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男なら一国一城の主を目指さなきゃね 作者:三度笠

第一部 幕間

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幕間 第五話 木内義男(事故当時32)の場合

初稿: 2013年 10月 05日
(くあぁぁ……眠いな、少し眠るか)

 監視要員交代のついでに家に寄り、着替えを済ませた俺は本庁への出勤の合間に眠気が抑えられなかった。あと30分くらいは眠れるだろうと電車のベンチ型の椅子に腰掛けた尻を少し前に出してゆったりと座り直した。丸一日の監視から疲れた体に鞭打ってわざわざ出勤するのは、課長に報告書を提出しろと要求されたからだ。

 今時の左翼運動家ひだりまきは一昔前と違って根性がないから、なにか政府に対して危険なテロリズムを企てているなどということもない。俺も大学を卒業して早10年、警視庁(桜田門)の公安部で仕事をしているが、在日外国人が起こす大規模なデモの警備監視がせいぜいで特段大きな事件に駆り出されることもなく過ごしてきた。キャリアではなく、準キャリアなので警部補にはなれたが、このまま頑張っても警部から、ものすごく運が良く大手柄を立てたとして警視で定年だろう。勤務体系が特殊すぎるので30過ぎだというのに結婚も出来ていない。なんとか付き合えた女の子達もデートの約束一つ守れない男には続いても半年で皆振られてきた。

 これが一般の警察官サツカンなら同僚に女性警察官が沢山いるからあまり苦労はないそうだが、警備警察にはあまり若い女性はいないんだよなぁ。いても売約済だし。交通課の子達とお近づきになりたいがそんな暇もない。いつもの愚痴を脳裏に思い浮かべながらうとうとと眠ってしまい、事故かテロか判然としないまま俺は死んだ。



・・・・・・・・・



 ぼんやりと周りを見回しても視界に霞がかかったようにぼんやりとしている。ここのところずっとそうだ。直ぐに感情も高まり、泣き出したり騒いだりしてしまうし、上手く喋ることも出来ない。また、喋りかけられる言葉も外国語だろう、意味がわからない。

 さらに時間が経ち、生まれ変わったことが解った。ヨーロッパあたりの田舎なのだろうか、家電製品が何もない家だが、作りや調度品はかなり金がかかっている感じだ。

 あるとき、大人に連れられて家を出たのだが、驚いたことに馬車だった。馬車自体は立派な物だったが、馬車はないだろ、馬車は。ベンツとは行かないでも普通の車はないのか? ……そんなもの無かった。

 田舎道を何日もかけて馬車で移動する。母親と一緒なのが救いだ。何しろ今まで会った事のない人間が沢山周囲にいたし、剣や槍で武装していた。この武器を見て現代ではないと当たりをつけたが、あながち間違ってはいないだろう。父親は多分まだ見たことはない。

 大きな都市に着いた。馬車は漫画に出てくるような馬鹿でかい洋館に入っていく。え? まさかここが訪問先なのか? と思っていたらそのまま宿泊するようだ。こんな立派な屋敷に寝泊まりしたことはないので素直に嬉しかった。

 もう何日も逗留している。そう思っていたら何だか立派な青年に抱き上げられた。高貴な出なのだろうか、仕草がいちいち洗練されている。なんだか俺をあやすように語りかけてくる。え? この人は俺の父親らしいぞ。貴族の血筋に生まれたのだろうか。どうやらやはりあの青年は俺の父親らしい。こんな数百年前の貴族か……一生安楽に暮らせるといいなぁ。

 俺を産むために母親は実家に戻っていたらしい。俺を産み、旅に耐えられそうになったので嫁ぎ先の家に戻ってきたということがわかった。どのくらいの距離を移動したのかは判らないが、何日もかかっていたのだから相当な距離ではないだろうか? 田舎貴族出身の母親が、大都市にいる貴族に嫁いできて、息子を産むために一時的に里帰りしていた。子供もある程度成長したので以降は自宅に生活基盤を戻す、という事だ。

 後でなんちゃらの儀式に行くとか言っている。どうやら俺も行くようだ。あまり興味はないのでずっと寝ていた。儀式はいつの間にか終わっていたようで、俺が目を覚ましたのは帰りの馬車の中だ。目を覚ましてからは数分で屋敷に着いた。



・・・・・・・・・



 数年が経ち、いろいろ理解できた。俺はセンレイド・ストールズという名前でデーバス王国のストールズ公爵家に生まれた。まだ会ったことはないが、この王国の国王は俺の伯父に当たるらしい。従兄弟である王子もいるので、将来的には父親の跡を継いで国王の補佐をする大臣職が約束されているようなものか? いや、嘘を吐いた。適当に言っただけだけど。

 デーバス王国は王族主家としてベルグリッド家があり、このベルグリッド家が王家だ。基本的にはこの家に生まれた長子が王位を継承する。そして、我がストールズ家は王族の中では序列第二位の公爵家だ。その他、ダンテス家が序列第三位の公爵家として存在する。ベルグリッド家に男子が生まれなかった場合にはストールズ家かダンテス家から王配を迎えるか、場合により婿として迎え、王位を継がせることもあるらしい。つまり、この三家でデーバス王国を牛耳っていると言っても過言ではないようだ。また、この三家はどうやらこの時代でも特殊で、血縁関係も複雑なようだ。流石に兄弟姉妹での婚姻は無いと思いたい、という程度には血が混じっているようだ。この三家以外は普通の貴族で、侯爵や伯爵に始まり子爵や男爵、準男爵、更には士爵なんてのもいるらしい。

 この血の濁った三家だが、たまには外部の血を入れるため、ほかの貴族から嫁を取ったり婿を取ったりしているらしい。俺の母親はなんとかという地方の領主をしている侯爵家の長女らしい。長女が産む初孫であり、公爵家の長男か長女を出来るだけ精神的に楽に産むために一時的に里帰りをしていたということだ。その証拠に俺の妹が生まれる時には里帰りはしていなかった。

 俺は毎日それなりに旨いものを食って健康に育つことが出来たようだ。この時代の一般庶民や平均的な貴族達がどんな生活をしているかはもともと世界史をあまり学んで来なかったのでよく知らない。大学受験は日本史だったし、大学でも世界史の講義は取っていなかったしな。

 しかし、生まれ変わって最初の頃は不安もあったが、俺を取り巻く環境について理解したらホッとした。生まれ変わりって過去の時代にもするんだな。大人になったら政治の世界に行くのだろうが、それまでは適当に過ごせば良さそうだ。こんな時代じゃ勉強と言ってもたかが知れているだろうし、世襲の専制政治なんて、まさに日本の戦国時代や江戸時代さながらだ。適当にやっていてもそれなりに善政をしたとか褒められるような気がする。

 また、一夫多妻もあるようだし、専制政治の頂点に近い貴族だからお手つきもし放題ではなかろうか。うひひ。



・・・・・・・・・



 6歳になった頃、初めて従兄弟である王子に挨拶をするということで王宮に登城する事になった。将来の上司の顔を拝んでおくことも悪いことではないし、出来れば友好的に迎え入れられたいものだ。せいぜい猫を被って気に入られよう。

 登城し、王子に面会して驚いた。糞生意気そうな日本人ヅラだった。なんと年齢も俺と同じ、どころか誕生日まで一緒らしい。変だな、と思ったし、妙だな、とも思ったが、それはどうやら先方も一緒だったらしい。アレキサンダーと名乗った生意気なガキは俺と握手し、挨拶のために顔を近づけると、周囲に聞こえないように『こんにちわ』と言って来た。日本語でだ。

 俺は目を白黒させたのだろう、『あれ? 違ったかな?』と言って吃驚している俺を興味なさそうに一瞥すると俺から手を離し、席に戻ろうとする。こんなチャンスを逃してたまるものか。

『待って』

 俺がそう日本語で言ったことを確認すると王子はまた手を握り直して

「後でまたね」

 と言って席に戻った。その後食事会なども催されたが、俺は王子の顔をずっと見つめているだけで、料理の味も覚えていない。

 食事会が終わると王子は俺と二人で話がしたいと駄々をこねて見せ、別室を用意させるとすぐに俺を連れ込んだ。用心深く誰も聞き耳を立てて居そうにないことを確認すると、ニヤッと笑い、俺に話し掛けてきた。

『日本語を話すのは久しぶりだよ……。なぁ、あんたも日本人なんだろ?』

 何だ? こいつ、何を言ってやがる。

『あ、ああ。日本人……だった』

 俺だって日本語を話すのは久しぶりだ。それに、なんだか事情通な感じだ。将来の上司でもあるし、印象よくしないとな。出来ればいろいろ聞きたい。

『だった、かよ。まぁいいや。で、あんたの固有技能は何?』

 は? 何言ってるんだ? 固有技能?

『え? 固有技能? っと、ああ、そうだな。柔道と剣道、かな? 警察官だった』

 おれがそう言うと、王子は可笑しそうに笑った。

『あ? ああ、まだ(・・)なのか。神様には会ってないんだ? それにステータスも見てないんだな』

 神様には会ってない? 一体、何言ってるんだ?

『あ、いや。すまない。俺にはあんたが何言ってるのか良くわからない』

『ん~、見たほうが早いか。じゃあ……。そうだな。ええと、センレイド、君だっけ? このテーブルを触りながら「ステータスオープン」って言ってみて』

 は? 全く話がわからない。噛み合ってないのか?

『え? いや、ごめん。何だって?』

『いいから、言ってみな「ステータスオープン」だ』

『す、ステータスオープン……うわっ、なんだ!? あ? 消えた?』

 驚いた。いきなり視界の右の方に変な青い窓みたいなものが開いてすぐに消えた。窓の中には何か書いてあったようだが、すぐに消えたので読めなかった。

『やっぱりな。次は自分の肌、そうだな、顔でも触りながら同じことを言ってみな。手は離すなよ。特に赤い字の所、要注意な』

『ステータスオープン』

【センレイド・ストールズ/15/1/7429】
【男性/14/2/7428】
【普人族・ストールズ公爵家長男】
【固有技能:超回復】

 な、一体なんなんだ? 俺の名前とか数字とか……固有技能ってこれか……超回復ってなんだ?

『え? 日本語? 漢字? ……普人族……ストールズ公爵家長男……固有技能、超回復?』

『へぇーっ、超回復か。よくわからんけど、戦闘向きな感じだな。いいぞ』

『っ……これは一体……?』

『うーん、どう説明したもんかなぁ……あんたもあの事故で死んだ口だろ?』

『ああ、あの電車の……やっぱり事故だったのか……いや、俺は直前まで電車の座席で寝ていたんだ。事故かテロかの区別はつかなかったし、まぁテロはないわな。事故だったんだな……そうだ、あの事故で死んだんだ、ろう……』

『うんうん、なにがなんだかわからないよね? 俺も最初はそうだった。でもいろいろ試したりしてるうちに神に会ったんだ。で、ある程度説明された。説明、いる?』

『ああ、そりゃもう。頼むよ』

 神様同士のいざこざに巻き込まれて死んだ。死者は39人。神様のいざこざを調停する神によって説明がなされた。39人全員がばらばらに転生。ここは地球じゃない。魔法もあるし、モンスターもいる。レベルアップ。一人一つのランダム固有技能。レベルアップすれば神様に会える。質問タイムは3分。推測によると固有技能を使えばレベルアップするが、眠くなるので連続使用は控えたほうがいい……。

あたまがフットーしそうだよ。

 
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