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男なら一国一城の主を目指さなきゃね 作者:三度笠

第一部 幼少期~少年時代

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第四話 ステータスオープン?

2013年9月16日改稿
 ケリー――村の子供で狼人族――が呼んで来た大人は10分もしたら来た。おせーよ。距離を考えれば遅くはないのか。大人はすぐにファーンを抱えて走って行ってしまった。しょうがないので俺はミルーに手を引いて貰い、ケリーと一緒にケリーの家まで歩いた。よたよたとした歩きでとても真っ直ぐに走れそうも無い。下手に逃げようとせず、迎撃を選択したファーンは正解だった。

 あそこで逃げようとしても俺を抱えてゴブリンよりスピードを出すことは出来なかったろうし、ミルーもゴブリンより速く走れるとは思えない。数分の間ケリーの家にいたが、すぐに迎えの大人が来た。

「ミルー様、お怪我は?」

「私たちはどこも怪我は無いわ、それより、ジム、お兄ちゃんは!?」

 ジムというのか。この兄ちゃんは。25歳くらいに見える。

「ファーン様はシェーミ婆さんのとこに担ぎ込まれました。行きますか?」

「ええ、アルも一緒に連れて行って」

 ミルーが返事をするとジムは俺とミルーを小脇に抱えると「ケリー、お前も一緒に来い」と言うが早いかものすごい勢いで走り出した。4~5分も掛け、先ほど通り過ぎた集落のうちの一軒に飛び込んだ。

「シェーミ様、ファーン様は?」

 家に入ると同時に声をかけるジム。家の中には足から血を流しているファーンと大人が3人いた。その内の一人がシェーミ婆さんだろう。

「俺は大丈夫だよ、大げさにしないでくれよ。ああ、トマス、さっきのゴブリンからマセキ取ってきてくれよ」

「ファーン様、まずは治療です。シェーミ、どうだ?」

 ファーンを担いで走ったトマスと呼ばれたおっさんがシェーミ婆さんに様子を聞く。

「そんなに酷くは無いようね。傷口は良く洗えた?」

 ああ、良かった。かなり血が出ていたようだけどそんなに酷くないのか。

「ああ、これでいいだろう、槍が錆びていたが、これ以上洗うのは無理だ」

 まだ名前のわからないおっさんが言うと体をずらした。ええっ!? ちっとも良くないだろ、まだダラダラと血が出てるじゃんか。シェーミ婆さんはファーンの傷口に手を当てると、

「我が身体より魔素を捧げる、この者に癒しのお恵みを、治癒(キュアー)

 はぁ? おまじないとかじゃ無くて、今必要なのは消毒と、動脈が切れているならそれを縫い合わせないとダメだろ、と言おうとしたが、婆さんの手が水色に光ったかと思うとその光がファーンに移っていく。

 ファーンは目を丸くしながらそれを眺めていたが、ふぅっと息をつくと「ありがとう、シェーミ。凄いな、治癒魔術は。助かったよ」とにっこり笑ってシェーミ婆さんに声を掛けた。

 目を丸くしてその光景を眺めていたのはファーンだけでなく、ミルーも一緒だったが、俺は目を丸くどころではない。

「えええええええええっ!? なに? 今何したの?」

 と大声を張り上げてしまった。だって、魔法だぜ!?

「魔法でファーン様の受けられた傷を治療いたしました。傷が骨までは達していなかったので、治療は問題なく終わりましたよ」

「私、治癒の魔法初めて見た! 手が光って綺麗だったぁ」

 にっこり笑って治療の終了を宣言したシェーミにミルーが畳み掛けるように言う。いや、それどころじゃねぇよ、魔法使いだぜ!?

「いやいやいや、姉さま、吃驚するところ違うから。そもそも魔法だよ?」

 俺はまん丸に開いた目と口と鼻で顔に穴を5つ開けながらミルーに突っ込む。

「ええと、ファーン様、ミルー様、この子は?」

 まだ名前の知らないおっさんが俺のことを尋ねる。

「ザック、こいつは俺の弟でアルだ。アル、初めて魔法を見て驚いているようだが、皆に挨拶しろ」

 ファーンに言われ、驚愕から立ち直った俺は大人四人に挨拶をする。四人とも俺の存在は知っていたようだが、顔を見るのは初めてだったから判らなかったらしい。当然俺も初めてなのでこの四人が俺を知っているはずも無いのだが。

 1歳にも係わらずきちんと挨拶を行い、普通に受け答えができる俺に驚愕していたようだが、ミルーの「この子は天才なの」の一声で不承不承ながら取り敢えず表面上は納得してくれたようだ。後で両親にツッコミが入るかもしれないが、そこまでは今のところどうしようもないな。

 しかし、天才か。努力をしないで好成績を収めたり、結果を出せるほどの天賦の才に恵まれた者。確かに俺は相応の努力をして来たわけではない。言語を学ぶのに多少苦労したが、それも元々の知識と経験があったから人より圧倒的に早く喋れるようになっただけだ。そもそも列車事故で死んだといっても(多分死んだんだろう)俺の意識自体は連続しているし、記憶の欠落なども感じられない。

 世の天才と呼ばれる人は「自分は天才ではなく、努力の人だ」と言うらしい。その言葉は納得できる。地球の歴史上、真に天才と言うに相応しい人は何人もいたであろうが、その他大勢は天才ではなく、努力してその能力を開花させ、少しづつ実績を積み上げていったに違いないのだ。それを「天才だから」の一言で片付られたら、それはたまった物ではないだろう。

 しかしながら翻って見ると自分はどうなのだ。先程も述べたが努力らしい努力なぞ何もして来なかったし、ここ1年は食っちゃ寝の遊んでいたようなものだ。それがまだ発音に慣れていないところもあるが、1歳にして大人と問題なく言葉を交わせるようになっている。意識と記憶が連続しているのだから当たり前だが、これは……何と言うか、いわゆる天才と言っても良い状態なのではないだろうか?

 多分、この世界は俗に言うファンタジー物語のような世界なんだろう。怪物がいて、魔法もある。中世封建社会によく似た王国があり、俺はその地方領主の息子だ。多分俺の知識をもってすればこの領地の生活レベルや収入に大きく貢献できることは間違いないと思う。

 この世界の常識や通常の考え方などまだまだ解らない事は多いだろうが、なに、そこはまだ1歳の乳幼児だ。これから幾らでも学ぶ機会はあるだろう。もしかしたら魔法だって学び、使えるようになるかもしれない。

 よし、嫌味にならない程度で「天才」ってやつを演じてみよう。せっかく生まれ変わったんだ。やれることは出来るだけ沢山やり、経験を積み、この世界で自分の力を試してみるのも悪いことじゃない。なにしろ、俺は一度死に、新たな生を受けたのだ。日本人の「川崎武雄」の生は終わり、アレインとしての生が始まっているんだ。苗字が判らないのは締まらないけど、開き直りに近い気持ちでそう思った。

 これに気づかせてくれた姉のミルーに何故か感謝の気持ちが湧いてきた。そして、僅か7歳で弟妹を庇ってゴブリンに立ち向かった兄のファーンがなんだか凄く格好良く感じた。

 その後は当たり障りの無い会話でボロが出ないようにし、とにかく家に帰ることを考えた。一度整理して今後の計画を立て直したほうがいいと思ったからだ。



・・・・・・・・・


 家に帰ってシャルに今日あったことをファーンが報告する。黙っていれば判らないだろうに、とは思ったがファーンの矜持として嘘は吐きたくないようだ。案の定、ファーンとミルーは俺を連れ出した事でものすごい勢いで叱られていた。しかし、ゴブリンと戦った事については叱らず、倒したこと、特に妹と弟、ケリーを庇った上で倒したことについて褒められていた。

 翌日、ヘガードが帰ってきた。帰る途中で村人からゴブリンのことを聞いたらしい。家の扉を開けるなり大声でファーンを呼びつけ、ぶん殴ったようだ。それから俺にとって新たな事件が始まった。

 このところヘガードが留守にしていたのは北西にあるドーリットの街まで神官を迎えに行っていたからだそうだ。ドーリットはバークッドに一番近い街で、そこまでは馬車で片道3日程の距離だそうだ。ところで、この神官というのは、宗教家というものとはちょっと違う。

 普通、宗教関係者は自分の教会の勢力を強めるために信者を増やし、喜捨を募るのが一般的な感じだが、少なくともこのロンベルト王国ではそういったことはない。まず、宗派というものがない。一宗教一宗派しか存在しないのだ。また、信じがたいことに通常喜捨は受け付けていないようだ。政治とある程度密接に関係しており、戸籍管理を任されているらしい。

 今回はその戸籍管理の一環としてバークッド村まで来た、というのが本当のところらしい。大体毎年1回バークッドに訪れ、戸籍調査のようなものを行い、結果を上に報告することになっているそうだ。去年は俺が生まれるちょっと前に来たので俺は初めての経験ということになる。

 親父がファーンをぶん殴った後で、俺は家の庭に連れ出された。そこには、俺の他に2人の赤ん坊を連れた親がいた。

「さて、グリード様、前回からの新生児はこれで全員でしょうか? 全員揃っているなら今年の命名の儀式を始めてもよろしいですかな?」

 神官が言う。グリードってのが俺の家名なのか。

「ええ、これで全員です。早速お願いします」

 ヘガードがそう言うと、神官はひと組の親子の前に立つと親に子供の名前を聞いた。名前の発音を確認すると、赤ん坊の頭に手を触れながら言った。

「ステータスオープン。天におわす神の代行者として名付ける、命名(ネームド)、リリア」

 はぁ? ステータス? オープン?
 あっけにとられる俺をよそに、神官は次のひと組の前に立つと、同じように

「ステータスオープン。天におわす神の代行者として名付ける、命名(ネームド)、ロンド」

 次に俺の前に立ち、俺の頭に手を載せ、ヘガードに俺の名前がアレインでいいか確認した。

「ステータスオープン。天におわす神の代行者として名付ける、命名(ネームド)、アレイン……。これで全員終わりました。グリード殿、御確認願います」

 ぽかーんとしている俺を放って置いたまま親父が俺の頭に触れて言う。

「ステータスオープン……。アレインは問題ありません。ステータスオープン……。リリアも問題ありません。ステータスオープン……。ロンドも問題ありません。司祭様、お手数をお掛けしました」

 この神官、司祭だったのか。いや、そんなことはどうでもいい。ステータスオープンだと? 一体何だ、そりゃ。ちょっとというか、すごく試して見たかったが、今は命名の儀式の途中だ。

「では、この3名を新たに人別帳に追加記載いたします」

「はい、司祭様。宜しくお願いします」

 その後、ヘガードと司祭は何やら会話をしたり、俺を含む子供達3人に神の祝福のお祈りのようなものをあげたりして、じきに儀式は終了した。

 ヘガードはまた司祭をドーリットまで送るらしいが、今晩は司祭は家に泊まり翌朝出発するらしい。

 とにかく儀式が終わったので俺はまた赤ん坊用のベッドに戻された。

 さて、早速試してみようか。

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