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男なら一国一城の主を目指さなきゃね 作者:三度笠

第二部 冒険者時代 -少年期~青年期-

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第四話 お誘い

7442年4月16日

 さて、日も改まったことだし、気持ちを切り替えて行こう。まずは新しいズボンの調達だな。それから、べグルAが根城にしているというジャンルードの店に行って朝飯がてら情報収集だ。危ないとか絡まれるとか色々と不穏なことは聞いたけど、今のところベグルAに敵対するようなことは何もしていないし、昨日と同様に貧乏そうな格好をしていけばそうそう危険なことはないだろう。

 よしんば、絡まれたとしてもそれを奇貨にして食い込むことも出来る。ベグルAと関係ない奴らなら懲らしめてやればいいし、関係があるなら本人と接触できるかもしれない。俺には魔法があるからそうそう不味い事になっても切り抜けられるとおも……甘いな。昨日聞いた話だとベグルAの傍らには魔法使いもいると言っていた。持久戦ならいざ知らず、不意打ちでもされたらまずい。最初だし、様子を窺う程度に留めておくほうが無難か。あまり自分の力を過信しないほうがいいだろう。

 鑑定の結果から見て、確かに俺はレベルも高いから強い。だが、これは「14歳にしては」という冠詞が付く程度だ。冒険者や冒険者崩れなら俺くらいのレベルの奴はいるだろうし、そういう奴らとなんとか互角か少し劣る程度だ。14歳の小僧が30歳の冒険者とやりあえるのは凄いことだが、剣の技倆や魔力量や魔法を除いた素の肉体の力だと俺は普通の冒険者程度かちょっと劣るくらいなのだ。柔道を含む徒手格闘も遥か昔、自衛隊時代に通り一遍の事しかやってないし、慢心は禁物だ。アドバンテージはないものと考えたほうがいい。

 改めて気合を入れ直し、ズボンを購入してから着替えてジャンルードの店に向かう。本来清潔なキールの街並がだんだんとボロく、不潔な物になって行く。道はデコボコでぬかるみも残り、正体のわからないゴミやボロクズ、道端に座り込んだり、寝転がったりしている殆ど浮浪者(正確に言うと浮浪者はいないはずなので、極低所得者なんだろう)の様な汚い格好の人や亜人が増えていく。

 どちらかと言うと比較的若いか、年配が多い。働き盛りの年代はそれ程仕事には困らないのだろう。五歳以下と五十歳以上の自由民は人頭税を免除されるから見かけるのは殆どがそういった年代だ。

 ブーツが汚れないように出来るだけマシな部分を歩き「朝飯でも食いに来ましたよ」と言うように平静を装ってジャンルードの店に入っていった。この店は通りに面してはいるものの外にテーブルは出ていなかった。尤も通りが狭いからテーブルを出す余裕がないのかもしれない。店の中は案外広く、テーブルは12もある。通りに面した入口は開放状態で、入口から入って左奥が厨房のようだ。

 入口近くの空いている席に腰掛け、早速客を鑑定する。やはり早朝なだけあって冒険者崩れやごろつきのようなやくざ者はまだいないようだ。黒パンとスープの朝食セットを50Z也で頼み、ゆっくりと食べ始めた。石のように堅い黒パンを薄い塩味で具がほとんどない野菜スープに浸し、吸い込んだスープを啜るようにして少しづつ食べる。うん、まずい。スープを吸っても黒パンはあまり柔らかくならないし、スープ自体具が少なすぎて出汁など出ておらず、薄い塩味のお湯みたいなものだ。

 自然と顔が渋いものに変わっていくのを自覚しながら堅い黒パンと不毛な格闘を続け、なんとか食べ終わる。うーん、オースでは日光は貴重だから基本的に日の出とともに活動し始め、日の入りとともに就寝が一般的で、俺の生活習慣もほぼ似たようなものだったから、勘違いがあったかな。キールくらいの都市だと灯りの魔道具も一般的だし、夜間も営業してる店が多いことは考えられる。

 我が家にも灯りの魔道具はあった。しかし、魔石を消費するから滅多に使われず、どうしても夜間に明かりが必要な時にはもっぱら獣脂を燃やすタイプのランプを使っていた。魔石も収入源だったからね。転生してから今までの14年間、夜更しは夜間に狩りに行く時くらいで、あとはさっさと寝て、真夜中に一度起き、魔力を使い切ってまた朝まで寝る生活だった。だから、その部分は健康的でいいな、と思っていたのだが、冒険者をやって行くなら一日10時間以上の睡眠は諦めたほうがいいかもしれないな。

 そうと決まったら魔道具屋に行って魔石の売価や小売価格、必要なら加工法も聞いてみたほうがいいだろう。時計はともかく、灯りの魔道具も購入したほうがいいかも知れない。俺はせっかく来たジャンルードの店を出るとビンス亭に戻った。上等な服に着替え、魔道具屋に行くのだ。



・・・・・・・・・



 一昨日騎士団の従士に案内されて来た魔道具屋に再び入る。看板には「魔道具七九屋」と書いてある。店内カウンター奥の棚に飾ってある魔石の価格を見ると、鑑定した価値のだいたい九倍くらいの値がついていた。

 何種類かの魔石を持ってきたので、早速買取して欲しいとお願いすると、中年の主人は奥からなにやら持ってきた。秤のようだ。同時に灯りの魔道具も用意した。一体それらでどうするのか? 興味津々で見ていると、俺の持ち込んだ魔石を順番に灯りの魔道具にセットし、点灯させていく。何の意味があるというのか? そう思って聞いてみると、偽物が持ち込まれることを警戒して、本物の魔石であるか試しているとのことだった。

 この試すために使っている灯りの魔道具は特別製で、台座内の電池ボックスのような魔石を入れる部分が通常よりも大きくなっており、まずどんなサイズの魔石でも入れられること、また、わざと少し感度が悪くなるように調整してあるらしい。

 全部の魔石をテストして点灯することを確かめると今度は秤に載せた。秤は天秤で、片方に魔石を載せ、反対側に分銅を載せるタイプだ。魔石は込められている魔力量に比例して正確に重さが異なるそうだ。同じ大きさでも魔力量が多いと重量が増え、少ないと減る。魔力を完全に放出した魔石は大きさが異なったとしても全て同じ重量らしい。

 小さいものは大人の小指の爪くらいから大きいものは子供の拳くらいまで様々な大きさがあるが、魔力を放出し尽くすと最終的に同じ重さになるらしい。これは魔石をいくつ結合しても変わらないそうだ。不思議だな。大きさによって込められる最大の魔力量が異なり、大きいものほど最大魔力量は多くなり小さいものは最大魔力量は小さくなるとのことだった。

 重量によって魔力量の違いが測れるから、計測した魔石の重量から魔力を放出したあとの空の魔石の重量を引けばその魔石の魔力量は多少の誤差はあるだろうがほぼ正確に推測出来る。それが魔石の価値になるということか。さっきのテスト用の灯りの魔道具の感度を悪くしている理由もこれか。魔石に何かくっつけたり、魔石の周囲を土で覆ったりして重量をごまかされないようにしていたのか。

 しかし、オースで正確な重量の分銅なんか作れるはずもないので、ついつい誤魔化されるような気がする。出来るだけ正確になるように作った分銅であるとは思うがね。あんまり真剣に手元を覗き込んでいるのに気がついたのか、店の主人は苦笑しながら俺に言った。

「大丈夫ですよ、重さを誤魔化したりなんかしません。魔石のごまかしは殺人に匹敵する重罪ですからね」

 なるほど、なら安心してもいいだろう。魔石は鑑定の価値のおよそ七倍で売却できた。店に並んでいるものは大体九倍の値がついている。粗利益22%くらいか。妥当だろうな。ああ、七割で買い取って九割で売る。だから七九屋か。



・・・・・・・・・



 昼近くまでまたランニングをし、改めてジャンルードの店に行く。気持ち悪いがあえてシャワーは浴びなかった。汗臭いけどリアリティが増すかと思ったのだ。ジャンルードの店に行くまでには乾くからびしょびしょのまま入るわけじゃないし、いいだろ。貧相な格好のままてくてくとスラムの道を歩いて行った。

 ジャンルードの店は朝と変わりなく営業中のようで、俺は昼食を兼ねてビールを一杯と豆の煮物を頼みまた朝と同じ入口近くのテーブルに座った。背を丸め、目だけで店内を見回すと、朝と客層は異なり、ごろつき風の男女が増えている。こいつらがべグルAの手下なのだろうか。近くの席から一人づつ鑑定をして名前や能力などを確認していく。どいつもこいつも昨日の奴らと似たり寄ったりでレベルも高くないし、特殊な技能を持ったりもしていない。

 すると、いた。店の奥の方のテーブルに二人で腰掛けて何か飲みながら話している。

【べグル・ゴードビット/14/7/7423 べグル・ゴードビット/25/9/7402 】
【男性/11/3/7401・普人族・ロンベルト王国ウェブドス侯爵領登録自由民】
【状態:良好】
【年齢:41歳】
【レベル:14】
【HP:112(112) MP:9(9)】
【筋力:20】
【俊敏:15】
【器用:22】
【耐久:19】
【特殊技能:小魔法】
【経験:379214(450000)】

【ザックワイズ・ベグル/6/11/7426 ザックワイズ・ベグル/5/5/7403 】
【男性/19/3/7402・普人族・ロンベルト王国ウェブドス侯爵領登録自由民】
【状態:良好】
【年齢:40歳】
【レベル:11】
【HP:93(93) MP:32(32)】
【筋力:14】
【俊敏:14】
【器用:22】
【耐久:13】
【特殊技能:水魔法(Lv.4)】
【特殊技能:風魔法(Lv.4)】
【特殊技能:無魔法(Lv.5)】
【経験:201825(210000)】

 っざっけんな。二人ともベグルじゃねーか。年齢やレベルからして魔法が使えない方が親玉だろう。しっかりと二人の顔を心に刻み付ける。うーん、多分ベグルAはあいつで間違いないとは思うけど、ベグルBはどっちなのか? それとも更に別人なのか。うーん、困ったな。年齢も二人共40を超え、ミュンがバークッドに来たという7426年の時点で成人はおろか二十歳をとうに超えているからそう不自然でもない。

 ベグルBは殺すつもりだからいいけど、ベグルAには何の恨みもないしなぁ。せいぜいクローに足抜けの私刑リンチをしたくらいだろ? 悪さもいろいろやってるようだけど、俺は警察官じゃないしな。確かに同郷の日本人に迷惑を掛けていることについては腹が立つが、その仕返しを俺がやるのも筋違いだ。

 鑑定で姓のサブウインドウを開いてもデーバス王国とかサグアルに関連するようなところは全くない。ロンベルト王国の別の領地出身の自由民だったことが判明したくらいだ。魔法が使えない方がペンライド子爵領で使える方がファルエルガーズ伯爵領の出身だということしか解らない。

 お手上げに近いなぁ。素直にドーリットまで行ってあの連絡員つなぎを締め上げるほうが早そうだ。今日のところは顔が確認できたことで満足したほうが良さそうだな。退散するか。



・・・・・・・・・



 夕方、ビンスイルの店に出発した。勿論着替えたぞ。シャワーも浴びた。クローはもう来ているだろうか? あ、そうだ、明日はクローが休みの日だな。込み入った話をするなら気兼ねなく話せる場所がいいな。昼過ぎならマリーも時間があるだろう。3日前、親父達が出発する前夜に行った店がいいな。個室があったし。

 レストランに入り明日の昼過ぎで個室を予約した。店員は俺の顔を覚えていたようで問題なく予約できた。

 ビンスイルの店に着くと既にクローはいた。また隅っこのテーブルに陣取って静かに飲食をしていた。店もそれなりに混んでいるからマリーも忙しいのだろう。俺はクローの向かいに座ると声をかけた。

「よう」

「ああ、アルか。どうした?」

 クローが穏やかな顔で俺を見る。

「明日は休みなんだってな。昼過ぎくらいに時間あるか?」

「ああ、空いてる。ここでいいのか?」

 不思議そうな顔をして言って来た。そうだよな。話があれば今すればいい。だがな、誰にも聞かれたくないし日本語で喋りたいんだよ。

「いや、店を取った。『日本語』で話がしたかったからな。もし可能ならマリーも一緒がいい」

「ふぅん、でもあんまり高い店だと金ないぞ」

 店を取った、ということに対して少し心配なようだ。

「それは心配しなくていいよ。俺のおごりだと思ってくれ。明日二時くらいに店で待ち合わせしよう。店の名前は『ダックルトン』と言うレストランだ。知ってるか?」

「! 知ってるも何も、中央通りの超高級店じゃねぇか! いいのか?」

 え? そうなの? 親父達と最後の別れの晩餐に使った店だし、個室もあるし美味かったから選んだんだが。まずったかな? まぁ払えるだろうし、いいか。

「ああ、構わない。折角オースで会ったのも何かの縁だ。ちょっと込み入った話もしたいし、最初くらい奢らせてくれ」

「そうか、『ダックルトン』には行ったことがないんだ。明日は昼飯抜いて行ったほうがいいかな?」

 かわいいな、こいつ。マリーは昨日話した時に俺と同年代だったことは解ったけど、クローは若いのかも知れないな。

 その後はクローの護衛の仕事のことや、昨日受けた宅配の依頼についてなど、他愛のない話をしてビンス亭に帰った。マリーも明日は来てくれるそうだ。彼女も奢りと聞いて喜んだが、昼飯を抜いていくとまでは言わなかった。

 流石に大人だね。

 
何だか煮え切らない話ですみません。

最近メッセージで活動報告書いて欲しいというお願いが増えました。
本当に事務的なものになりそうですが簡単に活動報告を書いてみます。
文字通りの活動報告以上のものにはならないと思います。
+注意+
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