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男なら一国一城の主を目指さなきゃね 作者:三度笠

第一部 幼少期~少年時代

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第五話 固有技能

2013年9月16日改稿
 今、俺は柵のついた赤ん坊用のベッドで寝ている。
 勿論眠っている訳ではなく、横になっている、ということだ。
 部屋には誰もいない。
 さて、先ほどのステータスオープンとやらを試してみるか。
 ところで、ステータスオープンって何だろう?
 ステータスオープンってことは状態を開けるってことか?

 魔法なのだろうか?

 シェーミ婆さん――治癒の魔法を使い兄を治療した村の住民――が魔法を使ったときには婆さんの手が光っていたはずだが、司祭の手は光ってはいなかった。

 俺は軽く目を瞑り、気持ちを落ち着かせると、おもむろに唱えてみた。

「ステータスオープン」

 アホか。
 何も起こりゃしない。
 当たり前だ。

 しかし、司祭だけでなく、ヘガードも唱えていた。

 ならば、さっきの「ステータスオープン」とやらは司祭という神官職にとらわれるわけでは無いはずだ。

 一体さっきと何が違うのか。
 もう一度先ほどの命名の儀式とやらを思い出してみよう。

 司祭はまず、子供の親から名前を聞き、その発音を確かめていた。

 その次に、命名対象の赤ん坊の頭に手をやり、

 手をやり、

 なんだ。対象に触る必要があるのか?
 俺、今は何も触っていなかっただろうか?
 布団に触ってなかったか?
 わかんねぇ。あ、両手とも拳を握っていたような気が。

 きっちり何かに触ってみてもう一度やってみるか。

 俺はベッドの柵を掴むと、再度言ってみた。

「ステータスオープン」

 お、おおおおおおおおっ!!
 何か視界の端っこにパソコンでも使っているかのようなウインドウっぽいものが開いた。
 青い半透明のウインドウには

【ベッド(幼児用)】

 と白い字で日本語で書いてある。くそ、日本語かよ。懐かしすぎて涙が滲みそうになる。と同時に結構なショックを受けた。一体この世界は地球なのかそうじゃないのか改めて判らなくなった。

 しかし、俺にも魔法が使えた。いや、魔法なのか? これ?

 布団を触り唱えてみる。

【敷布団】

 次は俺の服でも触ってみるか。

【前掛け】

 よし、本番行ってみるか。
 両手で俺のほっぺたを触る。

【アレイン・グリード/5/3/7429】
【男性/14/2/7428】
【普人族・グリード士爵家次男】
【固有技能:鑑定】
【固有技能:天稟の才】

 今までよりも大きなウインドウに5行にわたって書かれていた。
 1行目。俺の名前か。これは予想がついていた。しかし右の数字がわからん。
 2行目。性別とこれも右の数字はなんだろう?
 3行目。予想外だ。多分「普人族」ってのは種族か何かだろう。生物学上の分類だろうか?
 4行目。意味不明、しかも字の色が暗い赤だ。
 5行目。これも意味不明、こちらも字の色が暗い赤だ。

 鑑定ってなんだろう? これも魔法なのだろうか? どうやって固有技能の鑑定を使うのだろうか? 鑑定。普通はなにか美術品や宝物などの価値を図る意味だよな? 青いウインドウに記載されている「鑑定」の字を見つめながら考える。

 と思ったら急に視界に変化が起きた。
 まず、俺の情報を表示していた窓が消えると同時に俺の視線の正面にあった天井板のうちの1枚が明るく光っている。いや、正確には光っているというよりは輝度が上がった。吃驚して視線がずれると理解した。

 俺の視線の先にある物の輝度が上がる。今まで輝度が上がっていた物は別の物に視線を移すと通常の見え方同様にまで輝度が下がる。丁度ゲームか何かをプレイしていて、一枚絵の中でマウスカーソルを動かし、アイテムか何を選択できるような感じに見えるのだ。

 と言う事は、選択出来るってことか? 

 試してみよう。まず手近なものでベッドだ。

 ベッドの輝度が上がったところで選択するかのように意識を集中してみる。
 さっきと同じようなウインドウが開いた。今度は緑色だ。

【ベッド(幼児用)】

 一緒じゃん。
 と思ったら急にやる気が無くなった。
 どうでもいいや。
 寝よう。
 赤ん坊は寝るのも仕事だしな。
 寝ようと思って目を閉じても

【ベッド(幼児用)】

 とまだ緑のウインドウが浮かんでいる。
 何だよ、邪魔だな、ステータスの青いウインドウは対象から手を離すとフッと消えたのに。消えろよ。
 あ、消えた。
 眠いわ。おやすみ。



・・・・・・・・・



 夕方、晩飯の頃に起きた。
 干し肉と玉ねぎが入ったオートミールとマッシュポテトと何かの焼き肉の晩飯だ。
 俺はまだ赤ん坊なのでオートミールだけだが。
 今日は司祭がいるからか、オートミールだけじゃない。ちょっとだけ豪華版の夕食か。
 もうシャルのあの形のいいおっぱいは吸わせてもらえないのか。
 うちの家族と司祭と一緒に晩飯を食うと、明かりが消される。
 もう寝る時間だ。

 相変わらず夜は早く、朝は早いな。
 俺、さっきまで寝てたからまだ眠くないんだがな。

 ええい、いっちょここは賭けてみるか。

 いや、俺の特殊性をこの村以外の人に知られるのはまずいか。
 まして司祭だ。
 宗教が絡むと万が一の時取り返しがつかない。
 悪魔憑きとか言われたらたまったもんじゃないし、神の再誕とか言われても問題が多いだろう。

 おとなしくシャルに抱かれて寝室に行こう。

 あ、シャルに抱かれているうちに試してみようか。
 ステータスオープンの魔法? は「ステータスオープン」と呪文を発音しないと使えないから、ここは鑑定だろう。念じる。

『鑑定』

 対象選択モード(仮称)になったのでシャルを選択する。

【シャーリー・グリード/8/6/7421 シャーリー・チューン/24/11/7401 】

 緑のウインドウにこんな内容が出てきた。
 なんか名前が二つある。
 家名が違うな。
 あ、結婚後と結婚前の名前じゃないだろうか?
 と言う事はとなりの数字は日付か。

 この書き方から言ってグリード家に嫁いだのが7421年6月8日で、多分赤ん坊の頃に今日の俺のように命名の儀式で名付けられたのが7401年11月24日ではないだろうか?

 生まれてしばらくしてから(今日の俺を例にとると大体1年後か?)に名付けられ、その20年後に結婚して名前が変わった、と考えるのが自然だろうな。

 そんなことを考えているとすぐに寝室につく。
 ヘガードは丁度服を脱いでいるところだ。均整のとれたスポーツ選手のような素晴らしい肉体だ。顔は普通だけど。
 シャルによってベッドに寝かされる。

「お休みなさい、アル。今日が貴方の名日よ」

 名日か。名付けられた日ってことなんだろうな。日本語だと命日と被るな。

「はい、お休みなさい、母さま」

 多分今日は客も泊まっているので俺の弟か妹を仕込むことはないだろう。
 落ち着いて考えられそうだ。
 まぁ、俺の精神年齢は既に46歳になっているので両親のセックスを見聞きしても若いなぁ、羨ましいなぁくらいにしか思っていなかったので、今更どうでもいい。
 多分肉体的な年齢に引っ張られているので今のところ性欲なんか全くない。
 余計な音声がない分、考え事や鑑定が出来るってもんだ。

 少なくともシャルを鑑定したことで追加でいくつか確定したこともあるしな。

 この世界(もう地球じゃないことには諦めが付いた。ウインドウの文字が日本語表記されていることには疑念が残っているが、ここは考えても結論にたどり着く事はないだろう)でも地球と同じように結婚すると家名が変わるのだろう。

 恐らく結婚時にも新たに命名の儀式を行うか、結婚の儀式(という物があればだが)に命名の儀式も含まれるのだろう。

 そしてその日付情報(タイムスタンプ?)は残される。

 あ、
 ああ、
 あああああああっ!
 ここまで考えて気がついた。

 俺のステータスウインドウは5行あって、固有技能:鑑定と固有技能:天稟の才があった!
 文字の色も赤でいかにもな感じだった。
 そして、シャルには固有技能:なんちゃらと言うのがなかった。

 あと性別(とそのとなりの数字、多分日付)や普人族・グリード士爵家次男なんて行もあったはずだ。 

 と言う事はだ。
 いつものまとめだが、

1.ステータスオープンの魔法(?)の方が鑑定の魔法(?)より情報量が多い。

2.鑑定の魔法(?)は固有技能。

 あ、まずい。
 固有技能ってことは俺にしかないんじゃないのか?
 少なくともシャルは固有技能を持っていない。
 いや、シャルにはステータスオープンじゃなくて鑑定をしたのか。

 シャルにステータスオープンは使っていない。
 俺には鑑定を使っていない。

 試してみたい。
 しかし、ヘガードとシャルはもうベッドに入っている。

 うーん。
 どうしようか?

 いいや、やってみよう。

「母さま。母さま」

 シャルがベッドを抜け出して俺のところに来る。
 ちなみにヘガードもシャルも寝巻きを着ているところは見たことがない。
 いつも裸で寝ている。
 俺だけは赤ん坊だからかいつも服を着ている。
 パジャマという文化がないのだろうと考える方が自然か。

「どうしたの? アル。おしっこ?」

 俺を抱き上げた。
 今だ。シャルにしがみついて、

「ステータスオープン」

【シャーリー・グリード/8/6/7421 シャーリー・チューン/24/11/7401 】
【女性/11/10/7400】
【普人族・グリード士爵家第一夫人】
【特殊技能:水魔法】
【特殊技能:火魔法】
【特殊技能:無魔法】 

 ふぁあ? 魔法三種類、だと……!?

「ちょっと、アル。貴方、なにやってるのよ」

「今日、父さまが僕にやってたんだ。あと、司祭様も」

「アル、貴方、字が読めるの?」

「字ってなに?」

 まずい、字はまだ習っていない。ここは誤魔化しの一手だろう。

「でもこれは青くて綺麗だなぁ」

「もう、しょうがないわね。あ、私もまだ見てなかったわ、ステータスオープン」

「綺麗だよね、母さま」

 ちょっと上目遣いで表情を窺ってみるが、シャルの表情に特に変化はなく、暫く俺のステータスを眺めると満足そうに、

「ちゃんと名前がついているわ」

 と言って俺をベッドに戻した。
 俺に布団をかけながら、

「今度はちゃんと寝るのよ」

 シャルはベッドに潜り込んだ。



・・・・・・・・・



 対象が見づらい暗闇でも触れてさえいればステータスオープンは使えることはわかった。

 次は鑑定だ。

 早速念じてみる。

『鑑定』

 おおっ

 視線の先の天井板の輝度が上がる。そのまま視線をずらすと、シャルやヘガードの身体のうち布団からはみ出している部分の輝度も上がる。ベッドや布団も輝度が上がる。直接視線が通ればなんだって選択できそうだ。

 これ、むちゃくちゃ便利だな。

 ヘガードでも鑑定してみようか。

【ヘグリィヤール・グリード/20/8/7422 ヘグリィヤール・グリード/25/7/7400】

 やはり名前だけか。
 はぁ、なんだかやる気が削がれたわ。
 どうでもいいや。
 寝よう。

 
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