのも一緒になってやってるんじゃありませんか? 証拠なんて腐るほどあるのでは?」

「ああ、そうらしいな。だが、本当に奴は尻尾をつかませないんだ。ケチなカツアゲやみかじめを徴収したりしているのは下っ端どもだ。出来るだけ防ぐようにはしているんだが、完全になんてとても無理だよ。べグルはもっと大掛かりな仕掛けの時なんかに手下共を指揮するらしいんだ」

 難しい顔をして係員が言う。

「へえ? 大掛かりな仕掛けですか……」

「ああ、そうだ、隊商を襲って荷馬車を奪ったりとかな。その場合、全員殺すから目撃者も残らないんだ」

 目撃者もいないのにべグルの仕業だと判るのか?

「目撃者になりそうな人間は全部殺すのですか……残虐ですね。ところで、何故、べグルの仕業だと判るのでしょう?」

「状況証拠だなぁ。もともと奴らは行方をくらますことも度々あるんだが、襲撃があった日の前後で必ず奴の姿はキールから消えるし、その後は金遣いが荒くなったりするからな。あと、運んでいたと見られる商品を手下が捌いたりしてるしな」

「悪人とは言え余程用心深くて頭も切れるんですねぇ」

 係員は俺の感想に溜息を一つつくと言う。

「本当になぁ。だが、頭がいいのは相棒の魔法使いの方らしいけどな。まぁどっちでもいいんだが、手を焼いているのは確かだよ。お前さんも気をつけてな。多分バークッドの隊商は襲われないよ。荷物が特殊すぎて捌いたとしても足がつくからな。それに、お前さんのとこの隊商は護衛にグリード卿やお嬢様がつくだろうから、奴らも被害を恐れるだろうからな。安心していいんじゃないか?」

 おお、言われるまでバークッドの隊商が襲われることは考えてなかった。だが、確かにこの係員の言う通りだろう。侯爵の直系の血族も居るからもし被害でもあれば大変な騒ぎになるし、怒り狂ったセンドーヘル団長も証拠なんて気にしそうにないだろうしな。

「うーん、そうですね。では、私はこれで。また来ます」

 苦笑いしながら挨拶をした。
 いくつか重要な情報を得ることが出来た。多分俺しか気づかないだろう。まだ確信を得るほどではないが、前進の手応えを感じた俺は、充分満足していた。



・・・・・・・・・



 夕方、ごみごみした道を抜け、中央川セントラルリバー沿いに歩き、もうおなじみとなった低所得者を眺めつつビンスイルの店に行くと、クローとマリーが何やらしていた。どうも俺の魔法の修行をマリーがクローに教えているらしい。おばはんにビールを頼み、二人に声を掛けて同じテーブルに座った。

「アル、こんなんで魔法が使えるようになるのかよ?」

 多分何の成果も上げられなかったのだろうクローが不満げに言った。

「ああ、使えるようになる。手本を見せてやろうか?」

 そう言うとクローは「んじゃ頼むわ」と言って俺を見た。

「ほれ、こうやって手を炎の左右に当てる。距離はそんなもんでいいよ。で、こうだ」

 俺がクローの手の外側から魔力を流すと「むおっ」と言って魔力に反応した。

「今の感じを自分で出せるようになればOKだ。感覚の掴み方はマリーに聞いたか?」

「ああ、掌を想像の中で合わせて血管を繋ぐととかいう奴か?」

「そそ。まぁやってみ」

 マリーが持っている枝の炎の左右に真剣な表情で手をかざすクローを俺とマリーが見つめる。すると、どうだ。ほんの数十秒程度の時間で集中して顔がゆがんだクローの手が弱く薄青い光を放った!

 慌ててクローを鑑定するとMPが1減っている。炎の揺らぎは誤差に近いものだったが魔法の光も出たし、MPも減った。うん、これは確かに魔法が使えたと言えるだろう。

「おめでとう、クロー。もう少し頑張れば多分無魔法が使えるようになるぞ」

 俺はそう言ってクローに笑いかけた。

「……今のが……今のが魔法か……っふ。ふふふ。あは。やった……マリー、見たよな。俺、やったぞ。俺にも魔法が使えた」

 クローはニヤニヤしながら喜びを噛み締めると嬉しそうにマリーに報告した。目の前で見てたんだから知ってるだろ。

「手が……光った? 今、手が光ったわ……。すごい、本当にこんなやり方で魔法が使えるようになるのね」

 マリーも心なしか嬉しそうだが「こんなやり方」とか「本当に」とか、聞き捨てならんぞ、こら。疑ってやがったのか、こいつは。

「クローは……そうだな、あと2~3回はコツを忘れないように続けてやったほうがいい。急いでやるなよ。時間がかかってもいいからゆっくり、集中してやれよ。それとマリー、なんだか俺が教えた以外のやり方のほうが信憑性があるような事言いやがって、参考までにお前の知っている魔法の修行方法を教えてくれ」

 俺はクローには笑顔で、マリーにはぶすっとして言った。

「え? ああ、アルの教えてくれた修行方法って普通じゃないから……。ちょっと、その、俄かには信じられなかったの……すみません」

 マリーは片手で拝むようにして謝った。まぁいいけどさ。だが、こいつは普通の魔法の修行方法自体を既に知っていたような口ぶりだ。俺はシャルの考えたこの方法と、シャルから聞いた着火の魔道具を使う方法しか知らないぞ? 違う方法があるのか……。

「マリーの言っている普通の方法ってどんなんだ? 俺が教えたのとは違うのか?」

 マリーが教えてくれた魔法の修行方法はキール都市部の自由民の間で行われている方法らしい。聞いてみるとその方法はいかにも効率の悪い方法だった。

 え? 興味がある?
 じゃあ言うけどさ。

 もう知ってるとは思うけど、シャルの編み出した炎を揺らす方法ってのは無魔法の特殊技能を得るための修行方法だ。小さな炎を揺らすことは物理的にも簡単なことだ。ほんの少しの気流があればいい。

 電位差でも揺れるし、燃やす燃料の種類によっては磁界の中に入れても揺れる。炎ってのは質量がものすごく小さいし、希薄だから簡単に影響を受けるからな。それは魔力で揺らそうとしても一緒だ。小さな魔力の流れにも簡単に影響を受けてしまう。

 ここまで整理して改めて思ったんだが、シャルはやはり相当考えてこの方法を編み出したのかも知れない。惜しむらくは炎は簡単に影響を受けるが、自分の生み出した炎ではないからそれに影響を与えるためにはかなりの集中力を必要とすることだ。

 自分以外が生み出した物体(ここでは敢えて物体と表現しよう)に影響を与えるのは普通より大きく魔力を消費するとは言え、枝の先に付けた炎は小さいから1MPでも揺らすくらいは出来る。1MP使うだけで修行の成果をすぐに確認でき、同時に魔力(MP)を使用させるというのは実に合理的でいい修行方法だと思うよ。

 対して、俺の言ったもう一つの方法。シャルから昔聞いた着火の魔道具で放出される火に含まれる魔力を感じ取る方法は、こちらも無魔法の習得方法だ。最初は小魔法キャントリップの魔力感知を使い、魔力感知の小魔法キャントリップに慣れたところでひたすら使い続ける。何日も何回も繰り返すことで無魔法を習得できる可能性がある。

 実のところ、これは小魔法キャントリップの魔力感知に慣れて、何回も流れる魔力に触れているうちに魔法の特殊技能に目覚めるのを待つ、という受動的な方法だ。俺はこれが一般的だと思っていた。

 ところが、マリーが顔を赤らめながらも教えてくれた方法は無魔法の習得ではなく、元素魔法の習得方法だった。全てに共通するのは前日は早めに就寝して充分に睡眠をとり、翌日日の出前に起きたあとで丁寧に体を清め、配偶者と性交渉をし、充分な朝食を摂って、一人になれる静かな環境でやるらしい。

 性交渉は自慰でもいいらしいが、これが必要とされているからある程度大人になってから修行を始めるとも言っていた。まぁここまでは性交渉や自慰など後暗い秘密の儀式めいたところもあるが、魔力切れに対する配慮も感じられるし納得できなくはない。

 このような下準備を経て行われる、実際の修行方法は次のようなものだった。

 手に持った小さな燃えるもの(薄い紙に朝採り一番の精液や愛液を垂らし乾かしたもの)を見つめながらひたすら「燃えろ」と念じ続けるとか、コップとかの容器の上に握り拳を作って「精液/愛液出ろ」とか念じ続けるとかいった感じの、なんと言うか、惚れ薬の開発とか超能力の訓練ですか? と言うのに近いような方法だった。

 地魔法や風魔法も聞いてみたかったが「セクハラもいい加減にしろ」と言われ諦めた。要するに、俺に言わせれば、それで魔法が使えるようになる方が天才じゃね? と言うようなものだった。

 一応、どれも炎を揺らすような能動的な習得法ではあるとは思うが、困難さの度合いは比較にならない気がする。なお、マリーの言う無魔法の習得方法は小魔法キャントリップの予約を無魔法で実現させることだった。これは最初からやるにはハードルが高すぎると思う。

 だが、実際にこのやり方でも魔法の特殊技能を習得できる人もいるのだから普通に信じられているらしい。マリーはこれだって長い間に幾分効率化され、洗練された方法ではあるらしいと言っている。

 勿論、転生してきた日本人は魔法なんか使ったことがないので、これが正しい魔法の習得方法で、実際にこの方法で習得できた、という人が複数いれば信じるしかないだろう。きっと俺だって信じたと思う。性行為やそれで絞り出された己の分身を魔法の媒介にでもするような内容だし、カバラだっけ? 秘術っぽい気もするから信じやすいとも思う。

 恐らく、魔力切れに対するある程度の予防として、成人以上であることを印象づけるために性交渉や自慰と結びつけ、他に大して愉しみなんかないからセックスに関わる内容も絡めたんだろう。15~6歳くらいの若い男女が自分の分身が染み込んだ紙だか布だかを持ちながら真剣な顔でそれを睨みつけて「俺の/私の恋よ、燃え上がって届け!」とか言ってるところを想像すると、何とも言えないやるせない気持ちになる。

 少なくともバークッドではこんな事聞いたこともないし、ゴムの作業に従事している若い連中が話している猥談でも似たような事が話されていなかったから、田舎と都市部では言われていることも違うのだろう。

 キール以外の都市、例えば王都であるロンベルティアとかでも幾分異なって伝わっているんだろう。まぁ文化ってのはその土地や風習などに根ざして発展するものだろうから、一生その土地から動かない人間が殆どなら、同じことでも言い伝えが土地によって変わるんだろう。

 ちなみに一時間も集中してへとへとになったクローは追加でMPを3消費して無事に無魔法がレベル0になった。マリーは俺が思うに魔法が使えない9割に含まれていると思うが、もう少し頑張るそうだ。

 まぁ勝手にしろ。陰ながら応援はするよ。

 
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