挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
男なら一国一城の主を目指さなきゃね 作者:三度笠

第一部 幼少期~少年時代

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

5/509

第三話 地球ですらない

2013年9月16日改稿
 天気のよいある日のこと、俺は籠に入れられて外出した。



・・・・・・・・・



 ヘガードは数日前から所用らしく家を空けていた。

 昼食を取った後、いつものように姉が俺のことを構いだしたところ、兄が姉に声をかけた。

「ミルー、アルを連れて部屋に来いよ」

「えー、アルはもう眠たそうだわ」

「いいからいいから」

 姉は俺を抱き上げると兄姉の部屋に向かう。
 1歳になったばかりだとは言え、5歳の姉には俺を抱き上げるのはつらいだろう。

 だが、まだよちよち歩きしか出来ない俺を抱き上げると姉は俺が歩くのと同様なよちよちとした頼りない足取りで部屋に向かった。

 落としたり転んだりはしないでくれよ。

「ミルー、この籠にアルを入れられないかな?」

 おい、何を言ってやがる。

「うーん、入るとは思うけど、何で? お兄ちゃん、かくれんぼさせるの?」

 見たところ確かに入りそうだけど、ちょっと小さいだろ。だいたいその籠って、でか目の買い物籠くらいじゃねぇの? 俺を入れたら幾らファーンでも持ち運びには苦労するだろ。

「おう、アルの奴をディックとケリーに見せてやろうと思ってな。あいつら、まだ小さな赤ん坊を見たこと無いんだってよ」

「え? だってお母さんはまだ外に連れて行っちゃだめって言ってるわよ?」

 お? 外に連れて行ってくれるのか? 更に情報収集できそうだ。
 これは嬉しいな。

「ミュンがもう首もすわったって言ってたし大丈夫だよ」

「それならいいのかな? でもそれならその籠だと小さいでしょ。背負えるような大きさの籠じゃないと疲れちゃうし、落としたりしたら大変だわ」

 おお、お姉ちゃんらしいな、ちゃんと弟のことを気遣ってくれる。
 ついついにこにこと笑顔で姉を見上げてしまう。

「うーん、確かにそうだな。ミルー、倉庫に背負い籠あったよな。あれならどうかな?」

 俺が想像するような(田舎の婆さんが行商するときに使うような)背負い籠なら充分入れるだろう。中で立ち上がって籠の縁に手を掛ければ外の光景も充分に見ることも出来るかも知れないが、果たして7歳児のファーンに背負えるだろうか?

 ここは俺が歩くべきだろう。

「僕、歩けるよ」

 と言ってみた。

「歩けるのは知ってる。でもアルはまだ赤ちゃんだからな。遅いし、転ぶかもしれない。転んで怪我でもしたら大変だから俺が背負うよ」

 怪我したらシャルにものすごく叱られるからだろ?

「お兄ちゃん、籠持ってくる。ちょっと待ってて」

 ミルーはそう言うと駆け出して部屋を出て行った。

「アル、今日はお前を皆に紹介してやる。ちょうど父様もいないし、そうっと抜け出せば大丈夫だ」

 俺がまだ赤ん坊だからか、俺が家の外に出ることは固く禁じられていた。
 当然それは兄や姉にも徹底されていた筈だ。

「うん、外行くの初めて。嬉しい」

 しかし、俺はよちよち歩きとは言え、一人で歩けるし、前世と併せて45年の人生経験もあるから知識も豊富だ。俺からして見れば親父だって小僧だ。多少外に行くくらい、どうって事はない。

「そうか、そりゃちょうど良かった」

 こんなことを話しているうちに姉が戻ってきた。俺が想像していた婆さんの背負い籠よりはちょっと小さい直方体に近い形状の籐で編んだ背負い籠を抱えている。小学生の使うランドセルの蓋を取って、3回りほど大型にした感じだ。これなら座るのは無理でも、籠の中に立って縁を掴んでいる分にはまったく問題ないだろう。

「よし、行くか。まずはディックのところだな」

 そう言うと、俺を抱き上げて籠に入れてくれた。

「アル、ちゃんとここに手を掛けているのよ。離しちゃダメよ」

 姉もちゃんと俺に注意してくれた。

「じゃあ行くぞ……。おっと忘れ物だ」

 姉を伴って外出しようとする兄は腰に剣を差していた。

 まず現代ではないだろうと予想はしていたものの、剣って……。
 しかも微妙に使い込まれているようだし。

 あー、こりゃ完全に現代説は否定されたな。タイムスリップ確定か?

「お兄ちゃん、剣を持ち出してもいいの?」

「ああ、いつでも戦えるようにしてなきゃならんって、父様も言っていたろ」

 ファーンはそう言いながら剣帯を調節している。使えるのかよ。

「それに、俺だって剣の修行をしてるんだし、武装は騎士として当たり前のことだからな」

 え? 修行してるのかよ。知らなかった。それに、7歳にして騎士の心構えを語るなんて、すごいな。兄のことをちょっと見直した。ただの生意気そうな小僧だと思っていたよ。

「修行って……。始めてからまだ一月くらいじゃないの。重くないの?」

 見直して損した。やっぱクソガキだわ。

「いけるだろ。っとほら、大丈夫だ」

 ふらつく事も無く、しっかりとした足取りで立ち上がり、部屋の中を歩く兄。
 おお、これなら問題ないだろう。

「アルの顔が丸々見えちゃってるわ。見つからないかな?」

 姉がちょっと心配そうな顔をして言う。

「うーん、よし、鎌と布か筵を持って来い」

 ああ、覆われそうだなぁ。

 やっぱり予想の通り筵で蓋をされた。籠と筵の隙間には鎌を差している。

「アル、鎌の柄を掴んでろよ。じゃあ、行くぞ」

 暫く外の光景はお預けか。

 頭が籠の外に出ないようにしゃがみ込むと鎌の柄を掴んだ。その上から筵で蓋をされる。家の外に出たようだ。すぐに誰かが声を掛けてきた。

「おやおや、ファーン坊ちゃん。どこへお出かけかね?」

 たまに声が聞こえてくるボグスという名前のおっさんだ。いつも話している調子から父親の部下だと当たりをつけている。

「やあ、ボグス、ちょっと川原までいって葦を刈ってくるよ。ミルーも一緒さ」

「そうですか、お気をつけて行ってらっしゃい」

 俺の感覚から言うと、いくら領主の息子だろうとこんなガキに丁寧に喋りかける大人ってのも普通じゃないし、それに対して気負うことも無く平然と受け答えするガキってのも普通じゃないよな。でもここ1年の観察からこれが普通みたいだ。

 特に問題なく家の敷地を出ることが出来たらしい。

 数分すると「もう筵を取ってやれ」と兄が言ってくれたので、姉が筵を取ってくれた。籠の中で立ち上がり、縁をしっかりと掴むと周囲を見回した。

 おお、予想通り糞ド田舎の光景だわ。二百メートルほど先に見える建物は我が家だろう(兄に背負われているので進行方向とは逆が視界になる)。母屋とその他に小さな建物が3つほどあり、木の柵で囲まれている。季節柄(多分今は2月だ)ちょっと肌寒いが、空は抜けるように青く綺麗だ。

 家からはまっすぐに踏み固められた道が伸びておりその両側は何かの畑だろうか、何も植物は生えていないが、畝だけは幾筋も綺麗に並んでおり、きちんと耕されているのがわかる。

 きょろきょろしながら数分もしてくると、後ろに向かっているためか、結構揺れるためか、ちょっと気持ち悪くなってきた。兄に前を向くと伝え、籠の中でどうにか進行方向に向き直った。今は兄の肩に手を掛けている。

 川を渡り、少し進むと左手に家が見えてきた。家の戸は開いている。その家の脇で子供が4人たむろっていた。全員兄より年下に見える。姉と同年代かちょっと下と言った所だろうか。

「おいディック、紹介してやる。アレインだ。可愛いだろ」

 今初めて知った新事実。俺の本当の名前はアレインと言うのか。愛称がアルなんだな。だとすると兄や姉にも愛称ではなくちゃんとした名前があると思ったほうがいいだろう。

 兄が声をかけ、籠を降ろすと中でも年上の子が駆け寄ってきた。

「えぇ!? ファーン様、連れてきてくれたの?」

 にこにこしながら駆け寄ってくるディックらしき男の子を良く見て、思わず声を上げて腰を抜かしそうになった。俺が目を真ん丸くしてその子を見つめ始めると、他の3人の子供もディックに遅れて駆け寄ってきた。

 何が腰を抜かしそうって、駆け寄ってきた子供たちの髪の色だ。薄い黄緑、水色、ピンク、紺色。全員とても綺麗に染められていた。色が色なので遠目では帽子でも被っているのかと思っていた。うちの家族は誰も髪を染めてはいないし、この時代(認めたくはないが、タイムスリップしているのなら)は多分12~16世紀だろうから、染髪の技術も無いだろうと思っていた。実際には見たとおり染髪は普通の行いのようだし、コストもそんなに掛からないのだろう。この貧乏そうな村の働き手にもなれないような幼児にも染めさせているくらいだから。

「まだ赤ちゃんだ! かわいいなぁ……って、この子、黒い髪だ! ねぇファーン様、染めてるの?」

 ああ、やっぱり染髪は一般的なんだな。俺は抜け毛などで自分の髪が黒いことを知っていたので髪の色の指摘には驚かないが、世間では赤ん坊の髪染めまで一般的に行われているのかよ。

「アルの黒髪は生まれつきよ。アルは目も黒いのよ」

 あら、目も黒かったのか。折角なので俺も緑とか青の瞳になってみたかったんだが。何故か自慢げにミルーが言う。

「本当だ、目も黒いや」
「めずらしー」

 口々に俺の髪と目の色で盛り上がる幼児たち。目も黒いって、死んでねぇから。慣用句なんて判らないか。俺の目が黒いうちは、とか日本語の慣用句だし。

「こんにちわ。アルです。宜しくお願いします」

 とりあえず挨拶しよう。挨拶はコミュニケーションの一歩だし、印象もよくしておきたい。

「うわ、喋った!」
「ええ? まだこんなに小さいのにもう喋れるの?」

 子供たちは挨拶を返した俺に吃驚したようで、みんな口をポカーンと開けて俺を見た。

「ええ、アルはもう喋れるわ。歩くことも出来るけど、それはまだ小さいから上手じゃないけど」

 喋る弟が誇らしいのかまたミルーが自慢げに言った。

「まぁ、今は見ての通り赤ん坊だから外には出せないが、今日だけは特別にお前たちに弟を見せてやったけど、暫くしてこいつが遊びに出るようになったら宜しくな。じゃあ、俺たちは行くから」

 ファーンはそう言うとまた籠を担ぎ上げた。少し進んで右手に折れる。20分ほど休み無く歩いた。その間に何軒も家を通り過ぎた。何人かとすれ違うがファーンとミルーは適当に挨拶をしたり簡単に俺を紹介したりした。やはり何人かは髪を染めているようだった。すると、先にぽつんと一軒だけの家が見えてきた。その先はしばらく行くと森になっているようだ。

 ファーンはその家の前まで歩くと扉を開けて「ケリー、いるかぁ?」と呼びかけた。おいおい、勝手に他人の家の戸を開けていいのかよ?

 すぐに返事があり子供が近づいてくる。またびっくりして声を上げそうになった。なんと、その子には耳がついていたのだ。頭のに。

「ファーン様、なんでしょうか?」

 ケリーが尋ねるとファーンは先ほどのように俺を紹介する。同じように髪の色の件でのやり取りの後、ファーンは言った。

「ケリー、まだ日が高いし、ちょっと剣の稽古でもしないか?」

 おお、剣の修行するのか、それは見てみたいな。

「はい、ファーン様。うちの稽古場はちょっと歩きますが大丈夫ですか?」
「すぐそこだろ?いいよ」

 どうやら俺が入ったままの籠を担いだまま向かうらしい。稽古が見れるようだ。面白そうだし、良かったな。

 家の前の道を更に数分歩くと半径10m程のちょっとした広場状に草が刈ってある場所に着いた。どうやら稽古場はここらしいな。道端に俺を降ろすとファーンは早速剣を抜く。

 え? 真剣でやるのかよ? と思ったが、どうやら素振りだけらしい。ケリーは木刀だ。さて、やっと疑問に思っていたことでも聞いてみようか。稽古の様子を見ながらミルーに尋ねる。

「姉さま、ケリーは何で頭の上に動物の耳がついているの?」

「ああ、ケリーは狼人族だからね」

 は? ロウ人族? 何だ、それ? 狼人族ってことか?

「え? 狼人族、ってなに?」

「ケリーのお父さんとお母さんが狼人族なの。だからケリーも狼人族」

 なんか常識のようだ。

「そっか、狼人族かぁ」

 無難に知ったかぶって答えておこう。って、ええっ!? 尻尾生えてるよ……。尻尾まであるのか。耳は頭から生えてるからわかる。尻尾もまぁわかる。しかし、耳と尻尾以外の体には毛が生えているのだろうか? 聞いてみたかったが、これから幾らでもそんな機会はあるだろうと思い直し、我慢して聞かなかった。

 しかし、ファーンもミルーも狼人族の事なんか今まで一言だって言ったことは無かったと思う。と、言うか狼人族って、人間じゃないんだよな? 見た目は人間と変わらない。ちょっと離れると注意しないと耳はわかりにくいし、尻尾は隠せば認識不能だろう。下着やパンツに詰め込むときつい、とか尻尾は自由に外に出ていないと不快、とかなのだろうか。

 そんな事を考えながらファーンとケリーの素振り修行を眺めていたが同じ動作を延々と繰り返しているだけなので、いささか飽きてきた。



・・・・・・・・



 15分も経つとついに眠気がしてきた。
 ミルーはなにやら植物の茎で編み物をしている、冠か何かのつもりなのだろう。

 そのとき、素振りをしている稽古場という名の空き地になにかが飛び込んできた。何だと思ったら人影だった。ファーンと同じくらいの背丈で……って人じゃない!!

 緑色の皮膚で腰にぼろきれのようなものを巻いている。頭は禿頭、目つきは鋭い。耳は尖っていて下あごから牙が生えていて唇の上に少し出ている。体つきは人間そっくりだが背丈が低い割には大人っぽい。手には1メートル程度の槍状の長い棒を持っている。状ではなく普通に槍だろう。先に錆の浮いた穂先がついていた。

「ゴ、ゴブリンだっ!」

 ケリーが叫ぶ。
 は? 何だって!? ゴブリン? 嘘だろぉぉぉぉぉ!?

 しかし、ファンタジー映画やゲームなどで目にする「ゴブリン」と言われたら、なるほどゴブリンだ。もうゴブリンにしか見えない。と同時に俺は大混乱だ。地球ですらないのか? ここは。

「ケリー、下がれっ! ミルー、鎌でアルを守れっ! こいつはオレが!」

 え? ファーンよ、まさか、ゴブリンと戦うのか? おまえ、7歳だろ。幾ら小さいとは言っても、相手は怪物だぞ? そりゃ無理だろう。そもそも素振りしかしたことないんだろ?

「わかった、お兄ちゃん。ケリー、誰か呼んで来て!!」

 は? ミルーよ、お前、何言ってんだ? ここは逃げる処だろ。常識で考えて。子供だけで怪物に対抗とかまじで意味不明なんだが。前世も含めて生まれて初めて見るゴブリンに興味津々の目つきで観察を続けながら、あまりの展開についていけず興奮と混乱で意味不明の叫び声を上げる俺。いや、普通の人間はこうだろ。

 あまりに混乱し、感情が高ぶり過ぎて逆に冷静になったのか、多少は思考能力も戻ったらしい。そうだ、落ち着け俺、赤ん坊の体に流されるな。多大な努力を払ってなんとか俺は冷静な目でゴブリンの観察を続けることが出来た。

 体格は7歳児のファーンと同レベルなので高さはおよそ1m20~30cmと言ったところだろう。腕や足の太さもファーンとそうは違わないように見えるが、腹は多少太り気味な感じがする。

 ミルーは籠に差してあった鎌を抜き取り俺の前に立って構えた。そんなものでゴブリンに対抗しようとするくらいなら石でも投げつけろよ。あ、俺が伝えればいいのか。

「姉さま、石を投げたほうが兄さまの援護になるよ! 鎌は僕が支えてるから!」

「え? わかったわ。お兄ちゃん、私が石を投げつけるわ。その隙にお願い!」

 そう言うとミルーは足元にしゃがみ込んだ。石を拾っているのだろう。

 ゴブリンは槍を構えるとファーンに突進した。ファーンは剣で槍を跳ね上げると返す刀でゴブリンに切りつける。おお、ファーン格好いいな。

「りゃ!」

 ゴイン! 返す刀で切りつけたが、ゴブリンは跳ね上げられた槍を縦に持ち替えてファーンの剣を防いだ。ファーンにはまだ剣は重いのだろう、剣に振り回されているきらいがある。ありゃ、やっぱりまずくないか、これ。そもそも7歳児に槍が刺さったら一発ジ・エンドな臭いがする。

 再度ゴブリンは槍を構えるとファーンに突き出した。またファーンは剣で跳ね上げる。ファーンは良くやっているが、時間の問題じゃねーか。やばい、何とかしないと俺までやられちまう。かと言って空き地に飛び込んで来た勢いや最初の突進のスピードを考えると、俺がよたよた逃げたところですぐに追いつかれるのがオチだろう。ミルーの投石をうまく使わないと厳しいな。

「やぁっ!」

 ファーンが今度は横薙ぎに剣を振った。ゴブリンは体を引いてやり過ごし、空振りさせてから槍を突こうとする。と、ファーンは空振った勢いを利用して回転しつつ再度同じように切りかかった。

 うわ、まずい。歳の割には俊敏な動作と言えるが、ゴブリンが槍を突き出すほうが速そうだ。

「えい!」

 ミルーが狙い澄ましたように拾い上げた石を投げつける。たいした勢いではないが、うまくゴブリンの左肩に命中した。一瞬動作が遅れたゴブリンにファーンの剣が当たったが、右の腿をちょっと傷つけただけのようだ。

「ギャッ!」

 ゴブリンが痛みで声をあげ、醜い顔を歪ませる。

 ファーンが崩れた体勢を立て直そうとしている間、ミルーは左手にも掴んでいた石を右手に移しもう一度ゴブリンめがけて投げつけた。今度はゴブリンにかわされたがその間にファーンは体勢を整えることが出来たようだ。逆に石をかわすことで体勢の崩れたゴブリンに剣を叩き込むことに成功した。

「おりゃ!」

 ザシュッ! ゴブリンの左足に剣が当たる。5cmくらいの深さでゴブリンの左足に斬り付ける事に成功した。

「ギョォォ!」

 ゴブリンの左足をある程度深く傷つけることが出来たため、多少動きが鈍ったようだ。スゲー! ファーン、スゲーよ! 流石兄貴!

「おらっ!」

 動きの鈍ったゴブリンにここぞとばかりに剣を振りかざすファーン。ミルーはまたしゃがみ込んで石を拾っている。

「ギィィィィ!」

 そのまま斬られてくれればいいのに、ゴブリンは咄嗟に槍を突き出した。

「うわっ」

 ああっ、ファーンの右足に槍が刺さったようだ! ゴブリンは左足が傷ついているためか、腰の入った突きではなく、手だけで突いた感じなので足のど真ん中にでも当たらない限り急に命がどうこうではないとは思うが、槍が刺されば重傷を負ったに違いないだろう。

「お兄ちゃん!!」

 ミルーが叫ぶ。

「大丈夫、だっ!」

 ファーンはそう気合を入れると右足を刺されながら再度剣を振り下ろした。

 ドッ! ゴブリンの右肩口に深く剣を斬り込むことが出来た。

「ギャァァァ!」

 たまらず槍から手を離してしまい、取り落とすゴブリン。右肩口から15cmは剣が切り裂いている。もう右手は使えないだろう。しかし、ファーンの右足にも槍が刺さっている。

「ミルー、がんがん石投げろっ!」

 そう言うとファーンは足に槍が刺さったまま、今度は剣を突き出した。

「ギョェェ!」 

 ゴブリンは動かせる左手を盾のように体の前に突き出してファーンの突きを防御する。左手に邪魔をされ、胴体に突きを命中させることは出来なかったが、ファーンの剣はゴブリンの左手の平を貫通した。よし、これでゴブリンは槍を掴むことが出来なくなった。

 ファーンは突き刺さった剣を手の平の指側へ力任せに斬り上げる。ゴブリンの手の平を裂いて再び自由になった剣で今度はゴブリンの足を狙って斬りつける。

「ギィィィィ!」

 上手くゴブリンの左足に斬りつけられたようだ。左足の半ばまで剣が食い込んでいるのが見える。これならいけそうだ。

「やぁっ!」

 ミルーが石を投げるが当たらない。今こそ鎌だろ。

「姉さま、鎌で首を!!」

 咄嗟にそう叫んで鎌を持ち上げるが、お、重い。1歳だとこんなに筋力が無いのか。

「わかったわ」

 ミルーが俺から鎌をひったくるとゴブリンまで駆け出した。

「やぁっ!」

 気合を込めて後ろから草刈鎌をゴブリンの首筋に叩き込む。

 ズシャッ。鎌がゴブリンの首に当たったが、5歳児で尚且つ扱いなれていない道具での攻撃のためか、刃が食い込んでいない。殆ど柄で叩いているようなものだ。しかし、満身創痍のゴブリンの体勢を崩すには充分だったようで、ファーンは刺さったままの剣を引き抜くことが出来たようだ。

「らあぁ!」

 ファーンが剣をゴブリンの胴めがけて突きこんだ。

「グブッ」

 剣が胴を突き刺すと目に見えてゴブリンの動きが鈍くなり、頽れるように倒れた。やった、ゴブリンを倒せた。7歳児と5歳児でゴブリンを倒せた!

「ミルー! 止めを刺せ!」

 ファーンが叫ぶと、ミルーは倒れこんだゴブリンの頭を滅茶苦茶に叩きはじめた。叩く度にくぐもったようなうめき声がする。その間にファーンは倒れたゴブリンの胴から剣を引き抜くともう一度上から突き下ろした。

 ゴブリンはビクンと一度震えると、それきり動かなくなった。

 
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ