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男なら一国一城の主を目指さなきゃね 作者:三度笠

第一部 幕間

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幕間 第四話 大野美佐(事故当時17)の場合

初稿:2013年 09月 27日
(あー、だる。今日これからどうすんべ?)

 バスの中で同級生の仲の良い子数人とだべっている。
 いつもと変わらない日常だ。
 今日の天気はあまり良くなかったので、正直なところ買い物になんか付き合いたくなかった。他の子と違って、自分は今日の用意は既に終わっているのだ。朝礼の後抜け出してきた学校のロッカーの中には戻ってすぐに配れるように義理チョコが数個入ったままだ。

 単に友人のうち間抜けな何人かがチョコレートの用意を忘れていたので買い物に付き合っただけだ。バスは順調に走っており、あと10分もすれば学校の前に着くだろう。結局今日は何をしに学校に来たのかわからない。ああ、それはいつもと同じ日常か。別にまじめに勉強をするわけでもなく、本気で打ち込んでいる部活があるわけでもない。

 ただ仲の良くなった友人とだべり、多少格好の良い男子や先輩と遊ぶ。卒業する前にちょっとだけ勉強して適当な専門学校にでも入れれば言うことはない。馬鹿な親がもう少し小遣いを増やしてさえくれればもう少し毎日が楽しくなるのに、と言ったところだ。

 少し離れてつり革に掴まっている陰気な感じのどこかの男子生徒を見る。今日、この日で陰気なのはチョコレートをもらうことが出来なかったか、受験で失敗したかのどちらかだろう。顔の造作はそんなに悪くは無いようだが、ちろちろとこちらを窺う目つきが気持ち悪い。悪意を持って見ているのがわかる。

 友達に彼女が夢中になっている先輩の良さをレクチャーされながらそんなことを考えていると、大きな衝撃を受けた。一体何が起きたというのだろうか? 乗っているバスが交通事故でも起こしたのか。何も判らないまま大野美佐の意識は途切れた。



・・・・・・・・・



 次に目が覚めると、そこは薄暗い部屋のようだった。周囲もろくに確認できない。体もだるく、手足に満足に力を入れることも出来ないようだ。急に意味不明の恐怖感が湧き上がり泣き出してしまう。ひとしきり泣いたが誰も相手にしてくれない。それどころか目もろくに見えないようだ。怖くなってまた泣き出してしまった。

 一体どのくらいここで過ごしたのだろう。目が見えず、周囲の状況が掴めない事も勿論だが、とにかく空腹が耐え難い。余計に腹が減る気がして既に泣くことさえも諦めた。

 そんなとき、誰かに抱き上げられるのを感じた。ああ、やっと誰か来てくれたのだという安心感からうめき声を上げるなり気を失ってしまった。



・・・・・・・・・



 数年が経ち、自分を取り巻く状況を掴めてきた。驚いたことに自分は赤ん坊に生まれ変わっていた。そして、抱き上げたのは山人族ドワーフという人間に良く似ているが、人間ではない別の種族だった。だんだんと言葉を覚えたからこそ判ったことだ。

 自分は母親の死体の傍で死にそうなところを助けられたらしい。どういった状況だったのかはまだ判らないが、ろくな状況ではなさそうだ。また、名前が判らなかったので、勝手に名づけられていた。ラルファ・ファイアフリードという名前だ。ファイアフリードは姓なのでどうしようもないが、ラルファと言う名前は可愛いので気に入っている。

 また、自分には固有技能というものがあることが判った。しかし、親代わりになってくれているゼノムに聞いても固有技能:空間把握については判らないそうだ。名前からして飛行機のパイロット向きな気がするが……この世界に飛行機なんてないんだよね。

 ところで、ゼノムは定住していない。私を拾ってくれた最初の1年くらいは定住していたようだけれど、それ以降は私を連れて旅をしているような感じだ。こういう人のことを自由民とか冒険者とか呼ぶのだそうだが、冒険者とか、ゲームかよ、と思わんでもない。

 しかし、ゼノムは町から町へ旅を続けてあちこちで何らかの仕事を請け負って金を得ているようだ。こんなの冒険者じゃなくて単なるフリーターのホームレスだとしか思え無い。自由民とか冒険者とか自分を誤魔化して格好を付けているだけだろう。

 だが、ゼノムには親代わりになって育てて貰った恩があるし、いくらなんでもこんな事言えない。旅の道中で化け物を殺したり、人を殺す所だって見たことがあるのだ。最初に見たときには恐ろしくて口もきけなかった。でも、ゼノムはいつも私を守ってくれていることはわかっているのですぐに許したけど。

 ゼノムは普段あまり喋らないし、愛想も良くないけれど、旅の道中に襲い掛かってくる化け物や緑色の皮膚をした人や豚みたいな人と戦うときには大きな鬨の声をあげて戦っている。斧を振り回しながら私を守って戦うゼノムは格好良い。私はまだ全く役に立たないけれど、いつかゼノムの傍で一緒に戦うようになるのかな?

 まだ何もわからないけれど、ゼノムの好きな味付けで今日も美味しいスープを作ろう。

 
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