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男なら一国一城の主を目指さなきゃね 作者:三度笠

第三部 領主時代 -青年期~成年期-

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第百二話 あばら家にて 2

7449年12月22日

「……」

 俺の前の三人は口を噤んでいる。
 俺はそんな三人の口元に注意を払っていた。
 勿論、吐く息の色を見逃さないためだ。

「お義兄さん、どうなんです? 姉はラッパのことを知っているのですか?」

 もう一度問う。
 すると、ほとんど同時にザイドリッツが「ラッパとは一体何のことでしょうか?」と質問をしてきた。

「……ふぅ~」

 深い溜め息を吐く。

「ええと、貴方がザイドリッツさん? 貴方、言葉はわかります? 質問をしているのは私ですよ? まさか陛下に直接仕えているというラッパのお頭がラグダリオス語(コモン・ランゲージ)を解さないなどという事はないでしょう?」

 慇懃無礼に言ってやる。
 直接陛下に仕えている従士だろうがラッパのお頭だろうが、上級貴族の質問に質問で返すというのはいただけない。

「申し訳ございません、伯爵閣下……」

 彼も自分のまずさに気が付いたようだ。
 すぐに過ちを認めて詫びたところ、即座に護衛を帰したところを見ると今のところ(・・・・・)俺に対する害意はないと判断してもいいだろう。

 が、さりとて素直に返事をする気もないと思われる。

 明日の姉ちゃんとの約束は夕方からなので時間に余裕はあるが、それまでに済ませておかなきゃならない雑事も多い。
 一年に一回、それも年末にしか王都に来ることが出来ない伯爵閣下は暇じゃないのだ。

「お三方のうちどなたでも結構ですが、早く私の質問にお答え願います」

 いや、本当に早く答えてくれないかな。
 嘘看破ディテクト・ライを延長すんのって地味にかったるくて辛いんだよ。
 それにしても……三人共に揃って無表情を貫いているのは大したものだ。
 お頭だというザイドリッツはともかくとして、クサだというマーティーさんや親父さんですらこうだ。
 しかし、これでこの二人が本当にラッパ組織の構成員だったのだという確信が持てた。

「失礼をお許しください。閣下はそれを聞いてどうしようと仰るのですか?」

 親父さんが言う。
 また質問だよ……。
 ロンベルト王国の伯爵を舐めてんのか?
 若干声が震えているところを見れば流石にそれはないだろうとは思うが。

 俺は親父さんの方をちらりと見ただけで何も言わなかった。

「私が静かに尋ねているうちに答えて下さい」

 意識的に低い声を出し、ドスを利かせた。
 視線はザイドリッツに注いでいる。
 お頭さんよ、ここに呼び出したのが俺だと認識したから護衛を撤収させたんだろ?

「……いいえ(ナン)、です。グリード卿は我らの組織についてご存じありません」

 息の色は透明なままだ。
 だが、そうか。
 姉ちゃんは知らないのか……。

「そうですか……」

 妙なことに何故か悔しかった。
 妙なことに何故か辛かった。
 本当に妙なことだが、何故だか姉ちゃんを汚された気がした。
 俺にとっては、まだ都合が良い方の答えだった筈なのに……。

 ……切り替えろ。

「では、姉を愛してはいないのですか?」

 不思議とざわつく心をかろうじて抑え、どうにか平静を保ちながらマーティーさんに聞く。

「愛しています。ミルーも、マルシリオ(マルツ)も」

 マーティーさんは即座に答えた。
 こちらも息の色は透明なままだった。

 確かに初めて挨拶をした時から、お義兄さんからは姉ちゃんに対する愛情を感じていた。
 ラッパの任務として近付いたが、付き合っているうちに本物の愛に昇華されたということだろうか?

 大きく息を吸い込みながら目を瞑って天を仰いだ。

「……」

――家族をもう少し信用しなさい。シャーニはもうすぐ家族になるのよ。

 突然、在りし日の母ちゃんの言葉が浮かんできた。
 あの時と同様に殴られたような気がした。

 俺って奴は……全く進歩がないんだな。

 シャーニ義姉さんを疑うということは、彼女を選んだ兄貴を疑うということだと自分で言った筈なのに……。

 それと同様にお義兄さんを疑うということは、彼を選んだ姉ちゃんを……兄貴ほどの信用なんか置ける訳……やめやめ。親父だって疑いを持つことは「貴族として、領地を任される者として必要な資質だ」って言って褒めてくれたじゃないか。

 とにかくこの嘘看破(ディテクト・ライ)という魔術……便利だからつい使ってしまうが、今後は何があっても身内に使うのだけはやめようと心に誓った。
 お義兄さんは身内なんだから、嘘か本当か、魔術インチキなんかに頼らず自分で判断すればいい。

 ……それに、最終的に結婚を決めたのは姉ちゃんだ。結婚は一人じゃ出来ないからな。

 そっと目を開き、細長くゆっくりと息を吐きながら視線をお義兄さんに戻す。
 じっと見つめる。
 いつの間にかお義兄さんは極度に緊張していたようだ。
 顔色も良くないようだし、額から流れ落ちた汗が珠となって顎先から滴り落ちるのが見えた。

「信じましょう」

 返事をする俺の声は少し枯れていた。

「今後もどうか姉を、甥を宜しくお願いします」

 両手を膝について頭を下げた。

「え、ええ。勿論です」

 お義兄さんの答えを聞きながら下げた頭を戻す。
 さて。気持ちも完全に切り替わった。

「貴方がたが、今日、この時間にここに来ることについて、陛下はご存じですか?」

 流石にそんな事はないだろうと思いつつも尋ねた。

「陛下はご存じありません。我々から直接ご報告しない限り、今後もお知りなることはないでしょう」

 ザイドリッツの吐く息は透明だ。

「先程の護衛の方々、桜草プリムローズですよね? バルドゥックの」
「ええ」
桜草プリムローズはこの事を誰かに喋ると思いますか? 勿論“誰か”とは、ここにいる人を除くあらゆる人が対象ですが」
「私が許可しない限りありません。彼女達の口は堅いです。それについては私が保証します」

 今のところ、ザイドリッツは嘘を吐いてはいない。
 さて、そろそろ頃合いだろうか。
 ゆっくりと腕を組み、少し考えるふりをして目を瞑ると生命感知ディテクト・ライフの魔術を使った。
 ……俺の半径二〇〇m以内には目の前の三人を除いて生命反応はない。
 ちょっと意外だ。

「他に誰か、貴方がたがここに居る事についてご存じの方はいらっしゃいますか?」
「居りません」

 ザイドリッツの息は魔術に反応した!
 ……って驚くようなもんじゃないか。

「彼女らの他に誰か連れてきていますか? この小屋の周囲に潜ませていますか?」
「先程全員撤収させましたので、今は誰も……」

 またザイドリッツの息は魔術に反応した。
 撤収しろと命じた本人がそれを信じていないとは……。
 結構距離を開けて遠巻きにでもしているのだろう。

「そうですか……」

 変な表現になるが、俺が得た情報だとラッパというのは、規模は別にしてその性格はごく普通の諜報組織だ。
 オースの基準で諜報や工作には長けているのだろうが、直接戦闘力は大したことはない。
 そもそも戦力なんか持っていないというのが適当な表現になる。

 いや、王国騎士団内部は当然として、諸侯が持つ郷士騎士団の中にもクサを紛れ込ませている事もあるらしいから、戦力を持っていないと言うのは誇張しすぎた。
 まぁ、何時でも自由に好きなように使える戦力はない、と言うのが妥当かな?

 何しろ五〇を超えるお頭のレベルが一五だからね。
 三〇前後で肉体盛りの桜草プリムローズのレベルは一三から一五くらい。
 彼女らはラッパにとって貴重な実働戦闘部隊なのだろう。

 今回のケースは、彼らにしてみればいきなり正体不明の相手に脅迫されるような感じで呼び出された。

 闇に葬るという選択肢オプションが考えられる場合、普通は最初から最大の戦力をぶつける。様子見とか言って戦力を小出しにしたって、余程の理由がない限りあまり良いことはないからだ。
 単なる強請ゆすりやタカリの場合はそれでいい。ある意味で満点の解決法だ。犯罪だけど。
 これが外国の工作機関だとしても、何があろうとそうそう表沙汰には出来ないだろうから悪い手じゃない。

 それ以外の時が問題だ。
 彼らも、国内の貴族やザイドリッツ以外のお頭の派閥が絡むというケースを想定してお頭を含め本人たちもやってきたんだろう。
 諜報組織が一枚岩だなんて幻想、俺は信じられないからね。

 そもそも俺は最初からこれを想定していた。
 調査や人集めに時間を掛けられることが無いように、手紙を配達したその晩を時間指定したんだし、別派閥を匂わせるためにわざわざ「お頭」という言葉も使った。それらにどれだけの効果があったのかまでは知りようもないけれど。

 また、護衛が付いて来ることくらいは想像していた。
 それが桜草プリムローズだったってのは想定外だったけど、彼女たちであれば別派閥が相手なら充分に威嚇になるだろう。

「何かご質問があればどうぞ」

 少しだけ黙考し、ザイドリッツに向かって言った。

「ラッパについて、どこでお知りになったのですか?」

 ザイドリッツはゆっくりとした調子で尋ねてきた。
 逸る心を抑えようと、敢えてゆっくり喋っているのだろう。

 彼の立場なら手紙を出したのが単なる強請りやタカリではなく、他の派閥でもないと判れば必ず確認しなければならない事だ。
 ひょっとしたら、ダーガンとバケイラが帰ってきておらず、行方不明になっていることと結びつけて考えているのかも知れない。

 俺としては当然ながら、彼らから聞いたなんて絶対に教えてやるつもりはない。
 まぁ、べグリッツであの二人を捕えたのは二ヶ月以上も前だ。
 距離や経路を考えるとあの連絡員つなぎたちもとっくに帰って来ていてもおかしくはない。
 とは言え、隊商の商売の状況によってはこの程度の遅れはよくあることだ。
 尤も、隊商が彼ら抜きのまま戻ってきている可能性だって充分にあるんだけど。
 何にしても、この件について追求されても知らぬ存ぜぬで通す。

「ご質問にお答えする前に二、三確認させて下さい。ライル王国はご存じですね?」

 ザイドリッツは頷いた。

「では、戦士階級と呼ばれる方々のことは?」

 ザイドリッツは「知っています」と言う。
 どの程度まで知ってるんかね?
 ま、今はそんなこといいや。

「私の妻はその中でも最上位の階層に所属しています」

 ザイドリッツの目が大きく見開いた。
 最上位の戦士というのがどういう存在なのか知っている、と言うことだろう。
 まぁ、大国であるロンベルト王国の諜報機関のお頭なんだから、この程度は知っていて当然とも言える。
 だが、ミヅチがその立場にあった事までは調査できていなかったと言うところか。

「そして、ライル王国内での彼女の政治的なステージは元老と呼ばれる最高評議会を構成するメンバーと同格であると聞いています。ああ、元老、というのは我がロンベルト王国では各省の尚書に相当します」

 マーティーさんと親父さんの表情も大きく変わった。
 尤もこちらは王国の大臣に相当するということがその理由のようだ。
 ここまでは必要があれば言っても問題ないとミヅチに聞いている。

「当然、私はその伝手を頼ることが出来ます」

 実際に仕事を依頼した実績もあるしな。
 暗殺じゃなくて単なる調査だけど。
 それについては陛下もご存じだった筈だ。

「そ、それは、きょうは、いえ、おど、警告、ですか?」

 明らかに焦った様子で言うザイドリッツ。
 勘違いをしているようだから訂正しておこう。

「人聞きの悪い言い方は止してください。各種調査ですよ。貴方がたの組織と同様のね。ご不安でしたら陛下にお尋ね下さい。陛下も私がライル王国の伝手を使って自らの領土内の調査をしていた事は良~くご存じですよ。そもそもそれを陛下にご報告したのは貴方がたではないのですか?」

 テレビドラマやアクション映画などの悪役が浮かべるような表情を思い出しながら、いや、前世の仕事で売り込みに行った際に、競合の方が品質も良い上に価格も安いからと言ってあからさまにこちらを見下して値切りに来た超大手スーパーのバイヤーが浮かべていた表情を真似する。
 当時はまだ若く、民間企業に転職したばかりだった俺は萎縮してしまい、提示価格よりも更なる値引きができなかったこともあって、その商談を逃した。

 彼らに対してどこまで効果的かは知らんが、拷問して情報を取った二人はライル王国の諜報機関については碌な情報を持っていなかった。
 つまり、ラッパたちはライル王国の諜報機関の実力について推し量れていない、という推測が成り立つ。
 あの下っ端連中には公開していないだけ、という線も否定できないが、仮にも諜報組織ならこういった情報について自派閥内でそういう真似はすまい。

「……」

 ザイドリッツは渋い顔をしていた。
 その表情からは「やはり」というような感じを受けるが「まさか」という感じも受ける。
 ダークエルフの調査が俺に対して報告されていた、と言うのは国王陛下個人のカマだったのだろうか。
 それとも、ラッパ組織についてまで調査がなされており、それを掴んでいなかった、掴めなかったという後悔と反省だろうか。こっちの方だったら、なんか、その、ごめんね? ラッパはちゃんと働いてたと思うよ。

「これで先程の質問の答えになっていると思いますが?」

 因みに、ライル王国の戦士階級……少なくとも一位戦士階級に加えて元老と同格のミヅチはラッパについて碌に知らなかった。
 ライル王国は「外国が何を調査しようが、エルレヘイの重要な秘密が漏れる事はない。また、漏れたとしてもその気になって戦士たちを差し向ければ組織ごと潰せる」という考えであった。
 従って、周辺各国の情報機関や諜報組織については頭から舐めてかかっており、通り一遍の調査しかしていないそうだ。

 ミヅチに言わせると「あんまり褒められたものではないが、王国の戦士階級にはそれだけの力があるのは確かだろうから、あまり問題にはならないと思う」との評だった。
 加えて、以前調査を頼んだ我が領土の報告書もそう悪い内容ではなかったので「本気になればこの程度、ライルの戦士団なら朝飯前よ」と変な自慢までしていた。

 俺に言わせりゃ本気にならないと働かないって奴はあんまり信用出来ないんだけどね。
 やれるなら普段からやっとけって話だ。

「奥方がそのような……」

 ザイドリッツは絞り出すような声で呟いた。
 しかし、その声音からはどこか納得が行ったというような感情も窺える。
 これで納得してくれ。
 肚を決めているとは言え、出来ればあの二人について言及はして欲しくない。

「さて、そろそろ本題に入りたいのですが……」
「……」

 三人は俺を見つめている。

「まず一つ目。まずは正体を隠したままお呼びだてしたばかりか、不躾な質問をぶつけてしまった件について謝罪します。申し訳ございませんでした。そして、わざわざ出向いて頂いたことに感謝します。ありがとうございます」

 深く頭を下げて二つの謝意を表す。

「……」

 上級貴族が平民に対して簡単に頭を下げたことについて驚かれているようだ。
 俺としても軽々しいかな? と思わんでもないが、正体を隠したまま呼び出した礼儀知らずは俺の方だ。
 まぁ、こうでもしなきゃまともに話なんか出来なかったろうから仕方ないんだけど、礼儀知らずは礼儀知らずだ。相手が平民だろうが貴族として頭を下げるべきだろう。

「ご容赦いただけましたようで何よりです」

 向こうが反応する前ににっこり笑って結論づけた。

「え? あ、ああ。はい」

 肯定するより他はないだろう。
 ここで謝罪を受け入れないと、部下であろうマーティーさんや親父さんに尻の穴の小さい男だと思われかねないし。

「では、次です。貴方がたラッパに何らかのお仕事を頼むためにはどうしたら良いですか?」

 出来るだけ威圧的にならないよう、爽やかな印象を与えるように柔らかく言った。

「……は?」

 三人ともあっけに取られたようで、一瞬だけ間の抜けたような顔をした。

「何か変なことを言いました? いやぁ、ダークエルフに調査を頼んでも良いんですがね、我がロンベルト王国の事は貴方がたが一番良く知っているのではありませんか? ご存じの通り、私は伯爵としては新米ですから、我が国についてはよくわからないことが多いんですよ」

 マーティーさんと親父さんは目を見開くばかりだが、ザイドリッツは真剣な表情になる。

「勿論、王国の秘密……というものが有ると仮定してですが、そういった物を教えろなんて言いませんし、仮に申し上げたところで貴方がたは拒否なさるでしょう? 私が知りたいのは王国の他の貴族領のことや、デーバス王国の北部の事です。そういった情報はデュロウなんかより余程多くお持ちだと思うんですが……」

 俺の言葉を聞いたザイドリッツは「一体何を言い出すんだ、こいつは」とでも言いたげな表情を浮かべつつ、俺を値踏みするような目付きで見ていた。

「出来ればここではい(ゼー)と言って欲しいですが、ご判断出来ないようであれば私から陛下にお願いしても宜しいですよ?」
「そ、それは! ……おやめ下さい」

 ザイドリッツが少し慌てる。
 ふむ。ラッパを知られているという事が陛下の耳に入ったらまずい、という事かな?

「ん? そうですか。でも困ったな……あんまり便利にダークエルフたちを使いすぎたのか、ウチのコレが最近おかんむりで」
「はぁ……」

 面白くない冗談で悪かったね。

「折角なのでお義兄さんのルートにお願いしようかと思ったんですよ。代わりと言ってはなんですが、ウチの領土についての情報は全面的に公開するつもりだったんですが。どうせウチの事も調べてるんでしょう? でも、ま、ザイドリッツさんの方が難しいなら結構です。えーっと何とおっしゃいましたっけ? ああそうだ。エンブリーさんか。確かザイドリッツさんと同じ国内のご担当でしたよね? 確か彼の息子さん、私の商会に丁稚で来てますから……」

 俺がそこまで捲し立てた時、ザイドリッツは慌てたように「ちょ、ちょっと待って下さい!」と割り込んできた。
 その表情は「一体どこまで知っているんだ」とでも言いたげである。

「何でしょう?」
「そ、その……閣下は……いえ、何でもありません」

 呆れたような風を装って、もう一度、生命感知ディテクト・ライフの魔術を使った。
 ……俺の半径二〇〇m以内には目の前の三人を除いて生命反応はない。
 誰にも聞かれてはいない。

「ザイドリッツさん、迂遠な話はもうやめましょうか。今日の行動で私は貴方が優秀な方だと確信しました」

 護衛を連れてくるのは当然として、それがバルドゥックの桜草プリムローズだったというのもいい。
 下手に兵隊あがりだとかそういうのではなく、泥臭く戦い、逃げるのも得意な冒険者というのは、こういった場合の選択肢として結構上位に位置すると思う。

 桜草プリムローズは、ひょっとしたらラッパ組織の子女で構成されているのかも知れない。
 また、バルドゥックには多くの冒険者パーティーがいる。
 他にもいるのかもな……。

 ハミルについても指定された一人だけでなく、親子で連れてきたのもポイントが高い。
 どちら宛に書いたか判らない手紙の差出人を見極める必要が起きた場合を想定してのものだと思われる。

 相手が俺だと判明する前に桜草プリムローズに剣を収めさせ、正体が判明した途端に彼女たちを遠ざけたのも賢明な判断だ。
 俺相手に生半可な戦力など何の意味もないことを理解している。
 特に、俺が正体を明かす前に剣を収めさせた事については、実は結構感心した。
 高い魔法の実力を見せつけた正体不明の相手に無防備になるなんて真似は普通はなかなか出来る事じゃない。

 更に、これはおそらくだが、“撤収”と言葉自体を暗号にして監視陣形を変化させた。
 想像でしかないが、俺と会っていたという情報を、生きた者が外部に伝える動きも兼ねているのだと思われる。俺が相手だから一種の賭けだったんだろうけど、逆に言えば俺が相手だからこそ、撤収した奴も含めていきなり虐殺されることはないと踏んだんだろう。

 そして、最初こそトボけたものの、すぐにラッパについて隠そうとはせずにその存在を認めた件についても思い切りの良い性格であるばかりか、トボけ続ける害について、すぐに悟れたという事を表している。

「ああ、当然謝礼は充分にお支払いたします。勿論、私から仕事を受けたことについて、陛下にご報告することも問題ありません。ですが、組織として陛下に報告しなくても良い工作資金が出来る、と言う利点もありますから……ま、それは私の預かり知らないところですので、どうにでも」

 え? 陛下に報告されたら俺も堂々と陛下にお礼が言えるんだからOKだ。
 たとえ俺の依頼を受けて貰えないとしても、陛下に受けて貰えるようにお願いすることが出来る。
 報告されなかったら、それはそれで持ちつ持たれつの関係が築ける。
 また、報告もされず、仕事も受けて貰えない、という場合でも俺は陛下にお願いできる。

 まだラッパが一枚岩かそうでないかという問題もあるが、今回のケースだとどっちでもいい。

 返事はどれでもいいよね?
 どう転んでも俺には何の害もない。

今週か来週の何処か、今まで時間がなくて対応できなかった誤字などについて一気に修正できると思います。
多くの方々にご指摘いただいていたにもかかわらず、今まで放りっぱなしで申し訳ありませんでいた。
諦めずにご指摘し続けて下さっていた皆様、この場を借りてお礼とお詫びを申し上げます。
ありがとうございました。そしてごめんなさい。
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